日本共産党 田村智子
コラム

【08.08.27】在宅看護の現場を垣間見て

福生市の民間事業所を訪ねました

 
夕方、福生市の住宅街には何台もお年寄りを乗せた車が行き交いました。
ちょうど、デイサービスの終了時間の時刻。
小型マイクロバス、ワンボックスカー、乗用車…。
在宅で介護サービスを利用している方が大勢いらっしゃることが実感できます。

その住宅街の一角、住宅をそのまま利用した訪問介護サービスの事業所がありました。
リビングルームだったと思われる1室で、この住宅の持ち主でもあるケアーマネージャーの林さんからお話を伺いました。

ヘルパーさんは、常勤で15人。
力のいる仕事なので男女半々の構成だとか。
常勤で給料やボーナスを保障していることもあり、途中でやめてしまう方は少ないとか。

けれどこの体制で事業所を運営していくことは、本当に困難だとわかりました。
光熱費や施設に関わる経費は、個人のお宅ということで、事業所の経費には計上しない。
突然の利用者さんからの連絡には、手弁当でかけつけることもあるそうです。

住宅地ですから、利用者さんの家を移動するのに時間もかかります。
移動時間は「介護時間」とみなされないため、国からの補助はゼロ。
書類作成、申し送りなども同じです。
介護保険制度の大きな矛盾点です。

「これだけは解決してほしい、と思うことは?」と尋ねると、
「厚生労働省の考え方を変えてほしい」と即答。
「とにかく現場を見てほしい。あまりにも制度の不備、欠陥が多すぎる」とのこと。

なかでも強調されたのは、利用者さんが病院に通院するときの対応です。
自宅から病院の玄関まで付き添うのが介護保険、
病院内のことは医療保険制度なので、ヘルパーは手を出すな、もし付き添うのならば介護保険制度外のサービスとして、利用者さんから費用を徴収するように――これが厚生労働省の見解です。

「玄関にお年寄りを置き去りにしろということ。そんなことして事故があったら責任が問われてしまう」
実際、林さんは、市・病院の担当者、そして警察署に問い合わせをしたそうです。
市の担当者は、福生市立の病院でさえ「病院内で対応する体制はない」「事故があったときに責任を問わないという書類を出すわけにはいかない」といい、
警察では、「放置することで危険が予測できる場合、お年寄りを放置すれば、遺棄したとみなさざるをえない」と言われたそうです。

この問題は、私たちも何度も厚生労働省に直接ただしてきましたが、現場から乖離した見解をまったく変えようとしないのです。
「現場を見てほしい」と切望する気持ちがよくわかります。

そのほかにも、制度上の不備をたくさん指摘されました。
聞けば聞くほどため息が出てきます。

介護保険制度は一体だれのためのものなのか、善意の人の自己犠牲なしには通用しないようなそんな実態を政府はどう考えるのか、
私も国会で追及したくてたまらない気持ちです。

でも、働く方々は懸命に誠実に、働く喜びをもって生きているのです。
「ありがとう、と言ってもらえるときが一番嬉しい」
人とつながり、支えあって生きていく、そのことが人間の根本的な喜びだからこそ、
つらい現実を乗り越えるエネルギーがわいてくるのでしょう。

その気持ちに正面からこたえるよう、介護保険制度の本格的な見直しをさせなければなりません。
(この視察は、比例東京ブロックの谷川智行さん、地元の奥富喜一市議、東京25区予定候補の鈴木おさむさんと一緒に行ないました。)