【13.06.18】厚生労働委員会 改正労働契約法の問題およびワタミの違法な働かせ方について
○田村智子君
私が危惧をしているのは、今若者の半数が非正規雇用だと。しかも細切れの労働契約、この増大に歯止めが掛かっていないと。これ厚生年金に加入できず、賃金も安いために国民年金保険料が未納だと。こうすると、三十年後、四十年後、多数の無年金者、低年金者が生じてしまうということが今から危惧をされるわけです。
安定した雇用をいかに広げるかということが年金制度に直結する課題だと思いますが、大臣の見解、お伺いします。
○国務大臣(田村憲久君) まず、非正規の雇用の形態で働いておられる皆様方に関しての処遇の改善というものがこれはなされていかなきゃいけないわけでありまして、よく同一価値労働同一賃金というような話がありますけれども、そのような形でしっかりとその労働というものを評価できる社会という、社会環境というものをつくっていかなきゃならぬというふうに思っておりますが、その方々にやはりこの厚生年金、本来これ被用者なのでありますから、そういう意味からすればこの厚生年金等々これ拡大をしていかなきゃならぬということでございまして、昨年法改正をさせていただいて、僅か二十五万人とのお叱りもいただいておりますけれども、とにかく、以前からこの法案を出そうという中において、与野党いろんな御議論をさせていただく中で昨年このような形でスタートをいたしました。
これを更に広げていくかということに関しましては、施行後三年以内に検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるというふうに検討規定が入っておるわけでございますので、やはり拡大をしていくという方向での議論の中でこのような検討規定を入れておりますので、十分に各般の御議論をいただきながらこの被用者年金の適用拡大というものをなしていかなければならないというふうに思っております。
○田村智子君 私、細切れの労働契約でいつ仕事を失うか分からないと、こういう立場で働いている方々への対策って急務だと思っているんです。
ところが、この四月一日に施行された改正労働契約法、これを受けて、五年後の無期転換を嫌って有期契約の契約上限を五年とする動きが広がっているということをこの間、私、取り上げてきました。この国会でも二月二十一日の予算委員会で、大阪大学や神戸大学が非常勤講師や研究者、有期契約の方、これ就業規則を改定して契約上限五年にすると、こうやっているんだということを指摘しまして、文部科学大臣は、一律に契約を終了させられることにならないよう、適切な取扱いを促してまいりたいと、こう答弁をされています。その後、徳島大学や琉球大学では労働組合との協議によって契約更新上限案というのは撤回されたというふうな動きも聞いています。
私、予算委員会では、まず国立大学や研究所で就業規則を改定して契約期間上限設けると、こういう動きがあるかどうか調査することを求めましたけれども、文部科学副大臣、その後の取組というのはいかがでしょうか。
○副大臣(谷川弥一君) 改正労働契約法の規定のうち無期労働契約への転換に関する規定については、大学等の関係者から研究者等の実態に合わない点があるのではないかと指摘されています。このため、文部科学省としては、大学等の関係者から意見を伺いながら、厚生労働省とも連携し、対応方針について検討しています。
○田村智子君 幾つかの大学では聞き取りも行ったということもお聞きをしています。私、文科省が国立大学にどう対応するかということがこれ私立大学にも影響を与えることになるので、静観していては駄目だというふうに思っているんですね。
実は、この四月、早稲田大学では、非常勤講師の有期契約を五年上限とする就業規則の改定が行われました。
まず、一般論としてお聞きしたいんですが、このような就業規則の改定に当たっては、当該労働者の意見を聴くことが必要だと思いますが、労働基準局長、お願いします。
○政府参考人(中野雅之君) 労働基準法におきましては、第九十条で、就業規則を作成又は変更する際に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、過半数組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを使用者に対して義務付けております。
○田村智子君 ところが、早稲田大学では、過半数代表者の選出の通知、これは大学構内の非常勤講師用のボックスに投げ込まれただけなんです。しかも、既に講義は終了して春休み中で、受験期間にも重なったので大学構内に非常勤講師がそもそも入れないと、こういう期間まであったとお聞きをしています。結局、大多数の対象者は何も知らないまま、過半数代表者が選出されたとされて就業規則の改定が行われたと。その結果のみ郵送で通知をされてきた。これは労働基準法違反が相当に疑われるやり方で、今、首都圏大学非常勤講師組合は刑事告発をするという事態にまでなっています。
文科副大臣にお聞きしたいんですけれども、この早稲田大学の事案をまず承知をされているかどうか。そして、労働基準法をないがしろにする手法で法律で定めた無期転換へのその権利を奪うというやり方、これは大学にあるまじきゆゆしき事態だと思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(谷川弥一君) 文部科学省は、学校法人内の就業規則については届出を受ける立場にはなく、必ずしもその内容、手続について詳細を把握していませんが、御指摘の早稲田大学では、非常勤講師等の就業規則を含めた関連規則を制定、改正しており、その内容、手続について労使間の意見の相違があると聞いています。
一般論として、学校法人においても労働関係法令に従うものであり、具体的な就業規則の在り方については、労働関係法令の範囲内で、公教育を行う立場で各学校法人がその実情を見て自主的かつ適切に判断するものと考えています。
○田村智子君 是非そういう立場で今後もよく見て必要な指導を行っていただきたいんですけれども、これは多くの大学、特に私立大学などでは、もう半分というより三分の二ぐらいが恐らく非常勤の教職員で占められているだろうというふうに思うわけですね。まさに大学の教育、研究を中心的に担っているというような役割を現に果たしていると思います。
ところが、その待遇というのは、例えば二十年同じ大学で語学講義をしているという方、年収五百万円ほどで、子供の教育費のために日曜日に倉庫でアルバイトしなければならないなど、非常に深刻な実態があります。これで高等教育の充実がどうして図れるのかという事態であって、まずは無期転換をして雇用の安定を図るというのはこれ当然のことだと思うんです。
この点でちょっとお聞きをしたいのは、先日、産業競争力会議の国家戦略特区ワーキンググループが第四回会議で、優先的に取り組むべき規制緩和策の一つとして研究者等への労働契約法をめぐる課題というのを挙げました。マスコミでは、大都市圏を中心に無期雇用となる五年の期間を延長し、契約社員と正社員の間に位置する雇用形態を認めることを検討する、これ産経新聞の報道ですけど、こういう報道もあるんです。これは、特区で労働契約法の適用除外の地域をつくるという規制緩和になるんですけれども、こんなこと検討するんでしょうか。いかがですか。
○政府参考人(中野雅之君) 改正労働契約法の無期転換ルールの研究者等への適用につきましては、大学関係者から、若手研究者のキャリア形成に対する影響を懸念する御意見をいただいているところでございます。
また、御指摘の国家戦略特区ワーキンググループにおきましては、集中ヒアリングで取り上げるということとされまして、これに対しまして、厚生労働省といたしましても、文部科学省とともにワーキンググループのヒアリングに対応してきたところでございます。
こうした検討の結果、日本再興戦略、いわゆる成長戦略でございますが、ここにおきましては、労働契約法の若手研究者のキャリア形成に対する影響を懸念する指摘もあることから、研究現場の実態を踏まえ、研究者等のキャリアパス、大学における人事労務管理の在り方など労働契約法をめぐる課題について関係省が連携して直ちに検討を開始するとされたところでございまして、この方針を踏まえまして検討を進めてまいりたいと考えております。
なお、この課題につきましては、一部の地域や特定の大学等に限らない問題でありますことから、特区制度という仕組みではなく、全国的な課題として検討を進めていくべきものと考えているところでございます。
○田村智子君 労働者の基本的権利にかかわる法律を地域によって適用除外なんというのはあり得ないことですので、是非こんな規制緩和はやらないということで頑張っていただきたいんですけれども。同時に、じゃ全国規模でどう解決するかと。これはやはり、機械的に五年上限で雇い止めではなくて、合理的な理由のない雇い止めを規制するという方向にしていかなければならないというふうに思っています。
これは、先日、国連社会権規約委員会からも指摘をされている問題で、今年五月、この国連社会権規約委員会からは日本政府への勧告が出されていて、その中で、有期契約労働者の契約が不公正に更新されないことを防止するため、労働契約法の執行を強化し、かつ監視するよう求めるというふうにされています。こうした勧告に基づく施策が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) この労働契約法でありますが、議論、国会で質疑させていただいたときも、我々は野党だったんですけれども、この法律、やはり五年前に雇い止めが頻発する可能性があるのではないかという、そういう心配はいたしておりました。
それも含めてそれをどう防いでいくか、そういうことが大変重要になってくるわけでありますけれども、まず、施行後、企業に対してアンケート調査を実施する予定でございまして、その中において、企業がどのようなことを危惧しているのか、どのような行動に出るのか、こういうことをしっかりと把握した上で、一方で、無期転換することによって働く方々はモチベーションが上がるわけでございまして、そのような意味から、勤労意欲や能力の向上等々というものが企業にとっていかにプラスになるか、こういうこともしっかりと我々は企業にお伝えをしていかなきゃならぬというふうに思っております。
雇い止めに関しましては、継続雇用を合理的に期待できる場合は、これは雇い止め法理という形の中において雇い止めができないということになっておりますので、そのようなこともしっかりと企業には周知徹底をしていく必要があろうというふうに思っております。
いずれにいたしましても、先ほど来申し上げましたとおり、メリットもあるわけでございまして、事実、幾つかの企業等々がこれを機に無期雇用に変えていこうというような、そんなお声も上がってきておるわけでございまして、そのような好事例集でありますとか、いい例というものですね、こういうものをしっかりと企業に周知をさせていただく中において、五年を前の雇い止めというものをなるべく防いでいけるような、そういう施策を進めてまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 大学にも是非それが適用されるようお願いしたいと思っています。
文科副大臣、ありがとうございました。副大臣への質問は以上ですので。
○委員長(武内則男君) 谷川文部科学副大臣については、退席をしていただいて結構です。ありがとうございました。
○田村智子君 じゃ、続けます。
実は、国連社会権規約委員会では日本の労働時間についても指摘がされています。相当数の労働者が著しい長時間労働に従事し続けていることを懸念する、長時間労働を防止するための措置を強化することを勧告すると、こういうふうになっているんですね。
実際、今、昨年十一月、労働時間適正化、このキャンペーン、取組の結果、埼玉県を見ると、四割で労基法違反を確認、東京都では三八%が三六協定未届け、二割で月八十時間超の残業、三割で不払残業が確認されているという事態なんです。
こうした長時間労働に対しては、実は大臣告示も出して、時間外は月四十五時間、年間は三百六十時間を超えないものとしなければならないというふうにしているわけですけれども、局長にお聞きします。この三百六十時間、年間時間外労働を超えた場合、厚労省はどのような指導をされるんでしょうか。
○政府参考人(中野雅之君) 労働基準監督署に届けられました三六協定が、ただいま御指摘がございました時間外労働の限度基準、これに規定する限度時間を超えるときには、労働基準監督署の窓口におきまして指導文書を交付し再提出を促すなど、限度時間を遵守するよう指導しているところでございます。
○田村智子君 長時間労働も、実はこれでぼろぼろになって働けなくなるような、うつ病を発症するとか、こういう問題が多発をしていまして、やはり将来の無年金、低年金につながるような問題なんですね。
私、特に今長時間労働で若者を使い捨てるブラック企業ということが話題になっているだけに、その具体の事例についても一点指摘をしたいんです。
居酒屋チェーン、ワタミの創業者、ワタミの渡邉美樹社長が自身の公式ホームページで、ワタミはブラック企業ではないと、こう述べています。その中で、時間外労働は月平均四十五時間までと決め、昨年は月平均三十八・一時間だから問題ないというふうに言っているんですね。でも、大臣告示というのは、平均四十五時間じゃないですよ。上限月四十五時間超えちゃいけないと言っているわけです。月三十八時間だったら、これ十二倍すると年間四百五十六時間ですよ。大臣告示を百時間近く上回ると。これは、ホームページで大臣告示をゆがめて、長時間労働を開き直っている。厚労省として指導が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○副大臣(桝屋敬悟君) 個別の話を申し上げるのは差し控えたいと思いますが、今委員から御指摘がありましたように、労働者を使い捨てにするような劣悪な雇用管理を行ういわゆるブラック企業でございますが、賃金不払等の労働基準法の違反、あるいはパワハラの問題がしばしば指摘をされているところでございます。
厚生労働省としては、いつもお答えしておりますが、労働基準法などの違反が疑われる企業には調査に入りまして、重大又は悪質な法令違反については厳正に対処するなど取り組んできたところであります。
指導監督を行う事業場は、時間外・休日労働協定、三六協定届け等に記載された労働時間の状況や、あるいは労働者からの申告、相談など、種々の相談を基に、長時間労働が行われており、労働基準法違反の疑いがあるなどの問題があると認められる事業場を選定して、指導監督を行っているところでございます。特に、過重労働が疑われる事業場への重点的な監督指導を労働基準監督署に改めて徹底するなど行っておりまして、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。
○田村智子君 これは正社員でワタミで働いていた方が、我が党の東京都委員会の雇用と就活対策室に実態をお話ししたいといって訴えてこられたんです。資料を見たら、時間外労働八十時間超える月がありました。四十五時間以上という月は二年間で六か月に及びました。年間で四百八十時間超の残業、割増し賃金払われていても、重複等調整というよく分からない項目で数万円が差し引かれて、結局二十二万から二十三万円程度の賃金にしかならないという実態なんですよ。
ワタミは、二十六歳の女性が就職二か月で自らの命を絶って、今年二月、過労自殺として労災認定されています。月百四十時間、二か月で二百二十七時間の時間外労働と。休日も、渡邉氏が書いた著作の学習を強いてレポート提出を求めると。これ今も続いているというんですね。これ、私取り上げたのは、この渡邉氏は自民党参議院比例区全国支部長と、こう大きく打ち出されているわけですよ。これでいいのかということなんですね、このホームページ。大臣、一言見解を伺います。
○国務大臣(田村憲久君) 厚生労働省としてその政治活動等々に対して物を言う立場ではございませんが、一般論として、適正に労働時間を守っていただいて、しっかりとした雇用環境をつくっていただくのが経営者にとっては責任があるというふうに思っております。
○田村智子君 終わります。