コラム
【08.11.05】アスベスト被害を小さく見せないで
労働保険再審理を傍聴しました
「アスベスト問題での労災再審査の日程が決まりました。傍聴できます」
大学時代のS先輩から連絡をもらい、初めて公開審理の傍聴に行きました。
この日、再審理の対象となったKさん。
製鉄所で技術者として働いていました。肺がんは現場に充満していたアスベストによるもの、と労働災害を申請したのですが認められず、再審を請求。
この日の公開審理へとつながりました。
Kさんのアスベストを扱う業務歴は10年以上です。
切除した肺から石綿小体も1000本以上検出されました。
ところが労災を認められない、大きな要因は厚生労働省の「新基準」ではないのか。
こういう問題意識を持って、以前、厚生労働省から直接説明を受けていた経過がありました。
新基準とは、「石綿小体が5000本以上であれば、即労災認定する」「1000本以下は要検討」というもの。
これが労災認定を狭める一因になってしまいました。
欧州でアスベストの毒性が問題になり使用禁止が広がるなかで、日本は事実上、使用を野放しにしていました。
耐火材として使用を法律で求めることまでしました。
健康被害についての調査研究は後手後手になりました。
それならば、アスベストを直接扱う業務に一定期間ついていた場合、積極的に労働災害を認めるのは当然の責任ではないでしょうか。
なぜ5000本、1000本という基準を持ち出すのか。その科学的根拠に疑問の声もあがっているのに、なぜ労働災害を小さく小さく見せようとするのか。
KさんもS先輩も、この「新基準」の運用がおかしいと、いくつもの根拠を示して意見陳述しました。
3センチにもなるかという資料をつくり、どういう作業場で働いていたのか、
どこで石綿を扱ったのか、医師の治療や検査の経緯はどうか、などが示す努力がどれほどのものだったか。
病気の治療をしながら、こういう作業を求める行政のあり方を考えさせられました。
意見陳述するKさんの声は、息があがりやすいのだとわかるものでした。
肺の4分の1を切除し、そのほかにもがん細胞が肺にあることがわかっている。
がんの進行を抑えながら、呼吸器に障害を持ちながらの「闘い」。
病気の苦悩に加えて、さらに行政が重荷を負わせることへの怒りは抑えようがありません。
「結果は後日書面で」と伝えられ、審理終了。
最初で最後の意見陳述が伝わったかどうか、部屋を出るKさんの表情には一抹の不安もみられました。
でも、Kさんは終始笑顔でした。「道理は我にあり」という思いが貫かれているのでしょう。
穏やかな笑顔で「ありがとうございました」と告げられ、見守ることしかできない自分の微力を思わざるを得ませんでした。
早く政治の場に進みたい。
労働災害認定のあり方を大きく問いかけたい!!