【14.05.13】内閣委員会 NIH法案について
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
健康・医療戦略推進法案及び日本医療研究開発機構法案は、昨年閣議決定された日本再興戦略の具体化とされています。この日本再興戦略では、戦略市場創造プランに医療分野を位置付けて、「我が国発の優れた革新的医療技術の核となる医薬品・医療機器・再生医療製品等を世界に先駆けて開発し、素早い承認を経て導入し、同時に世界に輸出することで、日本の革新的医療技術の更なる発展につながる好循環が形成されている社会を目指す。」とあります。
これの具体化ということは、本法案は、医薬、医療機器産業を輸出産業として振興していくためにも医学などのライフサイエンス分野の研究費を実用化につながるものに重点化するためというものになるのではないでしょうか。
○政府参考人(中垣英明君) この健康・医療戦略推進法案におきましては、まず一つには、国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会を形成するため、医療分野の研究開発を戦略的に推進し、世界最高水準の医療を実現していくということと、もう一つ、健康・医療分野については世界的にも今後の成長が大いに見込まれており、我が国としても健康・医療に関わる産業を戦略産業として育成していくことが重要であるというこの認識の下に、その戦略的な推進に必要な体制を整備するべく提出させていただいたところでございます。
本法案によりまして内閣に設置される健康・医療戦略推進本部は、医療分野研究開発推進計画を策定し、おおむね五年間の計画として再生医療やがんといった重点的、戦略的に推進すべき領域などを定めることとしておりますけれども、その際には、学識経験者などの専門家を始めとして、関係各層から幅広く意見を伺った上で決定していくことになるところでございます。
また、医療分野の研究開発の推進につきましては、健康・医療戦略推進法第十条の基本的施策におきまして規定するように、世界最高水準の医療の提供に必要な医療分野の研究開発を推進いたしまして、その成果を国民、患者に届けるために実施するというものでございます。
○田村智子君 衆議院の審議の中でも、今私たちの国は輸入超過であると、もっと輸出しなくちゃいけないという議論が大分行われていたようです。
推進法案の二条、基本理念には、基礎から実用化までの一貫した研究開発の推進とその成果の実用化、健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出及びその海外における展開の促進その他の活性化を目指すとあります。これ、実用化、産業化ということが大変に強調されているわけです。
推進本部はこの基本理念を具体化をして先ほど御説明のあった医療分野研究開発推進計画を作成する、国立の研究所や独法の研究所での研究についてその方向性を決める、また、新たに設置される機構はこの計画に基づいて大学や研究機関に対して研究費の配分を行うということになります。
これ、極論をすれば、市場にとって魅力的な売れる薬、産業力の強い薬、そういう薬や医療機器ですね、その技術開発を目標に置かなければ研究費の配分が受けにくくなるということにつながっていかないか、官房長官に見解をお聞きします。
○国務大臣(菅義偉君) 今の委員からの指摘は、私は必ずしも当たらないというふうに思っています。それは、今度のこの法案は、まさに多くの国民の皆さんが健康で長生きをすることのできる社会をつくる、そして世界最高水準の医療体制をつくるということ、そこが今の委員の御指摘の中で欠けていたというふうに思っています。もちろん医薬品や医療機器の技術もこれはこの中に入っていますけれども、まず何といっても国民の皆さんの健康で長生きをつくる社会のためにこの法案が、そういう趣旨があるということをまず御理解をいただきたいというふうに思います。
そして、この法案におきましては、総理を本部長とする推進本部、そこにおいて、関係各層から幅広く意見を伺った上で、平成二十六年度、機構の設立に先立って九つのプロジェクトチーム、プロジェクトを立ち上げています。その中に、患者数の少ない難病の克服プロジェクト、こうしたことも位置付けをいたしておりますので、こうしたことを見ていただければ、売上げの観点で重点領域が決定されるようなことはないということを私ははっきり申し上げたいと思います。
○田村智子君 これは私が危惧しているだけではなくて、日本再興戦略が応用及び実用化を重視する日本版NIH構想を打ち出した際に、日本生化学学会などライフサイエンス関係の学会から基礎的研究費が大幅に減るのではないかという危惧の声を上げていたわけです。こうした声を受けて、文科省所管の科研費は機構には吸収されなかったと。それ以外の厚生労働科研費などライフサイエンス関係の競争的研究費は機構が配分するということになりました。
ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進博士は、文科省の科研費が二〇一四年度予算では機構の枠組みには移らないということを承知の上で、次のように述べられているんです。今後も科研費がなくなるようなことがあってはならないと思うから声を大にして問題だと言っている、ライフサイエンス分野では重要な医療や薬の基は非常に基礎的な研究だと。これは、利根川博士のこういう見解は杞憂とは言えない指摘だと私は思うんです。
国策として実用化、産業化を重視する、もう一方で国の財政難ということも非常に強調されている。そうすると、結果として、文科省の科研費など基礎的研究分野の予算が今後じりじりと減らされていくということにならないのかどうか、これも官房長官にお聞きします。
○国務大臣(菅義偉君) 基礎研究というのは、人類の新たな知の資産を創出するとともに、世界共通の課題を克服する鍵となるものであって、科学技術イノベーション総合戦略において、大学あるいは研究機関において独創的で多様な世界トップレベルの基礎研究を推進の国として一層強化をすることが必要であると、そういうふうに位置付けるなど、基礎研究の推進というのは図ることにいたしております。こうした点も踏まえまして、今御指摘をいただきました科学研究費補助事業については、平成二十六年度助成額でほぼ前年と同水準の二千三百億円を確保をいたしております。
政府としても、今後、中長期的な観点に立って、優れた基礎研究の推進、ここに努めてまいりたいと思います。
○田村智子君 衆議院の議論では、機構の成否はプログラムディレクターに懸かっているなど、研究についての目利きが重要だということも大変に強調されていました。研究が実用化につながるかどうかを見極めるということに重きが置かれた議論だと思います。
利根川博士は、トップダウンで研究の方向が決められて予算配分されることについて、アメリカのプロジェクトは研究の方向性だけを示して具体的なテーマは大学などから募集する、トップダウンでこれをやるんだというふうに決めるのは違うという指摘もされています。
説明のとおり、研究の実用化ということに弱点があって強化が必要だということは私も否定しません。そこが弱点と言うならば、その弱い部分について別組みの予算を付ければいい、別の体制を取ればいいというふうに思うんです。現行の予算の枠はそのままにする、そして実用化重視だと変えてしまう、日本の基礎的研究の強みが逆に失われていくことになるんじゃないだろうかと。文科省の科研費以外の競争的資金が機構に集約をされていく、トップダウンで研究が実用化、産業化に駆り立てられていく、そうすると自由な発想での基礎的研究というのがやりにくくなるということはないんでしょうか。官房長官、お願いします。
○国務大臣(菅義偉君) 今回の法案で、日本医療研究開発機構が集約をして配分する予算というのが、国が定めた戦略に基づくトップダウンの研究を行うために、研究者や研究機関に分配、配分される研究費等に係るものであります。
一方、将来における学術的な新知見やイノベーションの芽を絶え間なく育んでいくためには、研究者の自由な発想に基づくボトムアップ型の基礎研究、その重要性というのは理解をいたしております。
こうした観点から、文部科学省の科学研究費助成事業という従来の仕組みは維持をして、必要な予算の確保も図っているところでありますから、御懸念は当たらないというふうに思います。
○田村智子君 今の厚労省の科研費も基礎的研究というのは行われていたはずですから、そこが集約されていくのですから、これは、やはりこういう杞憂というのは、声が上がるのは当然だというふうに思うんです。
利根川博士は免疫学の権威であられて、御自分のこの研究ががんや関節リウマチの薬につながっていった、これ見ておられます。でも、利根川博士自身が、がんや関節リウマチの薬になるんだと分かって免疫学の研究をやっていたわけではないわけですよね。
安倍総理も、そういう日本の医療分野の研究については、基礎的分野の強みということがあるということを強調されておられました。ところが、これからは、今度、トランスレーショナルリサーチ、実用化への橋渡しということも、これは研究者に求められていくことになるわけですね。
利根川博士が指摘されておられることは、政府が研究投資の見返りを求めるのならば、基礎研究をする大学や研究機関にそうした実用化への橋渡しをやれと言うべきではないと、これ役割が違うという指摘なんですよ。研究の成果がどのように実用化につながるのか。それは基礎研究とは別の分野で進めるべきであって、より産業の側の役割だという指摘で、これは大変うなずける指摘だと私は思います。
予算の拡充をして、実用化への橋渡しを担う体制というのも、新たにつくるということだったらまだ分かります、そこが弱いんだから新たにつくるんだ。ところが、基礎的研究をも巻き込んで現行水準の予算のまま応用、実用化、産業化という評価軸でその研究費の予算を割り振ってしまう、こういうことになると、これまでの強みと言われてきた大学や研究機関での基礎的研究が弱体化していくんじゃないか。私は、この指摘というのは決して当たらないなんていう簡単な言葉では済まされないものだと思います。
もう一度、官房長官、お願いします。
○国務大臣(菅義偉君) 利根川博士のあの研究開発は、残念ながら我が国では実用化することができなかったんです。我が国においてそうした体制ができていないということも、これは事実じゃないでしょうか。
そういう中で、今回のこの法案というのは、まさに基礎研究から実用化までシームレスに行うことができる、そうしたことを目指しての法案であるということも御理解をいただきたいと思います。
また、我が国では、この医療分野の研究開発については、基礎研究においては世界的に優れた成果が出ているものの、そのものが実用化されていないと、そういう反省の上に立って今取り組んでいるところであります。
このために、基礎研究は大学、実用化は産業界と、こういった役割を固定化するだけでなくて、関係者が協力をして、基礎からまさに実用化までの切れ目のない研究を行っていくと、このことが極めて重要だというふうに思っています。こうした状況の中に、医療分野の研究開発を政府が一体として進めるために司令塔としてのこの本部を設置をし、その本部の戦略に基づいて基礎から実用化までの切れ目のない研究管理の実務を担う独立行政法人を今回は設立させようということであります。
この新たな体制によって、研究成果をいち早く実用化をし、世界最高水準の医療の提供につなげるとともに、同時に、この医薬品、医療機器の関連産業の国際競争力の強化、これにつなげていきたい、そうした趣旨であります。
○田村智子君 その利根川博士自身がこのような政府のやり方に対して異論を唱えているということは、これは重く受け止めるべきですし、基礎的研究を出口で縛るべきではないということは強く申し上げておきたいと思います。
次に、日本再興戦略は、医療関連産業の活性化のために、医療分野の研究開発の司令塔の創設とともに医薬品・医療機器開発、再生医療研究を加速させる規制・制度改革、医療の国際展開を掲げ、医療の産業化、国際展開のための施策として先進医療の拡大を挙げています。この規制緩和の問題について取り上げます。
産業競争力会議の分科会でも、中長期的な成長を実現するための課題として先進医療など保険外併用療養制度の拡大が議論されています。さらに、経済財政諮問会議で、安倍総理自らが保険外併用療養費制度の仕組みを大きく変えるための制度改革について関係大臣で協力して案をまとめるよう指示を出されました。
これらは、成長戦略のためにも保険外併用療養制度の仕組みを大きく変えていこうということではないでしょうか。小泉政務官、お願いします。
○大臣政務官(小泉進次郎君) 田村先生御指摘のとおり、これは四月に総理からも指示がありまして、今関係大臣等で検討を深めているところであります。
この選択療養、これ、仮の名前でありますけれども、そういった中で、まず原則としてしっかり国民皆保険制度の理念を踏まえた上で検討を進めております。その中で大事なことは、困難な病気に打ちかつために頑張っている、そういった患者さんが今の制度の中で十分な選択肢を与えられないような、そういった環境を変えていかなければいけないと、そういった発想の下、不安になるような、安心、安全、これはしっかりと配慮した上での制度をつくることができないか、鋭意検討を深めている段階であります。
○田村智子君 この保険外併用療養制度については政府内で議論が行われていて、規制改革会議が選択療養という制度を提案されました。今御説明があったとおりです。これは、医師と患者が合意をすれば保険外の治療を保険医療とともに受けられるようにしようというもので、混合診療の全面解禁につながるとしてマスコミでも大きく取り上げられています。
安倍総理はこの指示を出すときに、今お話があったとおり、困難な病気と闘う患者さんが未承認の医薬品等を迅速に使用できるようにというふうに述べられていた。これは私も拝見いたしました。しかし、昨年七月、政府の規制改革プログラムに先進医療の対象範囲を大幅に拡大する方針が盛り込まれたことに対して、日本難病・疾病団体協議会は、混合診療のなし崩し的な解禁に反対するという声明を発表しています。
今回の選択療養についても、患者の選択による自由診療が公認されることになり、事実上の混合診療解禁となると指摘をして、改めて選択療養制度には反対であるという声明を出されておられるわけです。原因も分からない、治療法も分からないと、本当に困難な難病と闘っておられる患者の皆さんの団体が、これは強い懸念と反対の声を上げているということです。
私はこういう声しか聞いていないんですけれども、政府の下にはこれとは別に、難病やがんなどの患者団体から、選択療養やってくれと、導入に賛成という声が寄せられているということなんでしょうか。
○政府参考人(滝本純生君) お答え申し上げます。
団体や組織から選択療養に賛成する趣旨の具体的な要望等は届いておりません。ただ、規制改革会議の岡議長がいつも申しておるんですが、自分の周りの方で、保険外できないから別の病院に出ていってくれというようなことを言われて非常に困惑したというような周りの方の意見があったというようなことは度々言われているところでございます。
それからまた、現行の評価療養では評価の対象となる患者の条件に該当しない場合に治療を諦めるケースがあるとか、あるいは手術なども含めて一連の診療全てに保険が適用されなくなって患者に高額な負担を求められるケースがあるとか、あるいは患者が希望する保険外の治療を行うためには別の医療機関に受診してもらわざるを得ないとか、そういったことは一般的にも聞かれますし、先般の規制改革会議でもお医者さんの委員の方からそういった趣旨のお話もございました。
○田村智子君 様々な難病患者の皆さんの要望をまとめている団体からはそんな声は上がっていないということなんですよ。当事者は、保険外併用療養制度の抜本的な見直しや選択療養には強く反対をしている、これが事実です。そうすると、これは誰のための見直しということになるんでしょうか。稲田大臣、お願いします。
○国務大臣(稲田朋美君) まず、規制改革会議が提案いたしておりますこの選択療養、呼び名は仮の名でございますけれども、これは患者と医師が同意をすれば何でも認める、混合診療の全面解禁というものではなくて、国民皆保険制度の維持を前提に現行の保険外併用療養制度の枠の中で保険診療に係る経済的負担が治療の妨げにならない環境を育てようとする、整えようとする改革案でございます。
主に想定しておりますのは、現行の評価療養に該当しない限り、治療中の病院では保険外診療を拒否されることがある、また手術なども含めて一連の診療全てに保険が適用されなくなり、高額な負担が必要になるケースがある、それを回避して希望する治療を受けるには別の医療機関を受診しなければならない、それができない場合にはその治療全体を諦めざるを得ないという、そういう患者にとって気の毒な状況を打開しようというものであります。
また、評価療養は、国があらかじめ対象を定めて保険導入のための評価を行う制度であるため、医療機関の主導による試験を主眼としております。同制度については、将来、多くの患者に一般的に使われるために重要な仕組みではありますが、評価の対象となる患者の条件に該当しない場合があるなど、必ずしも個々の患者の希望に迅速に応えられていないケースがあるということでございます。このため、患者起点で対象を個別に決める、治療を主眼とする新たな選択療養制度を提案している次第でございます。
○田村智子君 こういうのの具体的な例として、稲田大臣は規制改革会議の公開ディスカッションで、抗がん治療であるカフェイン併用化学療法は市場性がないために薬事承認が期待できないとして、こういう事例こそずっと併用して保険適用の分と自由診療の分と混合でずっと認めていいんじゃないかという発言をされました。
厚生労働省にお聞きします。先進医療として行われていたカフェイン併用療法は今どうなっていますか。
○政府参考人(神田裕二君) 御指摘のカフェイン併用療法につきましては、金沢大学の附属病院から本年四月二十二日に、附属病院に設けられた倫理審査委員会の承認を得た試験期間が終了した後も新規の患者の治療を実施していたこと、患者が死亡した際にインシデントレポート以外に必要とされる報告が病院長になされていなかったことなどの公表があったところでございます。
先進医療につきましては、臨床研究計画書に記載された試験期間で実施をし、重篤な有害事象が発生したときには直ちにその旨を臨床研究機関の長に通知しなければならないというふうにされているところでございます。
現在、附属病院におきまして外部の有識者が参画をしました調査委員会によって事実関係の究明等が行われているところであるというふうに承知をいたしております。
○田村智子君 稲田大臣がディスカッションでずっと保険と保険外の医療の併用を認めてよいのではないかと、こう言っていたカフェイン併用療法は、実施していた金沢大学において倫理審査委員会に継続の手続を取らず、一年九か月もの間継続実施するという臨床研究倫理指針違反等が明らかになったため、中止という事態になっています。また、死亡例の必要な報告も欠いていたということも今報告があったとおりで、金沢大学の病院長が記者会見で謝罪するという事態になっています。
これ以外にも、倫理指針違反が見付かって中止になったという先進医療があるんですよ。評価療養でもこうした問題が現に起きています。その評価療養より規制を大幅に緩和して、医療機関などの限定もしない、更に迅速な審査で実行するという選択療養で一番問題なのは、患者の安全が保証されるのかということだと思いますが、稲田大臣、どうですか。
○国務大臣(稲田朋美君) 患者の安全というのは大前提でございます。
また、先ほど御答弁いたしましたように、この選択療養は患者と医師が合意さえすれば何でも併用が認められるという制度では全くありません。合理的な根拠が疑わしい医療や患者負担を不当に拡大させる医療は除外する、診療計画にエビデンスを添付して申請し、その安全性、有効性や患者への不利益の有無について医療の専門家による確認がなされるなどの方向で検討しており、患者の安全に配慮したものとなっております。
また、お尋ねの医療機関を限定するかどうかについてでございますが、四月十六日に規制改革会議から出された論点整理において、万一の健康被害への対応、他の医療機関との連携等について診療計画に記載をし申請することといたしております。仮にこの診療計画が適切なものでない場合、そういった場合には、その施設が当該診療の実施に堪え得ないという場合もございます。そういった診療計画の中で診療の施設が診療の実施に堪え得るかどうかの判断がなされるものというふうに認識をいたしております。
いずれにいたしましても、今御指摘の実施医療機関の在り方については、引き続き規制改革会議において議論が深められるものというふうに考えております。
○田村智子君 今でも先進医療Bは、その治療の安全性や有効性、最低限担保するための審査というのは六か月で行っているんですよ。今後、三か月に短くするという方向だというんですよ。それよりも短くして、一体どうやって患者の安全性、あるいは治療の有効性、それ保証することができるんでしょうか。
この選択療養は、実績を積んで評価療養につなげるんだと。評価療養の前段階の制度だという説明もされています。しかし、選択療養は、今のように実施の計画を出せばいいんですよ。しかも、やるに当たっては短期間で結論を出して実施することができると。様々な規制を受けなくて済むということですから、これは提供する側にとっては、評価療養になってもらわない方が使いやすいと、選択療養のままの方がいいということにもなりかねないと思うんです。すると評価療養にもつながらない、保険導入にもつながらない、こういうことが起こり得るんじゃないでしょうか、ずっと選択療養のまま。どうですか、稲田大臣。
○国務大臣(稲田朋美君) 繰り返しになりますけれども、この選択療養においては、患者の安全性ということを大前提に、合理的な根拠が疑わしい医療や患者負担を不当に拡大させる医療は除外する、また安全性、有効性や患者への不利益の有無について医療の専門家による確認がなされる、診療計画に記載された内容について、その施設が当該診療の実施に堪え得るかどうかの判断がされるなど、きちんと安全性については確認することにいたしております。そうした大前提を基に、現在の評価療養では必ずしも対応できない困難な病気と闘う患者の個別のニーズにできるだけ短期間で応えられる枠組みとして提案をしております。
また、評価療養に値すると期待できる安全で有効な実績が集まれば評価療養につながるようにする方向で検討がなされているところでございます。評価療養に値すると期待されるものは評価療養につながるわけでありますので、安全で有効な医療が保険外にどんどんとたまっていく、保険外併用のままずっと行くということは想定はしておりません。
○田村智子君 これ、安全で有効であることを実験するかのようにも聞こえるわけですよ。私、とんでもないことだと思います。
患者と医師というのは、対等な立場で治療について話し合うということは相当に困難なんです。これは選択療養は医師と患者の合意によって行われると。何が有効な治療か分からないまま、医者の勧めに従うしかないということが広がりかねない。だから難病団体は、そういうことで薬の犠牲になった患者さんが現にこれまでも歴史的にあると、だから反対だということを言っているわけです。
同時に、難病の団体の皆さんが反対しているもう一つの理由は、これでは保険外診療の部分が広がっていってしまって、経済的負担から必要な治療が受けられなくなるんじゃないかと、このことが危惧されるからです。
例えば、クリオピリン関連周期性症候群に対する画期的な治療薬というのがあるんですね。イラリスというものなんですが、これ、一瓶百四十四万円で、保険収載されるときの資料を見ると、年間の薬価負担というのは一千六百万円にもなっていたんです。当然、お金のある方しか使えないという状態だった。
抗がん剤などの実証研究で、全額自費と保険外併用の場合というのを比べてみると、結局、保険外部分の費用負担が大きいので、そんなに負担というのは差が出なくなっちゃっているんです、全額負担の場合と。保険収載がされなければ、皆保険が前提だといっても、そんなの名ばかりになってしまう。
私、もう一つ危惧しているのは、規制改革会議の提案では、こういう費用の問題というのは当然触れられていないんです。費用の問題、何にもない。その一方で、今、民間の保険会社というのは、自費診療部分、先進医療の部分を全額カバーする現物給付型の医療保険というのを既に提供を始めています。そうなると、選択療養の自費部分というのは民間保険が担うようになって、これ命の格差、そういう保険に入れる人は選択療養を受けられるかもしれない。
また、保険会社と病院との関係でいえば、自分のところの保険サービスはこの選択療養のサービスが受けられますよと、まさに入った保険によって受けられる治療が決まるアメリカ型の医療ということがこれどんどん拡大されるという危惧があると思うんです。
命の格差が経済的な格差とつながっていく、こういうことになりませんか、稲田大臣。
○国務大臣(稲田朋美君) 日本の国民皆保険制度、どんな人でもどこへ行っても同じ治療が受けられるというこの国民皆保険制度は、世界に誇るべき制度として堅持をしなければならないと思います。
一方で、この規制改革会議が提案しております選択医療は、患者の安全性を前提にした上で、でも評価療養では救われない困難な病気と闘っている患者に選択的に道を開くものであります。そして、評価療養に値すると期待されるものは評価療養につながる方向で議論をしておりまして、安全で有効な医療が保険外にどんどんたまっていくという状況は全く想定はいたしておりません。
したがいまして、保険外診療の部分を民間保険会社がどんどんやって、そして御懸念のような患者負担がどんどん膨らんで格差が広がるということはならない、そのような方向で検討しているところでございます。
○田村智子君 この日本再興戦略の方向というのは、本当に患者置き去り、あるいは基礎研究置き去りということになりかねない。これは見直しを求めて、質問を終わります。