【12.08.06】社会保障と税の一体改革特別委員会――中央公聴会
子ども・子育て新システム関連法案について
○高橋千秋 委員長 (前略)
本日午前は、社会保障制度改革推進法案、子ども・子育て支援法案、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案及び子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、五名の公述人の方々から御意見を伺います。
御出席いただいております公述人は、日本労働組合総連合会副事務局長菅家功君、株式会社保育システム研究所代表吉田正幸君、株式会社日本総合研究所調査部主任研究員池本美香君、跡見学園女子大学マネジメント学部准教授鳫咲子君及び東京成徳大学子ども学部学部長永井聖二君でございます。
(以下、中略)
*註――公述人の方々の意見陳述は国会図書館の国会会議録検索からお読みください。
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。今日はありがとうございます。
まず、菅家公述人と吉田公述人に同じ質問をしたいと思います。
先ほど吉田公述人から、エンゼルプラン、新エンゼルプラン、これは失敗だったという指摘をされていて、私もそうだなと思っているんですが、その一つの理由が、やはりワーク・ライフ・バランスをどうしていくかということが完全に先送りにされて、その点でいえば、今回の子ども・子育て新システムや社会保障制度の改革というこの議論の中でも、またワーク・ライフ・バランスについては完全なる先送りになっていると言わざるを得ないと思っています。
例えば、育児休業がなかなか取れていないと言いますけれども、やっぱり若年層で有期契約の労働者が急速に広がっていて、この入口規制も、菅家公述人も大変御苦労されたと思いますけれども、これ労使の合意にならなかったという問題があります。契約期間がそもそも三か月とか半年という労働者がこれ育児休業取るなんていうのは本当に不可能と言っていいと思いますし、これはもう妊娠、出産、結婚そのものさえも難しいという事態が依然として残されてしまっていると。
有期契約でない労働者であったとしても、今全体でサラリーマンの平均年収が下がり続けていて、近年の数字で見ても1997年の467万円から2010年には412万円と、これで育児休業取ったらやはり給与の保障がない、減ってしまうと、これは取れない。こういう条件が全て解決が先送りされているというのは大変問題だと私自身は感じています。
そこで、非正規雇用の拡大に歯止めを掛けることや、あるいは平均収入が下がり続けるということについては、これは喫緊でやはり何らかの歯止めとなるような法制度が必要になると思うんですけれども、お考えをお聞かせください。
○公述人(菅家功君) おっしゃるとおり、非正規労働の拡大などにつきましては何らかの歯止めが必要だろうというふうに思っておりますし、そういう意味では同一価値労働同一賃金を実現するための様々な取組がこの間行われてきておりますけれども、今回の有期労働法制の改正問題もそうでありますし、あるいはパート労働法の見直しもそうであります。そういったことを通じまして、同一価値労働同一賃金を実現するような、そういった制度、施策というものが極めて重要になっているというふうに考えております。
○公述人(吉田正幸君) 労働分野の専門家ではないので適切なお答えになるかどうか分かりませんが、前回のエンゼルプラン、新エンゼルプランのころに比べると、一応議論のスタートからワーク・ライフ・バランスということを相当強く意識したということは今回事実だと思います。ただ、残念ながら、この関連3法案に至る最後の方で、具体的に、じゃ、ワーク・ライフ・バランスをどういうふうに推進するかという部分については、残念ながら決して十分ではなかっただろうというふうに思います。
幾つかの私は自治体で次世代育成支援の行動計画策定にかかわりまして、今もフォローアップの協議会がございます。自治体レベルでもワーク・ライフ・バランスということをかなり強く申し上げていますが、どうしても市区町村の段階で企業にいろいろかかわるというのがいろんな意味で難しいという現状も感じております。これはやはり国会の場において、国政の場においてワーク・ライフ・バランスを本気で議論をしていただかなければいけない。
ただ一方で、非正規雇用、いろんな議論はあるかと思いますが、子育て家庭の母親にとって非正規雇用は必ずしも悪いと私は思っていませんで、フルタイムでずっと働くことの方がどうかという議論もありますので、少なくとも希望する働き方が選択できると、そして、先ほどの同一労働同一賃金ではございませんが、そして条件だけはイコールフッティングを考えるという、これも総合的な御検討をいただくことが大事かなというふうに思っています。
以上です。
○田村智子君 社会保障制度のやっぱり根幹と言えるのが、どれだけ労働者の皆さんがまともに人間らしく働けてまともな給料を受け取れてということが絶対必要な条件だと思いますので、是非国会でもそういう議論をやっていきたいと思っています。
次に、池本公述人にお聞きをしたいと思います。
先ほど、御自身の経験も踏まえて、認可外の保育所を見て非常に質的にどうなんだろうかという不安を持たれたというふうにお聞きをいたしまして、私も非常に共感するところがあります。
やっぱり保育の質といったときには、職員配置の基準がどうであるか、それから施設の物理的な条件、これがどうであるか、やはり国の最低基準がどうで、それがどう満たされているかということが一つは客観的に求められてくる。それからもう一つは、やっぱり人員配置というだけでなく、そこで働く保育士さんが、教員も含めてですね、経験を積んで働き続けることができるかどうか、これが子供たちに対する保育、教育の質を担保するものだというふうに思っています。
その点で、現在の日本の保育やあるいは幼稚園のこの国の基準、海外も御覧になっているかと思いますので、どう思われるかということを率直にお聞きをしたいのと、もう一つ、今後、確かにこの新システムの下では認可外の保育施設にも公費が支出されることになって、そこが数が増えていって待機児童にこたえることができるということになったり、あるいは保護者にとっては保育料が、利用料が安くなるという、そういうことが起きてくると思います。同時に、やはり認可外と今なっている保育施設に公的な支出が入る以上は、そこでの人員配置であるとかあるいは施設の基準を引き上げていくために使われなければならないというふうに思っているんです。認可外においてもそこが引き上がっていく、保育の質を引き上げていくために使われるということが担保されなければならないというふうに思っているんです。
そのときに、先ほど株式会社の話ありましたけれども、私が危惧をしているのは、今認可外となっている保育の施策を担っている施設については、株式会社の使途制限がないんですね。株の配当金にお金を回してもいいことになっているんですね、認可外においては。新システムの下でも、認可保育所や幼保連携のこども園は、それは制限が、幼保連携は元々株式会社は入れないですから、子供のために使われる、使途制限掛かるというふうに思うんですけれども、やはり地域型と言われるところは公的支出を含めてその使途制限がどこまで掛かるんだろうかと、非常に不安なところがあるんですね。
少なくとも、株式会社においても、今認可外の施設においても、これは使途制限掛ける、子供のために使う、保育の質を担保するということが必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(池本美香君) 前半の方で職員の処遇のことについての御質問があったかと思うんですけれども、やはり保育の現場というのが女性の職場だったということがまず処遇が低いままとどまってきた一つの背景にあると思っていますが、今保育の現場には男性の保育士もどんどん入るようになってきておりまして、そして、そこで初めて男性の保育士がきちんと収入を得て安定した生活ができるレベルなのかということが問われてきているように思っておりますので、そういった長く働けるという。あと、幼稚園の方も少し、そうやって育児休暇を取って、また戻ってきて、それが教員としての質をむしろ高めているというような評価も少しずつ出だしている状況かと思いますので、そこはもう少し時間を掛けて、また、もちろん給付水準がきちんとここに確保されれば職員の処遇も上がっていく、またそう上がっていかなくてはいけないというふうに思っております。
それから、株式会社の使途制限については、まだ私自身としてこの株式会社の参入問題についてきちんと諸外国の事情が調べ切れていないのでここでちょっとお答えをすることはできませんけれども、やはり、公費を入れるからには、それがどのような形で使われるかということまでもきちんとチェックして、そこに対する議論も当然必要になってくるんだと思っております。
以上です。
○田村智子君 永井公述人にも、大変うなずいてお聞きいただきましたので、今の国の幼稚園や保育園の最低基準についての御見解や、株式会社の使途制限について御意見ございましたらお聞きしたいと思います。
○公述人(永井聖二君) 職員配置、施設等ということの問題で、基準の問題ですけれども、それが守られるべきであるということはこれは当然なんですが、同時に、私はもう一つ、基準とは別のところで、文化的な問題といいますか、こういう形で例えば保育士あるいは幼稚園の教員が働き続けることが非常に難しいような慣行があると、この点についても是非御理解をいただきたいと思います。この辺りを含めて総合的に考えていく必要が、質の維持ということのために考えていくことが是非必要なので、先ほど、基本的には評価の在り方の問題ではないかというふうに申し上げたのは特にそういうことでございまして、その辺りについて評価の仕組みというのをきちっとしていくということが非常に大事だろうと思います。
それから、認可外に対する公的な資金の投入ということで、その場合の使途制限についてですけれども、これはある程度はっきりとした形で報告を受けて明らかにしていく、検討していくということはこれは当然必要なことだろうというふうに考えております。
○田村智子君 最後に、鳫公述人にお聞きをしたいと思います。
子供の貧困の問題が、この社会保障制度の問題、議論しているときにほとんど議論がなくて、しかも、有効な対策というのが今出されている法案の中でほとんど見当たらないということに私も大変危惧を覚えています。子ども手当、児童手当を給食の滞納分やあるいは保育料として天引きするというふうなシステムができても、これは滞納の解決にはなっても、貧困の解決には全くならないわけですね。ここで国の施策が大変立ち遅れていると思います。
就学援助の例をお話しいただきました。ここで、私、非常に問題だと感じているのは、準要保護児童についての国の支出がこれまでも足りないと言われていた。それが一般財源化されたことで一層足りなくなった。保育も、公立保育所に対する運営費や建設費は一般財源化されたことで地方自治体の負担が大変重くなった。こういうやり方はいかがなものかというふうに思うんですね。
国が財政的に果たすべき役割、あると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(鳫咲子君) お答え申し上げます。
ただいまの一般財源化の問題ですけれども、本当に自治体でそのお仕事に携わっている方は、その自治体予算の中で自分たちの子供にかかわる、特に子供の貧困対策にかかわる予算が取りにくくなったという声をたくさん伺うところです。
そのためにも、実際の子供にかかわる保育であるとか教育であるとか給食であるとか、ものの支出がちゃんと確保できているかどうか、国としてきちっと監視していただく必要があると考えております。
○田村智子君 終わります。ありがとうございました。