【13.05.30】厚生労働委員会 精神保健福祉法一部改正法案、雇用促進法一部改正法案の参考人質疑
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
本日は本当にありがとうございます。
私、まず精神保健福祉法の方からお聞きをしたくて、池原参考人からまずお聞きをしたいと思います。
おとといの質疑の中で、やはり代理人がなぜ法制度の中に盛り込まれなかったのかということが一つの審議の焦点になりました。その中で、厚生労働省の側の答弁としては、どのような人を代理人として指定していくのかということがいまだまとまらない、検討の段階だというような答弁もあったんですけれども、その点についてのお考えをお聞かせください。
○参考人(池原毅和君) ありがとうございます。
その点は、私はちょっと厚生労働省の方々の御答弁についてはやや理解し難いところがあって、先ほども申し上げましたように、既に二十年来、福岡県弁護士会では退院請求や処遇改善請求のための弁護士の代理人システムというのを動かしていまして、これはその地域では非常に高い評価も受けて現実的に動いているわけです。こうした似たようなシステムは大阪でも岡山でも、さらに愛知県でも行われていて、日本弁護士連合会では全国的にそれを展開するというための今パイロット事業を進めているところです。
ですので、少なくとも強制入院との関係でいうと、権利擁護者というのは、まずは本人が退院したいと言えば退院できるための手続を代理できるシステム、あるいは処遇が不当だと言えば処遇改善を求めることができるシステムが必要であって、そのために適応した職種とすれば、法律の専門家である弁護士か、あるいは福祉的なことについても精通している精神保健福祉士という人たちがその権利擁護をすることができるということはそれほど疑問のある話ではなくて、決して代弁者とか権利擁護者という概念がまだ曖昧であるということにはなっていないというふうに私は思っております。
○田村智子君 ありがとうございます。
もう一点、保護者制度を廃止したけれども、家族等の同意で医療保護入院が引き続きできると。このときの家族等が、おじさんやおばさんでもいいと、一緒に生活をしていない方も同意の対象になり得るわけですね。このことによってどのような状況が想定されるのだろうかと。患者さん本人にとっての前進面と言えるのか、家族の方にとってはどうなのか、率直な御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(池原毅和君) ありがとうございます。
保護者制度の非常に大きな問題点の一つとして、家族である保護者が強制入院に同意するということをしたがために、患者さん本人とその保護者との間の葛藤関係が深まってしまうということがずっと指摘されていたわけですけれども、その同意者の範囲を家族等という形で広めてしまうということになりますと、先生御指摘のように、むしろ同居していた家族、例えば親は入院に反対しているんだけれども、本人の兄弟が別のところに住んでいて、いや、もう入院させた方がいいんだということで同意してしまったというようなことになると、その同意をした人と反対していた親との間の更に葛藤が深まったりとかいうことが当然起こってきて、かつ同居をしていない、本人の状況がよく分かっていない人でも同意をしてもいいということになるわけですから、必ずしも適切な同意がされるかどうかも分からないということになって、むしろ事態は非常に複雑化していくだろうと。
そしてさらには、最近の医療保護入院の増加傾向の一つは、認知症の患者さんを医療保護入院をさせているということがありますけれども、特に高齢者の方の強制入院に関しては、私ども法律の実務家としてしばしばぶつかるのは、かなり相続だとか財産関係に絡んで入院ということが行われるということも必ずしも珍しくはないということがありまして、非常に複雑な問題が生じてしまうと。逆に、医療機関の側としても、そういう家族間のかなりどろどろしたような議論に巻き込まれていくということになって、これは決していい結果にはならないだろうというふうに私は思います。
○田村智子君 ありがとうございました。
次に、本條参考人に、本当に今御意見をお聞きしていても苦渋の思いがにじんでおられるなというふうに感じているんですけれども、同じことをちょっとお聞きをしたくて、家族等の同意ということについてどのようなお考えをお持ちか、まずお聞かせください。
○参考人(本條義和君) 先ほど池原先生からもお話がありましたように、これは家族会としても非常に問題視しておりまして、かねて、やはり一般医療と同じように法律的な義務とかそういうものが生じないような同意であれば、それは当然、御本人がそういう判断能力といいますか、そういう意思決定が難しいという状態においては、それは当然家族がしていかなくてはならないと思うんですけれども、それによって権利義務が生じてくるとかそういうことになると問題が大きくなると、こういう具合に判断しておりまして、できましたらそういう代理人と申しますか、代弁者というものを早急に制度化して法案に盛り込むか、それとも附則で入れていただくかしていただきたいというのが要望です。
○田村智子君 もう一点、医療保護入院の場合も、措置入院や緊急入院ではないということで、やはりこうした本人の意に反した入院というのはできる限り減らしていくような努力というのが求められていると思うんです。
例えば、家族への支援がもっとこういう面で充実させられていたらとか、地域での支援があれば入院しなくてもいいような場合もあるんじゃないかとか、あるいは、入院は必要だけど本人が拒まれているその要因ですね、精神医療に対するマイナスのイメージであるとか、長く続いてきた医療の貧困さからの、何というんですかね、入院したくないと、一度入っちゃったら出られないんじゃないかとか、そういういろんな外的な要因というのを、本人が拒む外的な要因、これを取り除いていくような努力というのが求められているんじゃないかと思うんですけれども、その点での御意見をお聞かせください。
○参考人(本條義和君) 全くそのとおりだと思います。やはり日本は非常に入院患者が多いですね。それは、やはりできるだけ地域でいろんな人が支えてあげながら、御本人の本人選択の選択権を担保しながら、地域で生活し、そして医療を医療機関から届けていくと、福祉もそうなんですけれども、そういうシステムにしていかないといけないなと、こういう具合に思っております。
○田村智子君 医療機関に対する御要望などもありましたら、せっかくの機会ですので、お聞かせください。
○参考人(本條義和君) それは先ほど申し上げましたように、今までは医療というものが病院に家族が連れていってそして始まるというのがほとんどだったわけです。やはり諸外国を見てみましても、今主流は、もちろん入院制度もありますけれども、地域で支えていくということが主流になりつつあります。やはり医療を医療側から、また福祉にしましても福祉の側から、サービスを提供する側から届けるということが必要ではないかと、これが医療及び福祉に対する要望でございます。
○田村智子君 ありがとうございました。
それでは、障害者雇用のことで石原参考人にお聞きをいたします。
いただいた資料を見てみまして、確かに職場定着というのが一つ大きな課題になっていくんだなということを感じたんですけれども、特にやはり、やはりと言ってはいけないですね、精神障害の方の定着率が六年後には二割台になっていると、いただいた資料のところでですね。一方、知的障害の方は六割超える、七割近いような定着率だというのを見たときに、精神障害の方がいかにその職場に定着していくかというところで、まだまだ、まあ始まったばかりといえばあれなのかもしれないんですけれども、でも、施策の充実が求められているんだということを痛感したところなんですが、その点について御意見をお聞かせください。
○参考人(石原康則君) ありがとうございます。
認識については全く一緒で、精神障害者の人たちがみなし雇用から今度は義務化されて、精神障害の方々が職場で働いている姿が多くなる中で、どういう形でケアしていけばいいのかという、ここのノウハウ、スキル、こういったものは、先ほども申し上げましたけれども、今も熱心に取り組んでいる事業所もあるんですけれども、これから数も増えていくわけですから、皆様方の御支援をいただいて、定着支援に対して要員をもっともっと充実させていけるのであれば、そういう点に対する強化を図っていくことができるのではないかというふうに思っています。
○田村智子君 やっぱり人的支援が非常に大切になってくるということなんでしょうかね。事業所にも出向いていって理解も広げたり、こういう、何というんですか、やり方にしてみたらどうでしょうかとか、相談に乗ったりとか、そういう面の充実が求められるというふうに理解してよろしいでしょうか。
○参考人(石原康則君) まず、そういう要員不足というのは、これは知的障害の部分でも感じていまして、決して十分ではないと。何でもかんでも人をよこせという話ではないんですけれども、今、学校から卒業されて職場に入って、そういう人たちが就労移行支援事業所なんかに登録される、その数がどんと増えているわけですね、今。学校からの就職者も増えている、ハローワークからの就職者も増えている。そういうサポートに対して陣容が十分かというと、十分ではないと。そこに精神障害者の方々がまた加わってくるだろうと。新たな対応を求められる、新たなスキルを研究していかないといけない、そういうことになれば、そういう対応できるような陣容の強化、こういったものはお願いしたいなというふうに思いますけれども。
○田村智子君 最後になんですけれども、私、就業・生活支援センター、おとといの質問の中でも取り上げたんですけれども、大変多岐にわたる、職場開拓から、家族の相談にも乗って、まさに就労したいという意欲を引き出すような支援から、大変多岐にわたるものを僅かな人員でやっていることに驚いたのと、予算が委託事業だから単年度予算で、正規雇用が難しいという問題を抱えているんだということも分かって、ちょっと驚いたんですね。この就業・生活支援センターの改善といいますか、どうやっていけば、まあ予算が足りないというのが一番はあるとは思うんですけれども、例えば役割分担であるとか、安定的な運営にするためにはどうしたらというようなことで御提案ありましたら、お聞かせ願いたいというふうに思います。
○参考人(石原康則君) 増えている要因には、先ほど言いましたように、学校からの就職者とか、私どもの就労移行支援事業所からの就職者とかハローワークからの就職者、それらがどんと就労・生活支援センターに行っちゃうと、パンクしている、今そういう状況にあるんですけれども、先ほども申し上げましたように、就労移行支援事業所から就職した人は生涯私どもが、就労移行支援事業所がサポートしていく。だから、中ポツセンターに登録替えしちゃうのじゃなしに、私どもがサポートすることで定着率は高まっている。学校からの卒業生は学校にある地域就労支援センターのような、その学校が相談に応じてあげる、障害者も母校に相談する、そういう方が信頼関係があるわけですね。
だから、登録替えして中ポツセンターに面倒見させるのはいいんですけれども、そこではまた新たな信頼関係を構築しないといけない。だから、できるだけ中ポツセンターの負荷を掛けないように、私どもの就労移行支援事業所とか、できれば学校の皆様方も、就職させたらおしまいではなしに、学校もずっと働いている限りサポートしてあげるような体制が組めないか。そうすれば定着率も高まっていくだろうし、中ポツセンターの負荷もパンクする状態は改善できるんじゃないかというふうに思っています。
○田村智子君 どうもありがとうございました。