日本共産党 田村智子
コラム

【09.01.15】東京チャレンジネットでの経験

「ハードルの高さ」をどうするか

「チャレンジネットに相談予約してみない? 私も一緒に行きますから」
「いいですよ」
「ネットカフェ暮らし2年」というHさんと、こんな会話をかわしたのが13日の夕方のこと。

昨年12月に街頭宣伝で出会い、その後何度かメールでやりとりをしてきました。
「仕事はあるが住まいがない」という若者に生活資金を東京都が貸し付ける、この東京チャレンジネットは、Hさんにこそ必要な制度だと思ったのです。

予定を合わせて、15日夕方、チャレンジネットの受付で再開しました。
「街頭で出あって、ここに相談をとすすめたんです。見届けたくて」と、受付の方に名刺を渡しました。
相談には同席はできないので、私は受付で待つことに。

待つこと1時間半。
相談室から出てきたHさんは疲れたような表情。場所を変えて話を聞きました。
「ハードルが高すぎる」、彼の率直な意見でした。

生活資金を借りるには、東京社会福祉協議会の審査が必要。
この審査には、1ヶ月の収入証明で月15万円程度の収入があることを示さなければなりません。返済する能力があることを示すのです。

「日雇い派遣で収入証明をもらうことはない」
「派遣の仕事が入らなければ、以前働いた職場に直接電話して働いている。明日仕事がないかと。そういう仕事の収入証明は難しい」

そのうえ、審査には1ヶ月かかり、その間、ネットカフェ暮らしを続けなければならないというのです。
「すぐに住居を」と寮付の職場に就労すれば、「住居がある」とみなされて貸付対象からはずれてしまうのです。

「悔しいな」、思わず言葉がもれました。
Hさんをネットカフェに戻してしまう、これが何より悔しいこと。
新しい支援策だと期待したチャレンジネットの「ハードルの高さ」が悔しい…。

枠組みをつくったことは大切な一歩です。
その改善、枠組みからももれてしまう大勢の人たちへの次の支援が、どうしても必要。
やるべきことがみえてきました。

「都営住宅とかあいているのなら、住まわせてほしい。お金がほしいんじゃなくて、住むところがほしいだけ」
Hさんの指摘はその通りです。
家賃が高く、礼金・敷金も、更新料も高すぎる東京。
若者への住宅政策がない、ここを突き動かすだけでどれだけの人たちの生活が変わることでしょうか!

街頭で出会ったとき、私はHさんの力になれるのではと思いました。
でも、今は痛感しています。
力を必要としているのは、私の方。Hさんの力が必要だと。

帰宅途中、これからどう突破していくのか、考え続けました。
この冷たい風のなかで「マンガ喫茶」に行くといったHさんの姿を思うと、あらためて自分の非力さに悔し涙がこみあげました。
悔し涙なんて、自分の選挙のとき以来です。

「今日は寒い中ありがとうございました」というメールが届き、「あきらめません」「協力してください」と返信。
絶対にあきらめません。必ず政治を動かします。