【12.03.22】予算委員会公聴会――外交問題について
日米安保・軍事同盟にたよるだけでよいのか
○石井一 委員長 ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。
休憩前に引き続き、平成24年度総予算3案につきまして、公述人の方々から御意見を伺います。
午後は、政策研究大学院大学学長白石隆君、岡本アソシエイツ代表岡本行夫君及び地球システム・倫理学会常任理事・元駐スイス大使村田光平君に公述人として御出席をいただいております。
この際、公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。
本日は、平成24年度総予算3案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、会議の進め方について申し上げます。
まず、お一人15分程度で着席のまま御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。(以下、中略)
*註――参考人の方々の意見陳述は、国会図書館の会議録検索からお読みください。
○田村智子 お聞きをいたします。日本共産党の田村智子です。
今日は、安全保障の問題で外交と防衛力ということが基本になるのかと思いますが、若干防衛力の方に重きが置かれた御意見が続いたのではないかというふうに思います。
お一人に一問ずつ質問させていただきます。
国境の紛争が日本周辺諸国とそれぞれにある、異常な事態だ、私もそう思います。白石公述人にお聞きをしたいんですけれども、それに対して自衛隊の配備がどうこう、それから米軍の基地がどうこうと、その前に、やはりまともな国境紛争の解決のための外交努力は行われているのかと、ここもしっかり見る必要があるんじゃないかと思うんですね。
例えば、中国との紛争、尖閣諸島でいえば、これ歴史の事実と国際法に照らして尖閣諸島は日本の領土だと、私たちもそういう論を持っていますし、日本政府もそういう立場です。では、そのことが正面から話し合われた経過があったかと。
1972年の国交正常化のときや、78年に日中平和友好条約を結ぶとき、92年に中国が自国の領土であると領海及び接続水域法で採択をしたとき、いずれもまともな議論をやっていない。そして、中国漁船との問題が起きたときも、遺憾の意を表明したり抗議をしたりはしたけれども、まともに議論したのかと、歴史の事実、国際法に照らすと。ないんじゃないかと思えるんです。
これ、ロシアとの千島列島の問題もそうですし、北朝鮮では、核開発の問題、拉致事件の問題で六か国の中で独自の話合いのルートを持っていないのは日本だけではないかという事態だと。
そうなりますと、私は、アメリカの抑止力に頼るがために、逆に日本が自らの外交力を欠如させていると、そういう現状があるんじゃないかと思うんですけれども、御意見をお聞かせください。
○公述人(白石隆君) ありがとうございます。
外交というのは、私は常にその裏に力というものが、いろんな意味で国力というものがなければいけない、その国力の中には当然のことながら強制力も含まれております。そういうものを無視して外交力と言ってもほとんど意味がないだろうというのが第一に申し上げたいことでございます。
それから二番目に、それでは、例えば尖閣諸島の問題について中国と外交上の協議があったかと。私はつまびらかではございませんけれども、例えば中国の領海法というのはこれは中国政府が一方的に作ったものであって、それがどういう意図でどういう解釈の下に施行されるかということはいまだに説明されてないというのが事実だと私は考えております。ですから、その意味でいえば、中国の方がこの問題についてははるかに国際的に説明すべきことが多いんではないだろうかと思います。
○田村智子君 今日は御意見をお聞きする場ですので、論争というふうにはしたくはないんですけれども。
そういう説明がなされていなければ説明を求めて、落ち着いた環境で話し合うという努力が私は必要だというふうに思うんですよ。そういう場が、いろんなチャンスがありながらやってきてないんじゃないかという問題意識がありまして、ここは是非、これは国政上の問題でもありますので、引き続き国政上の課題としても私たち追及していきたいなというふうに思っています。政府に対してです。公述人に対してではありません。
岡本公述人にお聞きをします。先ほど、米軍基地は普天間の基地を沖縄県内に移す、新たな基地を造るということはこれはもう不可能ではないかと、かなり私どもと立場の違う岡本公述人からもそういう御意見がお聞きできまして、これは、ある意味沖縄にとってはエールだなというふうに思っているんですけれども。しかし、20年掛けてでも海兵隊の拠点となる基地を本土に持ってくると、これが必要だという御意見だったんですね。
ちょっとお聞きをしたいんですけれども、海兵隊というのはやはり防衛力ではなく、その位置付けは上陸部隊であり、最も最前線に立つ部隊であると、これはもう明らかなことだと思うんですね。それを本土に置くことが必要だということは、やはり何らかの日本にとって危惧する状況が起きたときにはこちらから攻撃ができるよというメッセージを伝えることが抑止力として必要だということなのかどうかということなんですね、お聞きしたいのは。
こういう海兵隊というのは、歴史的にその役割を見ても、例えば今、私は検証しなくちゃいけないと思っているのはイラク戦争ですけれども、イラクがテロとかかわっている、この事実はいまだもって分からなかった。それから、核兵器及び大量破壊兵器がある、これが集団的自衛権の発動の根拠となってアメリカは攻撃を仕掛けたわけですけど、イギリスも一緒に仕掛けたわけですけれども、しかし、それもいまだ見付かっていない。今残っているのは、フセインの独裁政権を倒すためと、これだけが言わばイラク戦争の理由として残っていることだと思うんですね。言わば、何か自分たちと考え方も違う、将来不安の材料になり得る、そういうところはこちらから攻撃をしてもいいんだという、まさにそういう戦争になってしまったと思うんです。
そのことをアメリカ政府もイギリス政府も今検証をやっています。議論もやっています。でも、日本は日米同盟で賛成だと小泉首相が言ったけれども、いまだまともな議論がないまま、日本にアメリカの海兵隊が必要で、二十年掛けてでも本土に移すことが必要だ、それはやはりイラク戦争と同じように、何かありそうなときにはこちらから攻撃をするというメッセージがやはり安全保障上必要だということなんでしょうか。
○公述人(岡本行夫君) 日米両国政府は1960年に声明を発表をいたしておりまして、日本とアメリカの側から攻撃を仕掛けることはないということは断言しております。その姿勢は今も変わらないと思います。
イラクについては、確かにアメリカは見通しを誤りました。根拠のないことではなかったと思います。1990年代にサダム・フセインは大量のクルド人、2万人を超える人々を毒ガスで殺りくいたしました。それがまだ残っているはずだという思い込みでありましたが、これは結果的になかった。そういう意味では、アメリカが掲げたイラク戦争の大義というものがなくなってしまった。それはもう否定できないと思うのでございます。
しかし、アメリカの中に、気に入らないところは倒すために軍隊をどこでも派遣するんだという、そういう先験的な政策判断があるとは私は思いません。海兵隊というのは、おっしゃるとおりの攻撃部隊ということは持っておりますが、基本的にあれは何かといいますと、この太平洋アジア地域で最も重要なのは海軍のプレゼンスであります。飛行機は常時飛んでいるわけにいきませんし、陸上部隊が動き出せばこれは大変であります。海軍、しかし、その海軍の能力というものは陸上に投射されることがありません。そこで、その橋の役をするのは、ブリッジの役をするのが海兵隊であります。ですから、当然、海軍の一部であるわけです。
ですから、海兵隊を日本が今駐留をさせているということは、特定の目的を持って、さあ、これから北朝鮮へ、中国へ攻め入るための部隊として置いておこうということではありません。全体としてのアメリカの海軍戦略、これが先ほど来申し上げているように日本の抑止力として働いているわけでございますから、これは、そのようなものが必要なくなるような戦略環境の変化が起こるまでは私は日本にいてしかるべきだと思っております。
○田村智子君 もう一点、岡本公述人、今の御意見の中で、イラク戦争は結果として誤りであったというふうに今御意見いただいたと思うんですけど、そうすれば、やはり日米同盟と言っている以上、そして米軍基地が、日本に巨大な部隊がある以上、日本の政府としても、日本の国会としても、やはりそのイラク戦争の是非なり、これの歴史的検証というのは必要だと思うんですけど、いかがでしょうか。
○公述人(岡本行夫君) 日本はアメリカと結託してイラクに行ったわけではありません。あれはあくまでもアメリカの政策でございます。アメリカも政策的な判断を過つことは度々あることでございます。これからもアメリカに対して日本は言うべきことを言っていくべきだと思います。
ただ、なぜイギリスのブレア首相がアメリカのイラク政策を支持して、アメリカとともにイラクに派兵したのか。それは、一緒に行動することによって初めて自分たちの意見がアメリカに通るからだということで彼らは決断したわけであります。日本はまだそこまでは行っておりません。ただ、これからもアメリカの政策的な間違いと日本が信ずるところがあれば、それをただしていくのは当然のことだと思います。