日本共産党 田村智子
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【13.02.21】予算委員会――労働契約法改定をうけて「5年雇い止め」

大阪大学、日本年金機構などへの指導を求める

○田村智子 非正規雇用の労働者が過去最多の35%を超えたと、19日、総務省が発表いたしました。不安定で低賃金な働き方の拡大に歯止めを掛けるということは、賃上げとともに景気回復にとって喫緊の課題です。昨年、労働契約法が改定をされまして、本年4月1日を起点に有期契約の期間が5年を超えた労働者は本人の申込みによって無期契約に転換されることとなります。
 この法改定の意図について、厚労大臣、説明をお願いします。

○田村憲久 厚生労働大臣 5年を超えた方々に関して無期転換、無期転換ルールでありますけれども、こういうふうにしたわけでございまして、まさに有期契約労働者の雇用の安定を図るというのが目的でございます。

○田村智子 雇用の安定を図ると。ところが、この法改定を受けて、4月1日から就業規則を変えて契約の更新回数に上限を設けるという動きが民間事業所だけでなくて政府のお膝元からも聞こえてきています。
 文部科学大臣、大阪大学が示している有期契約者の就業規則改正案は御存じでしょうか。

○下村博文 文部科学大臣 お答えいたします。
 改正労働契約法の施行に向けて各大学では就業規則の改定について検討を行っており、御指摘の大阪大学では、有期雇用教職員の通算雇用年数を原則5年以内とし、教育研究の遂行上やむを得ないと大学が特に認める場合に限って5年を超えて雇用することがあることとするというふうに聞いております。

○田村智子 これ、私も資料でお配りいたしましたので見ていただきたいんですけれども、現行では、更新回数の定めがない教職員あるいは上限を6年や10年としている職員も、一律、通算で5年を超えないと、これを原則とすると変えてしまうわけです。しかも大阪大学は、これは労働契約法の改正があったからだと説明をしているわけですから、無期転換の申込権を最初から奪うと、発生させないための改定だとしか考えられないわけです。
 労働契約法改定の際、私たちは、契約更新に上限を設けるということを規制しなければ5年未満の雇い止めが今よりもひどく横行するんだということを厳しく指摘してまいりましたが、そのとおりのことが今起きようとしています。
 厚生労働大臣、国立大学が法の網をかいくぐろうとしていると。これ、このままでいいんでしょうか。

○田村憲久 厚生労働大臣 一般論でありますけれども、この改正労働契約法でありますが、第18条、雇用転換ルールに関しましては、5年を超えて有期で雇う場合、これを無期に転換をすると。
 労働契約上正規にする必要があるわけではなくて、要は、労働期間はこれは無期にしなければならないわけでありますけれども、他の条件を変えなければならないというものでもないわけでございまして、そのような意味からいたしますと、雇う側の賃金の支出が増えるというわけではないんであろうと思います。
 一方で、19条で、判例上確立しておりましたこの雇い止め法理というものもしっかりと法制化をしたわけでございまして、働く方々が合理的に継続して働くことを期待できる、このような期待を持つという話であればこれは期間を限定して雇い止めをすることができないわけでございますので、そういう意味からいたしますと、その趣旨をしっかりと御理解をいただいた上で、必要性を十分に検討をしていただく必要があろうと思います。

○田村智子 賃金をどうするかというのは、これは無期転換してから検討すればいいということだと思うんですよね。
 これ私、重大だと思うのは、大学の教育や研究の必要性から就業規則の改定を行っているものでは到底ないんですね。例えば、大阪大学では現に10年以上既に語学の講義を担当しているという非常勤講師、何人もいます。また、医師で考えてみますと、研修期間だけで3年から4年なわけです。5年で雇い止めなんていったら医師として働くことさえまともにできなくなってしまうわけですね。また、iPS細胞のように10年スパンの研究プロジェクト、これも研究員5年で雇い止めということになったら、これ研究どうなるんだろうかと。
 5年の雇い止めには何の合理性もないということは明らかだと思うんですけれども、文科大臣、いかがでしょうか。

○下村博文 文部科学大臣 今回の取扱いは、昨年8月に制定された労働契約法の一部を改正する法律を踏まえて大阪大学で定めたものでございます。就業規則は各大学の判断により作成するものであるところ、少なくとも改正法に照らして法律上の問題があるものではないと考えております。
 ただ、今御指摘がございましたように、教育研究上の必要があり、能力を有する人が一律に契約を終了させられることにならないよう、適切な取扱いを促してまいりたいと思います。

○田村智子 これ大阪大学だけではないんです。私が少し調べただけでも、神戸大学、私立では早稲田大学でも同様の就業規則の改定を検討していることが分かりました。
 今、大学の教職員、研究員の半数あるいはそれ以上が有期雇用だと思うんですね。そういう方々を2018年3月までに言わば総入替えをすると。これは、合理性がないどころか大学に大きな混乱をもたらしかねないんです。原則5年とすることで雇い止めにされるという事例はいっぱいあって、これ裁判にも闘われているわけですね。就業規則で原則5年と書くことは非常に重大な問題だと私は思っています。
 これ、特に国立大学というのは、一般の民間法人とは違って文部科学大臣に監督権あります。是非、大阪大学などに必要な指導を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○下村博文 文部科学大臣 お答えいたします。
 ある意味では雇用者の立場から労働契約法の改正がされたものと承知をしておりますが、今御指摘のように、研究開発上、五年以上逆に勤務をしていただかないと困るというふうな大学等も生じてくるというふうに思いますし、そのような実態的な状況を踏まえて、各大学に対しても柔軟な対応をするように促してまいりたいと思います。

○田村智子君 これ、雇用の在り方はもう個別個々の事情だと思うんです、講義も研究も違うんですから。一律に5年というふうに就業規則改定されることのないよう、私、是非、文部科学大臣に十分な注意を払っていただきたいというふうに思っています。
 それでは、厚生労働省のお膝元ではどうかと。日本年金機構でも、例えば准職員の契約期間を、7年、現行、これを五年に変更するなど、有期契約の契約期間を通算で5年まで、こういう就業規則を変えようとしているのではないでしょうか。厚労大臣、いかがですか。

○田村憲久 厚生労働大臣 機構の方で労働組合の方とこの有期雇用職員に関して労働条件の在り方、いろいろと検討しておるという話は聞いておりますが、中身については聞いておりませんので、そういうことがあるかどうかは把握いたしておりません。

○田村智子 これ、是非注視していただきたいというふうに思っています。
 日本年金機構は、実は就業規則をこういうふうに改定する前、早々と今年3月で既に2008人のアシスタント職員を雇い止めにしようとしています。これは機構発足時に就業規則に契約更新の上限を定めたことが理由で、社会保険庁時代にはなかった不更新条項を入れたことが理由で、業務が縮小するからではありません。
 事実、年金機構は四月から新たなアシスタント職員を雇うんだと言っていましたが、これを前倒しして今月内から雇入れをして、雇い止めにする職員との引継ぎを行うとしているんです。わざわざ2月、3月、2か月間人件費の二重払いまでしてベテランのアシスタント職員を雇い止めにすると、こういう必要は全くないと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○田村憲久 厚生労働大臣 アシスタント契約職員のお話がございました。今回の法改正の以前のこれは契約でございまして、今回の法改正とは直接関係がないということはまず申し上げたいというふうに思います。
 その上で、これ、初めの契約のときに更新は2回までという条件の下で一年ごとの契約をしておるわけであります。つまり、通算3年ということになるんでありましょう。これをもし更に継続して契約をするということになりますと、先ほどの言うなれば合理的な期待を持たせるということにもなりかねないわけでございまして、そうなってきますと、やはりその後、期待を持つわけでありますから、雇い止め法理の方に掛かってくるわけでございます。でありますから、そういう意味からいたしますと、契約どおりの履行をさせていただいて、あらぬ期待をお持ちをいただかないようにというような、そんな思いの中で契約を履行されるのであろうと、これは私どもがやっておることではございませんので、そのように推察をいたします。

○田村智子 私はそのことに合理性があるのかとお聞きをしているんですよ。業務が続くのになぜ2回更新というふうに最初から決めてしまうのかと。日本年金機構だって、厚生労働省は意見言うその権限持っているわけですから。そこをちゃんとしっかり正すこと、必要じゃないですか。

○田村憲久 厚生労働大臣 これも御承知だと思いますけれども、年金記録問題等々で業務量がいっとき増えております。これは必ずや減らしていかなきゃならぬわけですね、これを解決して。となれば、当然業務量が減ることになってまいります。そのときには、当然のごとく雇い止めをせざるを得ないということになる。しかし一方で、今回の契約を更に延長するということになると、そこに合理的な期待が生じる可能性があるわけでございますから、その後仕事がなくなってもなかなか雇い止めができない。
 一方で、年金機構の方は合理化をしろということを閣議決定等々で決定をいたしておりまして、そちらの方の人員というものも増やしていけないというような、そういうようなところもございます。ですから、今回このような判断をなされるのではないかと御推察をさせていただいています。

○田村智子 ちゃんと実態を見てください。今言いましたでしょう。業務は縮小しないんです、来年は、しないんですよ。だから、新たに雇い入れる人をわざわざ前倒しで人件費を二重に払って業務の引継ぎをやらせるわけですよ。そうしたら期待権が生じるからなんということを大臣が言っちゃったら、これ非正規から正規の転換の道を断っていいんだということを大臣自ら認めているようなものじゃないですか、そんな答弁許せないですよ。

○田村憲久 厚生労働大臣 一方で、正規職員への登用、これも進めておりまして、それぞれ業務の遂行に支障が生じる場合といいますか、業務的に必要な部分がある場合に関しては、要は正規雇用ということで24年度も280人ほど正規雇用へと登用をさせていただいております。
 ですから、非正規から正規への努力もされておられるようでございますが、一方で、先ほども申し上げましたけれども、業務量は確実に減ることはもう目に見えているわけでございまして、その中において継続的に雇用していくことをいたしますと、この雇い止め法理等々、やはり期待権が生じてその後雇い止めをするときにやはりいろんな問題が生じるのであろうというふうに御判断をされているんだろうと推察をするわけであります。

○田村智子 その期待権が生じてしまうから2年11か月で雇い止めという問題が自動車産業とか電機産業とかでいっぱいあって、私たちはそのことを何度も問題にしてきましたよ。そんなことをやっていたら、非正規雇用の拡大は止まらないということを何度も指摘してきましたよ。それを認めるような発言を厚労大臣がされるということは、私は、これは真面目に働く者が報われる社会というふうに看板を安倍内閣掲げていても、全く違うじゃないかというふうに言わざるを得ないと思います。
 本来は、独立行政法人、大学法人、また日本年金機構に対して、こういう雇い止めが横行しないよう指導することが必要だということを強く求めまして、質問を終わります。