【12.08.07】社会保障と税の一体改革特別委員会――中央公聴会
社会保障のあり方、その財源等について
○高橋千秋 委員長 (前略)
本日は、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案及び社会保障制度改革推進法案につきまして、5名の公述人の方々から御意見を伺います。
御出席をいただいております公述人は、公益社団法人経済同友会常務理事伊藤清彦君、早稲田大学法学学術院教授菊池馨実君、明治大学公共政策大学院教授田中秀明君、一橋大学経済研究所准教授小黒一正君及び社会保障担当官庁国際研究機構(ISSA)準会員・国際年金比較研究所理事長渡部記安君でございます。
註――公述人の方々の意見陳述は国会図書館の国会会議録検索からお読みください。
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。本日はありがとうございます。
伊藤公述人にお聞きをいたします。
先ほどの質疑の中で、経団連が提案をしている年金の新しいプランでも企業の負担分は変わらないということだったんですけれども、ちょっと確認をしたいんですが、基礎年金部分は保険料負担分が全部消費税に置き換わるので企業負担分なくなる、二階建ての分は労使折半で保険料負担は企業側にもあると。じゃ、基礎年金分でなくなった分は、ここの説明によれば、過去期間に係る年金純債務の処理に充てると、これがあるので企業の負担分は減らないという御説明だったかと思うんです。しかし、過去の債務分というのは当然年々減少していきますので、これやっぱりこの制度設計では企業の負担分は今よりも減らすという設計としか思えないんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(伊藤清彦君) 過去期間に係る年金純債務の処理に充てることと二階部分になる新拠出建て年金に拠出しますので、基本的に私どもは企業の負担は変わらないと思っております。
結局、これまで積み立てたお金と今後支払うお金がありますので、そういう意味で、大きく変えるということであればそうでしょうけれども、負担分は基本的に私どもは変わらないと思っておりますし、基礎年金部分については個人の保険料負担はなくなるということですので、個人にとっても更なる負担にはならないということで考えております。
○田村智子君 個人の保険料分は消費税分で、やっぱり消費税を労働者側は払うわけですから、負担がゼロになるということではないというふうに思うんですね。今の御説明でもやっぱり納得がいかないんですが、ここで論戦しても仕方がないので、企業負担分はやっぱり軽くなるという設計だとしか思えないので、そのことをちょっと指摘をしたいというふうに思うんです。
それで、どのような制度設計にしても、やはり国内経済が縮小している下では、運用などがうまくいかなくなれば、これはやっぱり年金制度って破綻をしていく、うまくいかなくなるということになると思うんですね。
これも伊藤公述人にお聞きをしたいんですけれども、消費税は、10%だけでなく、経済同友会としては17%まで引き上げるということを提言をしているということを前提でこの年金の制度設計が提案されていますけれども、それでは、10%、そこから段階的に17%と、そういう下でも国内経済を成長させることができるのかどうか、少なくとも国内経済を縮小はしないと言えるような政策がどのように取り得るのかということをお答えいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(伊藤清彦君) 私どもは、経済成長と歳出削減と歳入増という三位一体の取組姿勢で臨むべきであると考えておりまして、例えば経済成長につきましては、再生戦略の今方針が出ておりますので、もしそれを着実に実行していただければできると思いますし、私どもとしても、今実質2%、名目3%の成長をするに当たって、先日提言も出させていただいておるんですけれども、GDP成長率に対する外需の寄与度を現行の0・5%から1%から1・5%超で維持するということで、国家全体によるそのバックアップ体制を整備してパッケージ型のインフラの輸出増を図るとか、日本国内のみで通用するガラパゴス商品ではなくて、新興国の需要に合致した安価でシンプルで堅牢な商品や高級食材などを輸出するとか、環太平洋パートナーシップ、TPPへの参加を促進するとか、メディカルツーリズムや観光客の来日を増やして旅行収入を上げるとか、代替エネルギーの開発とか、そういう意味で、レアメタルなどの輸入を削減するとか、そういったことも考えておりますし、GDP成長率に対する内需の寄与度を1%を上回る水準で維持するということで、例えば、生前贈与税の3年間の凍結、削減による子や孫による、耐久財消費や住宅投資への増加を図るということとか、イノベーションを体化した設備投資への加速度償却適用を拡大して設備投資の増加を図るとか、合併、買収などによって売上高3兆円から5兆円規模の競争力の強い企業に再編するとか、高速道路、今後拠点となっていく空港、港湾など社会資本維持管理・更新投資を増加するとか、高齢者向け住宅供給促進税制適用の延長などによって住宅投資のかさ上げを図るというようなことで経済成長が達成できるのではないかということで提言もいたしております。
○田村智子君 今まで政府の出している成長分野ということだと思うんですけれども、国内全体の経済が消費税17%の下でも成長するというふうにお考えなのかどうか、菊池公述人にもちょっとお聞きをしたいと思うんですけれども。
同じ質問です。消費税が経団連の言うように17%ということになっても、年金制度が大丈夫と言えるような経済成長が図れるのかどうか、御見解をお聞かせください。
○公述人(菊池馨実君) 私、経済財政の専門家ではございませんけれども、いずれにしても、将来的には国家財政それから社会保障財政を支えるために相当な負担増を行っていかなければならないのは事実ですので、そうでなければ大幅に給付を削減するという選択肢しかないわけですから、その中で消費税でどれだけやるのか、あるいは所得税、相続税、贈与税等も含めて、そのバランスということもあると思いますので、私は今回は消費税引上げ賛成という意見を述べさせていただきましたが、それから……(発言する者あり)直ちにですか……(発言する者あり)将来的にですか。それは何とも言えませんが、ただ、これ以上引き上げるということになりますと、軽減税率等の適用と併せて考える必要があると思っております。
○田村智子君 違った角度でお聞きをします。
今、大規模な電機リストラなどが続いていまして、40代後半、50代の方でも早期退職を求められるという事態が全国で広がってきています。これは、社会保障と税の一番の担い手となる世代が職を失うという事態なんですね。再就職につながらなければ非正規雇用に移行せざるを得ないと、こういう労働者も増えてくると思います。
実際、今、20歳から59歳の方を見てみますと、その方々の国民年金に加入している方を見てみますと、4分の1強が非正規雇用の労働者になってきています。20代前半で見ますと、国民年金加入者の3割以上が非正規雇用の労働者ということになっています。
これは、今の社会保障制度を支えるという上でも大変重大な課題になってしまっていると思いますし、20代で非正規で国民年金加入と、恐らく保険料を納められていない方が大半ではないかなというふうにも思えるんですね。そうすると、先々の年金の受給もできない、無年金、低年金世代を非常に急増させかねないという問題があると思います。
このように雇用の破壊がどんどん進んでいたら社会保障制度の基盤が崩れていくのではないかということを私は大変危惧をいたしますけれども、経済界としてはどのような認識をお持ちなのか、伊藤公述人にこの認識と、それから解決すべきと考えるような点がありましたら、その点について御発言いただきたいと思います。
○公述人(伊藤清彦君) 経済同友会の伊藤です。
○田村智子君 済みません。
○公述人(伊藤清彦君) 非正規の問題というのは私どもも検討しておりますし、パート労働者の年金をどうするかとかというのも、正式な見解は出しておりませんが、重要な課題と認識しております。
先ほど御指摘のあった無年金になるということからすると、税で賄えば、65五歳になれば、皆様、お一人で7万円というのはどうか知りませんけれども、少なくとも7万円、御夫婦であれば14万円の年金が受け取れるということで、私どもは、それで消費税が充てられることについて、年金としては維持できるのではないかと思っております。
非正規の問題につきましては、引き続き検討をしてまいりたいと思います。
以上です。
○田村智子君 大変失礼いたしました。経済同友会の伊藤さん、ありがとうございました。
渡部公述人にお聞きをいたします。
私も、社会的連帯と所得再分配機能の充実、これが本当に日本の中で欠如をしていると思います。先ほどの、無年金、低年金になっても消費税分での最低保障年金があるというのは、本来企業が払うべき給料や保険料の分を消費税に付け替えるというようにも聞こえるわけですね。
この社会的連帯と所得再分配、これは所得税の最高税率の問題などの改善が先だということで御発言ありましたけれども、企業の負担の在り方についてということでも御見解をお聞きしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(渡部記安君) 非常に適切な御質問をいただきまして、ありがとうございます。
やはり、とにかく物を考える場合、私は3月末まで大学院の教授だったんですが、世界動向を見ましても、とにかく社会保障の制度というのを先生方はもう非常に複雑怪奇に考えられておるように思うんですが、ILOやISSAなんかに行きますと非常に単純なんですよね。今言いましたように、社会保障、連帯性、所得再分配機能、ポリティカルリスクの排除、こういうことから物を考えたら非常に単純明快なんですね。今、年金でも医療でも介護でも、地域別、職域別、ばらばらじゃないですか。そうしたら、そこに社会的連帯性も所得再分配機能もほとんど機能しないんですね。
ですから、こういうものは、全部社会保険でするということは、大数の法則というんですが、ルール・オブ・ラージ・ナンバーズというんです、一つの保険集団にまとめてやると。そうすると、企業の負担も個人の負担も非常に平準化していくと、そういう利点があるわけですね。ただ、その場合に、一生懸命努力する加入者とそうじゃない人、やはりそういうインセンティブを付けるということは必要になります。
○田村智子君 ありがとうございました。
終わります。