日本共産党 田村智子
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【12.10.19】行政監視委員会――復興予算の流用問題

大規模リストラの大企業にも多額の補助金

○田村智子 日本共産党の田村智子です。
 私も国内立地推進事業費補助金について質問をいたします。
 この補助金、総額二千九百五十億円のうち、千葉県や茨城県などを含む被災地での事業には僅か五百七十九億円、事業所の規模で見ても二千三百五十六億円、約八割が大企業に交付された、こういうことが昨日からの委員会でも大問題になってきています。
 これ、もう少し中身を見ますと、例えばトヨタ自動車は、愛知県豊田市と碧南市の工場で直接補助金を受けるほかにも、グループ企業で補助金の交付件数は実に十二件に上ります。その他の大企業を見ても複数の補助金の交付が何件も確認できて、これだけでも私は大変に疑義が生じると思います。
 こうした被災地以外の事業所に補助金を出す理由の一つが、被災によって部品供給が滞り大企業も打撃を受けたとか、被災地の経済復興の力になるからだということが言われています。確かに、この補助対象の要件には被災地に直接投資をする案件又はサプライチェーン、供給網を通じた被災地への波及効果が見込まれる案件であることとあります。
 それでは、被災地の事業所との取引の実績や計画、これが全体取引の何%以上であることなどの数値的な条件を課したのかどうか、お答えください。

○石黒憲彦 復興庁統括官 本補助金の採択に当たりましては、今委員から御指摘ございましたとおり、被災地に直接投資をする案件あるいはサプライチェーンを通じて被災地への波及効果が見込まれる案件を必須要件とはしておりますが、それの額が被災地企業の割合といったような数値基準といったようなものにつきまして、特段設けてはございません。

○田村智子 数値要件、全くないんですね。極端なことを言えば、被災地事業所からの部品調達が一%未満でもとにかくあればいい、あるいは直接じゃない、間接的に巡り巡って被災地事業所との取引になっていけばいいと、こういうことになってしまいます。こんなことが要件というふうに言えるのかどうか、そう思います。
 そして、先ほど、一件ごとの補助金の交付額、これは示せないというふうにやり取りがありまして、何年かたって事業が終了したらこれは公表するというようなことも経産大臣からは答弁がありました。それは政府の方針だと確認してよろしいですか。

○枝野幸男 経済産業大臣 改めて正確に申し上げたいと思いますが、交付金が使われる以上、個別企業が受けた補助金の金額がしかるべきタイミングで開示されることは当然だと思っておりまして、先ほどのお話のとおり、現時点では、補助金の金額等を公表すれば投資額等の推定がライバル企業にとって可能になり、競争上の地位を著しく阻害する可能性があることから、現時点において公表することは時期尚早と考えておりますが、今後、設備投資が完了し、投資計画に従った事業が開始され、補助金額も確定した段階で交付した補助金の適切な執行を担保するため、お求めに応じて補助金額や補助率といった情報を公表したい、これは執行を担当している経済産業省としての正式な見解です。

○田村智子 先ほどの答弁の中では、守秘義務もあるのでというようなこともおっしゃっていましたが、当該企業が拒否をしたら何年たっても公表できないということですか。

○枝野幸男大臣 先ほど私も答弁いたしましたが、現時点では、先ほど申しましたとおり、競争上の地位を著しく阻害する可能性があるということで、実質秘だというふうに思います。
 まさに、設備投資が完了をし、投資計画に従った事業が開始されれば、こうした競争上の地位を著しく阻害するという可能性がなくなる、つまり実質秘でなくなりますから、守秘義務の問題はその段階で解除されるというふうに思っています。

○田村智子 もう一点確認しますが、大体、事業は経産省の説明だと四年ぐらいの間、一年から四年ぐらいだろうと言われています。そうすると、それまでの間には公表できるということですね。

○枝野幸男大臣 具体的にどのタイミングで、状況で競争上の地位を著しく阻害する可能性が解消され、いわゆる守秘義務が解除されるかということはございますが、そうしたものが解消される段階では予算等をしっかりと公表させていただくということです。

○田村智子 何年後になるかちょっとよく分からないんですが、これは約束されたということで確認をしたいと思います。
 今の時点では──大臣が言っているんですから、それ駄目ですよ、事務方そんなのやったら。
 もう一点、今の時点では個々の金額示せないということですけれども、それでは個々の案件の中での最大交付額が幾らかはお示しいただけますか。

○石黒憲彦 復興庁統括官 御指摘の点でございますが、補助金交付上限額、元々これあらかじめ百五十億円ということで定めさせていただきました。御質問の最高額につきましては百五十億円でございます。

○田村智子 これ、一件が百五十億円のものがあると。しかも企業で複数案件を得て補助額を得ているところもあるということですから、一企業やその企業グループ全体で百五十億円を超えるような補助額を受け取っているということも、これ十分考えられるわけです。
 こうした巨額の交付金の決定がどのように行われたか。経済産業省と随意契約をした一般社団法人環境パートナーシップが事業委託先を公募をして、二社だけが応募して野村総研が受託をした。ここに外部有識者による審査委員会がつくられて交付対象事業を決めたとされています。
 それでは、この外部の有識者二十六名だと聞いていますが、名前や所属組織、明らかにしてほしいと思いますが、いかがですか。

○枝野幸男大臣 御指摘のとおりのプロセスで、事務局に設置された第三者から成る審査委員会での審査に基づいて採択企業を決めています。
 一方で、審査委員の名前が公表されれば関係各方面から様々な問合せが審査委員に寄せられるなど、審査委員に対して様々なプレッシャーが掛かり、公正、客観的な審査を行う環境が損なわれるおそれがあると考えておりまして、審査委員は名前等を公表しない前提で委嘱されているというふうに承知をしておりますが、とはいっても、最大限情報公開するべきだというふうに思いますので、いろいろと整理をさせました結果として、具体的なお名前は公表できませんが、審査委員には素材加工や電子デバイスなど、各分野に精通した専門家をバランスを考えて選定をしております。
 実際の審査では複数の審査委員により審査を行うこととしていることなど、公正な審査が可能となるよう工夫が行われております。そして、審査委員のメンバーの属性については、大学教授が十五名、研究機関の研究者が九名、会計士が一名、公的金融機関に属する者が一名の二十六名で構成され、利害関係を有する企業の代表や役員のOBは含まれていないということでございます。

○田村智子 やっとそういうことが出てきたんですね。しかし、私、それでも不十分だと思います。もうこれ、交付は決定が終わっているんですね。先ほど交付額も示すと言っている以上、これはもっと情報開示、やはり名前の開示が私は必要だと思います、もう終わっているんですから。大体、研究機関といっても、企業と関係のある研究機関というのはあります。そして、補助対象となった企業との関係がどうなのか、中立性がどう担保されているのか、これ私たちは全く検証ができなくなってしまいます。
 これは是非、行政監視委員会としても更なる情報開示を求めていただきたいと思います。委員長、いかがでしょうか。

○福岡資麿委員長 後刻理事会にて協議させていただきます。

○田村智子 こうやって、被災地と直接に関係があるかも分からない大企業には多額の補助金が出されると。その一方で、被災地で事業者の受けるグループ補助金、これは延べ申請一千三百二十九件に対して採択は僅か三百二十九件と、二五%を切っています。大問題になっています。
 それだけではありません。例えば被災地の医療機関、これは政策医療にかかわっていなければそもそも補助対象から外されてしまう。いまだにそうです。補助対象となった医療機関も、建物にしか補助金が出なくて高額な医療機器は対象外だと。これでは再建できない、困難だと、これまでの制度を超えた支援が必要だということで、私もう何度も政府に求めてきましたが、従来の制度に固執する答弁ばかりが続いてきました。
 大企業には被災と無関係に設備投資に補助金を出すんです。何で被災地の医療機関には、従来の支援策に固執をして設備の復旧には一円も補助金が出ないのか。本末転倒だと思いますよ。
 これは平野復興大臣、是非、被災地の支援の枠組み、これ今からでもすぐに変えていくことが必要だと思いますが、見解をお聞かせください。

○平野達男復興大臣 被災地優先の予算を編成するということはこれは当然のことでございますし、また総理からも改めてその指示をいただいているということでありまして、その中で、被災地の医療機関の施設整備に対する様々な支援、まだまだ不足だという要望も強くいただいております。
 平成二十三年度の第一次や第三次補正予算で、医療施設等災害復旧費補助金により、これは公的医療機関や政策医療を実施する民間医療機関を対象とした復旧支援に限定されておりますけれども、こういった補助事業が用意されております。また、一般の医療機関も対象になっていると聞いておりますけれども、平成二十二年度補正予算や平成二十三年度第三次補正予算では合計千八十億円の地域医療再生基金の積み増しを行っております。
 こういったものの活用を踏まえながら、まだ現地において何が不足かということについては精緻に意見を聞きながら、対応できるものは対応していきたいというふうに考えております。

○田村智子 被災地への設備投資こそ補助をすべきだということを強く要求したいと思います。
 この国内立地補助金に戻りますが、雇用の創出や国内雇用の維持を図る支援策だという説明もされています。確かに補助要件には、補助対象部門の国内雇用を震災前と同水準で四年間維持するもの、あるいは補助対象経費一億円当たり原則として三人、これ一年にですね、以上の雇用を創出するものとあります。
 それではお聞きしますけれども、ここで言う雇用というのは正規雇用に限定をしているのかどうか、お答えください。

○石黒憲彦 復興庁統括官 正規雇用、非正規雇用にかかわらず、補助事業者と直接雇用契約を結んでいるということを雇用の定義とさせていただいております。

○田村智子 それでは、正社員は大きくリストラをして非正規に置き換えて雇用を維持したと、それでもいいと、また、派遣社員は直接の雇用関係にないから切っても問われない、補助対象の事業部門以外で大規模リストラを行って補助対象の事業所に移し替えてもこれは不問に付されるということですか。もう一度確認します。

○石黒憲彦 復興庁統括官 今のお尋ねで、正規を非正規に変える、直接契約があるという限りにおいては、先ほど私が申しましたとおり、雇用数にカウントされることになります。一方、派遣につきましては直接雇用契約ということではございませんので、その場合にはカウントされないということになります。

○田村智子 今私が言ったようなことは全部やりたい放題なんですよ、できるということなんです。これ、想像じゃないんですよ。
 例えばシャープ、グループ全体で国内二千人の正社員に今現在早期退職を迫っています。補助対象の三重県亀山市、奈良県天理市の工場に新技術の製品化、この事業を特化するんだといって、他の事業所での激しいリストラが今行われています。何と補助対象の大阪堺市の工場でさえも、希望退職とは名ばかりの執拗な面談による退職強要が今まさに進行中です。また、準備会社の時点のときと合わせてもう二度補助を受けているジャパンディスプレイは、ソニー、日立、東芝の事業統合会社ですけれども、この統合される部門で三社合わせて一千四百人のリストラが行われてきました。
 これでは、補助する対象のところが周りでリストラやって人を集めているんですよ、現に。リストラ支援補助金と言われても仕方がないと思いますよ。これ、雇用創出どころか雇用の喪失ですよ。
 経済産業大臣、これ大規模リストラも人権侵害の退職強要も不問に付して、ただただ補助金だけ流し込むんですか。

○枝野幸男 経済産業大臣 リストラが行われるということは避けられるような経済状況にしていくこと、また各企業においても厳しい経済状況の中でも雇用をしっかりと確保するために努力していただく必要があること、その点については全く同感でございます。ただ一方で、残念ながらこの間、大震災等の影響にとどまらず、厳しい経済状況の中でやむを得ないリストラが行われている、そういった経済の状況にあるということも間違いありません。
 そうしたことの中で、一方ではリストラをしている大きな意味での法人であっても、片方では何とか厳しい中でも採算の取れる部分については設備投資をしてそこで少しでも雇用をつくり出そう、あるいはそことのサプライチェーンを通じて被災地の経済の復興に資することにつなげていこうということをされていることについては、これは一定の評価と支援をする必要があるだろうというふうに思っています。
 御指摘のように、結果的にこの補助金が、何というんでしょう、この補助金をうまく使うことによって何か置き換えをするみたいな話がこれはあれば、それはやはり適切ではないというふうに思いますので、御指摘を踏まえて個々の案件について、今私が前段で申し上げたようなことであるのか、それともまさにこの補助金をうまく使って、濫用して置き換えをしているような話なのかということについては、おかしな点がないかどうかは御指摘踏まえて精査してみたいと思います。

○田村智子 それ是非お願いしたいと思いますが、大体今行われている電機リストラも、震災云々ではなくてもう経営判断のミスだと言われているんですよ。これで補助金だけどんどん流し込んで事実上リストラを後押しするなんていうことはあってはならないと思います。
 雇用の創出についてもちょっとお聞きをしたいんですけれども、雇用創出、先ほど言ったように補助金一億円当たり年平均三人と、これが達成されているかどうか、これは私たちには事業所への補助金額が分からない限り検証のしようもないんですね。それだけに急いで示していただきたいと思います。
 実は、赤旗新聞独自に取材したところ、例えばリコーが宮城県の子会社に三十一億円の補助金を受けるということを説明していただきました。ところが、この補助対象の設備が稼働してもこの子会社で新規雇用は二十人だと。これ、一億円三人ならば九十人以上の雇用が創出されるべきなんですね。お聞きしたら、他の事業所からの配置転換などを五十人規模で行う予定だという説明もされているそうです。このリコーは、昨年五月にはグループ全体一万人のリストラを発表していると。これ、もう既に配置転換やあるいはリストラによるものではないかということが危惧される案件がたくさんあります。
 私、ただ見てどうかなと精査するというだけじゃ足りないと思っているんですよ。大体、私、枝野大臣、野党のときに偽装請負とか派遣労働の問題、国会で厳しく取り上げておられましたよね。キヤノンなど名前も出して、大企業の正社員減らし、常用雇用減らしを激しく批判をして、企業には経営責任がある、雇用への責任があると、それを政府が求めるべきだと主張をされていたはずなんです。
 であるならば、その態度を取って、補助金対象の大企業、この中に電機リストラ十三万人、こう言われている企業が名前を連ねています。ちゃんと出向いていってそのリストラについて物を言うべきですし、少なくとも今も続いている人権侵害の退職強要はすぐにやめるべきだと厳しく指導するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○枝野幸男大臣 私、野党時代からもそう申し上げておりましたし、経済産業大臣としても、例えば各企業、特に大きな企業においては、できるだけ雇用を維持する中で、この厳しい経済環境を乗り越えるために最善を尽くすべきだというふうに思っております。そうした最善を尽くさない企業、あるいは、例えば労働法制のある意味では濫用的な使い方をして労働者の人権を侵害するような事例がないように、できるだけ厳しく、直接の権限を持っているわけではありませんが、目を光らせているつもりであります。
 もちろん全てをしっかりと把握してチェックができているということを申し上げるつもりはございませんが、もし個別に問題がある企業の例等、御指摘いただければしっかりと調べたいというふうに思いますし、また問題があれば、直接の権限はないということは繰り返し申し上げておりますが、その範囲内でできることは対応したいというふうに思っておりますので、野党時代には党派超えても事実上連携して様々な情報をいただきましたが、こういうところでこういう問題があるとかということがあれば、個別に御指摘いただければしっかりと調べたいと思います。

○田村智子 私、調べるだけでは足りないと思うんですね。枝野さん、野党のときには、もう何というか、政府が物を言うべきだということまでおっしゃっているんですよ、直接に企業に物を言うべきだと。私もそういう段階に来ていると思います。
 先日発表された厚生労働省の調査では、非正規雇用の労働者約一千八百万人のうち二割が正規雇用に転換をすれば、購買力の向上などで経済波及効果は六兆三千億円に及ぶということを厚生労働省が調査の結果として示しています。これ、二割というのはアンケートで控えめに答えていますよ。もっと正規雇用になりたい方はいっぱいいらっしゃるはず。
 だから、経済への波及効果、被災地への波及効果というならば、安定した雇用の確保、企業に雇用責任を求めることこそ私は日本再生の道だと、確かな道だということが今言えると思います。
 ヨーロッパを見てみますと、企業に支援を行うと、経済大変で、大変な事態にあると。だったら、支援を行うからリストラはやめなさい、雇用を維持しなさいということを政府が直接に物を言っています。オランダの三菱自動車、日本の企業ですよ。ここで工場閉鎖となったら、それは駄目だと、政府も働きかけ、労働組合とも話し合い、地元のバス製造の会社に僅か一ユーロ、日本円にして百円でこの工場を譲り渡したと、これで雇用を維持させたと。これがヨーロッパで実際に政治がやっていることなんです。
 日本でも、二千三百五十億円もお金出す以上は、私は調査だけでは足りないと思います。物を言って、このリストラの波やめさせる、雇用の責任果たさせることが必要だと思います。もう一度、枝野大臣、お願いします。

○枝野幸男大臣 今おっしゃられたこと、一般論として全く同感です、私も。
 ですから、例えば個別企業、具体的な御指摘あれば、それを踏まえて、もちろん調べた上で、調べて問題があると思えば対応したい、物を言っていきたいというふうに思いますし、これどこまで言っていいのか分かりませんけれども、この私が就任してからの一年間の中で、個別企業の統廃合等の大きな案件の中で、幾つかこういう対応になりそうだということの中では、それならばこういう努力をするべきだというようなことについて事実上申し上げてきたことは率直に言って少なからずございますが、それをここで、こういうことをやりました、ああいうことをやりましたと申し上げるべき性格のものではない、あえて申し上げれば事実上の、行政指導よりも更に弱い権限しかございませんが、物は申し上げてきております。

○田村智子 終わります。