日本共産党 田村智子
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【13.06.13】厚生労働委員会 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 本法案は、厚生年金基金の代行割れ問題を基金の解散で解決を図ろうというものです。この代行割れの問題の多くは、バブルの崩壊による運用益の大幅な減収によって発生をしたものです。大企業の単独基金のように、企業に体力のあるところは既に代行割れを自ら埋めて確定給付年金や確定拠出年金に移行していて、現在残っている基金の多くは中小企業で構成をしている総合型が中心となっていて、こういう中小企業は不況のあおりを受けている業種も多くて、事業主責任での解決と代行割れの解消というのは大変難しいということが考えられるわけです。
 この代行割れの問題は、バブル崩壊以降、対策の必要性というのはもう二十年来明らかだったわけです。しかし、特例解散や特例納付の制度は設けたものの、個別の基金に対しては抜本的な対策は取られてきませんでした。現在、代行割れになっている基金は全基金の四割、代行割れ予備軍として解散を促す基金を含めると全体の九割にも上るわけで、こうした状況を見れば、個別の基金の運用の失敗というのではなくて、やはり政策上の問題だったんじゃないかと、こう指摘せざるを得ません。
 この点について、大臣、今回九割の基金が解散せざるを得ない、しかも事業主の責任でと、こうなったことについての政治の責任、政府の責任についての認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(田村憲久君) 二〇〇〇年代初頭から基金の財政が著しく悪くなってきたわけでありまして、そのような意味からいたしますと、先ほど副大臣も答弁をいたしておりましたけれども、例えば、基金の指定制度という形で財政悪化したところは指定して、しっかり財政健全化を図っていただく、さらには特例解散、こういう制度もつくってきたわけであります。
 そして、DB、DCというような、確定給付、確定拠出というような形での企業年金等々をつくる中において、そちらの方に移行というものも促してきたわけでございまして、今回の改正はそういうものの一つの流れの中での大きな改正点ということでございますので、不断に努力はしてきておったわけでありますけれども、十分に成果が出ないという流れの中において、今回このような法律を出させていただいたということでございます。

○田村智子君 これまでの政策について一点、その責任のことをちょっと問いたいんですけれども。
 基金解散時に基金を構成していた事業所に最低責任準備金の納付を割り振ると、これを事業主の連帯債務としてしまった、これやはり大きな問題として指摘をせざるを得ないと思うんです。倒産、廃業した事業所があれば、その負担分も他の事業所に担わせると、こういうやり方が何をもたらしてきたか。
 これは過去の国会においても指摘がされています。兵庫県のタクシー協会を母体とする基金が二〇〇四年に解散をしたと。その後、ある事業所が倒産によって、解散時は一社当たり一千八百万円だった納付金額が実に二千四百万円にまで膨れ上がって、これはもう一社の倒産だけではなくて連鎖倒産の危険まで生じさせてしまったと。こういう事例などが過去の国会でも取り上げられてきたわけです。
 ところが、こうした連帯債務の問題が国会でも指摘がされていたにもかかわらず、その後の二〇一一年の年金確保支援法で、この連帯債務を廃止するのではなくて、基金解散時に一括返済をして本来連帯債務の対象とならない事業所まで今度は連帯債務を負わせると。言わば連帯債務を強化する改定が二〇一一年の年金確保支援法で行われてしまったわけですね。
 この総合型というのは中小企業が多くて、連帯債務を課すことによって経営が圧迫されて連鎖倒産の危険性が増すということは、これまでもずっと指摘がされてきたことだと思います。なぜ、二〇一一年の時点で厚生労働省は、連帯債務の廃止ではなくて、むしろそれを強化するという、そういう改定を行ってしまったのか、局長、お答えください。

○政府参考人(香取照幸君) 特例解散制度における連帯債務ですが、平成十六年当初は、分割返済中の事業所の倒産につきましては分割返済中の残りの事業所で負担をするということで、一括返済した事業所はそのいわゆる連帯債務からは免れるという形になっておりました。当時も、これは規約でそういった一括返済事業所にも負担を求めることができるようになっていましたが、基本的にはそういうルールでありました。
 当時はこれをやっておりますことで分割返済中の他の事業主が負担が大きいと。つまり先に一括返済したところはかぶらないということになりますので、むしろ事業所間の負担が公平ではないというような御議論がありまして、今御指摘の平成二十三年の年金確保法が国会で成立しましたときに院の附帯決議がございまして、附帯決議では、むしろ、設立事業所の事業主の一部が事業を廃止した場合の他の事業主の負担の在り方について検討するようにということで附帯決議が付いてございます。
 むしろ、このときの議論あるいは当時の国会の議論又はこの附帯決議等々を踏まえまして、年金確保法の成立の後、今先生御指摘のように、分割返済中の事業所の倒産につきましては、既に一括返済した事業所も含めて、つまり当時仲間だった企業みんなで基本的には負担をするということで、先に返しちゃった人が抜けた分が残りの人に負担するということで過重な負担にならないようにということで当時そのような見直しをしたということでございます。
 今回は、そもそも基本的にもう代行割れ基金は解散を早くしてもらうということで大きく考え方のかじを切ったので、そのことを踏まえてできるだけ速やかな特例解散を促進するということで、連帯債務を外すことですとか利息の固定化、あるいは最長納付期間の延長といったものをパッケージとして早期解散を促するという措置を講じるという取扱いにしたということでございます。

○田村智子君 今御説明あったとおり、だから強化したその二年後には廃止、今回で連帯債務は廃止されるというわけなんですよね。だから、連帯債務というのを課して、解散も地獄、残るも地獄のような事態をやっぱり政策的につくったということは、これは指摘せざるを得ないわけです。
 今回はまた最低責任準備金の不足額を納付する際にも軽減策を取るんだと、長期に返済ができるように、納付ができるようにというような策も取っています。それでも事業所は加入者一人当たり平均で四十四万円、最高額で二百二十八万円、これを厚生年金本体に納付しなくてはならなくて、これは中小企業にとっては大きな負担となって、この代行割れの返還、納付が引き金となって廃業や倒産とか取引先企業の連鎖倒産、こういうことが危惧されてしまうわけです。
 これまでの経緯を踏まえれば、私は、こうした設立企業の倒産、連鎖倒産というのは回避するための対策が必要で、例えば税財源を投入してせめて利息をゼロにするなど何らかの支援策が必要だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) ここもいろんな議論の中で、税でありますとか、そもそも厚生年金本体の方で穴埋めをすればどうだという意見もあるわけでありますけれども、一方で、そもそも三階部分、企業年金のない厚生年金に入っておられる方々にしてみれば、それはなぜ自分たちの財源でその穴を埋めなきゃいけないんだという話でありますし、税という話になれば、更に大きな国民の皆様方、幅の広い国民の皆様方から、なぜ税金で埋めなきゃならぬのだというようなお叱りもいただくわけでございまして、ここはなかなか委員がおっしゃっておられるような対応が取れなかったという状況の中において、例えば固定金利というものを採用する中において負担を少しでも減らしていただこう、さらに、期ずれという措置をとれば、これで負担、負担といいますか、責任準備金ですか、これがしっかりと、しっかりとといいますか、計算の上で今よりも減るということもあるわけでありますし、一方で、さらには、今言われましたように、その返済期間といいますか納付期間、これを延長を大幅にする、こういうことも取り入れたわけでありますし、あわせて、在職老齢年金の調整率というものを入れることによって、比較的古い基金、つまり高齢者の方々が多い基金に関しましては、これまた削減効果といいますか、これが大きいわけでありまして、こういうことを導入する中において、少しでもそれぞれの企業が返済をしやすい形、こういう形を取らせていただいてきておるということでございます。
 ただ、やはり税金というものをなかなか投入するというわけにはいかないということでございまして、御理解をいただきたいというふうに思います。

○田村智子君 これまで基金に加入している企業というのは、ちゃんと厚生年金保険料も払ってきたし、三階建て部分の上乗せ保険料もきちんと払ってきたと。ただ、その基金運用の穴埋めを、これをその中小企業に負わせるということなんですよね。私は、この基金解散したことによって企業倒産と、中小企業が倒産というようなことになれば、これは政策的に本末転倒だと言わざるを得ませんので、何らかの支援策というのは、これは重ねて求めておきたいと思います。
 今回の法案によって、厚生年金基金の九割が解散又は確定給付年金や確定拠出年金など他の制度に移ることになります。そうすると、結果として、基金の年金だけを受給しているという方が無年金になってしまうと。これ、今の基礎年金や厚生年金というのは二十五年以上保険料納付しなければ資格がなくて、基金というのはそんな受給資格課していないですから、こういう方いらっしゃると思うんですよ。
 そこでお聞きをしたいのは、現在基金の年金だけという受給者がどれくらいの規模でいて、そういう方が新たに無年金にならないというためにどのような対策を取られるのか、お答えください。

○政府参考人(香取照幸君) 御指摘のようなケースの方は多分いらっしゃると思いますが、どういう方かと考えてみると、基金のある企業に勤められて三年なり五年なり働いておられた、それ以外の期間については一号で未納だと。要するに、加入期間を満たしていないという人ということになります。
 通常、三階部分の給付があるような企業に納付期間があって、それ以外の期間が言わば未納で、免除も受けない、他の企業にも勤めていない、二号にもならない、三号にもならなくて、言わば一階、二階が存在しなくて三階だけの給付があると。これは恐らく極めて例外的なケースではないかと思います。
 実際、そういった方々は、例えば基金から上乗せだけが出ているケースでも、基礎年金が出ているケースとかいうのもありますので、基金側も把握ができませんし、しますので、例外的であるということと、そういった方々を把握できるようなちょっと仕組みになっていないので、その数は私ども把握しておりません。
 それから、そういった方々はどういう方々かというと、基本的には納付期間が短くて無年金になられた方ということになりますので、そういう意味では、通常の無年金の方々のカテゴリーに対する対策をきちんと講じることでカバーができると考えております。
 御案内のように、年金確保支援法で納付期間十年ということで納付可能期間を、過去に遡って納付期間を十年に延長いたしました。それから、今回の法律改正で、そもそも受給期間を二十五年を十年にするということで、基本的にはより短い期間で受給ができる、あるいは過去の保険料の納付を十年まで遡って可能にするといったような形で無年金者の発生の抑制をしておりますので、こういった施策を講ずる中でこういった方々についても対応ができるようにというふうに考えてまいりたいと思います。

○田村智子君 後納によって無年金から抜け出すことができると、これは大切なことだと思います。無年金の方っていろんな事情がある方ですので、そういう事情の方がやはりちゃんと年金が受け取れるようになれば、これ生活保護受給を回避できるとか低所得の状態が改善する可能性があるわけですから。ただ、後納するにはやはりまとまったお金が必要で、まして、無年金の方やそうなりそうな方というのがその額を工面するのは大変なことなんですね。
 それで、調べてみましたら、東京都社会福祉協議会は、年金保険料後納のための生活福祉資金の貸付けというのを可能としています。しかし、自治体によって対応はばらばらだとも聞いています。
 そこで、社援局長に確認をしたいんですけれども、年金受給資格を得るための後納、そのための費用として生活福祉資金を貸付けの対象とできるかどうか、お答えください。

○政府参考人(村木厚子君) お尋ねの生活福祉資金貸付けでございますが、これは都道府県の社会福祉協議会が実施主体になっておりまして、低所得世帯などを対象に、必要な相談支援に併せて資金の貸付けを行い、その経済的自立の促進を図るという目的のものでございます。貸付けに当たっては、これは貸付けでございますので、その性格上、個々人の返済可能性を十分に判断した上でその可否を判断をしております。
 後納保険料についてこの貸付けが活用できるかどうかでございますが、本来、保険料でございますので、自己の能力を活用して納めていただくということが基本ではあろうかと思いますが、低所得者であって、かつ後納制度の活用によって自立した生活の維持が可能であるという場合には、その返済可能性を十分考慮した上ででございますが、個別に判断をして後納保険料の納付に必要な資金の貸付けを行うことというのは、これは制度上は可能でございます。

○田村智子君 もちろん、本人にとって借金となるので返済が可能かどうかという問題はありますし、貸付けの財源も限りがあるので、これは個別には社会福祉協議会の判断だというふうには承知していますけれども、今回の法改定によって無年金者が新たに生じる可能性は現にあるわけですね。それに、後納もやはり一定期間のうちに納めるということが求められるわけですから、やはり、後納に必要な資金、生活福祉の資金で貸付けは可能だよと、窓口へ行ったときに、それはそういう理由では貸付けできないよということのないように、自治体とか年金事務所とかあるいは福祉事務所などに周知をして、積極的に相談に応じるということが必要だと思いますが、局長、続けてお願いします。

○政府参考人(村木厚子君) 御指摘の福祉資金貸付けの活用でございますが、今答弁を申し上げたとおり、制度上はもちろん可能でございます。ただ、先生おっしゃってくださいましたように、じゃ、資金があるかというと、今これ三十億ほどしか原資がございませんで、今の貸付けの実績で見ても五千人ほどという大変小さな基金でございますので、なかなかこの資金で多数の方の貸付けをするということは、現実問題としては相当難しいところがあろうかと思います。また、本来の年金制度の趣旨からいえば、自己の能力を活用して納めていただくということが基本ではなかろうかと思います。
 いずれにしましても、先ほど申し上げたように、制度的には可能なものでございますので、個別的にきちんと対応するようにしたいというふうに考えております。

○田村智子君 では次に、六月十一日、マスコミでも一斉に報道されました、旧社会保険庁職員の分限免職処分取消しについてお聞きをいたします。
 社会保険庁の廃止、日本年金機構の発足に際して、社会保険庁の職員五百二十五人が分限免職処分、民間企業でいえば解雇となりました。このうち七十一人が人事院に不服申立てを行って、五月三十一日までに二十名について判定が出され、六名が処分取消しとなりました。判定が出された人の三割が分限免職を取り消されたことになります。
 人事院は、分限免職回避の努力についてこう述べているんですね。社会保険庁及び厚生労働省は、処分直前まで種々の取組を行ったと認められるとしつつ、取組は不十分な点も見られ、少なくとも公務部門における受入れを一部増加させる余地はあったと認められると、こういうふうに認定をしたわけです。
 分限免職回避努力が不十分だというこの人事院の認定について、大臣の認識をお伺いします。

○国務大臣(田村憲久君) 人事院の判定に関しましては、これは重く受け止めさせていただきたいというふうに思います。
 その上で、旧社会保険庁職員の公務部門への受入れ枠確保、これは当時の厚生労働大臣は省を挙げて努力をされたんだというふうに思っております。取消し判定の中で、そのことが当時厚生労働省として認められなかったこと、これ自体は残念に思うわけでありますが、分限免職処分の回避に向けて種々の取組を最大限行っていたというふうな点に関しましては、これは現在も当方認識変わっておりません。
 いずれにいたしましても、このような判定をいただいたわけでございますから、分限免職処分が取り消された五名については、その判定に従いまして身分の復活等、この対応をしっかりとさせていただきたい、このように思っております。

○田村智子君 ほぼ異議の申立てのしようもないわけですから、受け止めるしかないということではあるんですけれども、もうちょっと聞きます。
 この人事院の判定では、面接票に記載されたAからDというこの評価で、任用となった職員よりも評価が上あるいは評価が同等だったのに分限免職となった事案について処分の取消しの判断がなされているわけです。やはり人事院の文書の中では、人事の公平性、公正性の観点から妥当性を欠くという大変厳しい判定が書かれているわけです。
 同時に、私は、この面接で付けられた評価が分限免職か否かを決めたということについては大変問題を感じておりまして、本来、国家公務員の任用というのは、職場での本人の実績、働きぶり、そこから本人の能力や人事評価というのを公正に判断して行われなければならないはずなんです。
 ところが、人事院の審理の中で厚労省側は、人事評価については参考程度にしか見なかったと、こういう説明をしたり、面接の公正性を担保する基準と根拠を問われて、面接官の公務員としての経験を信用するしかないという、驚くような説明をしているわけです。
 そもそも、十分から十五分の面接で一体何を評価したんだろうか。評価が記入された面接票も、申立人が繰り返し要求して、やっとそのコピーというのが資料として配られました。それ見ると、質問を聞き返したとか、自我が強いとか、丸顔、眼鏡とか、およそ能力や人事評価と関係あるとは思えないようなコメントが書かれているものが幾つも見られるわけです。
 人事院から人事の公平性、公正性の観点から妥当性を欠くという指摘を受けた、そして審理の中では面接評価の公正性を担保する基準も示せなかった、これ非常に問題だと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) 社会保険庁職員の厚生労働省への配置転換、これ約千三百人でありましたけれども、これについては約六千名の方々が希望されたわけでありまして、その中から、書類審査と面接審査、その結果を総合的に勘案いたしまして、組織における配置転換予定数、また配置転換先の職務の内容に基づきましてその可否を判断したものでございます。
 職員選考を行うに当たって、その可否の決定が不均衡となることを防ぐために、一つは、面接要領を統一するとともに、厚生労働省本省と地方厚生局、それぞれ職員選考会議を設置をいたしました。また、希望者全員の面接を経た上で、定められた配置転換に従って平等かつ公正に可否を判断したということでございます。
 そういう意味からいたしますと、人事院の判定書でも、この面接審査等の選考手続が不適切であったというような旨は指摘はされていないということでございます。

○田村智子君 面接そのものについての記述がなくても、判定の中で人事の公平性、公正性の観点から妥当性を欠くと、これは明記がされているわけですよ。これ重く受け止めなければ駄目ですよ、大臣。
 人事院の判定というのは私たち一〇〇%支持するということではなくて、社保庁から日本年金機構に業務が引き継がれるのに大量の首切りを行ったということについて判断を回避していますし、また政府全体の分限回避努力の是非というのも判断しないなど、これ限界はあると思っています。それでも、判定した方の三割が言わば不当解雇だというふうに判定をされたわけで、私たちは、そもそもこの分限免職、違法だという立場ですけれども、人事院の判定も、部分的であっても、それを裏付ける中身が出されていると思うんです。
 大臣、十一日火曜日の閣議後の会見でも大分記者の方にこの点も聞かれて、不当解雇の見本みたいなことをやったことについて反省はないのかということも聞かれていますね。文字で起こしたものを読みました。それに答えて、内容を精査して、これからのいろんな人事労務管理に生かしてまいりたいと、こういうふうに述べておられます。
 でも、これからでは私、済まされないと思うんですね。先ほど言った、人事の公平性、公正性の観点からも妥当性を欠くと言われた、分限免職回避の努力も不十分だと指摘をされた。であるならば、五百二十五人の分限免職処分について問題があったと、これは大臣としてもきちんと言うべきだと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) このときの記者会見、六月十一日でありますけれども、この人事院の判定について、内容を精査してと、こういう発言をさせていただいた上において、これからのいろんな人事労務管理に生かしてまいりたいということでございまして、生かせるものがあればこれはしっかりと生かしていきたいという思いの中で申し上げた話でございます。
 その上で、当時厚生労働省として分限免職処分回避に向けて種々の取組を行ったわけでございまして、それ自体は最大限行ってきたという点では当方の認識とは変わっていないということでございます。

○田村智子君 それは、もう裁判ではないんですからね。これもう、例えば六人、これ復職だというのを不当だということなんかできないわけですよ。行政処分を下したことに対して行政機関がそれは駄目だと、間違っていたと判定下したんですから、ちゃんと重く受け止めてもらわなかったら困るというふうに思います。
 国家公務員というのは、分限免職されたら失業給付の対象にもならないわけですよ。それだけ大変なことになっちゃうわけですよ。三年半、分限免職された皆さんは本当に大変な思いされて生活されてきたと思います。それに対して人事院が厳しいやっぱり判断を下した。
 私は、今も分限免職された方で職場復帰目指している方、やっぱり年金業務で働いてきたと、だから街角年金相談やっている方とかもいらっしゃいます。そうすると、そういう方が、一日何件も不明だった記録を統合できるような、それだけの力量を持っている方もいらっしゃるということなんですね。ところが、小さな、軽微な懲戒処分があるがために年金機構に戻ることはできない、そこで採用してもらうことできないと。私、やっぱりこういうやり方でいいのかと。これが本当に、国民の年金にかかわる業務を、力のある方を省いておいてですよ、分限免職おかしいと判定もされておいてですよ、そのままにしておくということは、私、非常に問題だと思います。
 これも答弁変わらないと思うので指摘だけしておきますけど、例えば懲戒処分した人はもう応募もできないというような閣議決定は、この人事院の判定も受けてやっぱり見直すということも是非求めて、次の質問に移りたいというふうに思います。
 六月三日、社会保障制度改革国民会議で示された年金問題の議論の整理案では、受給開始年齢の引上げについて早めに議論に着手すべきだというふうに記されています。会長の清家篤さんは記者会見で、六十七歳から六十八歳に引き上げてしかるべきだと、こういうふうに述べたとも報道されているわけです。
 この国民会議の議論というのは八月にまとめられて、社会保障制度改革推進法によれば、それを基にして政府は法制上の措置を行うということが求められるわけです。そうすると、年齢の引上げという方向でまとめられたとき、秋以降このことを検討するということになるんでしょうか。大臣、お願いします。

○国務大臣(田村憲久君) これは、清家会長、そういう議論があったという中においてそういう御発言をされた、御紹介をされたというふうに思います。
 年金の支給開始年齢の引上げという問題でありますけれども、これは大変大きな問題でありますが、一方で、生涯現役社会ということを考えれば、現役で働く期間がどんどんどんどん延びてくるわけでございまして、それと年金とをどう考えるんだという、そういう議論はあってしかるべきだというふうに思いますが、そもそも年金の支給開始年齢の引上げというのは、これ、以前も私、申し上げたかも分かりませんが、制度が今の制度の中で運用されるとすれば、支給開始年齢が引き上がった分はその分だけ受給は手厚くなるわけでございます。支給金額が手厚くなるわけでございまして、自民党の、これは公約ではなくて、公約でしたか、ちょっと私、覚えていませんけれども、その中にもこの支給開始年齢の選択制というものは書かせていただいた覚えがございます。
 いずれにいたしましても、支給開始年齢を引き上げたとしてもその分だけ手厚い年金がもらえるというような、選択制という意味では、私も先般この国民会議の中で御意見を申し上げたわけでございまして、決して、年金をもらわれる方々が自分自身の年金をもらう金額自体が減るというような形でこのようなことが進められるとすれば、それはいろんな議論があるというふうに思いますので、いろんな広範な御議論をいただく中において、これからこの国民会議というものに対しての、御結論に対して、我々は所要の措置を講じさせていただきたいというふうに思います。

○田村智子君 これ違いますよ。支給開始年齢を今の六十五歳まで引き上げるってやりましたけれども、それを更に六十七歳、六十八歳に引き上げようという議論でしょう。これ、元々民主党の政権も支給年齢、開始の繰上げということを打ち出していましたけれども、それに対して、民主党政権時代、自民党議員からも批判的な意見が表明されていましたし、とりわけ現政権与党の公明党、元厚労大臣の坂口さんからは、繰り返し、年齢引上げの理由なんか全くないんだということが述べられていたわけです。
 そもそも、二〇〇四年年金制度の改定、百年安心のスローガンですよ。保険料率の引上げ、年金支給開始年齢を六十五歳に引き上げる、一方、給付水準はマクロ経済スライドで実質的に切り下げる、これだけ負担を増やすと。しかし支給開始年齢をこれ以上引き上げることはないと、これが国民への約束で行われたものであったはずです。
 政府もこの国民会議に対して、物価スライド特例水準が解消される、消費税増税によって基礎年金二分の一国庫負担も実現する、だから年金財政フレームワークは完成したという資料も出しているわけです。にもかかわらず、年齢引上げを更に議論しなければならないということは、それだけ年金財政は逼迫していて、年齢引上げやらなかったら破綻するということなんでしょうか。局長、大臣でもいいんですけれども。

○国務大臣(田村憲久君) いや、ちょっと私が申し上げたのは、平均寿命まで年金をもらわれるとして、年金というのはその総額幾らもらえるかというのが決まるわけですよね。今の年金の計算の中においてそれをいじらないとするならば、支給開始年齢を引き上げればですよ、我々は選択でもいいじゃないかというふうに自民党は言っておったわけでありますけれども、引き上げればその分だけ平均寿命までのもらえる期間が短くなるわけですよね。短くなった部分はその分厚くなるということを申し上げたわけでございまして、年金自体のそれこそいろんな意味での、今よりも所得代替率が下がっていくであるとかいろんな議論がなされる中において、そういうものも一つの選択であるということで申し上げたわけでございまして、私は選択制でそのような、自分自身が選択で手厚い年金を今よりももらえるんであるならば、働きながら、例えば六十七までは働いて、六十七以降は六十五よりもらえる年金よりも多い年金をもらうというのも一つではないですかということを国民会議で申し上げた次第であります。

○田村智子君 一言だけ済みません、最後に。
 六十五歳の引上げだって、六十五歳までの定年延長をやった企業なんかほとんどないと。再雇用になっちゃって収入が減ってどうなるんだということが今日も読売新聞一面に出ていましたけれども、そういうときに更なる年齢の引上げと、これでまた社会保障の国庫負担下げていくのかということを言わざるを得ないわけで、こういう議論自体は本当に許されないということを申し上げて、質問を終わります。
前回、十三日の質疑で、私は、社会保障制度改革国民会議が示した議論の整理案の中で、年金支給開始年齢の引上げについて早めに議論に着手すべきと記され、会長を務める清家篤氏が記者会見で、六十七歳から六十八歳に引き上げてしかるべきと、こう述べていることを取り上げました。これに対して大臣は、支給開始年齢の選択制という角度で御答弁をいただいたんですけれども、私の質問にこれは答えていただいてないんですね。自分の判断で受給を先延ばしにするというのは、これは今でもできることであって、清家会長が主張している満額の年金を受け取れる年齢を現行六十五歳から更に引き延ばすと、六十七、六十八にすると、これをやるのかどうかということをお聞きしたかったんですね。
 年齢を引き上げて年金総支給額を減らすような制度の変更を政府として検討されるのかどうか、御答弁いただきたいと思います。

○国務大臣(田村憲久君) これは昨年の、実は前政権下でもそうだったんですけれども、中長期的にこの支給開始年齢の引上げというものは、議論は、検討は必要だというようなお話だったと思います。中長期的ですよ。その流れを受けて、要は国民会議の中でもそういう御議論があったというふうにお聞きをいたしておりますけれども、決してこれは今、現状、二〇二五年まで掛けて、継続雇用ということで、定年後の継続雇用を引き上げているわけですね。それは六十五までですから。にもかかわらず、今、六十五歳年金ですから、これを六十七、八にまで引き上げれば、当然、働く収入がない中において年金ももらえないということが起こるわけでございますから、そんなことになってしまっては困るので、あくまでも、これから更に働く環境が整っていって、六十七、八、七十まで働けるような環境になることが前提の上で、そういう議論もしなきゃいけないなという話であります。
 でありますから、近い将来において年金の支給開始年齢を引き上げるなどというようなことは我々は考えておりません。

○田村智子君 そうすると、国民会議で議論されている中身というのは、もう今年度から制度の改定について話し合うような中身を話し合うわけなんですよね。だから、その中で支給開始の年齢について早めに議論に着手すべきというふうに書かれること自体、私は重大な問題だなというふうに思うんです。
 もう一つ、国民会議の中で、デフレ下でもマクロ経済スライドを行うべしという議論が出ています。これも清家会長が三日の記者会見で言及をされています。
 マクロ経済スライドというのは、そもそもの約束は、約束というか設計は、物価や賃金の上昇に伴って年金支給額の上昇をさせる、そのときにその上昇の割合を抑え込むんだと、こういうやり方なんですね。これを物価下落時にも発動すれば、名目年金の支給額が減ることになって、これは高齢者の生活に重大な影響を与えることになると思いますが、大臣の見解をお伺いいたします。

○国務大臣(田村憲久君) デフレ下は名目の年金は減るようになっているので、それは物価スライドで下落分だけは下がりますので、名目上は減るんですが、それにプラスしてマクロ経済スライド分も減るではないかという今御指摘であったというふうに思いますが、仕組みとして、これ、物価下落時にマクロ経済スライドを今は発動しないようになっておりますが、これがずっと物価が下落が続いてマクロ経済スライドをずっと続けないということになりますと、今の年金の長期的な保険料と支給の均衡というものは壊れていって、それは将来的に後世の世代にツケ回しが行くわけでありますから、そういうような仕組みから考えれば、マクロ経済スライドを物価下落時にも適用した方が、それは将来の世代に対しては一定の約束を果たせるということであります。
 しかし、一方で、やはり物価下落時にマクロ経済スライドを発動すると目減り分が増えるわけでございますから、当然のごとく、生活をされておられる方々の感覚的には年金が大きく減って、消費意欲等々も減退して、生活が苦しくなられたような意識をお持ちになられるということもあり得るわけでございます。
 でありますから、これ、議論の中は、物価が下落したらということを前提に置いておりますけれども、我々は、とにかくその物価を、下落、これがずっと続けば年金制度自体が今の制度の下ではこれは維持できないわけでありますから、安倍内閣においては、まず物価を正常にプラスに持っていくと。その上で、年金が本来、将来に向かって持続可能な環境をつくらないことにはそもそも年金制度自体が成り立たないわけでございまして、物価をプラスにしていく中において、法律どおりマクロ経済スライドが適用されていくというような環境をつくってまいりたいというふうに思っております。

○田村智子君 今、物価下落時にも年金をマクロ経済スライドで抑えれば将来の年金に対して安心だということもおっしゃったんですけど、でも、前の自公政権のときに、百年安心だという設計を行ったと言っているわけですよね。言っているんですよ。その中で、六十五歳の年齢の引上げもやり、保険料率も引き上げて、年金財政はこれは百年大丈夫ですよという前提の上で、様々な言わば年金の改悪、私たちから言えば改悪を行ってきたわけなんですよ。
 ところが、また国民会議の中で支給開始年齢が議論されるとか、物価下落時でもマクロ経済スライドで高齢者の生活保障をずたずたにするようなことが検討されるのか、私、非常に無責任な議論をやっているんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、大臣の見解、じゃお聞きします、短くていいですから。

○国務大臣(田村憲久君) まず、デフレ経済下では、これが続けば、年金だけじゃありません、社会保障も含めて、全てこれはもう続けられなくなることは明白でございます、税収すら増えていかないわけでありますから。多分、社会活動を含めて、デフレが更にずっと続いていけば、これは国民生活は最終的には破壊をされていくんであろうと思いますから、これはまず前提として直さなきゃいけないということがあります。
 年金に関して申し上げれば、そういう意味でありますから、デフレ下というものはまず解消して、年金の安心、これは百年安心と言ったかどうかは別にいたしまして、それを我々はしっかりと確保していかなきゃならぬと思います。
 一方で、その支給開始年齢の引上げというのは、以前も申し上げましたが、支給開始時から平均寿命まで年金が幾らぐらいもらえるかという一つのモデルがあるわけですよね。それを、支給開始年齢を引き上げればその分手厚くなる年金がもらえるということでございまして、今の年金が破綻するというよりかは、みんなが働ける社会になれば当然定年等々も延びるだろうから、年金をもらえる支給開始年齢も引き上げるということは必然的に起こってくるよねという中においてされておられる議論だというふうに私は認識いたしておりますので、決して年金が破綻しておるわけじゃなくて、そうなれば今より手厚い年金を将来老後にもらえるという議論の中での一つの考察であろうというふうに私は理解いたしておりますから、年金財政が決して破綻しておるわけではございませんし、積立金の問題、これもやがて今回の積立金の運用利回り、昨年度の数字が出てくると思いますけれども、それも含めて必要な積立金というものをしっかりと確保していかなければならないと思っておりますし、できているのではないかと私は淡い期待を、淡くはないな、期待を持っておりますので、合計特殊出生率を見ても、前回の数字と見て現状の方がいい数字になっておりますから、全体としてデフレを解消できれば年金というものに関しては信頼感というものが増すんではないかと、このように思っております。

○田村智子君 大臣の見解は分かるんですよ。ただ、国民会議というのはもう来年度の予算編成に向けて社会保障の予算をどうするかということを議論するためにつくったような機関ですよね。そういう中で年金の問題を議論されているということが非常に私は重大だということを指摘しておきたいというふうに思います。
 次に、年金制度の根本の問題、先ほどデフレの問題というふうにおっしゃいましたけれども、私はやっぱり賃金の上昇とか安定した雇用というのが年金を支える大前提だというふうに思うんですね。やはり今、年金制度を考えると、無年金者や低年金者を新たに生み出さないようなための施策というのが真剣に検討が求められていると思います。