日本共産党 田村智子
コラム

『いたずらこびと』

こびとが何にみえたのかな?

 
香山美子 作
鈴木義治 絵
偕成社(1970年刊行 当時の定価500円)



実家から発掘した本の一冊です。
小学生の頃、私は日本の童話があまり好きではありませんでした。
子どもなりの感想ですが、胸がわくわくするような本があまりにないな、と思っていたのです。

日常生活に近すぎたり、なんだかやけに「いい子」が出てきたり…。
奇想天外さを感じる本が好きだったからかもしれません。

そのなかで、『いたずらこびと』は不思議な話でした。
日常生活のなかの奇想天外。
大人になってから読んだ『はれときどきぶた』と似ているかな。

子どもたちに読んだのは、息子が小学校に入ったかどうか、娘は2、3歳だったでしょうか。
「大ちゃん」のいたずらの思い切りのよさに歓声をあげ、
(学校のトイレットペーパーを、あっかんべーのベロにしてしまう等々)
宇宙船からおりたった大勢のこびとの絵に見入り、
ある意味拍子抜けするような「おち」(終わり)に、あっけにとられ。

この本は何度も読み聞かせたものではありません。
絵のないページもあって、話もやや長いため、2・3度だったかもしれません。

ところが、ある晩のこと。
なかなか寝付かない娘が、どうしても読んでほしいといって聞かなかったのが、この本でした。
そのやりとりはというと…。

「いんげんさんみたいなのが、出てくる本」(娘)
「いんげんさん? そら豆くんの本?」
「ちがう、ちがう」
「にんじんさんの本かな? いんげんは出てこないけど…」
「いんげんさんみたいなのが、いっち、に、いっち、に、ってするの」(半泣きになりながら)

10分ほどの騒ぎだったでしょうか。
息子はすでにぐっすり眠り、私も、もう眠たくなっていました。
それでも、どうしても、というあの年頃のこだわりにつきあい、絵本を一冊ずつ見ていきました。

「あった! これ、いんげんさんみたいなの」
と、娘が手にしたのがこの本でした。
小人たちの緑のとんがり帽子に、なるほど「いんげん」だと、笑いがこみあげました。
今でも、このエピソードは我が家の笑い話になっています。


【こんなお話です】

突然ニュースで、デパートの屋上に宇宙船が地球に着陸したことが告げられます。
中からできてきたのは、身長80センチくらいのこびと。
人々は「いたずらこびと」だとパニックに。

ところが小学生の「だいちゃん」は、派手ないたずらをしてはこびとのせいに。
いたずらで町中の大騒ぎになり、自分たちのせいにされたこびとは怒りのメッセージを送り、「ほんとうのいたずらをみせる」と宣言。

国中が注目する中、こびとのいたずらは…。