【11.06.16】東日本大震災復興特別委――参考人への質問
参考人の意見陳述
○委員長(柳田稔君) 休憩前に引き続き、東日本大震災復興基本法案、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、現地対策本部の設置に関し承認を求めるの件、以上両案件を一括して議題とし、参考人の皆様から意見を伺うことといたします。
午後は、東日本大震災支援全国ネットワーク代表世話人栗田暢之君、京都大学教授藤井聡君及び特定非営利活動法人難民を助ける会理事長・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授長有紀枝君に御出席をいただいております。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございます。
ただいま議題となりました両案件について忌憚のない御意見をいただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。
本日の議事の進め方について御説明いたします。
まず、栗田参考人、藤井参考人、長参考人の順序でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。
また、参考人の皆様の御発言は着席のままで結構でございますが、質疑者は起立の上発言することとしておりますので、よろしくお願いをいたします。
それでは、栗田参考人からお願いいたします。栗田参考人。
○参考人(栗田暢之君) よろしくお願いします。東日本大震災支援全国ネットワークの代表世話人を仰せ付かっています栗田と申します。
資料を一枚はねていただきますと、東日本大震災支援全国ネットワークの概要を記したものが二ページにわたってございますが、現在までに、これは三月の十一日の発災以降に立ち上がった団体でございまして、現地のいわゆる社会福祉協議会だとか行政機能が麻痺して、これまでの阪神大震災以降の取組の中で、被災地の社会福祉協議会が中心となって、そこに関連するボランティア、NPO団体が加わって災害ボランティアセンターをつくるというような流れがこの阪神以降の十六年の歩みとしてありました。
ところが、今回の大震災に際しましては、その受け入れるはずの社協自身が宮城県だけでも二十人ぐらい犠牲者が出ている、庁舎が流されている、そういう現状の中で、社協ネットワークだけでは当然無理だと。そして、ボランティアネットワークをより充実させた全国的なネットワークをつくらなきゃいけないという発意に基づきまして、三月の三十日に総会を開いて設立をした団体でございます。
現在までに五百四十八の団体に御参画いただいております。そういう五百四十八団体が加盟している団体の代表世話人なんですが、ただ、何か五百四十八団体でまとめてやっていこうということではなくて、あくまでも調整機能としてのネットワークですので、何かここが日本の今のボランティアの主体となるということではないんですけれども、一応五百以上の団体が入っているということですから、様々な個々の団体の主体性に基づいて、様々な被災地の過不足を補い合っているという現状でございます。
レジュメに戻っていただきまして、余り時間がございませんので、その三つ目の黒丸の辺りから御説明させていただきますが、現状のボランティアさんに関しましては、現在までに全国社会福祉協議会なんかの集計によりますと、三十六万人とか三十七万人の方々が被災地で延べ人数で活動されたと。ただ、ボランティアセンターを通さないNPO、NGOもございますから、四十万人以上のボランティアさんが現在出入りしたということでありますが、阪神大震災は例えば一月十七日から三月三十一日までの間に、二か月ちょっとなわけですが、今現在、三か月被災地が経過しておりますが、まだ全然片付いていない地域もあるということで、当然、被災地内の格差もございますが、ボランティアさんがゴールデンウイークに一部余っているといった報道もありましたが、それは一場面の一特定のところだけであって、被災地の現状から申し上げれば、まだまだボランティアがかかわってやるべきことはもう山積しているという状況であります。
そういう中で、しかし今、避難所だとか仮設住宅だとか、あとは在宅被災者との支援の格差が広がっていて、市町村だとか、市町村でくくれないような、例えば石巻なんかは非常に広いですから、地区だとか地域を含むバランスの良い支援策が求められていますが、ただ、その全体を見ることが容易じゃないと。例えば宮城県全体がどうかといっても、一つ一つの自治体ごとにその状況が全く異なるということ、進捗具合が。それから、例えば福島と、じゃ宮城と比較できるのかといったら、そういう状況ではございません。ですから、一つ一つの地域が、市町村を超えた連携や情報交換も含めてまだまだ不十分じゃないかということでございます。
ただし、私ども東日本全国ネットとしましては、県域ごとに意見交換会を、現地会議を開催しまして、先ほどの全国支援ネットワークのレジュメの二枚目を見ていただきますと、その下の方に宮城そして岩手のまとめを記載をしておりますが、東日本大震災全国支援ネットワークでは今まで東京を主体に、政府の関係省庁との連絡会議もこれも東京でしながら、むしろその後方支援に徹するような形で情報交換を行っておりましたが、やっぱり現地の生の声を聞かなきゃいけないという声に基づいて現地会議を行いました。
五月二十五日に宮城で行いましたが、その宮城のまとめとしましては、改めて被災地は広範であって地域によって復旧復興の状況は異なる、ボランティアがまだまだ必要であるということ、そして復興は長期にわたること、さらに地元主体ということを尊重して、外部からの支援は地元と向き合って地元の団体などと連携して信頼関係を築くことが大事じゃないか、それから今後の課題である暮らしの支援だとか雇用問題も含めて、ボランティア、NPO、NGOでできる限り引き続き知恵を出し合って支援を続けていきたいというのが宮城でのまとめでございました。
同じように六月三日に岩手で開催しましたところ、やはり復興は長期にわたるということ、ボランティアは必要ということ、これは宮城と共通です。そして、今日までそれぞれが全力で緊急救援期の対応に尽力してきたが、今後は横の連携を大切にしなきゃいけないということ、そして復興の主役は被災者であり、被災者自身が自分たちの町に責任を持つよう外部支援者はコミュニティーの再生とかイベントや祭りを含む町づくり、そして地元が経済的にも潤うような後押しをしていくことが必要じゃないか、そして垣根のない連携で今後も知恵を出し合うこと、若干ニュアンスは異なりますが、まあまあボランティアさんも必要だと、ただし地元が主体としてこれからは様々な知恵を絞っていかなきゃいけないということが大きな流れです。
ちなみに、福島は六月二十九日に開催予定でございます。
レジュメに戻っていただきますと、やはり私たちはこうした状況においてますます中間支援組織的な役割が非常に大事だということを感じておりまして、JCNと申し上げていますけれども、東日本大震災支援全国ネットワークの役割も、ますますその調整だとかあるいは他県の様子を皆さんにお知らせするという意味においては重要な役割を担っているんじゃないかというふうに考えております。
ただし、原発問題も含めて、各県の置かれた被災者のそれぞれの立場は依然として厳しい声が上がっております。私たちのボランティア活動の一環としての足湯活動なんかを通じて拾ってきた生の声を別紙に参照しましたので、お時間のあるときに読んでいただきたいと思います。
皆さん、地獄を見られています。三時間半泳いでやっとたどり着いたと、途中で百人以上の遺体を見た、足を引っ張られたというような生々しい話が私たちボランティアにも聞こえるように、その足湯の中でお話をされます。こういう被災者に対して私たちが何ができるんだろうかということを、今日も多くのボランティアが現地に入って、あるいは後方支援で頑張っている現状がございます。
四つ目の四角の黒ですが、今後のボランティアですが、こうした状況を踏まえて、現在は当初の泥出しだとか食料や炊き出しの支援とか、そういう状況からは少し脱した地域が徐々に進んでおりまして、現在は、地域によっては仮設住宅の入居に伴うお茶会やサロン活動、あるいは心のケアや生活再建に向けた支援、また浜の大規模清掃だとか廃材等を利用したまきやお土産品などの販売の製作など復興の町づくりへの支援も広がっております。ニュース報道で御存じかもしれませんが、様々な知恵を出し合って自分たちの町を取り戻そうという動きが本格化している地域も少しずつ見えてきました。
ただし、これには例えば国による支援、例えば厚労省の地域支え合い体制づくり事業だとか、中小企業庁の中小機構による仮設店舗だとか仮設工場の整備、いろんな様々な今回の支援策が打ち出されておりますけれども、末端の市町村が、その受入れ窓口となる市町村にいまだ十分に活用できる段階にないと。ある自治体の担当者は国が遠いんだということをおっしゃっていますが、いわゆる日々の業務に忙殺されて、様々な支援策がいろいろあるんだけれども、それを読んでいる時間もない、それを申請する時間もない、そういう悲鳴が市町村の役場から聞こえてまいります。
それに対して、私たちはボランティアであろうとNPO、NGOであろうと、現場に入って長らく支援をしていますと、その市町村に対するサポートをしながら、結果的には、例えば仮設店舗ができて、その仮設住民が生き生きと何か仕事づくりをするようなそういう場面をお手伝いを十分できると思っていますが、ただ、私たち自身もそれに堪え得る国とのつながりがございませんので、そうしたアドバイスを十分に行えていない現状がある。
ですから、今、産官民が協力関係をもう少し強固にしてこうした課題にもどんどん対応できるような体制づくりが必要じゃないか。ただし、被災地はそれぞれ、くどいようですが広いですから、一つでは駄目だと。例えば各県の地域ごとにいるとか、そういうきめの細かい対応が今後必要じゃないかというふうに考えております。
時間が多少、あと二、三分ございますでしょうか。最初申し上げたかったレジュメの一番、二番について補足的に御説明させていただきたいと思いますが、今回、私たちボランティアは現場に早く入りたかったんですけれども、冒頭で申し上げましたとおり、行政機能あるいは社会福祉協議会の機能が完全に喪失してしまって、そこに大勢受け入れるような体制づくりが非常に時間を要したと。
ただし、この後御説明されます難民を助ける会の長さんなんかのやっぱり国際協力の団体がいち早く現場に入って活動されたというのは特記するに値ありますし、一方で私たちも災害救援の国内対応のボランティアとして様々なネットワークを生かして入ろうとしたんですけれども、なかなか難しい制約があったと。その制約が、やっぱり今回の災害は広域であったり甚大であったり未曽有であったり、様々な言葉が使われておりますけれども、やっぱり私たちのアゴ、アシ、マクラがほとんど自分たちでは十分な対応ができなかったという反省点がございます。
第一点目が、アゴというのは食料がという、御飯という意味ですけれども、食料等の補給が途中でできないと、ガソリンも含めて歩いて入れないと。ガソリンが売り切れだという状況は私初めて見ましたけれども、そういう状況の中でボランティアがふらふらっと入っていってキャンプ感覚でやろうとしても、極寒の地ですから、それは非常に危険な行為であると、かえって現地の方に迷惑を掛けるんじゃないかという意識が大きく働きました。
ただし、行ける者は行って、私どもの団体も行けるところから入っていったということがございますけれども、今後の私たちの取組の中で、やっぱりこうした状況が今後、東海・東南海・南海地震あるいは首都直下型地震が叫ばれている中、公的機関に必ずしも頼らなくても機能するような市民とかNPO、NGOによる災害対応の促進を更に進めていかなきゃいけないんじゃないか。国際協力のNGO等に学んで、私たちもやはり力を付けていかなきゃいけないんじゃないかと。
一方で、それを受け入れる地域社会の理解促進が必要だと。例えば、私たちが災害ボランティアだと言っても、地域社会自身がそれを受け入れる体制がないと、行ってもなかなかその支援活動がうまくいかない。今回、特に東北地方でございましたから、ボランティアの受入れを拒否するというようなことも若干、慣れ合うまでに時間が掛かったということがございます。
これから災害はどんどん広域化が懸念されていますけれども、そういう状況において、やはり私たちは、もっともっとこの日本社会全体が災害ボランティアに対する理解が促進されて、そして、基本はやはり地元住民自らが頑張るということでございますけれども、それをサポートできるような体制づくりが必要なんじゃないか。この新しい公、新しい公共というようなことに関していえば、より具体的な戦略を持って次の災害に備えることをしないといけないんじゃないかという課題がございます。
もう一方で、入れなかった入れなかったと言いますけれども、やっぱり私たちはもう少し官民の協力の中で、自衛隊などとの協力で主要メンバーが現地入りして、そしてその主要メンバーが必要な情報を後方支援部隊に届けるといったような体制づくりも必要じゃないか。ただし、これは、昨年の東海地震対応の政府総合防災訓練では自衛隊のヘリに民間人として私も初めて搭乗させていただきまして、立川基地から駿府公園まで自衛隊のヘリに乗らせていただきました。ただ、訓練でそれができたのに本番でできなかったというのは非常に残念ですけれども。ですから、もっともっとそうした官民の連携が進んで、ボランティアが災害救援の一翼を担う重要な機関としてもっともっと御理解が進んでいけばいいというふうに考えております。
私の発言は以上でございます。ありがとうございました。
○委員長(柳田稔君) ありがとうございました。
次に、藤井参考人にお願いいたします。藤井参考人。
○参考人(藤井聡君) 本日は、こちらの委員会で公述させていただく機会をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございます。
ただいまの栗田参考人の方からは、現地のボランティアの活動の必要性等々含めて公述いただいたところですが、私は、今回の復興基本法の中でうたわれておりますいわゆる復興院並びにその中でどういう復興事業を進めていくのかと、十か年という文言が書かれておりますけれども、その中でなすべき事柄についてお話をしたいと思います。この十か年という期間を考えますと、先ほど栗田参考人のお話にもございましたように、首都直下型地震並びに東海・南海・東南海地震も当然ながら視野に収めなければならないということを前提に公述いたしたいと思います。
大震災から三か月以上もの月日が経過したわけでございますが、その間、現地では被災された方々と関係各位の大変な御努力により復旧復興が始められているというところでございます。しかしながら、その間、残念ながら、我が国の政府の対応の恐るべき不十分さに対しては、改めて私が指摘するまでもなく、多くの国民が絶望的な気分を伴う深い憤りを抱かずにはおれないというのが今日の現状ではなかろうかと感じてございます。例えば、全国そして世界中から集められた義援金の大半がいまだに被災地に届けられておらず、そして復興構想会議の議論を待つまでもなく、実行可能であったはずの数十兆円規模の大規模な国債発行とそれに基づく大規模な復興事業の始動は決して遂行不可能などではなかったということは明らかではないかと感じております。
こうした政府の対応の恐るべき不十分さのために、被災地は放置され続け、失われずに済んだはずの数々の人々の命が、そして本来ならば失われずに済んだはずの地域活力が数十、数百、数千と失われているのが実態ではなかろうかと感じております。これを不作為の罪と呼ばぬのならば、一体何が不作為の罪なのでありましょうか。数名をあやめるだけで極刑すら免れ得ぬ法治国家である我が国日本には、被災地の放置という巨大なる不作為の罪を裁く法が不在なのだという不条理の極みと言うべき恐ろしい事実を誠に遺憾ながら認識させられた次第でございます。ざんきの念に堪えません。ついては、国政に直接、間接にかかわられます皆様方には、今すぐに迅速かつ大規模な復興事業の展開が可能な体制づくりを心から請願せずにはおれません。
さて、本日公述申し上げる内容はお配りした資料に記載しておりますので、こちらを御覧いただきながら公述いたしたいと思います。なお、国民の皆様方におかれましても、当方の、藤井聡のホームページにて公表してございますので、御覧いただければ幸いでございます。
第一に、本基本法に基づいて二十兆円から三十兆円規模の国債を今すぐに発行し、大規模な復興事業を速やかに遂行すべきであります。もうこれ以上、政府による不作為の罪を重ねることは断じて許されません。なお、復興のための公費総額は私どもの試算では少なくとも五十兆円弱の水準にあります。ついては、この二十兆円から三十兆円の国債は、瓦れき処理を始めとしたあらゆる応急対応のための財源という位置付けであります。
第二に、今被災地で求められているのは、被災者の救援や疎開、瓦れき処理、仮設住宅の整備、基本インフラ復旧等々でありますが、それらに加えて、とにかく大至急行うべきものは、廃業の連鎖並びに転出の連鎖を食い止めることであります。今、被災地の漁業、農業、商業等の担い手の多くが毎日廃業するか否かの選択を迫られておられます。しかし、先行き不安のために廃業を選択する方が日に日に増え続けています。同様に、被災地からの転出についてもこうした負の連鎖が進行しています。この廃業と転出の連鎖は地域活力を一気に衰弱させ始めています。この負の連鎖を止めるためのあらゆる対策が東日本の再生のために何よりも必要とされています。とりわけ、いわゆる二重ローン問題におきます一重目のローンは今政府で議論されているよりもより大規模で、最終的には国が全て肩代わりするほどの強い対策が不可欠であると確信しております。
第三に、国費に加えて大量の義援金が被災地に支給されていないという状況は大至急改善せねばなりません。そうした資金の配分を適切に急ぐためにも、徹底的に、自治体あるいは農協、漁協等々の地域組織を徹底的に活用すべきであると考えます。一定の基準を設け、そうした地域組織に資金を大量に配分し、その組織内部での配分方法についてはその組織に任せるという態度が不可欠であると思います。そうした組織は、中央政府や中央の諸会議では分からない、何が必要で誰が困っているのか、あるいはどういう町づくりをなすべきなのかということを誰よりも分かっておられるのであって、結局それが一番公平かつ効率的な分配をもたらすことになるからであります。
第四に、そうした地域組織を徹底活用する一方で、全体の調整を図るような広域的な地域組織が必要であります。そうした調整には中央の復興院では入手困難な情報こそが重要となりますので、国と地域をつなぐ中間的な広域的組織を被災地に設置するということが不可欠であります。本基本法におきます地方事務所をこれに対応するものとして運用することも可能かもしれません。あるいは、予算年次等にとらわれない柔軟な対応が不可欠であるという点を鑑みますと、より重要な組織体としては特別な立法に基づく例えば東日本ふるさと再生機構を設置するということも考えられるかと思います。そうした地方事務所あるいは機構にて、雇用創出に基づく就労支援、全国からのボランティア等の支援の適正配分、その調整、そして自治体や地域組織への諸種の支援を被災地にて行うという体制が極めて肝要であります。
第五に、今回の大震災は、日本経済の供給力ばかりではなく、需要能力を大きく破壊したという現状認識が不可欠であります。この需要の毀損を放置すれば震災デフレが深刻化し、現に、今既に全国で倒産や失業が連鎖的に広がりつつあります。言わば、かの津波は、被災地だけでなく、全国各地の地域経済にもデフレという形に姿を変えて襲いかかっているのであります。これを食い止めなければ復興のための基礎体力すらを我が国が失ってしまうことにもなりかねません。
ところが、現政府で恐るべきことに真逆の対策が進められています。復興資金確保のために非被災地の公共投資額を一律五%も削られているのであります。これでは震災デフレの進行は決定的なものとなります。今なすべきことは、適切な金融政策と同時に、それと併せて全国の投資を増強し震災デフレを食い止めること、この点なのであります。
現在、今回の震災によってGDPが二十兆から三十兆円程度低下することも予期されております。したがって、例えば今年だけでも被災地復興に二十兆円、非被災地でのデフレ対策に十兆円程度の投資を行い、震災デフレを食い止めることが不可欠であります。一方で、震災デフレが放置されれば、日本のGDPが近い将来に三百兆円台にまで割り込み、大幅に税収が減少し、財政は悪化することにもなりかねません。そうした暗い未来の到来は何としてでも防いでいただきたいと祈念せずにはおれません。
さて、以上は震災復興に直接かかわる諸点について公述いたしましたところでありますが、東日本大震災の直撃を受けた我が国は、今、更なる恐ろしい巨大地震の恐怖に備えなければならない状況にあります。首都直下型地震であり、西日本の大震災であります。
配付した資料の最終ページの参考資料を御覧ください。三ページ目でございます。
御覧のように、我が国は過去二千年の間に今回と類似した東北太平洋沖でマグニチュード八以上の巨大地震が四回発生しております。その四回のうちの実に三回、七五%において、東海・南海・東南海地震、言わば西日本大震災という超巨大地震が十八年以内の間隔で連動しております。さらには、その四回の東北太平洋沖の巨大地震の全てのケース、一〇〇%におきまして首都直下型地震、すなわち関東大震災が十年以内の間隔で連動しております。そして、首都直下型地震は歴史的には三十年から五十年ごとに発生してきたのでありますが、今回に限っては実に九十年近くも発生しておりません。ですから、今回、数年以内にマグニチュード七ないしは八クラスの巨大地震がこの首都東京を襲う見込みが極めて高い状況に至っているのであります。
いずれにしても、我が国は、東日本大震災、西日本大震災、そして平成関東大震災という超巨大震災の三連動が相当程度の確率で生ずる状況にまさに今直面しているのであります。
そして、さらには、これだけの巨大地震が連動するときには富士山の大噴火も併発してきたという歴史的事実も忘れてはなりません。全くもって恐ろしい話ではございますが、かの寺田寅彦先生がおっしゃったように、自然の時の流れは我々人間の歴史の流れとは全く無関係に進むものなのであります。そして、不幸にも、平成の我々日本人はたまたまその恐ろしい時代に生まれ落ちてしまったのであるというふうに考えざるを得ません。そうである以上、我々は今、こうした巨大地震の数々を近い将来起こるものなのだと明確に覚悟することが何にも増して求められているのであります。だからこそ、政府のこれから設置されるであろう復興院を中心として、東日本の復興を遂げるために全力を傾けると同時に、来るべき次の巨大地震への備えを速やかに始めなければならないのであります。
さて、これらの地震の被害総額は、中央防災会議の試算では二百兆円程度に上ると言われておりますが、地震や津波の大きさが想定外となる可能性も勘案いたしますと、三百兆円程度、すなわち、この度の東日本大震災の実に十倍程度もの水準にまで至ることも予期されるところであります。
つまり、今このままこうした超巨大地震に対して無策であれば、日本国家の存続そのものが危うくなり、日本国民が皆、孫子の代まですさまじい不幸のうちでの暮らしを余儀なくされるであろうことは火を見るより明らかではないかというほどの水準にある状況に至っているわけでございます。だからこそ、日本国家の存続を望むのならば、日本そのものを、遅くとも、遅くとも十年以内にこれらの超巨大地震の連発をも乗り越えられるほどの強靱な国に、すなわち、しなやかなレジリエンスある国に仕立て上げなければならないのであります。
そのためには、何よりもまず、皇居、そして官邸、議事堂、中央官庁、そして各地の学校や各種のインフラ、そして原発施設を始めとしたあらゆる施設の耐震強化が急務であります。各法人には、地震の際にはいかに事業を継続させることができるかというBCPの策定を義務化する法律を整備することが必要であります。学校等では徹底的な防災教育を進めなければなりません。インフラとエネルギーのシステムについては、過剰に効率化してしまうことを避け、どのビルにも非常階段があるように、まさかの有事を想定しつつ二重化、三重化していくという態度が不可欠であります。
さらには、最大の防災対策は、被災地域の人々や工場をできるだけ非被災地域に事前に疎開させておくことが重要となります。つまり、国土構造の分散化こそが最大の防災対策なのであります。そのための、日本海側や北海道、九州といった非被災地域における各種の投資や税制優遇などの地域振興策の徹底的な推進が不可欠であります。そして、首都機能の分散化や副首都構想の議論の再燃も今絶対的に不可欠であります。
さて、これらの強靱化対策を大規模かつ速やかに推進するためには、大規模な資金が必要となります。これから十年間で少なくとも二百兆円程度の予算が必要となります。こうした予算は全て強靱な日本列島を建設するためのものでありますから、財政法にて法的に認められているところの建設国債を中心として確保していくのが妥当であると言えるでありましょう。しかも、確実に列島強靱化を果たすためには、こうした予算を、単年度予算の考え方とは異なる、年度を越えた数値目標に基づいて確保していくということが必要となると考えられます。
無論、国内にはこれ以上国債というツケを将来の世代に残すのかという議論が生ずるであろうことは想像に難くありません。しかし、巨大地震による巨大被害という負の遺産ほどに大きなツケはないのではないでしょうか。そして、その建設国債を、その巨大被害というツケを残す代わりに、生命と財産を守る強靱な日本列島という正の遺産を後世に残すためのものである以上、後世に対する単なるツケなのでは断じてあり得ないのであります。
しかも、この規模の公共投資を適切な金融政策と適切な税政策等によるインフレ対策、デフレ対策を併せて実施することで、日本の適切な経済成長が可能となり、日本のGDPは八百兆円から場合によっては一千兆円超という、所得倍増とも言い得る水準に達するであろうことも十二分に見込まれるのであります。そうなれば、財政再建や少子高齢化等の我が国が抱える根深い諸問題を一気に解消することも可能となるでありましょう。
そして、防災的にも経済的にもそこまで強靱な国家に我が国日本が十年以内になれることができるのなら、平成関東大震災や西日本大震災の被害を最小限に食い止め、迅速に回復することも可能となるに違いありません。そして、それらを通じて、子孫の、孫子の代まで我々日本人は安寧と幸福のうちに暮らし続けることができることとなるに違いありません。
ついては、是非とも、後世の日本人の生命と財産と暮らしを守るための列島強靱化十年計画を、十分な予算措置にて挙国一致にて、挙国一致にて着実に遂行していただくための強靱化基本法案を、今回の復興基本法案と併せまして、真の政治主導でもって制定いただくことを国政に直接かかわっておられる皆様方に心からお願い申し上げ、当方の公述といたしたいと思います。
どうもありがとうございました。
○委員長(柳田稔君) ありがとうございました。
次に、長参考人にお願いいたします。長参考人。
○参考人(長有紀枝君) 長です。どうぞよろしくお願いいたします。
冒頭で、栗田さんの方から、国内対応のボランティアの活動、災害ボランティアの活動についてお話しいただきました。それと補完するような形で国際協力のNGOが現地で活動しておりますので、その立場から本日はお話をさせていただきたいと思います。
私がおります難民を助ける会は、一九七九年にできた国際協力のNGOで、先生方とも関係の深い尾崎行雄の三女の相馬雪香がつくった会でございます。海外の難民支援、特に災害弱者の方々、障害者の方々を中心にした支援をしてまいりました関係で、今回の震災につきましても、発災直後から被災三県でそうした活動をしております。
本日お配りいたしましたジャパン・プラットフォームの資料がございますが、このジャパン・プラットフォームの資金助成を受けながら、また、皆様からの募金をいただきながら活動をしております。こちらの資料もどうぞ御覧くださいませ。
本日お話しさせていただきたいポイントは三つございます。災害復興に国際協力の視点を生かすこと、それから災害復興の意思決定に被災者御自身、その中でも障害者や女性の視点を含める点、それから復興庁の機能に将来起こり得る広域災害に対する対応も織り込む点の三点でございます。
まず初めに、改めて申し上げることではないかもしれませんが、復興とは何か、復興をどのように考えているかということについてお話を申し上げたいと思います。
今般の東日本大震災では、まさに国家の安全保障が問われる事態になっております。その意味でも先生方お一人お一人が重責を担われているわけですが、同時に、復興は個々人の方々、被災者個々人、お一人お一人の人間の安全保障の問題でもあります。この点を本当に端的におっしゃられたと思いますのが、今日の午前中にいらした相馬市長の立谷さんのお話で、それをちょっと紹介したいと思います。
立谷さんはこんなふうにおっしゃいました。今回の震災でいろんな方が突然御自分の人生を断ち切られているわけですけれども、復興というのは、そうした突然断ち切られた人生の設計が、お年寄りならお年寄り、若い人なら若い人なりに、それぞれがそれぞれの人生の段階でそれぞれの人生設計を再び立てられるような状態になることというふうにおっしゃっておられました。私たちが目指す復興もまさにそうしたものです。そういったものに向けて、以下三点、お話を申し上げていきたいと思います。
まず一点目ですが、今申し上げたような人間の安全保障を確立する災害復興のために、国際協力の視点、知見というのを是非生かしていただきたいというふうに考えております。
今回、未曽有の災害に日本は襲われておりますが、国際社会を見渡しますと、スマトラやハイチ、それからバングラデシュ、ミャンマー、ビルマと、様々な災害が各地で起きております。それに対して、国際協力NGOや国連関係者、日本でも外務省やJICAの関係者など、多くの人たちがそれにかかわってまいりました。そうした人材がたくさん国内にいるのではありますけれども、多くは国際協力向けということで、国内の災害に余りそれが生かされていないように思っています。
また、国連機関、日本は世界第二位のODA拠出国として長きにわたり支援してきているわけですが、国連が培った災害対応の様々な知見もございます。どうしてそれをお金を出してきた私たち日本が使ってはいけないでしょうか。これは決して途上国のためのものだけではなかったと思います。平時にこうした国際機関と覚書を結んだり、政府が直接無理であれば、今回実際行われていますが、国連機関とNGOが連携するなどの形で是非その国際協力の知見を国内の災害対応にも生かしていくべきだと思っております。
そうすることによって何が生きるかといいますと、今国際社会の災害救援では、権利ベースアプローチ、被災者個々人の方の権利という視点からのアプローチですとか、障害者の権利条約に基づいた支援でありますとか、それから災害と女性の視点というのが大変大きな流れの中になっております。こうしたものを生かした支援活動ができるのではないかというのがまず一点目の御指摘でございます。
次に、二点目といたしまして、災害復興の意思決定に被災自治体であるとか住民の方、その中でも特に障害者、女性など、多様な当事者を含めていただきたいということです。
こちらは、例えば十三の障害者団体で構成されております日本障害フォーラムが要請しておりますように、また堂本先生を中心に六月十一日にシンポジウムが行われました。こちらでの要望にもありますとおり、是非意思決定の場に女性や障害者を加えていただきたいというふうに考えております。
これは、障害者のために活動しているNGOが長く国際社会でおっしゃってきた標語、ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス、私たちのことは私たち自身に決めさせてくださいと。まさにその標語のとおりのことが今回の災害対応でも求められているのではないかと思います。反対に言いますと、それがなされていないのが現状かと思います。
例えば、卑近な例と思われるかもしれませんが、女性用の生理用のナプキンの配布の事例がよく引かれます。これ、通常ですと一日で五つとか六つとか女性が使用するわけですが、若い男性が女性に一つずつ配って、足らなくなったらまた言ってくださいと言っていると。当然そんなことは言えずに使えなくなっていると。足りないのは物ではなくて、物はそこに届いているのに、最後の最後の末端の配布のところでちょっとした配慮がない、知識がない、意識がない、そんなことのために、実際に物やサービスがあるにもかかわらず、それが全くないような状況に置かれていると。こういうことが実際に起きているわけで、そのためにも当事者をどんどん含めるということをお願いしていきたいと思います。
それから、復興庁の機能に、東日本大震災の対応の経験に基づきまして、先ほど藤井先生がおっしゃられたような、将来の広域災害に対応するような機能であったり仕組みであったり、これも是非入れていただきたいと思います。
被災者の方によってはもしかしたら、復興庁であるにもかかわらず、なぜ今回とは違う災害対応の準備もしなければいけないのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、様々な援助活動をしておりまして、次々といろんな災害が起きますと、常に新しいところ新しいところへの対応で追われてしまうと。そうしますと、まだまだ十年単位で東日本大震災の被災地への支援が必要であるにもかかわらず、もしここで次の大規模な災害が起きて今と同様の準備でおりましたら、多分政府も援助団体も次の災害に掛かり切りになって、もっともっと強化していかなければならない東日本大震災の被災地への支援が更に手薄になるというような悪循環に陥りかねません。そういうことにならないためにも、復興庁の機能の一部に是非その広域災害対応というのを入れていただきたいと思います。
そうした復興庁の考え方にこういった視点を加えていただきたいというものを幾つか列挙いたしました。これを順番に見てまいりたいと思います。
まず最初に、個別ニーズを特定するために被災者状況の把握でございます。
今回、あるいは国際社会、あるいは難民支援をしておりますときに、まず私たちが最初に取り組もうとするのが災害弱者の方たちの支援であるんですが、今回そういった方たちのデータが本当にございませんでした。今でも特に、施設に入っている方はまだしも、御家庭にいらっしゃる方、その個々人の方々への支援をしようと思っても、そういった方々の情報がないということで支援が本当にできておりません。
また、個人情報保護法があるからということで、まさに本末転倒ではないかと思うのですが、個人情報保護法の観点からそういった災害弱者の方々へのアクセスができないというような状況が現在起きております。次のこの復興庁の構想では、そういった課題を是非解決するような仕組みをつくっていただきたいというふうに考えております。
それから、重なりますけれども、人道支援や復興支援のニーズを現地で調査するために領域横断的、今は自治体ごととか県ごとであるかもしれないんですけれども、それを領域横断的、障害者であったり、まあお年寄りはあるかもしれませんが、様々な領域横断的な調査というのが必要になるかというふうに思っております。それから、統一された被災者台帳のようなもの、これも必要なのではないかと思っております。
また、今回、支援活動をしておりまして、市町の境界線というのが、これは国境ではないかと思うぐらいなことがしばしばでございます。あるいは、これは、縦割りというのは別に市町だけではなくて、それぞれ、県でも市でも町でもそれぞれの分野ごとに御担当が違うので、一人の方には一つのことしか伺えないと。ニーズの全体の把握をしようと思ったら、自分でこのことを知りたいと思ったら、それぞれの担当者を見付けて一人の人に一つずつ聞いていかなければならないというような事態が起きております。領域横断的それから地域横断的、そういったような視点が非常に必要ではないかと思います。
また、先ほど申しました相馬市では、心のフォロワーチームといって、被災した小中高生、学校単位で心のケアをするような仕組みが今できつつあります。こういったようなグッドプラクティスというようなものを是非、市町それから県のレベルを超えて全域で共有できるようなそういった仕組みもつくっていただきたいというふうに考えております。
それから、国際協力の専門家。先ほど何度も申し上げておりますが、国際協力の専門家、特に官の方たち、民は、自慢するわけではないのですが、私たちは別に呼ばれなくても勝手に行きますので、今回も国際協力NGOが被災地にいち早く行って活動することができておりますが、これは民だからこそできるわけです。しかしながら、国際協力の知見を持っておられる方々は民にとどまらず官庁の中にもたくさん大勢いらっしゃると思います。その方々が、それぞれの所属する官庁が災害対応の官庁でないと実際現地に行けない、休暇を取って行くしかないというようなことがあって、それは本当に国家の損失といいますか、せっかくいる人材を生かさないという法はないと思いますので、是非国際協力の専門家というものを官民にかかわらず生かしていただきたいと思っています。
それから、将来起こるべき大災害というときに、これは本当に恐ろしいことではありますが、各地に原子力発電所があるということは、今回と同じようなことが次の災害でも起こる可能性が十分にあるということです。そうしますと、復興庁の復興政策をする意思決定の中に、放射能が人体に与える影響というようなことをよく分かっていらっしゃる医療の専門家のような方々を是非含めていただきたいと思います。
これらのことは、将来の災害に備えるというだけではなくて、現在起きている様々な課題を解決していくためにも是非とも必要な視点と思いますので、こういったことを現在の東日本大震災の被災地の支援にも活用していただきたいと思いますし、また復興庁の新たな機能にも是非加えていただきたいというふうに考える次第です。
私の方は以上です。ありがとうございます。
参考人への質問――被災地復興の土台となるものは
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
今日は大変ありがとうございます。
お話をお伺いいたしていまして、まず、長参考人が復興とは何かというそもそも論のところを相馬市長のお言葉も引いてお話しされた。私は、これは復興政策を考えていく上でも土台として非常に大切な問題提起ではないかというふうに受け止めています。
これは是非、三人の参考人の方、それぞれにお伺いをしたいんですね。
私は、やっぱり復興とは何かといえば、やはり被災した方々が失った暮らしや失ったなりわい、仕事を自らの力も含めて取り戻していくと、これがやっぱり一番の土台に据わらなければならないことだ、そのために行政が何ができるのかということを真剣に考えていく、これが一番根本に据えられるべきだと私は思っているんですね。
それで、土台に据えるべき、一番基本とすべきこの考え方、これを是非三人の方々からお伺いしたいのと、理念だけでは駄目ですので、それをどうしたら進めることができるか。今、復興会議の中で議論をされていることを聞いてみても、何ですか、ちょっと焼け野原みたいになったところにどこに何をつくろうかみたいな、外から資本も呼び込んでこういう復興ができるんじゃないかという青写真が先に立っているように思えてならないんです。ちょっと違和感を感じているんです。
やっぱりそれぞれの地域ごとに町をどうしていくのか、産業をどうしていくのか、どうしたらそういう計画の政策決定の過程の中に住民の方々の意見を反映できるか。あるいは、それぞれの産業団体の、いろんな産業組合員の皆さんですね、そういう皆さんの意思を反映した計画を作ることができるか。是非、皆さんそれぞれの体験も踏まえて御意見を伺いたいと思います。
○参考人(栗田暢之君) 御質問ありがとうございます。
土台はやっぱり被災者本位ということだと思いますけれども、やっぱり被災者の生の声を私たちは一番聞く立場にありますので、一番近い立場でもありますので、ボランティアは、その声をどうやって生かすかということだと思いますけれども、そのパイプが少し欠落しているということであると思います。
具体的に申し上げますと、例えば漁を再開したいといっても、なかなかもう壊滅的な被害を受けた港湾施設で本格的な再開は難しいわけですよ。だけれども、これとこれとこれとこれがあればできるんだというふうに具体的にも言っていらっしゃる方がいるわけですよね。そういう声をNPO、NGOは聞いていますから、それをちゃんと届ける。
しかし、先ほど申し上げたように、そこに対して補助できるものもいっぱいあるはずなんですよ。その知恵はまだ私たちにないんですね。しかも、それを届けようと思っても、市町村はそれを聞くのがもう精いっぱいで、次の新しい本格的な復興に向けてのビジョンがまだできていないまま、そういうものを取りあえずスタートさせてもいいかどうかというところでも止まっていってしまうわけですよね。
だから、やっぱり今やろうとする人たちの力をどうやって引き出すか。能登半島地震では仮設住宅のおばちゃんたち三人がうどん屋を開きましたので、ですから、そういうものをどんどんやっていけば私はいいと思うんですね。そのための条件整備としての何ができるかということは、行政側の数々の施策を取り入れながら官民が連携してやっていけばいい。簡単なことなんだけれども、それがどこかでふん詰まっちゃってできていない現状なんですよね。本当にもったいないことだと思っています。
○参考人(藤井聡君) 非常に的確な御質問でありがとうございます。
震災復興の考え方、これにはいろいろな分類の仕方ができるかと思いますが、私はこれは二種類あると思います。別の言い方をしますと、二種類の論者がいるというふうに思います。一つの考え方は、これは社会学で言われるんですが、いろんな言い方があるんですけれども、社会機械論という考え方で、もう一つは社会有機体論という考え方であります。
この社会機械論というのは、社会というものは機械であると、こう考えます。この人たちは、社会というのは機械であって、だから地震とか震災というものは機械が壊れるということだと考えます。したがって、機械が壊れた場合どうするかというと、ちょっと部品をよく見て、使えそうになかったら古いやつを捨てて新しいのを付け替えるという形になって、別にこれは次の日修理しても、一週間後に修理しても、一年後に修理しても同じなんですね。ですから、特に急ぐという気持ちには当然ならないわけであります。
もう一方は、社会有機体論というのがありまして、これは社会は生き物だと、これは社会学の一番古いスペンサーとかコントとかという人が言っている最も典型的な考え方なんですけれども、古典的な社会学の考え方なんですが、これは社会というのは生き物ですから、大震災というのは何かというと、大けがをするということだと考えるわけですね。これは大けがをしたときにどうするかというと、もう全ての医者が共通して主張するように、大至急何か手当てをしないといけないんですね。したがって、よくいろいろな皆様が世論の中でも言われているように、震災復興にはスピードが大事だというのは実はここに求められているんですね。先ほども御議論ありましたように、栗田参考人の方からもお話ありましたように、被災者が主体であると。これも、けがした人はその人の自然治癒能力がないとけがは戻らないんですね。だから、自分の治そう治そうとする力が必要だと。
さて、皆さん、どうお感じでしょうか、社会機械論なのか、社会有機体論なのか。多くの国民は、私もそうですし、御質問された御意図もそうですし、ここにおられる皆様方が社会有機体論を支持されるんじゃないかなと思います。だからこそ大至急やらないといけないと。でも、社会機械論の人は、別に急がなくてもいいじゃないかと。何か、外資か何か呼び込んで新しいのを付けて、何か古いのを捨てて、これを機会にターボエンジンか何かをくっつけたらええんちゃうかみたいな、そんな話をする傾向が強いんですね。
残念ながら、私が復興構想会議の議論を拝見していますと、全員がそうだとは私は思わないですけれども、多くの議論の論調が社会機械論の考え方に基づいているというふうに感じざるを得ません。もうこれは要するに、本当は社会有機体であるとするならば、見殺しにしていることと全く等価であります。ですから、私、今日の冒頭の公述の中でも、もうこの不作為の罪を裁ける法がないというのが許せないというのが私のそういう気持ちであります。
実際のところ、これ、結論はどっちなのかというところは分からないんですが、これは社会有機体論だと思うのならば、国民がそうならそういうふうに治しましょう。そのためにやっぱり薬を投与したりとか栄養をあげるように、徹底的にいろんな資本注入、国債でも何でもいいからお金を注入したり、あるいはもう何かいろんなボランティアの皆さんもそうですし、もういろいろと手当てをしていかないと。当然ながら、そこでそんな傷ついている人をカンフル剤か何か打ってマラソンなんか出したら駄目ですから、当然ながらTPPみたいなことをやってしまうとこれめちゃめちゃな話ですし、何か競争とかと違うて、取りあえず何か隔離しておいて、隔離しておいて、そこでその人がちゃんと自分で立てるようになるまではやっぱり入院させておかないといけないというのが社会有機体論の説であって、是非、我が国日本はこの震災復興は社会有機体論に基づいて復興計画の全てを立案していただきたいと願ってやみません。
以上です。
○参考人(長有紀枝君) ありがとうございます。
私が冒頭で相馬市長の定義というのを持ち出したのは、やはり相馬市長の、復興というのは被災者それぞれがそれぞれの人生のステージで将来の設計をかけるようになることというのは、本当に共感しているのでお出ししました。
やはり圧倒的な災害で、もう失ってしまったものは余りに大きくて、例えば海外の難民キャンプに行ってその復興の過程を見ていても、五年たっても十年たってもやはりそこから立ち上がれない方というのは大勢いらして、常にその時点と、そのときとその前と分かれたお話をいつもいつも繰り返す方たちが大勢いらして、援助する方は、もう一年たった、二年たった、三年たった、五年たったといっても、被災された御自身は、そこで時が止まっていられる方が本当に多いんだなというのを日々実感しております。
約三か月がたつわけですが、東日本大震災の被災者の方々の、時間が動き出している方もおられるかもしれませんが、動いていない方もおられるかもしれない。また、先ほど相馬市長が総論ではなくて各論とおっしゃったのがまさにそこだと思うんですが、本当に復興にはむらがあると思います。自治体でもむらがあるでしょうし、また個々人の方でも、あるいは同じ御家庭の中でもむらがあって大変な状況になっていると思うので、やはりいかにそういう細かなところに向き合っていくかというのが私たちの仕事ではないかと思いますし、あと、先生、行政に何ができるかというふうにおっしゃられたんですが、それが国として基本だと思うのですが、その一方で、こういった災害に際して民が何ができるのかというのも私たち考えつつ復興に向き合っていきたいと思います。民だからできること、民しかできないことという範囲がどんどん広がっているのではないかと思いますので、それを、じゃ具体的に何と今すぐ申し上げられませんが、その部分を模索しながら復興にかかわっていきたいというふうに思っております。
ありがとうございます。
○田村智子君 大変熱のある御発言、ありがとうございました。
私も、日本の経済の復興のばねにして日本を元気にするんだとか、そういうのは後から付いてくる結論だと思うんですね。今御意見を伺っていても、やっぱり現場からもっと要求を出していいんだと。その要求に今の制度の枠がこうだからこたえられないとかじゃなくて、やっぱり枠は作ればいいことであって、スピード感を持ってこたえていくと、こういう復興になるように頑張っていきたいと思っています。
栗田参考人にお聞きしたいと思います。
今、ボランティアの方と行政の方のどうやって連携を取っていくか。私もこれ、被災直後から非常に感じていたことの一つは、今回規模も大きかったということもあるんですが、面で被災の状況をつかむということが、国会の側も、それから行政の側も非常に今も困難なんです、今も困難。
例えば、私は医療の分野で厚生労働委員会等も担当してきたんですけれども、医療のニーズがどういうふうに必要かということを、いろんな医療の支援チームは現地にどんどん入っている、ところが、その支援チームがつかんだ情報を厚生労働省が一括してつかむという仕組みはなかったんです。だから、どこまで避難所の中に医師が派遣されているのかも分からない。避難所の数も当初は分からない。今も、例えば在宅の避難の方というのは、先ほどお話あったとおり、どういう状況にあるのか行政は分からない。行ったボランティアは、危機的な状況があればそれをつかんでいらっしゃると思う。
ここは、私は、何か行政の在り方としても、命にかかわるような事態、緊急に手だてが必要な事態というのは、もっと有機的に、やっぱり情報を自らもつかんで積極的な支援策を取るような仕組みが必要じゃないかと感じているんですけれども、体験された範囲で構いませんが、御意見伺いたいと思います。
○参考人(栗田暢之君) ありがとうございます。
当初の混乱した状況において末端の市町村にそこまでできたのかというと、これはもうとてもやっぱりできなかったということを考えると、そういう現実があったと。それを民も、あるいは場合によっては官も産も、それぞれ補いながら少しずつその穴埋めをしていったというのが現状だと思うんですけれども、じゃ、これからもそうでいいか。
そうじゃないと思いますから、やっぱり一市町村に今どんな、私どもから言うと、どんな支援団体が入っていて、その方々が有機的に連携しているかどうか、あるいは連携していないのかどうか。あるいは、そこの、例えば県でいうとちょっとやっぱり広いですから、圏域ってありますよね、そういうような圏域ごとに、じゃ連携が取れているかどうかということを、やっぱり連携を少し図っていかなきゃいけないんじゃないかということを私たち自身も議論しますし、そこにやっぱり私たちが得た情報は、行政との連携も含めて、例えば市町村担当者にその報告をさせていただいたり、あるいはそうした調整の場も必要だというふうに考えています。
○田村智子君 藤井参考人にお聞きしますが、財源、復興の財源についてです。
私たちも、歳出の在り方の見直しだけだと限界があるなと、復興国債というのは必要だと考えています。国民が買うだけでなくて、やっぱり内部留保二百四十兆と言われている大企業も、今こそこの内部留保を復興国債に充てるなどして活用することが必要じゃないかというふうに考えているんです。
今日のお話の中では消費税のことには触れられていませんでしたが、事前にいただいた資料の中では財源は消費税などの増税に頼るべきじゃないということで提案をされていますが、そのことについてお話しいただければと思います。
○参考人(藤井聡君) どうもありがとうございます。
今回、国債を中心にということで書かせていただいてございます。今回の復興基本法もそういうように記載されていて、先ほどもお話ございましたように、そういう方向で今先生方も御議論いただいていると。
増税の問題点でありますけれども、それは本日の資料で申し上げますと五点目の問題に関係、直結するところでありまして、今本当に余り議論されていないんですが、今回の震災が震災デフレをもたらしていると。このデフレというものは需要と供給のバランスの中で需要が小さくなるという問題で、当然ながら今回工場等が毀損することで供給も少なくなっているんですが、それと同等あるいはそれをもっと激しく上回る勢いで、計画停電とかいろいろな風評被害も含めて、もう人々が物すごく消費も投資もしなくなってきていると。
この状況では震災デフレがもっともっと進行してしまって、このデフレというのは本当に恐ろしい病気で、年間二十兆円ずつぐらいの所得がなくなっていくような話にもなるかもしれないと。このまま数年ほうっておくと、四百兆とかもうすぐ割り込んでしまう、GDPがですね、なってしまうかもしれない。そうなると、本当に倒産する企業はもっともっと出てきますし、解雇される人ももっと出てきますし、残念ながら自殺される方なんかもっと増えるかもしれません。ですから、もう是が非でもこのデフレは止めないといけないというのが私、本当に強く感じているところであります。
それを考えますときに、例えば社会保障等々のために増税をするという議論もありますけれども、このタイミングで増税をしてしまえば、もうデフレさんの肩をがあっと押して、デフレさん、わあっと勢い付いてしまって日本めちゃめちゃになってしまって、被災地以外も何か津波で洗われたみたいに何かぐちゃぐちゃになってしまうというふうにも、私もそれがもう心配で心配で仕方がないので、是が非でもこのタイミングでの増税は是非やめていただきたいというふうに感じているところであります。
○田村智子君 どうもありがとうございました。
終わります。