日本共産党 田村智子
コラム

【08.05.17】文京区の地場産業

印刷・製本の町を歩いて実態調査

 
カタン、カタン・・・と建物の中から機械の動く音。
文京区の後楽園のすぐちかく、小石川周辺で印刷・製本・紙工・折りなど工場を訪ねて、仕事の現状や要望などを調査しました。

党文京区議団あげての調査、地元の小竹ひろ子都議、小選挙区予定候補の中島つかねさんも一緒です。
文京区の地場産業といえば、本を作る過程のすべての産業、といえるほど、
いろんな業種の小さな工場が軒を連ねていたそうです。

しかし、大きな会社が都心から郊外に移転したり、出版不況の影響を受けて、くしの歯が抜けるように工場がなくなっているのです。
文京から地場産業がなくなっていいのか、
住民からの騒音への苦情、という問題も起きているのでは、などなど、
まず、現場を調べてみようという行動です。

2〜3人一組で6チーム、2時間ほどの聞き取りで、40軒ほどの工場でお話を聞くことができました。

私がまず驚いたのは、技術の高さ。
紙を折る、という工程を担当する工場。機械を調整することで一回の折作業で、小さな紙が4つ折りになって出てくるのです。
複雑な折も、1回の折作業しかやらないというのですから、
これは、もう職人と言うか、図形の解析の学者というか、とにかくすごい!!

一流の技術をもつ工場でも、外から従業員を雇うことができなくなって、家族が総出で働くことに。
「単価はあがるどころか下がっていく、1枚何銭の仕事だからね」

宮内庁の仕事をしている、という活版印刷の方。
「もう今年で仕事をやめる。子どもは別のところで働いているから、この仕事自体がおしまい」
活字をくみあわせての印刷は、コンピューターの普及で、どれだけ残っているか。

「印刷したものをぜひ見せていただきたいのですが」とお願いしてみると、
これまで印刷してきた、招待状などの束を、棚の上から下ろしてくださいました。
インクのにじみ具合がなんともいえず、丁寧な仕事、ということが素人にもわかります。
お話を聞いているあいだ、機械が並ぶ薄暗い部屋で、猫の目だけが光っていました。

印刷の関係では、紙の驚くような値上げ、インクや溶剤・フィルム類の値上げが、ますます経営を追い詰めています。
単価を上げることもできず、赤字をかぶらなければいけないのか、それくらいならもう仕事をやめてしまおうか、そんな声がどこでも聞かれたようです。

土曜日の午後、「少し前まで、こんなに町が静かだったことはない」と、地元のまんだち区議と小竹都議。
「ここもしまっている」「ここもやっていないね」
そんな工場がいくつもあったのです。

文京に工場は必要ないのか、紙文化、出版文化を生み出してきた町として、地場産業をどう考えるのか。
誇りをもち、確かな技術をもって、この町で働いてきた方々の声にしっかりと耳を傾けようと思います。