日本共産党 田村智子
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【14.05.13】文教科学委員会 私立高校の就学支援金について 特別支援学校の医療的ケアについて

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 私立高校の学費負担について質問いたします。
 今年度の新入生から、低所得者世帯の高校生には就学支援金が増額されることとなりました。ところが、保護者の学費負担は支援金の増額分が反映していないという指摘があります。全国私学助成をすすめる会と全国私立学校教職員組合が共同で調査を行い、四月十八日その結果を記者会見されています。資料でもお配りをいたしました。
 国の施策の拡充を受けて新たに低所得層への支援を拡充した県等がある一方で、独自の補助制度を廃止又は減額した都道府県が多数に上ることが分かりました。県の単独補助、減免制度を削減したために、年収三百五十万円未満の世帯の学費負担が変わらないということが明らかになったのは、これ調査の結果だけでも十五道府県に及びます。
 こうした問題については、就学支援金の法案審議の際にも指摘がされ、また四月の本委員会でも民主党議員から指摘がされていました。
 文科省はこうした実態を把握されておられますか。

○政府参考人(前川喜平君) 平成二十六年度の入学生から私立高校等の就学支援金の加算が拡充されることを踏まえまして、文部科学省におきましては、各都道府県が授業料減免事業等をどのように見直しているのか実態を把握するため、この四月七日に調査を依頼しているところでございます。現在、回答を回収しているところでございまして、その結果につきましては、まとまり次第公表したいと考えております。

○田村智子君 調査の結果を見ますと、岩手県、沖縄県では県の減免制度を新入生から廃止をしています。今新入生ですけど、来年は一、二年生、その次は三年生、このままでは二年後に全面的な廃止になってしまうんじゃないかということが危惧されるわけです。
 また、都道府県の私立高校生に対する減免制度の予算、それを見ると、三十二道府県が結果として減額になっている。削減幅が大きい順に、山梨、沖縄、栃木、茨城、福島、愛媛、秋田、熊本、これ、二割以上の予算の減額ということになっています。
 大臣、こうした実態をどのようにお考えになりますか。

○国務大臣(下村博文君) 高校無償化制度の見直しによりまして、本年四月に入学する生徒から就学支援金の加算が拡充されたことを踏まえまして、これまで都道府県において授業料減免に充てていた財源は、低所得者層への更なる支援や中間所得層の支援に充て、家庭の教育費負担の軽減を図っていただきたいというのは当然の考えであります。
 このため、昨年十二月と本年三月に、都道府県に対し、現在実施されている高等学校の生徒等への経済的負担の軽減や教育条件の維持向上に係る事業等を拡充するなど、支援の充実に引き続き努めていただきたい旨要請をいたしました。
 御指摘のこの調査は、全国私教連が各都道府県ホームページの情報、聞き取りに基づいてまとめたものと承知しておりますが、先ほど局長から答弁をさせていただきましたように、文部科学省としても、結果取りまとめ次第公表したいと考えております。

○田村智子君 この低所得者層への就学支援金の拡充は、高校授業料無償化を廃止し、公立のですね、公私立高校とも就学支援金の支給に所得制限を設けるということと言わば引換えに行われたものです。
 それだけに、本委員会の附帯決議には次のような内容が盛り込まれました。「所得制限の導入により捻出される財源については、公私間格差の縮減や、奨学のための給付金の創設など教育費負担軽減施策に確実に用いること。そのために、平成二十六年度予算はもとより、今後の予算編成を通じて最大限の努力を行うとともに、その財源が地方公共団体によって確実かつ継続的に就学支援の拡充のために使われるよう、強く要請し、毎年その状況について調査・確認を行うこと。」と。
 先ほど大臣が答弁されましたように、実態把握を行って公表すると、これ大切だと思うんですけれども、私は、それにとどまらず、就学支援、減免制度、この制度を後退させた都道府県については、国の施策の趣旨を徹底をして、補正予算を組むなどして今年度中にも授業料の負担の軽減が実態として図られるよう、これ強く要請を行うべきだと思いますが、大臣いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) 今回の高校無償化制度の見直しは、低所得者支援を充実し、実質的な教育機会の均等を図るものでありまして、都道府県でもこの趣旨を踏まえて家庭の教育費負担の軽減を図っていただきたいと考えております。ただし、授業料減免制度については既に充実した支援を行っている都道府県もあり、今回の見直しに当たっては、授業料減免制度の充実だけでなく、その他の経済的負担の軽減策等についても併せて考慮しなければならないとも考えております。
 いずれにしても、今回の調査結果を公表するとともに、必要に応じて都道府県に対して支援の更なる充実について要請してまいりたいと考えております。

○田村智子君 是非、強く要請をお願いしたいと思います。年収が二百五十万円未満の世帯で保護者の負担変わっていないなんという現状が現にありますので、是非お願いしたいと思います。
 今回の国の就学支援金は、生活保護世帯及び年収二百五十万円未満の世帯については年二十九万七千円としています。ところが、授業料がこれよりも低いと授業料相当分のみとなってしまいます。一方で、施設整備費の負担は軽減がされません。この調査によりますと、十四県で私立学校の授業料の平均額が二十九万七千円に達していないということから、相当数の低所得者世帯が国の就学支援金の基準額に届かずに学費負担をしているということが推測をされます。保護者や私学関係者からは、施設整備費も対象とした学費補助制度とするよう繰り返し要望が寄せられています。
 就学支援金制度の補助対象を授業料だけではなく施設整備費を含めた学費として、少なくとも年収二百五十万円未満の世帯が、二十九万七千円はこれ学費として超えているんだったら、その二十九万七千円が受け取れるように、その分が減額されるようにというような施策の拡充が図られるべきだと思うんですが、大臣、検討をお願いしたいんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 今回の就学支援金は授業料に着目した視点での、今までの年収二百五十万以下の私立学校等における就学支援金加算を二倍から二・五倍にして、御指摘のように二十九万七千円にしたという経緯がございます。
 私立学校における授業料以外の教育費については、国として平成二十六年四月以降に入学した低所得世帯に対する授業料以外の支援として、これと別に、御承知のことだと思いますが、返済不要の奨学のための給付金制度を創設をいたしました。これで該当させるということで、施設整備についてもここでフォローするということでありますが、今までもこの教育研究活動等の基盤となる施設設備費の整備支援は国として行っておりますが、これを更に拡充をしていくことを今後とも国としては検討課題にしていきたいと思います。
 引き続き、全ての意志ある子供たちが家庭の経済状況にかかわらず高等学校における教育を受けることができるよう、私立学校における教育費負担の軽減に努めてまいりたいと思います。

○田村智子君 これ、保護者にとっては、授業料なのか施設整備費なのかは本当関係なく一括で払っているものですから、是非、学費全体の負担軽減が図られるよう、更なる施策の拡充をお願いしたいと思います。
 次に、特別支援学校の医療的ケアの問題についてお聞きします。
 二〇一三年度の文科省調査、特別支援学校における医療的ケアに関する調査結果によりますと、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒数は、訪問教育も含めて全国で七千八百四十二人、この五年間で一千人増加をしておりまして、年々医療的ケアを必要とする生徒児童数が増えていると、この傾向はもう明らかになっています。
 札幌市のある特別支援学校では、保護者の常時付添いを入学要件にしていて、保護者が登校から下校まで学校の中に待機している、こういう状況が開校以来三十数年続いているとお聞きしています。保護者の方は、夜中も喀たん吸引などを必要としますので睡眠も十分ではなくて、ほとんどの方が過労の状態です。また、自分の具合が悪いとか、ほかの家族の介護が必要なときなど、子供さん本人は通学できる状態なのに欠席をさせなければならないという事態です。これは札幌市だけではなくて、愛知や岐阜、宮城県など、各地で日常的に保護者の付添いや学校での待機、これを求めているんだということをお聞きしています。
 文科省は、こうした保護者が付き添わなければならない、こういう実態は把握されておられますか。

○政府参考人(前川喜平君) 保護者の付添いあるいは待機につきましては、学校の実態に応じてそういう事実があるということは承知しております。ただ、それを入学の要件、条件としているような学校がどの程度あるかないかということにつきまして、文部科学省ではその具体的な実態は把握しておりません。
 文部科学省といたしましては、平成二十五年度から特別支援学校への看護師の配置に係る経費の一部を補助する制度を創設したところでございまして、引き続き、医療的ケアを必要とする児童生徒等に対する支援の充実には努めてまいりたいと考えております。

○田村智子君 札幌市の事例では、訪問教育だけだったという子供たちが通学ができるようにということを保護者も要望して、そのために付添いを条件としたという経緯があるということはお聞きしているんです。しかし、それは三十数年前のことで、それから障害者の権利保障というのは大きく前進をしています。昨年の国会では障害者差別解消法が成立をし、障害者権利条約も批准が承認をされました。この条約は既に発効しています。その過程で、障害者への差別的な取扱いを禁止するために合理的配慮をどのように実行するかということが議論の焦点の一つにもなりました。
 中教審でもこのことが議論され、二〇一二年七月の初等中等教育分科会の報告には見解がまとめられています。それによれば、学校における合理的配慮は、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されるものであり、全てが同じように決定されるものではない。例えば、設置者及び学校が、学校における保護者の待機を安易に求めるなど、保護者に過度の対応を求めることは適切ではないと、こう書かれています。医療的ケアが必要な児童生徒の保護者に一律に日常的な付添いを求めるということは、これは合理的な配慮を欠いているというふうに言わなければなりません。
 都道府県教育委員会に合理的配慮というのはどういうことなのかと、この理解の促進を図ることが急務だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 御指摘の合理的配慮は、障害者の権利に関する条約上の定義によれば、障害者が他の者と平等に全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものとされているところであります。
 合理的配慮は、この定義からも明らかのように、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて個別に決定されるものであり、また、学校や設置者に過度の負担等が生じない範囲で求められるものであります。したがって、児童生徒の障害の状態等を踏まえ、設置者や学校が真に必要と判断する場合には保護者の付添いを求めることが常に合理的配慮の欠如に当たるとは言えないと考えます。
 他方、合理的配慮については、可能な限り、設置者、学校と保護者等との関係者間で合意形成を図った上で決定し、双方が納得した上で提供されることが望ましいと考えておりまして、文部科学省もそういう視点から指導してまいりたいと思います。

○田村智子君 そうです、一律ではなく、やっぱり話し合って合意ということが、それが重要だということが法案の審議の中でも繰り返し述べられてきたので、是非これお願いをしたいと思うんです。
 特別支援学校の現場では、子供たちの学習権を保障されるために様々な努力が行われてきました。保護者からの要望もあり、やむにやまれず教員が喀たん吸引なども行ってきて、本来医療行為であるために、厚労省の医政局通知ということでこれ認めてきた経緯があります。これが二〇一二年度からは、社会福祉士及び介護福祉士法の改正があって、研修を受け、一定の条件を満たせば教員が医療的ケアをすることが法律上も認められることとなりました。
 ところが、この法改正が新たな登校制限を生じさせています。
 兵庫県西宮市では、教員が医療的ケアを行うための研修を受けていないため、これまで行っていた喀たん吸引や胃瘻からの栄養剤の注入ができなくなりました。市教育委員会は、これは看護師が行うべきであるというふうにしているんですけれども、実際にはその看護師さんの人数が足りなくて、登校日数の制限とか、新入生には保護者の付添いが登校の条件となっているという実態もあります。また、ほかの学校でも、教員の医療的ケアの研修には一か月を必要とすることから、四月からゴールデンウイーク明けまでの一か月間保護者に付添いを求め、付添いができないのならば学校を休んでくださいというような事例も生じています。
 それから静岡県では、お母さんが共働きで付き添えないので、子供さんが通うデイサービスの看護師さんが、私が付き添いますよというふうに了承してくれた。ところが学校では、外からの看護師さんは駄目よといって認めなかったと、こんな事例も聞いているんですね。大臣、これはやっぱり改めるべきだと思うんです。
 ちょっと具体的な提案も行いたいんですけれども、これはやっぱり、教員の医療的ケアの研修実施、その期間を四月からとやっちゃえば、当然その間教員が学校からいなくなっちゃう。これ前倒しして春休みの期間に行えるようにするとか、こういう工夫ができるというふうに思うんですね。
 また、その研修がどうしても学校の期間に掛かっちゃうということであれば、看護師を派遣することを支援するとか、静岡でお母さんがやったようにデイサービスとの連携をするとか、こういった工夫を国としても具体的な施策として示して、学習権が保障されるようにしてほしいと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 特別支援学校等における医療的ケアの実施に当たっては、看護師等の適切な配置を行った上で、教員等が連携協力して対応することが肝要であると思います。また、学校と保護者との相互の連携協力が不可欠である一方、保護者の待機を安易に求めるなど、保護者に過度の対応を求めることは望ましくないと考えておりまして、先ほどの事例のようなことについては、子供の学習がきちっと確保されるのであれば柔軟に判断してもいいのではないかというふうにも思います。
 文科省としては、平成二十五年度から、新たに特別支援学校への看護師の配置に係る経費の一部を補助する制度を創設し、その充実に取り組んでいるところであります。また、今御指摘ありましたが、各都道府県における研修の実施時期については、教員等による特定行為を年度当初から開始するため、前年度末までに講義等の基本研修を終えるなどの取組を行っている例もございまして、会議等を通じてこれらの周知、情報共有を図ってまいりたいと思います。
 引き続き、医療的ケアを必要とする児童生徒等に対する支援の充実に努めてまいります。

○田村智子君 この医療的ケアは本来は医療行為であって、私はやはり看護師が行うことが望ましいというふうにも思います。
 お話あったとおり、昨年度から看護師配置のための補助事業、国が費用の三分の一を補助すると、これは現場で歓迎されているんですけれども、やはりこれでは足りなくて、多分予算が足りないから、じゃ、教員の人件費を削って看護師配置に充てているというようなところも少なくないわけです。
 冒頭申し上げたとおり、医療的ケアを必要とする児童生徒の数は急増とも言えるぐらい増えているんですね。やっぱり、これに対応して、看護師を義務的経費の中に入れる、定数の中に入れるということも検討必要だと思いますが、最後に大臣の見解をお聞きして、終わりたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) 日常的に医療的ケアを必要とする児童生徒等に対する学校における対応については、医師、看護師その他の医療関係者や保護者等との連携協力の下に体制を整備することが必要であり、設置者が在籍する児童生徒の実情等を踏まえ、必要に応じ看護師の配置等を行っているものと認識はしております。
 しかし、こうした取組を支援するため、文科省として、二十五年度からこの看護師配置に係る経費の一部を補助する制度を創設したところでありますが、十分でないというような今御指摘もございました。引き続き、医療費ケアを必要とする児童生徒等に対する支援の充実、これは国としても図ってまいりたいと思います。

○委員長(丸山和也君) よろしいですか。

○田村智子君 終わります。