日本共産党 田村智子
コラム

【09.01.26】学童保育が「生活の場」となるために

東京で広がる深刻な実態

 
学童保育の「ガイドライン」を厚生労働省が初めて示したのが2007年10月。
「規模については、おおむね40人程度までとすることが望ましい」「最大70人までとすること」など、充分とはいえないまでも、現場の要求が反映されたものでした。

この「ガイドライン」が現場でどう生かされているのか、
重要な柱の一つ「大規模学童の解消」はどうすすめるのか、など、厚生労働省から直接説明を受ける機会を持ちました。
学童保育の充実、大規模化の解消は、親としても切実な要求です。

実は小3の娘は、昨年とうとう学童クラブを退会してしまいました。
「学校の友達と遊びたい」というのが直接の動機です。

「一人で留守番できるの?」「できる」
暗くなるのが早い冬のこと。私も不安でしたが、娘が実際に暗い部屋に帰るときの不安は決して小さくないでしょう。
それでも本人の固い決意で「退会」となった我が家。

その背景に大規模化や、指導員のみなさんの多忙化があることも否めないのです。
葛飾区では、入所希望から入所決定をすべて学童クラブに行なわせるようになりました。この事務量は大変なものでしょう。
一時、定員はずしもしました。定員をなくして希望者が入所できるようにというのです。

夏休みの午睡時間、頭と足を互い違いにして寝かせたという学童クラブもあったそうです。
おやつを机に並べきれないので、自分の椅子をもってうろうろする、ということも。
娘も「お昼ご飯のときはきつくて、隣の人とぶつかっちゃう」と言っていました。

全国1万7583ヶ所のクラブのうち、14%・2461ヶ所が71人以上です。
東京では、1486ヶ所のうち292ヶ所。
大規模化を解消するには、クラブの増設しか道はありません。
「今年度2万ヶ所の予算を来年度は2万4153ヵ所の予算を組んでいます」と説明がありましたが、今年度も2万ヶ所に届いていない、増設が政府の目標と乖離しています。

なぜ増えないのか、何が問題になっているのかを調査して、政策検討しなければならないでしょう。
これを脇において、「2010年度は71人以上のクラブに国の運営費は出さない」となれば、逆に学童の危機をまねきかねません。

自治体も国も、学童クラブへの予算を抜本的に増やせるかどうか、今真剣に問われています。
参加した地方議会の議員さんや予定候補者のみなさんからは、厚生労働省の方針とも反する実態も出されました。
中でもひどいのは渋谷区です。

放課後児童クラブを廃止して、全児童対象の放課後事業に解消してしまったのです。
雨の日は狭い部屋でビデオを見せるだけ、人間的つながりをつくれる指導員もいない、子どもたちの参加は自由。
「つまらない」と感じる子どもたちは、コンビニにたまることもあるそうです。
聞いていて、どうしようもない腹立ち、なぜこんなことにという悔しさがこみあげました。

「自治体の判断なので、厚生労働省から指導することはできない」――原則で言えばその通りです。しかし、子どもの安全、成長からみて何も言えないのか…。
「利用者や区民の意見を反映したうえでの決定だと思います」――これは違います。もちろん区長や区議会の責任が大きいし、それは区民が選挙で判断をくだすのが原則です。請願署名を積み重ね、陳情を重ねてきた区民にとっては「意見を聞いても、右から左だった」ということになります。

保育所とは違って法定義務が、国にも自治体にもないのが現状。
しかし子どもの最善の利益に立てば、もっと何かができないのか。

増設がすすまない理由の一つは、運営費補助金のお粗末さです。
指導員への給料は、「賃金」とさえみなさない算定。
拡充が必要という一致点は、国の方針と同じです。そのために何が必要か、現場から動かしていかなければと思います。

「厚生労働省としても、ぜひ実態調査をしてほしい」、最後に要望しました。
子どもたちの「生活の場」となるように。
家に帰っても親は留守、そんな子ども達が、安心して「生活できる」場所に。
働く親たちみんなの願いです。