【11.07.28】厚生労働委員会――年金制度が老後の生活保障となるよう制度改善を
国民年金・企業年金に関する法案の質問
○田村智子君 質疑の順番に大変御配慮をいただき、ありがとうございます。日本共産党の田村智子です。
法案の質問に入る前に、先日取り上げました生活保護受給者のクーラーの購入について、もう一点要望したいことがあります。
生活保護を受けている方がクーラーの購入のために生活福祉資金の貸付けを利用したくても、貸付けが収入認定をされて保護費がその分削られてクーラー購入ができない、あるいは、そもそもそれを理由に貸付けが受けられない、そういう問題を十四日の委員会で取り上げました。細川大臣からは収入認定しない方向で検討させたいという答弁がありまして、早速七月十九日にその旨の社会・援護局長の通知が出されました。各地からは、これでクーラー購入できるとか、是非困っている方に知らせたいとか、私のところにもそういう声が届いています。迅速な対応をしていただいたことに、まず感謝申し上げたいと思います。
この生活福祉資金は、申請があれば随時貸し出すというものではなくて、社会福祉協議会で貸出しの可否を協議して決定する、こういう仕組みになっています。この協議が一か月に一回という自治体もありまして、今申請をしても、場合によっては八月に協議をして決定して、実際の貸出しが九月近くになってしまう、こういうことも考えられるんですね。
せっかく通知を迅速に出していただいた、やはり熱中症対策としての措置でもありますので、速やかな貸付けが行われるよう、もう一歩手だてをお願いしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(細川律夫君) そのエアコンの購入の問題、前回の委員会で指摘をされまして、委員御指摘のように取扱いをさせていただくようにいたしました。
そこで、さらに、社会福祉協議会での審議が遅いとこの暑い夏のエアコンが間に合わないではないかと、こういう御指摘でございます。
したがって、その趣旨もよく分かりますので、これについては、もう既に早急に審議をして対応するようにという指示を私の方からもいたしまして、通知もさせていただきました。そういうことで対応させていただきましたことを報告いたします。
○田村智子君 どうもありがとうございます。是非活用されるように私たちも知らせていきたいと思います。
では、法案の質問に移ります。国民年金保険料の未納分を遡って納付できる年限を現行の二年から十年に延長する、これは国民の年金受給権を保障して無年金、低年金の問題を解決する上で必要な措置だと考えます。しかし、衆議院の委員会で、三年間の時限措置とする修正が行われました。
法施行から三年が経過すると納付可能年限は元の二年に戻ってしまうと。なぜこのような修正が行われたのか、提案者の方にお聞きをいたします。
○衆議院議員(中根康浩君) 田村先生、御指摘をありがとうございます。
原案では、恒久的な制度として、徴収時効を経過した国民年金の保険料について、納期限から十年間であれば本人の希望により保険料を納付することを可能とすることとしていました。これは御案内のとおりでございます。これは、既に何らかの理由で徴収時効を過ぎてしまった保険料を納められるようにすることで将来の無年金、低年金の発生を防止し、国民の高齢期における所得の一層の確保を支援しようとするものでございます。
しかし、その一方で、こうした措置を恒久的な制度とすることは、国民が納期限内に保険料を納付しようとする意欲を低下をさせ、かえって未納者の増加を招いてしまうということも懸念をされるところでございます。そこで、修正により、本措置を施行日から起算して三年を経過する日までの措置とすることといたしました。
○田村智子君 毎月払わずに、ためて払えばそれでいいんだという方が増えてしまうんじゃないかと、これは衆議院の方でも議論されていました。
しかし、後で納付する方というのは、納めなかったときの運用利息分を上乗せして割増しで払わなければならなくなりますよね。まとめて十年分、これ大変な支払額で、毎月払えるという方がわざわざまとめて負担が重くなるのに後払いするということは私は考えにくいんではないかというふうに思うんです。
過去に遡るほど上乗せ分も大きくなるわけで、それでも払いたいというこういう方が、意欲がないから払わなかった、モラルハザードだというふうには、これ、なかなか言えないんじゃないかと思うんです。やはり払えなかった方というのは、事業がうまくいかなくて一定期間保険料が納められなかったなど、主に経済的な事情で未納期間がある方だと思います。それが原因で無年金や低年金になりかねない。
やはりそういう方々の老後の生活保障のために何とかお金をやりくりして未納分を納付する、これはモラルハザードとは違うんじゃないかというふうに思うんですが、もう一度お答えいただけませんか。
○衆議院議員(加藤勝信君) 田村委員にお答えをしたいと思います。
そもそも、いろんな事情の中で、所得が低い等々払えない場合にはいわゆる免除制度がございます。免除制度を御活用いただければ今でも十年間遡って保険料は納付できると、こういうことにそもそもなっているわけであります。
今確かに御指摘のように、いずれにしても保険料を支払うというその気持ち、姿勢はこれはモラルハザードではなくて、むしろモラルに沿ったものとはもちろん言えると思いますけれども、先ほど中根議員から説明させていただいたように、逆にこういう特例措置を恒久化するということになると、結果的に、じゃ、例えば、払ってくださいと言われても、いや、別に金利払えば後でもいいでしょうと、こういうことが蔓延した結果として、先ほど大臣からもお話ありましたけれども、ただでさえ低い納付率というものが減少し、またいろんな意味での問題を起こすんではないかと。
そういう意味でのバランスの中で、三年間の特例措置ということで修正をさせていただいたと、こういう経緯でございます。
○田村智子君 この免除の制度というのはなかなか、収入が少ないからということで免除されるという方はまずないんですね。本当にもう無収入に近い、あるいは無収入の方、極めて限定的だというふうに私は理解しているんですけれども。
それから、今の御答弁の中にはなかったんですが、衆議院の議論の中では、後からまとめて支払うということになると、年金財政を安定させる上でも問題があるということが議論をされているんですね。
そこで、厚生労働省にもお聞きをしたいんですけれども、毎月納付をする場合と利息分と一緒にまとめて納付する場合、どちらの納付方法であっても年金財政全体にはほとんど影響を与えないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(榮畑潤君) 今回の法案では、国民年金保険料の遡り納付可能期間を二年から十年へと延長させていただき、保険料を納付するようなことが遡ってできるようになって、その後の年金受給につなげることができるようにするというふうに考えております。
その遡り納付をしていただくときには、過去のその時々の保険料に十年国債の表面利率等を勘案して一定額を加算した額を遡り納付として行っていただくことを考えてございまして、同一人が遡り納付をする場合とそのときそのときの保険料をきちんと納付する場合とを比較いたしますと、別に年金財政に影響はないというふうに考えてございます。
○田村智子君 影響はほとんどないと。
やっぱり未納月分を可能な限り減らしていく、で、無年金あるいは低年金の問題解決する、これがやっぱりむしろ年金財政だけでなく国の財政全体に対しても良い影響を与えるようになると思うんですね。
これから未納の方が増えてしまうんじゃないかということは、私は別のやり方で未納にならないような手だてを取るべきだと思います。もう過去に未納になってしまった方が本当に可能な限りそれを解決していく、これから経済的に苦しいような事情が生まれちゃって過去に未納分をつくってしまったという方が救済される、そういうことを考えていくと、やっぱりこれを三年の時限措置とするのはいかがなものかというふうに思うんです。
やっぱり年金保険料未納の理由の一つとしては、二十五年を満たせそうにないと。これは、特にロストジェネレーションの世代など、四十代になってやっと何か収入が得られるようになったと、払えていないと、しかしここから払っても二十五年に達しないよという方がやっぱりもう諦めてしまう、こういうことはあり得ると思うんです。
そう考えますと、やはり保険料納付可能期間を時限的でなく十年間とすることは、むしろ保険料を納めようという、こういう動機付け、インセンティブになるんじゃないかと思うんですが、提案者の方、いかがでしょうか。
○衆議院議員(加藤勝信君) その辺は認識という問題があると思うんですが、今御議論のように、納付時期に納めるか、あるいは十年待って金利分を納めるか。同じように両方とも確実に納められるんであればおっしゃるようになると思いますが、どちらかというと、やっぱり年限がたっていくと思った以上に保険料や金利が負担が上がって結果的に納付につながらないんではないかと。そういうことも含めて私どもは三年ということに修正をさせていただいたわけでありまして、ただ、いずれにしても、本法案では十年間のこの特例を三年間に限ってでありますけれども実施をするわけでありますから、まずその間にしっかり対応していただくということと、そして先ほど申し上げた、いずれにしても免除制度をどういうふうに活用されるかという御議論はまたあるとは思いますけれども、そういうものを活用していただく。
さらに、これは私の私見にもなりますけれども、基本的にこの無年金者の議論の中には、一つは今の受給資格要件二十五年間、これをどうするのかと、こういう議論も併せてやっぱりしていく中で対応していくべき問題ではないかと、このように考えております。
○田村智子君 二十五年間どうするかが、なかなか三年以内に決着付くかどうかということもあるんですけれども。
私、やっぱり例えばもう毎月二か月分ずつとかで五年掛けて払いたいとかという方もこれ出てくるんじゃないかというように思えるんですよ。ですから、やはり経済的な理由で未納となっている方々への救済策は時限的ではなく恒久的につくっていかなければならないし、わざわざ三年の時限措置とする修正には私はこれはちょっと納得ができないと。
じゃ、この質問はここまでですので、提案者の方、ありがとうございました。
次に、企業型確定拠出年金についてお聞きをいたします。
そもそも労働者の退職金や企業年金が株などの資金運用に委ねられて、その運用リスクを全てその労働者個人に負わせるという仕組み自体が老後の生活資金保障としてふさわしくないんじゃないかと、それが私たち日本共産党の考え方です。この四〇一kプランの発祥の地であるアメリカでも、リーマン・ショック以降、議会で見直しや廃止の議論さえ出ています。このリスクの大きい運用に更に資金投入を促進させる仕組みづくり、これはやはり賛成できません。
法案では、事業主拠出に加えて、事業主拠出額と同額まで労働者のマッチング拠出ができるようになりました。私、ここで懸念しているのは、この法改正を受けて企業の側が事業主拠出分を減らしてその分を労働者に負担をお願いすると、こういう事態が出てこないだろうかと。これに対して歯止めの措置というのがあるのかどうかをお聞きしたいと思います。
○国務大臣(細川律夫君) 今回のマッチング拠出の導入ということは、これは先ほども申し上げましたように、現在は事業主だけの拠出ということになっておりますけれども、現在の掛金額が税制優遇して認められている限度額に比べて大変低い水準にとどまっていると、こういうこと、そしてまた、今後この事業主の拠出している掛金額が大幅に増額というようなこともなかなか認められないと、こういうことで、そういう状況の中で、現在の事業主の拠出に加えて従業員の任意の拠出を可能として、そしてその従業員の老後の生活を一層支援をしていくと、こういうふうにするわけでありまして、事業主の拠出する掛金負担を従業員に押し付けるというようなものではございません。
なお、マッチング拠出の実現やあるいは事業主掛金の引下げとかいうような、そういうことを含む掛金の設定などについては、労使の合意、そういう手続を踏まなければならないと、こういうことになっております。また、導入後も、マッチング拠出を行うかどうかということについては従業員の任意でするかしないかを決めていただくと、こういうことになっておりますので、委員が御懸念のようなことはないというふうに考えております。
○田村智子君 説明を聞いていますと、なかなか企業の側の拠出が伸びないと、うまくいっていないものを何とかして存続させようとするための措置というふうにも聞こえてくるんですね。
ちょっとお聞きしたいんですけれども、では、このマッチング拠出をやってほしいと、認めてほしいという要望は労働者を代表するような団体等からは上げられていたのかどうか、確認したいと思います。
○国務大臣(細川律夫君) 今回のマッチング拠出につきましては、平成十九年に出されました、企業年金研究会、これは厚生労働省の中に設置しております研究会でありますけれども、この研究会から提言を受けて導入することとしたものでございます。この研究会には、労使の代表の方も御参加いただいているところでございます。
また、今委員から御質問の、個別にいろいろと要望があったかどうかということにつきましては、経済界からは個別の要望がいただいておりますけれども、労働界の方からは、個別の御要望というものは、そういうものはいただいてはおりません。
○田村智子君 経済、特に経団連からは何度も繰り返しこういう要望が上げられているんですね。金融証券市場にもっと資金が流れるようにと、これが要求の主な内容であって、高齢期の生活保障に責任を持つという、こういう立場からの要望とは私は言い難いというふうに思うんです。
この間、企業の福利厚生費、日本経団連の調査で見ても、二〇〇六年度以降、減少を続けています。退職年金は、二〇〇八年度には前年度から一三%もマイナスとなっている。景気悪化を理由に賃金さえも大きく落ち込む下で労使協議に任せるということでは、これは労働者も身を削ってくれという議論になりかねないと思うんですね。そういう懸念は当たらないということでしたけれども、何というんですか、法の趣旨とは違うことをよくやるわけですよ。派遣労働法だって、派遣労働者の雇用の安定を目的としているのに、そうなっていないわけですよね。
法のこちらが意図するものとは違う運用をされて労働者の負担が広がりかねない、こういう事態が起こり得るんだという認識はお持ちかどうか、もう一点だけ大臣に確認したいと思います。
○国務大臣(細川律夫君) この制度の導入につきましては、これは労働者の皆さんの自主的な努力によって老後の所得保障の充実を図る仕組みとして導入をしたわけでございます。
したがって、このマッチング拠出については、先ほども申し上げましたけれども、これを実施するとかあるいは掛金の設定につきましては、企業と労働者、その双方で合意しなければできないと、そういう手続をしっかり踏まなければいけないと、こういうことになっておりますし、また、この制度を導入をしたその後は、これは拠出するかどうか、従業員が拠出するかどうかはあくまでも従業員の任意というふうにされているところでございまして、労働者の皆さんに強制的にこの負担増を求めるというものでは決してないというふうに考えております。
○田村智子君 見解が食い違うところですけど、じゃ、三号被保険者の問題に最後質問を移したいと思います。
今回、三号被保険者の期間の取扱いに関する改正が行われています。会社員の妻などが、夫が一時的に離職をした後、再就職をしたと。このような場合には、三号被保険者から夫の離職で一旦一号に、また再就職で再度三号被保険者にと、こういう届出が必要となります。しかし、事業者が配偶者を三号被保険者として届け出る、こういう仕組みになったのは二〇〇四年からのことなので、再度の届出が必要だという認識がないまま未加入扱いになっていた方が多数おられると思います。
今回の改正で再就職時に遡って三号被保険者期間とみなされることになりますが、このことによって、例えばその主婦の方が病気やけがをして障害者となった、その初診日がたまたま三号被保険者の届出がされていない、記録上は未加入期間と重なっていたと、そのために障害年金が受け取れない、この場合には今回の措置によって新たに受給資格得られることになると思うんですが、確認したいと思います。
○副大臣(大塚耕平君) 今先生の御下問のケースは、元々その方が第三号の届出をしていた方々であれば対象になります。しかし、元々何の届出もなかった方の場合には残念ながら対象になるとは考えておりません。
○田村智子君 救済される方が現にいらっしゃるわけですね。これが、法の目的ではないんですけれども、波及効果として出てくる。
ただ、新たに受給権が生じても申請しなければ得られなくなるわけですから、是非、この法改正によって新たに障害年金受給の可能性があるんだということは周知徹底をしていただきたいと思いますし、お話あったように、一度も届出をしていない方はこれでも救えない、まだ無年金障害者を残すということになりますので、更なる法の改正、特に国民年金法附則第七条の三の改正、ここにまで踏み込むことを是非要望して、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。