【12.03.29】厚生労働委員会――子ども手当て削減法案
子ども・子育て新システムで保育料はどうなるか
○田村智子 日本共産党の田村智子です。
子ども手当は昨年の改定で支給額が引き下げられ、先ほどから議論がありますとおり、年少扶養控除の廃止と併せて多数の子育て世帯が負担増になってしまいます。厚生労働省の試算でも、夫婦、子供2人という世帯の場合で計算をしてみると、給与所得が政府の答弁では488万円以上であれば全て負担増になってしまう。この給与所得で488万円というのは平均所得以下なんですね。とても高所得の世帯だけ負担増だという、そういう結果ではないことになってしまいました。しかも、この法案は特別措置法という形ではなくて恒久法だと。
子育て世帯の多数、恐らく私たち先ほど試算してみて六割から七割近くが負担増になるだろうと思われるわけですが、これで子育て支援の強化というふうに言えるのかどうか。大臣の見解をお聞きいたします。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 これも今日も何度も答弁をさせていただいていますが、元々、2万6千円ということを前提に子供のための扶養控除廃止をするということをしたために一定以上の方のところが逆にマイナスになってしまう、このことは本当に心から申し訳ないと思っています。
その点につきましては、やはり手当もできることであればこれからまた上げる方向のこともまた考えたいとは思いますが、現実問題として、今の大震災の対応を含め、今の経済状況もございますし、財源からすると、当面は現金と現物と両輪でと思っておりますので、再三お話をしている、今、子ども・子育てビジョンで待機児さんへの対応とかさせていただいていますが、そのことと併せて間もなく提出をさせていただく、ここは御党は考え方違うということでなかなか御賛同はいただけませんが、就学前の全ての子供の居場所をつくるというようなこと、そういう現物給付とそれから働き方の見直しと総合的にやっていく中で子供・子育てを支援をするということは、変わらずに力を入れていきたいと思っています。
○田村智子 国際的に見ても日本の現金給付、子供に対する現金給付が少ない、私たちもそう思います。現物給付も本当に充実させなければいけないと思います。やはり、そういう問題や子供の貧困の問題が確かに正面から論じられることなく多数の子育て世帯が負担増となるような恒久法を決めてしまう、これは本当に私も情けない事態だというふうに思います。
この法案では、児童手当から市町村の判断で保育料の天引きができると、これも恒久法としての制度として盛り込まれました。どうしてこのような制度を導入するのか、御答弁ください。
○藤田一枝 政務官 保育料の天引きに関してでございますけれども、これは委員も御承知のように、平成22年度の子ども手当法の国会審議、あるいは地方自治体などからの御意見の中で、保育料や学校給食費などを支払うことが可能であるにもかかわらず支払わない親などに対して子ども手当が支給されることに対する強い御批判がございました。
このため、特別措置法と同様に、手当の受給資格者が保育料を支払うべき扶養義務者である場合には、市町村長の選択によって、手当の支払をする際に手当から保育料を徴収することができることとしたわけでございます。また、保育料だけではなくて、受給権者の利便性の確保という観点から、学校給食費、幼稚園授業料等についても、受給権者本人の申出によって、市町村が受給権者に代わってこうした費用を学校等に納付をする、こうしたことも認めることといたしております。
○田村智子 保育料については、もう市町村が判断すれば、天引きされたものしか保護者の下には行かないわけですよね。今御説明あったとおり、これは、自治体の中で保育料の滞納による負担、この問題を何とかして解決しなくちゃいけないと、こういうせっぱ詰まった要望があるんだと、これは私も理解をいたします。
2007年度の厚生労働省の調査を見ますと、保護者の4・3%、徴収すべき保育料の1・7%が滞納となっている。市町村言うとおり、払えるのに払わないと、こういう悪質な滞納については毅然とした対応を行うことは私も必要だと思います。しかし、この4・3%、やはり今の経済状況や給与所得の落ち込みを考えれば、悪質なケースがほとんどだということは、私はこれとても言えないんじゃないかと思います。むしろ、保育料が若い世代にとって本当に安定的に払えるような額になっているのかどうかと、この検討が必要だと思います。
今日、資料をお配りいたしました。これは夫婦共働きで、例えば夫が300万とか妻が200万、こういう世帯500万の給与収入、所得ではありません、給与の収入、そして子供さんが2人という場合で、一体保育料がどれぐらいになるかということを資料にしてみたものです。
国の保育料徴収基準、まず見ていただきたいんです。3歳未満児の場合は月4万4500円年間にすれば53万4千円にもなります。先ほどの給与収入が500万円というのは、ボーナスが年3か月ぐらいあると考えれば、月収にすれば33万から34万円。この月収の一割を超えて保育料で納めなければならない、これが国の基準になっているんですね。これは余りに負担重いと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 そういう実感を持たれる方が多いということは、私も経験上そのように思います。ただ、国が定める保育料の基準額につきましては、保育所での保育に要する保育費用を基礎として、保育料を徴収した場合に家計に与える影響を考慮し、児童の年齢等に応じて定めています。今、これ3歳未満を挙げていただいていますけれども、3歳未満は本当に全体に費用が掛かるので、国が出しているお金もそれだけ当然多いわけですね。
この基準額を踏まえまして、各市町村で保育料を定めていますが、保育を受ける人、受けない人との公平、こういうこともまた一方である中で、利用者の方の負担能力に応じてこれは適切な負担、その適切な負担についての多分考え方がいろいろあるんだと思いますけれども、そういう形で判断をしていくことが必要だと考えています。
○田村智子 先ほどまでの答弁と大分違う観点で答弁されているようにしか思えないんですね。子育て世代で少子化の原因になっているのも経済的な負担が一番重いからだと。それで、実際、月収の1割を超えて保育料で払うと。これを重いと認められないというのは、私はこれからの子育て支援が一体どうなってしまうのかなって大変今聞いていて不安に思われました。
ということは、子ども・子育て新システムで保育料がどうなるかと、これも非常に不安になります。今示されています素案の資料を見ますと、消費税増税、これを財源として子ども・子育て支援の予算は7千億円充実をするというふうに示されています。そのうち4千億円は施設の増設など量的拡充に充てて、3千億円が質的拡充に充てられると。では、この質的拡充の中には保育料を今よりも引き下げるという部分が含まれているのかどうか、お答えください。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 新システムが導入された後の利用者負担につきましては、応能負担の考え方に基づいて、現在の利用者負担の水準を基本に所得階層区分ごとに考えています。認定時間、これは利用時間ですけれども、それの長短の区分ごとに負担を設定することにしていますが、その具体的な水準につきましては、今後、その財源の在り方と併せて検討していきたいと考えています。
○田村智子 そうしますと、負担減らないんですよ。児童手当で行った分から保育料を引いても、これ4万幾らなんて全然、それ児童手当も足りませんからね。児童手当は手元にない、そして負担は減らないと。これ本当に深刻な問題を残したままに新システムに見切り発車していくことになるなと言わざるを得ません。
先ほど地方自治体は保育料を軽減、その実態に見合うようにいろんな工夫をされているという答弁がありましたけれども、確かにそうなんです。先ほどの資料を見ていただくと、国基準よりも相当保育料を安く抑えようという努力をしています。小宮山大臣の地元である世田谷区は同じ3歳未満で1万7800円ですからね、相当な負担ですよ。これはどうなるかというと、国が、保護者からは4万4500円取ってくださいね、その分を引いて保育に掛かるお金はこれだけでしょって運営費を渡すから、差額分は全部地方の持ち出しになっちゃう、地方単独負担になってしまうわけですよね。
これが一体どれぐらいになっているのか。総務省にお聞きをしたいと思います。
保育所や幼稚園の運営について、保育料の軽減あるいは職員の人員配置、この上乗せなどで地方自治体が質を担保している。この国基準を超えた財政措置は地方単独事業、幼稚園、保育所、それぞれ幾らになるのか、お答えください。
○米田耕一郎 総務省自治財政局官房審議官 昨年の11月に社会保障関係の費用に関する地方単独事業の調査を発表いたしました。この調査によりますと、平成22年度決算ベースでございますが、地方単独事業、保育所に係るもので8054億円、幼稚園に係るもので2544億円、合わせますと合計で1兆598億円になっております。
○田村智子 現在でも地方の持ち出し分は1兆円を超えていると。これは、認可外の保育施設やサービス、これは入れていないんです。そこにも地方はいっぱいお金出しています。これも考慮すれば1兆2千億円の持ち出し。この中には公立保育所の運営費を一般財源化した影響は含んでいません。
あれだけの地方の超過負担を何とかしなければ、7千億円たとえ手当てをしたとしても、これが本当に施設の増設につながるのか、保育料の引下げや保育環境の改善につながるのか、大変疑問です。これ解決するためには、やはり国の基準を改善をして地方持ち出し分を下げるということをやらなければ駄目だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 恐らく、なるべく保育を始め子供の居場所を充実させたいという思いは委員も一緒だと思います。その際に、充実をし、質も量も上げていくためには財源が必要で、その財源を何によって担うかということの考え方の問題だと思います。これは、やはり税金でやるのか、社会保障全般ですと保険料というのがありますけれども、この場合は自己負担の保育料でどういう割合でやるのかということで、先ほど申し上げた、今回、新システムの中では、幼稚園と保育所併せてできるようなところをなるべくインセンティブを掛けていきたいと考えていますけれども、全体の同じ年のお子さんとの公平性ということも一方でございますし、そういう中で今の仕組みにしていますので、そこはどこに軸足を置いて考えるかの違いでございまして、そうした中で、新システムの中ではやはり0・7兆円、これにほかのものも合わせて1兆円超えるお金でやっていきたいというふうに考えていますので、なるべくその財源の確保をしっかりした上で、どこを国がやり、どこを地方がやるのかと、そのことも含めて、これからまた子ども・子育て会議という当事者の方が入って運営の在り方、基本方針を決めていただく、そういう場もつくりたいと思っていますので、そうした中で御議論をいただきながら詰めていきたいというふうに考えています。
○田村智子 大変長い答弁をいただいたんですけれども、国基準見直しをするつもりはないということが答弁の中では貫かれているんですね。
そうすると、地方自治体は保育施設を増やせば増やすだけ持ち出しはどんどんどんどん増えていってしまうわけなんですよ。こういう待機児童が多くて保育所の整備が急がれている自治体では、そのために何が起きているか。横浜市や川崎市などでは、来年度施設を増やさなければいけない、その財源確保を理由にして保育料の引上げが行われようとしているんです。結局、また子育て世帯の今よりも負担増というのを生み出してしまっている。
しかも、7千億円の新たな財政投入、これも財源は消費税の増税だと。ですから、あした、消費税増税法案と一緒に新システムの法案が閣議決定されようとしているわけですよね。となると、消費税の増税は当然子育て世帯には大変な負担ですから、保護者にとっては結局負担増だけしか残らないことになってしまう。これはそうとしか言えないですよ。保育料は国の基準4万4500円のままでいいなんていうふうにおっしゃるわけですから。
これは私、とても子育て支援に資するということにならないと思いますけれども、大臣、短くでいいですから、いかがでしょうか。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 それは、今回5%をお願いしている消費税のうち、今の安定化の部分に4%、1%を充実させる中で子供・子育てのところに七千億というのは、今までのGDP比の子供・子育てに充ててきたことからすると、非常に多い割合を充てようとしています。
ですから、一方的に子育て世帯に負担が掛かるということではないと考えていますし、消費税の上げさせていただくということについても、一方でしっかりと所得の把握できる制度を取りながら、給付付き税額控除とかいろいろなことを考えていますし、低所得の方には、この社会保障の改革の中でも年金の増額ですとか、それから保険料の軽減とか併せてやっておりますので、全体としては子供のところにしっかりとウエートを置いているということは間違いないと考えています。
○田村智子 ウエートを置いても、実際の子育て世帯の家計で見れば、これは負担増避けられなくなると言わざるを得ないと思います。
この保育料に関してもう一つ質問をしたいんですけれども、子ども・子育て新システムでは、保育料を滞納した場合、子供への対応がどうなるのか、これずっと検討中ってされているんですね。昨年も私、この委員会で質問で取り上げました。現行の制度では、児童福祉法24条で保育の実施義務を市町村に課していますので、保育料滞納を理由にして保育所を退所させることはできません。認定こども園も、公立の場合は保育実施義務がそのまま公立こども園に課せられているので、退所させることはできません。
新システムでは、施設と保護者の直接契約です。これ、どうなるのか。昨年、取り上げたときには大臣は、子供たちが困ることのないようにしっかりと配慮しながらで、結論は検討したいでした。どうなるんでしょうか。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 新システムの中では、利用者の負担能力を勘案した応能負担、これを基本として利用者負担を定める仕組みとしていますので、保育料の滞納が生じにくい仕組みになっていると考えています。その上で、現在の保護者が市町村と契約する仕組みから、保護者が施設と契約する仕組みに変わるため、利用者負担の確実な支払、これを担保していくことが必要になります。
そこで、改正後の児童福祉法の第24条に規定をする市町村の保育の確保に関する責務、これも踏まえまして、利用者負担の確実な支払を担保する仕組みを設けることにし、これによりまして保育料の滞納に対応できるようにしていきたいと思っています。
利用料の滞納が生じた場合の具体的な対応につきましては、子供たちに必要な保育が提供されることが大切、それは以前私が申し上げた、子供たちが困ったことにならないということは、それは変わりございませんので、そういう中で、今後は関係者からも御意見を聞きながら具体的に検討を進めていきたいと考えています。
○田村智子 保育料の応能負担というのは、今も応能負担なんですよ。それで、これからは滞納が生じにくいなんというのは、一体何を根拠におっしゃっているのかなと思うんですね。
この間ずっと、もう民主党政権になってからも、我が党は2010年ぐらいからずっと同じ質問を繰り返していて、ずっと子供をどうするのかは検討していきたいと。あした閣議決定なんですよ。子供がどうなるかがいまだ検討中なんというのは、私、これはちょっとどうなっちゃうのかなと、あり得ないと思いますよね。
それで、障害児施設、障害者自立支援法によってやはり直接契約になりました、直接契約に。その場合に、厚労省がどういう通知を示しているのかも資料にお配りしているので是非見ていただきたいんですね。その中では、利用料滞納の場合の契約解除があり得るということが繰り返し述べられているんですよ。障害児の入所施設でさえも契約解除があり得ると言っている。
認定こども園のQアンドA、厚労省、文科省が示したものにも、滞納がある場合には退所させることも生じ得ると書いてあるんです。ただ、市町村には保育実施義務があるので、他の保育施設の入所など適切な措置を講ずるようにと。
私、何度もこだわっていますが、この保育の実施義務の規定を削るんですよ。で、どうなるのかと聞いたら検討中と言う。
あした閣議決定ですから、退所させることはない、これぐらい明言すべきですが、いかがでしょうか。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 その義務と責務の話は委員と予算委員会でもさんざん議論をさせていただきましたが、そこは考え方の違いなので、それは義務を掛けて、保育に欠ける子だけをするのではなくて、全ての子供に契約をさせて必要な学校教育、保育をすると。そのことで市町村には責務を掛けると仕組みを変えていくわけですから、そういう意味では、子供が困らないようにということは、退所させることがなるべくないように、そういう意味ではいろいろなフォローはしていきたいと思います。
○田村智子 なるべくないなんという適当な答弁は、ちょっと余りにひどいじゃないですか。滞納があるって、確かに親御さんにいろんな問題がある場合はあります。でも、どんな家庭環境に育っていようが、子供に対する権利というのは守らなきゃ駄目なんですよ。だから、退所させては駄目だというのが今の制度としてある。それが、なるべくなんというふうに言われたら、これはとてもじゃないですけれども子供の権利を守ることにならないと思うんですけれども、大臣、退所させないと、そういう制度にすると約束してもらわなかったら困ると思うんですけれども。
これ、お答えできないようですので、こんなことで子ども新システムをあした閣議決定するなんて、私とても許せない。そのことを申し上げて、質問を終わります。
児童手当法の一部改正法案 反対討論
○田村智子 私は、日本共産党を代表して、児童手当法の一部改正案に反対の討論を行います。
本法案は、単年度ごとにつないできた子ども手当を児童手当の改定として恒久制度にするものですが、その財源は年少扶養控除廃止による増税です。これでは、世帯収入488万円以上の子育て世帯は手当との差引きで負担増となり、本法案の目的である子育て支援に反するものと言わざるを得ません。
今国会は、社会保障と税の一体改革が大きな焦点となっています。財源不足を理由に、いかに国民負担を増大させるかの検討に政府・与党が血道を上げる一方で、財源不足の大きな要因である少子化、不安定雇用の増大、国民所得の落ち込みなどへの対策が棚上げされていることは異常です。少子化の要因として、子育ての費用負担の重さ、保育施設の不足があることは政府の調査でも明らかです。現金給付と現物給付は我が国では共に不十分であるという認識で、子育て支援策に思い切って予算を充てなければなりません。
ところが、政権交代時に約束した給付制奨学金はいまだ実現されず、高校授業料も教育制度としての無償化の継続が危ぶまれる。その上、子ども手当としてスタートさせた現金給付の充実が結局は多くの子育て世代にとって負担増で終わってしまう。しかも、こうした子供に直接かかわる政策が、昨年来、国会運営の駆け引きの道具とされ、一部政党間の協議によって左右され続けている。これでどうして少子化の克服に向かうのでしょうか。
子育て支援の最大の施策として政府が今国会に法案提出を予定している子ども・子育て新システムも、消費税増税を財源とし、保育の質と量の拡大に7千億円の公費を投入すると言いますが、地方の超過負担には遠く及ばず、質の向上にも、保育料の引下げ等、子育て負担の軽減にもつながる保証はありません。現実に保育料の引下げなどにつながらなければ、子育て世代には消費税の負担増だけが押し付けられてしまいます。
子育て支援への予算の拡充は、大企業や大資産家へのばらまき減税の中止、大規模開発や原発関連予算の思い切った見直しなどによって行うべきです。また、企業の社会的責任を明らかにし、不安定雇用、若者の低賃金などの問題も急いで解決しなければなりません。
日本共産党は、安心して子育てができる社会の実現へ全力を挙げる決意を申し上げ、反対討論を終わります。