【12.07.25】社会保障と税の一体改革特別委員会――消費税増税で介護保険はよくなるか
重すぎる利用料・保険料がさらなる負担増に
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
消費税増税は社会保障のため、介護、医療、年金、少子化対策の四分野に使うのだと総理は繰り返し主張をされています。そして、この特別委員会の質疑でも、消費税はおじいちゃんのため、おばあちゃんのためと安住財務大臣も繰り返し答弁をされておられます。それでは、消費税増税で社会保障制度が良くなるのか、介護保険制度に絞ってお聞きをいたします。
今、保険料は払っているのに必要な介護サービスが利用できないという方が大勢おられます。厚生労働省の介護のサービスの利用率の調査見てみましても、要支援、要介護1、2という、こういう区分では、提供できる介護サービスの4割程度しか利用がされていません。介護度の重い方の区分を見ても、利用率は5割とか6割程度なんですね。その要因として介護の現場から強く指摘されているのが、利用料の負担が重いという問題です。年金の減額、そして保険料の値上げ、これがずっと続いています。介護サービスに使えるお金は目減りする一方なんです。サービスのメニューをどんどん増やしたとしても、施設がつくられたとしても、利用料負担ができなければ結局介護サービスは受けられない。
まず、総理にお聞きします。消費税増税によって、こういう利用料の負担が重くて必要な介護が受けられない、こういう事態は解決がするのでしょうか。総理、お願いします。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 先に答えさせていただきますが、今回の一体改革では、どこで住んでいても必要な介護が受けられるように、在宅サービスの拡充ですとか介護職員の処遇改善、低所得者の保険料軽減などに取り組むことにしています。こうした取組によりまして、どこに住んでいてもそこに必要な介護が受けられ、安心して暮らすことができる、そういう社会を目指していきたいと思っています。
一体改革の介護の充実及び重点化、効率化の内容には、利用者負担の軽減というのは入っていません。
○田村智子 今お認めになったように、消費税増税やっても、利用料の負担を軽くするという、こういう改革案というのは何もないですね。これでは、先ほど来、在宅に、施設から在宅へだと、在宅のメニュー増やすというような議論をされていますけれども、そういうメニューが増えてもやっぱり、利用できるかどうか、こういう問題、解決できないんです。
この間、高齢者の方、孤立死だけでなくて、独り暮らしではない方が孤立死をすると、孤独死だけでなく孤立死をするという事件が相次いでいます。その中には、介護をしていた家族が突然死をしたことが原因と、そう思われる事例が幾つも見られるんですね。
今年3月、東京都立川市で90代のお母さんと60代の娘さんの孤立死の事件が起きました。持病もあった娘さんが突然死をして、その後、お母さんは助けを求めることができないまま亡くなられたという、大変痛ましい事件です。
お二人は社会から孤立していたわけではないんです。お母さんは介護認定を受けておられた、施設への入所を勧められてもいた、だけど利用料負担を気にしておられたというんです。そして、結局、施設入所はせず、ほかの介護サービスも利用せず、娘さんが一人で介護を担っておられた。これ、訪問介護もなかったために、娘さんに何か事が起きて、それから発見までは二週間もの時間が経過をしてしまった。もしも介護サービスにつながっていたら、そう思うと大変胸が痛みます。
先ほど、やっぱり利用料負担、これ軽減策ないというふうに言われました。これでいいのかということなんです。
総理にお答えいただきたいんですが、やっぱり今の利用料1割負担、これ重いんですよ。消費税で13・5兆円も増税しておきながら、利用料負担の上限額下げるとか1割負担について見直すとか、何でこれ踏み込まないんですか。今度総理お答えください。総理お答えください。社会保障は、だって総理に言っているんですから。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 今も、1割の軽減を行うのかということは、その軽減は含まれていませんけど、現在の制度でも所得段階に応じた月単位の利用者の負担の上限は設けています。一般の高齢者は月額3万7200円、市町村民税の世帯非課税のところは月額2万4600円、年収80万円以下の高齢者は月額1万5千円など、利用者の負担が過大とならないような仕組みは今もしているということです。
○田村智子 それは今の制度で、そして今のその制度があっても、先ほど御紹介したみたいに利用できていない方が現におられる。孤立死の事件にも結び付いているんですよ。
総理、何でこれやらないんですか。社会保障のためじゃないんですか。
総理、お答えいただけない。じゃ、いいです。小宮山大臣はもういいです。
じゃ、利用料負担について、新たな軽減策ないと大臣お認めになっている。実はそれだけではないんです。
野田内閣が昨年7月に社会保障と税の一体改革の成案をまとめたのを受けて、社会保障審議会介護保険部会、既に昨年10月から4回にわたって開かれて、どういう改革が介護保険で必要かという検討をやっています。11月30日には、社会保障・税一体改革における介護分野の見直しに関するこれまでの議論の整理という文書をまとめています。タイトルどおり、消費税増税と社会保障制度の改革の中で介護保険制度は見直すことになる、その際にはこういう検討が必要だろうと、そういう項目を示したものです。これ見ると、利用料負担は軽くなるどころか、今よりも重くなる見直しメニューが幾つも示されているんです。
抜粋したものを資料でお配りしていますので、見ていただきたいと思います。全部は時間の関係で紹介できません。幾つか紹介します。(資料提示)
要支援者の自己負担割合の引上げ、これは、介護度が軽いとされる要支援の方には、現行1割の利用料負担、これを引き上げる。例えばホームヘルプサービス利用すれば2割とか3割負担になる、こういうことじゃないのか。
ケアマネジメントへの自己負担の導入、介護プランを作るだけで利用料を徴収するということです。今はプラン形成やケアマネジャーさんと懇談することには利用料は掛かりません。介護サービスを受けて初めて利用料を払うことになります。それが、サービスを受ける前から入口で利用料を求めると、こういうことになります。
そして、特養ホームなどへの多床室への室料負担。特別養護老人ホームは、今は個室に入った場合にのみ室料の支払がありますね。これは自民党の中村議員、質問がありました、大変重い負担だと。それを、今度は四人部屋でも食費や光熱費以外に室料として負担を求める。
これは負担増検討メニューの一部なんです。これでは介護制度は良くなるどころかますます利用できない、そういう制度になってしまうんじゃないでしょうか。お答えください。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 とにかく、これからますます高齢者が増えていく中で、介護保険についてどういうふうに運用していくかというのは大きな課題だと思います。ただ、これは税か保険料か自己負担かしかないわけですので、その組合せをどうするかということだと思います。
昨年6月の社会保障・税一体改革成案の取りまとめを受けまして、社会保障審議会の介護保険部会では、1号保険料の低所得者の保険料の軽減強化ですとか介護納付金の総報酬制の導入とか利用者負担の増を含む給付の重点化、こういう議論を行いましたが、今、先ほどメニューに挙げて、そこに挙げていただいていますが、それも賛否両論いろいろございまして、なかなかその意見がまとまっていないということで法案の提出もまだできていないということなんです。総報酬制の導入などもしたいというふうに考えますが、これは経営者の方々からなかなか異論も強いところでございますので、なるべく引き続き議論を進めて、その給付の見直しの内容などについては国会での御議論の結果なども考慮いたしまして今後更に検討をして、なるべく速やかに法案が提出できるようにしていきたい。
3党合意にもございますので今後の介護についてもまた御協議もいただけると思いますので、そうした中で知恵を出していただければというふうに思っています。
○田村智子 税と保険料と自己負担しかない、そうですよ。だから、もっと国庫負担割合を増やしてほしい、そういう意見あります。私たちは消費税以外にもそういう財源見出す道があるということを提案していますけれども、皆さんは、少なくとも消費税で13兆5千億円増税するんだと、増税しておきながら利用料の負担が重くなることは仕方がないかのような、そういう答弁をされる。
これは、総理、立ってくださいよ。社会保障のためなんですよね。安住大臣だって、何だっておじいちゃんのため、おばあちゃんのためと言っているじゃないですか。なのに利用料の負担、これを求めるんですか、もっと重く。どうなんですか。
○岡田克也 副総理大臣 これ、厚労大臣も言いましたように、これから高齢化が進んでいく中でどうやって負担を分かち合っていくかの問題、委員は、いや、ほかに財源はあると。確かに、政党助成金とか大企業への助成とかいろいろ言われますが、それでどれだけのお金が集まるのかという問題も同時に指摘しなければなりません。やはり、しっかりと将来の安心、安全のために必要な負担をお願いしながらやっていかざるを得ない、そこをやっぱり正直に国民の皆さんに説明しなくてそれで何か成り立つような言い方をするのは、私はいかがかというふうに思っております。
○田村智子 聞いていることに答えていないんですよ。13兆5千億も増税をしておきながら、それなのに介護の利用料負担が重くなることは仕方がないということなんですか。どうなんですか。野田総理、お答えくださいよ。総理の計画でしょう。
○野田佳彦 内閣総理大臣 まず、国民の皆様にお願いする今回消費税の御負担は、13・5兆という今数字が出ておりましたけれども、社会保障の充実とそして社会保障の安定化ということで、全て社会保障に充てていくということであります。
その中で、今ずっと御議論をいただいております介護に関して言うならば、これは利用料負担の軽減という、そういう措置は入っておりませんけれども、在宅サービスの拡充であるとか介護職員の処遇改善であるとか低所得者の保険料軽減等々、介護保険制度の充実体制をつくっていくという項目は入っているし、地域包括ケアの実現を目指していきたいというふうに考えております。
基本的には、社会保障全てに言えることだと思いますが、これは負担なくして給付なしだと思うんです。その分の消費税を充てる部分もあります。消費税を充てないで対応するものもあります。そういう整理をして考えていかなければいけないと思います。
○田村智子 制度の安定と言われますけれども、介護保険制度は、保険料というのは高齢者の方ほとんど天引きですよ。ずっと天引きされて払っていながら、利用料の負担が重くて使えていない。こういう制度が安定して継続されたって意味がないじゃありませんか。13兆5千億も増税しながら、利用料の負担が重いという声にはこたえられないということだと、そういうことですね。
もうちょっとお聞きしたいんですね。例えば、特養ホームの多床室でも室料の徴収をするんだと、こういうメニューです。これ、本当にひどいですよ。今でも、特養ホームにやっと入れる、こういう連絡が来ても、入居できる部屋は個室なので月10万円以上の費用が掛かるんだ、こう説明されて入居を諦めている方たくさんおられます。先ほど自民党の議員の質問でも、13万、14万掛かるんだと、一体これが払えるのかと、そういう質問がありました。
今、国民年金の平均額というのは4万9千円ちょっとですよ。だから、今、地域歩きますと、特養ホームをつくってほしいというだけじゃないんです。国民年金で入れる特養ホームをつくってほしいんだと、これ本当に切実にそういう声が寄せられるんですね。それなのに、消費税10%になれば食費の負担は当然増えます。光熱費の負担も増えます。何もしなくたって負担は増えるんです。それなのに、室料も多床室であっても支払ってくれと求める。そうしたら、入居できないだけじゃないんです。今入居している方が払えなくなったら、これ特養ホームから出なくちゃいけなくなるじゃないですか。大変な事態ですよ。本当にこんなこと検討するのかどうか、お答えください。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 多床室からの室料の徴収については、ユニット型個室との負担の均衡を図る観点から一定の負担を求めることが必要だという意見がある一方で、多床室は低所得者の利用も多いという今委員御指摘の観点から室料の負担を避けるべきだという意見もあります。こうした意見があることから、社会保障審議会の介護給付費分科会で議論を行って、今回の介護報酬改定では多床室からの室料徴収は見送ることにいたしました。
先ほどから負担が多いとおっしゃいますけど、その分、様々、在宅医療、在宅介護の充実を含めてサービスを充実をする、それに見合った負担をいただくということで、先ほど申し上げたように一定の上限は設けて低所得者の方へは配慮もしていますので、負担が増えるけどサービスが増えていってそのメリットもあるということも併せて御考慮いただきたいというふうに思います。
○田村智子 これは大変もう平行線なんですけど、どんなにメニューが増えていっても、冒頭お話ししましたとおり、利用料の負担が重かったら目の前にメニューがあったって使えないという問題、ここが本当に解決しないまま残っていったら何のための介護保険の制度なのかって、このことを言わなきゃいけないと思います。
先ほど、ユニット型は室料の負担があってその公平性が求められるというふうにおっしゃいました。でも、ユニット型に現に入っておられる方からお聞きをすれば、御夫婦の一人が個室に入っておられる、住んでいるんだから室料負担だと言われると。だけど、水光熱費だって、一方で、家族で暮らしていられれば、夫さんが自宅にいれば水光熱費も払わなきゃいけない、そして自宅の家賃も払わなくちゃいけない、二重の負担になっていると。この個室の負担を何とかしてほしいんだというのが、それが今の高齢者の皆さんの声だと思いますよ。
おじいちゃん、おばあちゃんのためと何度も何度も答弁をされている安住大臣、これで本当におじいちゃん、おばあちゃんのための消費税増税って言えるんですか。
○安住淳 財務大臣 先生、個別にはやっぱりそれはそういうふうに例えば共産党の皆さんに御相談に行く方もいらっしゃるというのは当然だと思います。個別にはあると思います。
ただ、私どもの方から見ますと、やっぱり広く薄くどこかで負担をしないと今の制度のシステムの維持と改善というのはできていかないわけですね。介護の話は、これから15年たつと今掛かっているお金の2・5、6倍になっていくわけです、今の制度のままでも。それは、先生方からおっしゃられれば、ほかを削れと、防衛費削ってこうすればいいとかってお話になるかもしれないけれども、そこはちょっと我々と考え方は違うわけです。
そういう中にあって、ただ、統計的なことを言うとちょっとまたお叱りを受けるかもしれませんが、さりとて、現役世代の今働いている若い人、こういう人たちにじゃこの負担求めるかといったらば、私はそれはつらいと思うんですよ。だからこそ、統計的に見ると、実は高齢者の皆さんの持っている貯蓄とか資産は比較的若い現役世代よりも多いという統計があるということも事実なものですから、大変恐縮ですけれども、そこは多少余裕のあるおじいちゃんやおばあちゃんにはできるだけ消費してもらって、それは消費税でできるだけこういうものに例えば回していくとかいう、そういう仕組みも私はあっていいんではないかと思っております。
○田村智子 所得がないから個室には入れなくて多床室の特養ホームに入らなきゃいけないと、そういう人にまで室料の負担を求める案なんですよ、結局これはね。
先ほど小宮山大臣は、これは法案に盛り込めなかった案だと、そのとおりなんですよ。先ほど私が示したメニューというのは、昨年の介護保険法の改定のときにも、検討はされたけれども、余りに国民の反発が強くて盛り込むことができなかったんです、昨年の法改定のときには。ところが、法改定やった直後に税と社会保障の一体改革だと言われたら、また亡霊のごとく出てくるわけですよ。介護保険の部会の中では、例えば介護の現場の方からは、こんなことをやったら本当に介護が受けられなくなると大変強い批判の声が出されているにもかかわらず、もう執念持って、こういう検討が必要だ、負担増が必要だというメニューが何度も何度もこうやって提案をされるんですね。
小宮山大臣、法案に盛り込まなかったと。多床室の室料の負担求める、これは今後絶対検討しないと、消費税増税やってこんな負担求めるなんてことは今後検討しないということを言えるんですか。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 今回の改定の中では盛り込まなかったと申し上げただけです。
もちろん、豊富に財源があれば御負担は求めずにいいサービス提供できればいいですけれども、それはやはり一定のサービスが高齢化に伴って介護に必要だというときに、どのようにしてそれを負担をしていただくか、それは、いろいろ世代間、世代内の公平性も含めて、それはあらゆる方策を考えていかなければいけないというふうに思います。
○田村智子 結局、消費税は5%から10%、負担増と、その上、介護の利用料負担は今より重くなると、そして介護保険料も、先ほど来指摘ありました2025年には65歳以上の平均月額は8200円の大幅な引上げだと、これは厚生労働省の試算ですね。
総理、お答えください。これでどうして社会保障の機能強化なのかと。これは高齢者だけの問題じゃないんです。介護離職。今、40代、50代の男性の方が介護をするために離職をしなくちゃいけないと。だから、介護保険の機能強化をしてほしい、利用できる制度にしてほしいというのは、現役世代の切実な要求でもあるんですよ。これがどうして社会保障の機能強化なのか……
○高橋千秋 委員長 時間が参っております。
○田村智子 最後にお答えください。
○高橋千秋 委員長 野田内閣総理大臣、簡潔にお願いします。
○野田佳彦 内閣総理大臣 はい。
社会保障関係費、それぞれ伸びていきますけれども、介護の費用の伸びが一番著しいんですね。だからこの扱い一番難しいんだと思いますが、今回の一体改革の中でも、先ほど来出ているように、認知症の対策であるとか24時間訪問サービスであるとか、供給面における改善があるんです。したがって、利用者の負担のことだけで一点に絞って社会保障が充実されないという、そういう紋切り型の批判はちょっとやめていただきたいと思います。
○高橋千秋 委員長 田村智子君、時間が来ております。
○田村智子 負担ばかりが押し付けられるということがよく分かりました。
終わります。