日本共産党 田村智子
コラム

【08.07.06】高齢者に引越しを強要するのか

高幡台団地のみなさんと懇談

蒸し暑さがました午後、日野市の公団住宅街、高幡台団地にうかがいました。
都市整備機構(UR)が、「耐震強度不足だから除却(取り壊しのこと)します」と住民に突然通告したことでマスコミの取材も集中している団地です。

5階建てエレベーターなし、という、住宅が建ち並ぶなかで、
焦点となっている棟は、もっとも規模が大きくエレベーターもあり、1階は商店や診療所が入っています。
1970年に入居開始。多くの世帯が高齢者のみなさんです。

耐震性に問題がある建物は、なんとかしなければならない、
大きな地震が相次いでいるため、住民のみなさんも不安は強いでしょう。
しかし「だから取り壊す」とは、あまりに突然、あまりに強引なやり方。
そこに多くの方々が、疑問と怒りの声をあげるのは当然です。

住民のみなさんからお話を伺う前に、問題となっている73号棟の1階部分を、住民のみなさんに案内していただいて視察しました。

「耐震補強を部分的に行なっているのです」と指差されたところは、通路の入り口。
鉄枠をはめこみ、少し装飾を加えた入り口になっています。
内部の壁も一部つけたしてあり、さらに見上げると、廊下部分にもあとから杭のようなものを補強していることがわかります。

どうして耐震補強をしたのか? 耐震診断はいつ行なったのか?
「URに資料を出させて確認したら2000年ということです」と日野市議の大高哲史さん(35歳)。

ところが耐震診断の説明が文書で配布されたのは、2006年4月。
しかもそのときには「耐震補強等を行なう」との説明。
その「等」に「除却」の意味があった、などという説明を誰が信用できるでしょう。

日本共産党として話を聞かせてほしい、と住民のみなさんにお願いしての懇談。
この間、URからの聞き取りを繰り返してきた笠井亮衆院議員があいさつをしてスタート。

「除却」の説明が、住民のみなさんに大きな心労となっていることがわかります。
なぜ改修ではだめなのか、転居しないですむ方法はないのか。
「転居したくない」と言っていても、結局は引越しせざるをえないのか。
やり場のない怒り、不安。

みなさんの声を聞いていて、URとともに「構造改革」を押し付けた政治への怒りがむくむくとこみあげてきました。

私も笠井さんと一緒に、URや国土交通省に何度か説明を受けた経緯があります。
「規制改革」の名の下に、国会で議論もせず、公団住宅縮小(本当は完全に民営化したい)方針が押し付けられる、そのなかでおきている問題に思えて仕方ありません。

笠井さんは冒頭で、孤独死したお年寄りからURが家賃を取り続けていたことを報じる「毎日新聞」を紹介していました。
住民をなんだと思っているのか、人間として尊重するという当たり前の姿勢さえ感じられない対応。

出口がどうなるかはわかりません。
けれど、「引越ししなければならない理由は、住民のみなさんの側にはない」「責任はURにある。対応策を考えるべきはUR」、私も思わず力を入れて発言してしまいました。

この間、公営住宅の問題、若者の住宅支援など、
住宅政策を考える機会が多々ありました。
土地活用だとか、有効利用ばかり優先させてきた政策は、もう限界に来ています。
「住まいは人権」を貫いた住宅政策を、みなさんと一緒につくっていく時です。