【12.02.07】予算委員会−−被災地の雇用問題について
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
被災地の雇用の問題についてお聞きをいたします。
昨年の被災地における人口動態が明らかになりまして、地元のメディアも大きく取り上げています。石巻市からの転出は五千四百五十九人、気仙沼市は二千三百七十五人が転出と。特に若い世代が仕事を求めて被災地を出てしまうんじゃないのかと、本当に危惧の声が起こっています。
私、中でも雇用状況の厳しいハローワーク気仙沼にお聞きをしたんですけれども、一月の求人数は一千八百五十八件、これに対して職を求める方は四千三百人近いんですね。ところが、こういうときに政府は被災地での失業給付の打切りを始めました。三月末までに東北沿岸部で七千人以上が打切りとなります。仕事を求めて被災地を出ざるを得ない、この事態に拍車を掛けるような失業給付の打切り、これは今からでも見直しをすべきではないでしょうか。
○国務大臣(小宮山洋子君) 被災された方々への失業給付の給付日数につきましては、震災特例で百二十日延長した後、十月一日から特に被災の被害の大きかった沿岸部を中心に更に九十日延長してきました。
ただ、これは、先日も委員会で申し上げて、衆議院の方でしたか、申し上げましたけれども、被災された方々がそれぞれやはり再建されるためには、生活をこれは仕事に何としても結び付けなければいけないということで、これからはその仕事に結び付ける方に全力を挙げたいと思っているんです。先月、私も釜石に行ってきたこともお話をしていますが、募集を掛けてもこの失業保険がある間はなかなか手を挙げてくれないとおっしゃっている事業主の方もいらっしゃる。全部が全部そうだとは思いません。いろいろな形でフォローはしたいと思いますが、失業給付から今回は仕事に切り替えたい。
そういう意味で、三次補正でも予算も付けました「日本はひとつ」しごとプロジェクトで、地域の産業と一体になった、例えば中小企業のグループ補助金で仕組みをつくり、そこへ厚労省が行っております、正式に採用していただくと最大二百二十五万円給付をするという、その助成制度が非常に生きているというお話も伺っています。
特に、広域延長給付で今延びていらっしゃる方が一月から切れ始めてピークは四月ぐらいと聞いておりますので、こうした方々に対して、さらに、ハローワークにその求人情報の送付、セミナーの開催案内の送付、ハローワークのサービスメニューなどをお知らせをすること、電話連絡で近況を確認すること、また、いろいろと精神的にも困っていらっしゃる方もあるので臨床心理士などの心のケア、そうしたことを実施すること、また再就職の意欲が非常に高い方ですとか、あるいは母子家庭のお母さんなど困っていらっしゃる方には、特に担当者制を取っておりますけれども、きめ細かく更にやるということ、また求職者支援制度を含む職業訓練にしっかり積極的に誘導することなどを今月二日に改めて労働局に対して指示をいたしました。
何とかお一人お一人にしっかり仕事を結び付けるように全力を挙げていきたいと思っています。
○田村智子君 産業の復興には二年、三年と掛かるんだと、グループ補助金だってやっと一部の事業者が受け始めたところなんですね。今目の前で失業給付切れていく。今すぐ仕事をつなぐという点ではどういう政策考えているのか、お答えください。
○国務大臣(小宮山洋子君) 震災が起こってすぐの段階では全てのことが仕事に結び付くような形を基金事業としてやってまいりました。今回はそのつなぎの雇用と本格的な雇用とこれは並行してやらなければいけないというふうに申し上げています。
今、事業主の方も先のことが見通せないので、本来は長く雇いたいけれども当面は短くしか雇えないと。その場合には、そういう短い雇用でもつないでいって、さらに、将来は安定的な雇用に結び付くということの、やはり御本人にとって将来の見通しが付くような、そういうプランも含めてハローワークの方で担当者制で指導するようにというふうに言っているところでございます。
○田村智子君 政府の雇用政策いろいろ見たんですが、今すぐ雇用をつなぐということでは緊急雇用事業、これ県に基金を積んで行っています。
私、その条件ですね、どんな条件になっているのかと、宮城県のその募集の一覧ずっと見てみました。そうすると、例えば県の事務補助、一日五千四百九十円で週四日、月九万円になるかどうかです。市役所内での事務補助、一日五千七百円、週五日、これでやっと月十二万円になるかどうかと。下刈り作業などは単価高くて一日七千五百円、ところが勤務は月約十六日間、一か月で十二万円ですよ。条件見てみれば、二か月という勤務条件も少なくありません。
これで仕事はあると、とにかく雇用をつなげというのでは、私、余りに冷たいと思います。今すぐ雇用をつなぐということだったら、やっぱりつなぐにふさわしい条件になるように賃金や勤務期間についてこれ早急に改善すべきではないですか。
○国務大臣(小宮山洋子君) これも先日見てきたところで、NPOの方などがいろいろな形でこの基金を使って若い人も含めて雇用してくださっているとか、行政だけではなかなかできないところはNPOの力も借りて新たな仕事をつくり出す、そんなことも、例えば釜石市のNPOの方が全国からのNPOの中継地点になっていろいろな形で仕事づくりの展開をしているとかですね。いろいろな知恵を使ってやっていきたいというふうに思っているところでございます。
ただ、それで、全体的に事業の復興計画がしっかりと決まって、町が高台に移すのか、どこに事業所を再建できるのか、そうしたことが決まらないとなかなか安定した雇用にならないということは事実ですので、そういう意味では、細かい求職でもなるべくハローワークに集めていただいて、各地にしごと協議会というのをつくっておりますので、それは労使を含めて、地元の方にも入っていただいて、なるべくハローワークで仕事のことを、一つオーダーが来たら、求職が来たら、何人もの、三人も四人もの方にそれを当たって、とにかく結び付けるという努力をしているということです。
○田村智子君 だから、雇用がつなげるように賃金や勤務条件の改善に国も真剣に取り組むべきじゃないかとお聞きしているんですよ。
○国務大臣(小宮山洋子君) それはそのように努力をしております。
○田村智子君 それを是非やっていただきたいのと、同時に、今グループ補助金などを受けて確かに事業所が立ち上がり始めています。ここで従業員の方、再雇用していくと、これも安定した雇用に直結する大切なことだと思います。被災者の方も元の職場で働きたいと、こういう要望が強いともお聞きしています。
ところが、この再雇用への支援というのが本当に立ち遅れているんです。第三次補正予算でやっと、再雇用であっても一人につき二百二十五万円まで人件費を補助すると、こういう制度がつくられました。ところが、再雇用者は雇い入れた人数のうち八割以内でなければ駄目だと。
なぜ八割以内でなければ駄目なんでしょうか。
○国務大臣(小宮山洋子君) もちろん再雇用の方も支援いたしますけれども、一方で、新規学卒者とか、今回の震災で夫を亡くされた方とか、そういう新しい方にも道を開くという意味で、必ず一人以上は新たに雇い入れていただきたいということを入れているところです。
○田村智子君 事業規模の小さいところでは、一人以上、一人にはならないですよね。本当にこれは八割以内という要件が現場では厳しいという声になっているんです。
総理も、津波で産業が壊滅的なダメージを受けたその地域を視察に行かれた、水産加工業者で立ち上がった事業所を御覧になったと、私もその報道を見ました。私も同じ事業所に行ってお話伺いました。
この事業所は、工場が津波で大破をしている、一旦従業員は解雇せざるを得なかった、再建のためにまずやったことは、この解雇した従業員一人一人に連絡を取って元の従業員の方に来ていただいて事業再開の準備をすると、これが出発点だったんですね。再建の最初の一歩は、元の従業員の再雇用からと。これは、私、当たり前のことだと思います。そこをしっかり支えてこそ新規募集の条件も広がるんじゃないでしょうか。
総理、あなたの見てきた現場にもっと即した支援が必要ではないでしょうか。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 被災地の水産加工業、再興した後、その会社の中を拝見をさせていただき、再雇用された皆さんが元気に、しかも生き生きと働いている姿を見ました。
その上で、加えて、でも、厚労大臣がお話ししたとおり、再雇用も大事だと思います、でも、でき得れば、新たなまさに雇用を求めている人たちもいらっしゃるわけで、そういう人たちに対する配慮も必要ということで、今厚生労働省がそういう考え方の下で施策を進めているものと承知をしています。
○田村智子君 生産量はゼロ、事業収入もゼロ、事業再開には新たな借金も抱える、一度途切れた取引がどこまで回復できるかも分からないと、この状態で給料を払うわけですよ。人件費補助を受けられるかどうかと、これは本当に切実な要求なんです。
そもそもこの再雇用への人件費補助、厚生労働省ずっと否定してきたんです。なぜ再雇用には支援がないのかと現場から強い怒りの声も上がって、やっと第三次補正でこの制度ができた。ところが、三次補正が成立したのは十一月二十一日だから、それ以前に再雇用をした事業所はそのときには制度がなかったからと補助の対象外にまでされています。本格的な予算を遅らせた政治の責任を被災事業者に押し付けるようなやり方だと私は思うんです。
これは、やっぱり期日遡って対象にする、まずは再雇用だけでも補助する、新規募集掛けていたらまず再雇用だけでもこれは補助すると、こういうことをやる必要があると思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(小宮山洋子君) 今おっしゃったように、現地からの御要望も踏まえてこういう形をつくりました。ただ、制度の成り立ちからして、遡るということはなかなか難しいというふうに思います。
この事業復興型の雇用創出事業が今月から募集が開始される予定ですので、そこを着実に実施をしていきたいと思っています。
○田村智子君 本当に復興を政治の責任で遅らせるようなこと、あっちゃいけませんよ。一日も早い産業復興、地域復興と言うのならば、ちゃんと現場の声にストレートにこたえる、現場行ったんですから、総理。これ、約束してください。
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 現場、被災地の声に寄り添いながら対応するというのが基本であります。いろんな声をしっかり受け止めていきたいと思いますし、しかも、これからはまた復興庁も発足をいたしますので、ワンストップでそういう声に対応できるようにしていきたいと思います。
○田村智子君 制度をつくっても被災事業者が使えなかったら意味ないんです。是非、線引きすることなく支援していくと、これ、踏み込んでやっていただきたい、強く要望したいと思います。
次に、原発事故の被害に遭った中小業者への賠償金に関連してお聞きをいたします。
原発事故で営業も暮らしも苦境に立たされている中小業者にとって、やっと支払われた賠償金、これは事業をつなぐ頼みの綱です。ところが、この賠償金を全額、年金事務所が差し押さえるという信じられない事件が起きました。
ここに、そのAさん、酪農業の会社を経営するAさんに送り付けられました白河年金事務所の差押予告通知があります。
このAさんは、不況で経営が苦しくて社会保険料を滞納していた。でも、何とかやりくりして、震災の前の年にも分納を数回にわたって行ってきていたんですね。原発事故で原乳は出荷停止、牛の移動も禁止と、それでも事業を諦めないで頑張ってきたと。ところが、東電と賠償の交渉を始めてすぐに、昨年十二月、分納の相談もないままに突然この差押えの予告通知が送り付けられた。そして、損害賠償金が振り込まれた直後、一月二十日に賠償金の全額が差し押さえられました。事業の命綱のこの賠償金三百九十万三千百七十一円、実はこれ、滞納額を超えています。一方的に、昨年十二月と今年一月の保険料分も、Aさんに何ら通告することなく全部差し引いたんです。結局、賠償金は全部年金事務所が取り上げますよというやり方をやった。これ、絶対許されないことだと思いますよ。ちゃんと調査して正すべきだと思います。
○国務大臣(小宮山洋子君) 被災の状況を勘案するなど、滞納者の心情に十分配慮することが特に被災地では重要だというふうに日ごろから言っております。
ただ、このケースは、このお配りいただいた資料にもありますように、平成十八年から滞納がございまして、そこのところでやはり保険料徴収の公平性を確保する観点から必要に応じて滞納処分というのはしていくということだと思うんです。
これも、差押えの予告通知というのはもう何回にもわたってお送りをしてございまして、その中で、払うという連絡もいただきながら払われなかったと。それで、口座を差し押さえたら、そこに入っていたのが東電の賠償金だったと聞いています。
それで、ただ、今委員からの御指摘もございますので、年金事務所の方ではこういう原則に従って対応したものと思いますけれども、経緯や事情などについては改めて確認したいと思いますし、それが徴収し過ぎだということであれば、その滞納額以上の差押えについては差額を返還をするということは当然のことだと思っております。
○田村智子君 当事者の方からお話聞いたら、違いますよ。これ、震災後一度も年金事務所と相談ってなかったんですよ。それで、賠償金払われると分かって、Aさんが面談したときに、賠償金も払われるから私、支払いたいと思うと言っていたんですよ。それがいきなり予告通知で差押え全額なんて、これ、おかしいですよ。
こんなこと、滞納額が多いからなんていうので認めていたら、賠償額はどこに消えちゃうかという問題ですからね。厳正に調査するだけじゃなく、こんな差押えやるべきじゃない、これ言うべきだと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(小宮山洋子君) 事実関係はしっかりと調べて精査をしたいと思います。
○田村智子君 今日はもう一問聞きたかったんですけれども、実は国税庁が、中小業者に支払われた賠償金のうち事業利益の減収分についても税金掛けると、こういう方針もあるんですね。このことについてもしっかりと再検討を願って、質問を終わります。
ありがとうございました。