日本共産党 田村智子
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【11.12.08】厚生労働委員会−−B型肝炎救済法とポリオ不活化ワクチンについて

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 北海道で五人の原告が提訴をしてから二十二年、ようやくB型肝炎救済法にまでたどり着こうとしています。これはひとえに、様々な苦しみを抱えながら政府や政党に声を上げ続けた原告の皆さんの力によるものだと思います。心からの敬意と、除斥問題解決への決意を込めて質問をいたします。
 法案では、肝がん、肝硬変死亡者について、発症から二十年を超えた被害者を救済の対象から外しました。政府は、こういう方が提訴した場合、基本合意に基づいて真摯に対応すると述べています。しかし、過去を見ますと、HIV訴訟で、血液製剤による感染が確認された方が、提訴が除斥期間を四日超えたからと国は和解に応じないで、解決まで六年も掛かったという事例があります。こういうことを繰り返すのは絶対に許されません。是非、反省に立って真摯にかつ迅速に、内容もその御苦労の重さを踏まえたものになるよう、まず冒頭、求めておきたいと思います。
 質問をしたいのは、この除斥とは別に、このままでは救済の枠組みに入れない方々のことです。
 この法案の救済対象は、一九四八年以降、乳幼児期に集団予防接種を受けた方、そして基本合意によれば、母子感染ではないということを証明する必要があって、お母さんやお兄さん、お姉さんの血液検査を求めています。しかし、お母さんが亡くなられている、お兄さんやお姉さんはおられない、そういう方は多数いらっしゃる。血液検査による立証が物理的に不可能だという方をどうするのか、お答えください。

○国務大臣(小宮山洋子君) 集団予防接種による感染であることを証明する方法につきましては、一年以上にわたる和解協議の結果、原告の皆さんと締結をした基本合意書で詳細に規定されています。現在、裁判所の仲介の下でこの基本合意書に沿って認定手続を進めているところでございます。
 今御指摘があったように、この基本合意書で定められた要件を満たさず和解金の支給が受けられない方については、感染経路を問わず全ての肝炎患者を対象とする肝炎総合対策で実施をしております医療費助成ですとか医療提供体制の整備などを通じて支援を充実させていきたいというふうに思っています。

○田村智子君 従来の肝炎対策で救済する、それでいいのかということを問いたいと思うんです。
 北海道での最初の訴訟は今までも質問にありました一九八九年、国の責任を認めた最高裁判決は二〇〇六年。それでは確認したいんですが、この判決を受けて、予防接種での注射針、注射器の使い回しによるB型肝炎感染について、被害者救済のための調査、国民への注意喚起などを行ったという経緯はあるのでしょうか。

○政府参考人(外山千也君) 既にこういう、まず、原因となりました注射器の連続使用につきましては昭和六十三年に通知を出しているということでございますし、それから、肝炎対策につきましては、感染経路はいろんなものがありますから、肝炎対策全般の中で進めてきているところでございます。
 ただ、平成十八年最高裁判決におきまして集団予防接種により感染したとするための要件が示されましたけれども、具体的にどのような証拠があればその要件に該当するかということはこの五人の方のケースだけではなかなか一般化できなかったということでございまして、今回の和解協議で初めてその決着が付いたので、そういったことも含めて、そういった要件に該当する方についてはどうぞ申請してくださいと、対応しますというふうな形で今広報も行っているところでございます。

○田村智子君 私は、原告が五人だったからという答弁が確かに衆議院でも参議院でも続いているんですけれども、これ、人数の問題ではなかったと思うんですね。集団予防接種で感染の事実が確認をされたと。そうである以上、大規模に同じ危険にさらされた方、感染した方がいると、こう考えるのは当然のことだったというふうに思うんです。
 私、やっぱりこの二〇〇六年の最高裁判決を厚生労働省まともに受け止めてこなかった、五人だけ解決すればよかった、こういうふうにしてきたことが、結果、救済をずるずると遅らせることになったと、こう言わざるを得ないと思うんです。そのことは、これは過去の問題じゃない、私、現政権の問題でもあると思っているんです。
 象徴的に示したのは、昨年十月二十八日、参議院財政金融委員会での当時の岡本厚労大臣政務官の答弁ですよ。これ、正確を期すために読み上げます。
 「昭和二十年代、注射針の話が、国は危険性を認識しておきながら六十三年まで放置をしていたという話ではありましたけれども、この点は若干事実関係は違うと思っておりまして、昭和三十三年の段階で少なくとも注射針については使用しないことを通知しておるわけですね。ただ、シリンジ、筒の方についての使用について、予防接種というのは採血と違いますから、接種する、少量ずつ接種するわけですから、基本的にシリンジの中に血液が入るということを想定をしておらなかったということも是非御理解をいただきたい。」、わざわざこういう答弁している。要約すれば注射針の使い回しをやらせない責任を国は昭和三十三年に果たしているんだと。とても御理解などできない答弁をされているわけですよ。
 二〇〇六年最高裁判決は、昭和四十四、五年以降もツベルクリン反応検査では注射針、筒とも連続使用され、その他の予防接種では筒が連続使用されたと事実確認を判断をしている。そして、国は注射針、注射筒の交換等を各実施機関に指導してB型肝炎ウイルス感染を未然に防止すべき義務があったと、札幌高裁の判断、これを是認しているんです。
 注射針の連続使用も昭和三十三年以降続いていた、国の指導責任があった、この最高裁判決をちゃんと同じ立場で受け止めるのか、それとも岡本前政務官が言うように認識が違うという立場なのか、これはっきりさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。政務官、お願いします。

○大臣政務官(藤田一枝君) ただいま委員の方から御指摘がございました答弁については、昭和六十三年通知の発出以前の国の対応や認識についての事実関係を御説明するという趣旨で行ったものでございまして、昭和三十三年に予防接種について注射針を一人ずつ交換するよう省令により措置したことについて申し上げたところでございます。
 先ほども御議論がございましたが、過去の我が国の予防接種行政においては、昭和二十三年に注射針を一人ごとに消毒すること、二十五年にツベルクリン反応検査及びBCGについて、そして三十三年に予防接種について注射針を一人ごとに交換すること、また三十四年からは予防接種後の異常があれば報告をすること、そして昭和六十三年にはWHOの勧告を踏まえ注射針及び注射筒を一人ごとに交換することを指導するなど、その時代の社会情勢や医学的知見に応じた指導を行ってきたものと考えています。
 しかし、こうした経過も含めて、平成十八年最高裁判決において、遅くとも昭和二十六年には、集団予防接種の際、注射針、注射筒を連続して使用した場合にB型肝炎ウイルスの感染の危険性について認識すべきであったとされ、国の責任が認められたわけでございます。この最高裁判決を重く受け止めまして、そしてこの基本合意書を締結したところでございます。

○田村智子君 重く受け止めてというのは同じ立場であるんだということを、うなずいていらっしゃるのでそれを私確認したいと思うんですよ。
 この二〇〇六年の最高裁判決を当時真剣に受け止めて、国民一人一人への注意喚起を行ったり救済策の検討を行っていれば家族の血液検査で母子感染を否定することができたと、こういう方は多数おられたと思うんです。それを行わず、集団訴訟も三年以上も争って救済策ずるずると遅らせた、それがために救済への道を閉ざされた被害者にどういう責任を果たすのかと。これは、従来のこれまでつくってきた肝炎対策があるからいいでしょうと、これでは済まされないと思うんですよ、この経緯を考えれば。
 私は、せめてどういう責任を果たすのかということでやっぱり検討していただく、せめて恒久的な肝炎対策がこのままでいいんじゃなくて拡充をする、肝硬変、肝がんへの医療費の支援に踏み出すなど検討すべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(小宮山洋子君) 平成十八年の判決後すぐに対応していればという委員がおっしゃることも考え方としてはあるというふうには思います。ただ、それを重く受け止めて和解の協議をその間してきたということは御理解をいただきたいと思っています。そこで締結いたしました基本合意書に基づいてしっかりとこれから対応をしていくということは先ほど来おわびとともにお約束をしているところでございますので、なるべく早くその全面解決をまずこの点について行うことに御協力をいただきたいと思います。
 今おっしゃった従前の肝炎対策だけでは足りないという御趣旨も分かりますが、今は基本法に基づいて今年五月に策定されました肝炎対策基本方針に基づいて、医療費の助成ですとか検査やら研究の促進も、先ほどほかの委員の御議論にもございましたが、新しい薬を開発するように一層努めていくことなど、研究開発も含めて全体として取り組んでいきたいと考えています。その対策、一層強化をしていくということはしっかりと努めていきたいと考えています。

○田村智子君 基本合意になった裁判だって三年以上争っているわけですから、その間にお母さん亡くなられた方だっていっぱいいらっしゃいますよ。そういう反省をしっかりと政策で示していただくことを重ねて強く要望したいと思います。
 関連して、私、ちょっと急を要する事態でもあって質問したいのは、ポリオワクチンのことなんです。二〇一一年、経口ポリオワクチン、生ワクチンの接種率、これ、全国と関東ブロックの前年比確認したいんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(外山千也君) 生ポリオワクチンの接種者数につきましては、今年四月から六月までの接種者数を前年の同時期と比較いたしますと、全国では一七・五%の減少、関東では二二・四%の減少でありました。

○田村智子君 これは大変重大な事態なんですね。これ、東京ではもっと多いだろうと、半数ぐらいが受けていないんじゃないかというふうに言われているんです。
 一方で、政府も注意喚起をしていますけれども、中国、これ新疆ウイグル自治区での集団感染が原因と思われますが、十一月三十日時点で十八人のポリオ発症を確認しています。発症せずに感染しているという方はもっと大勢いるはずで、北京在住者の中にも感染者が報告をされています。現在、成田―北京の航空便は一日十便以上、羽田―北京でも五便はあるんですね。となりますと、日本で感染が広がるという危険性を軽視をできないんです。
 確認もう一つしたいんですけど、現在単価ワクチンとして導入が検討されているサノフィパスツールのワクチン、これ承認をされたのは世界ではいつになるんでしょうか。

○政府参考人(外山千也君) サノフィパスツール株式会社によりますると、同社の不活化ポリオワクチンは一九八二年にフランスで初めて承認されたというふうに聞いております。

○田村智子君 二十八年前に承認をされて、既に先進国で不活化ワクチンを使っていないのはもう日本だけと。これはこの委員会でも何度も取り上げられてきました。私は、以前の本委員会でも不活化ワクチンの特例承認を求めました。薬事法に定める特例承認の要件は、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病の蔓延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品、また当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと、そして外国で販売が認められているものなど、安全性が確認されているものですね、こういう要件があります。
 現状を考えれば、ポリオの不活化ワクチンはこうした要件を私は満たしているんじゃないだろうかというふうに思うんです。これまでの経緯はいろいろあると思うんですけれども、特例承認について、これは緊急に検討していただきたい。これまた検討をずるずると遅らせて予測できたその被害を日本の中で起こしてしまうと、こういうことを繰り返すのは絶対に許されないと思うんです。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(小宮山洋子君) 委員が御指摘のとおり、生ポリオワクチンから不活化ポリオワクチンへ変えようという切替えの決断が遅かったと私も思っています。その決断をしてからは鋭意その生産を奨励をするなど努めているところですが、今月末から順次薬事申請が出される予定です。これは四種混合について。また、不活化ポリオ単独のワクチンについても申請が出される予定でございますので、可能な限り早くやっていく必要が、今御指摘のように中国などアジアでまた出ているということもありまして、不活化ワクチンがしっかり使えるようになるまでの間は生ポリオワクチンを是非接種してくださいということは再三お願いをしているんですが、それでも保護者の皆様の気持ちは分かります。
 そういう意味で、私どもも、今までその申請が出てから承認するまで一年掛かっていたんですが、来年度の終わりごろというのは私も遅いと考えまして、何とか、これは春と秋に接種することが多いので、来年度の秋には間に合わせるように今督励をしているところでございます。ただ、先ほどから御議論があるように、安全性はしっかり確認をしなければいけない。それをした上で、なるべく早くに承認ができるようにということで今進めているところですので、御理解をいただきたいと思います。

賛成討論

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法案及びみんなの党提出の修正案に賛成の討論を行います。
 注射針や筒の使い回しがB型肝炎ウイルスの感染を広げる危険性があると国が認識したのは、遅くとも一九五一年、最終的な使い回しの禁止通達が出されたのは一九八八年、国の責任を問う先行訴訟の提訴は一九八九年、そして原告勝訴が確定した最高裁判決は二〇〇六年、これらの経緯を振り返れば、国がB型肝炎感染被害の実情を調査し、対策を検討し、その救済策を取る機会は過去幾度となくあったはずです。
 長年にわたる国の不作為が、母子感染ではないという立証が不可能な被害者を広げ、多くの被害者を除斥期間に追いやった。その責任は余りに重大です。全国訴訟の提訴から三年以上の年月を経ての和解、そして基本合意、ここでも国は救済範囲を狭めようと除斥期間による線引きに固執し、原告の皆さんは身を引き裂かれるような苦渋の選択での合意となりました。
 司法では超えられない限界を立法によって乗り越えてほしいという原告の要求にこたえる責務が私たち立法府に課せられています。本法案は、残念ながら除斥期間での線引きを残しました。また、発症後二十年を過ぎた重症患者を対象としないという基本合意を後退させた内容を含んでいます。除斥期間による差別を是正するとしたみんなの党の修正案を盛り込み、本法案を成立させるべきと考えます。
 また、B型肝炎感染被害救済の財源のためには所得税増税が必要とする議論は、被害者と国民を分断し、社会的な偏見、差別を助長しかねず、断じて認められません。
 予防接種によるB型肝炎感染被害の全面救済への第一歩として原案に最低限賛成はいたしますが、被害者の人権を最大限尊重した更なる救済策、肝炎対策の抜本的な拡充を求めて、討論を終わります。