日本共産党 田村智子
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【11.04.25】予算委員会――被災地の医療再建を急いで

1次補正70億円はあまりに不十分

○委員長(前田武志君) 次に、田村智子君の質疑を行います。田村智子君。

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 被災地の病院、診療所の再建について質問いたします。
 先週末、私も宮城県石巻市などを訪ねました。二十二日の日には医療チームの避難所訪問にも同行をいたしまして、北上町の中にある三か所の避難所でお話を伺ってまいりました。医療スタッフの皆さんが血圧を測って体調をお聞きすると、病気や健康のことだけでなくて、津波に襲われたときのことなどを様々にお話をされる方々が何人もいらして、お医者さんや看護師さんの皆さんがやはり被災された方の体と心の安心のために大きな役割を果たしてこられた、このことを実感いたしました。
 しかし、五月の連休明けあるいは五月末にはこの派遣を終了する医療チームもありますし、今かかりつけの病院を必要とするという患者さんも増えてきています。やはり被災した現地の病院や診療所、この再建が待ったなしで求められていると思います。
 実際、被災した病院、診療所、大変な努力をされています。例えば、宮城県気仙沼市の市立の本吉病院、旧本吉町で唯一の病院ですけれども、一階が水没をして医療機器は駄目になったと、入院していた患者さんは全て別の病院に移送をした、それでも毎日二百人前後の患者さん、震災前の三倍もの患者さんが病院に来るというんですね。そして、四月の上旬には地元の住民の皆さんが、自治会長さんの呼びかけもあって百人ほどの方が集まって、モップや雑巾を持って地域の病院は地域で守るんだと一生懸命お掃除をされたということもお聞きしています。病院が地域の人に求められている、病院消滅の不安は消えた、存続への使命感に変わった、こういう看護師長さんの言葉を宮城県の地元の新聞、河北新報も伝えています。
 開業医の方々も同じです。石巻市のある産婦人科のお医者さんは、機器は全て水につかって駄目になってしまったと、市内の産婦人科の四か所の病院、このうち廃院をするところもあるだろうと、このままでは出産だけでなくて妊婦健診とか乳がん検診の受皿もなくなりかねない、再建するのは本当に大変だけれども、地域のことを思うと自分のところは必ず診療を再開するんだと、こういうふうに支援に入った医療団体の方にお話をされています。
 自ら被災をしながら、避難所や地域を回って診療に当たっている開業医さんもいる。やはりこういう方々に希望が見える、再建できるんだという支援策が私は一次補正の予算案の中でも示されると実は期待をしていたんです。ところが、政府から示されたのは、医療施設等の災害復旧の予算、これ七十億円。厚生労働省の調査でも、全壊した病院が八、一部損壊は二百四十五、これ診療所は入っていません。七十億円でこれらの病院の復興に手が着くのかどうか、これ、まず大塚副大臣にお聞きをしたいと思います。

○副大臣(大塚耕平君) お答えを申し上げます。
 今御指摘の七十億円につきましては、早期に復旧が可能な医療機関への対応について、復旧費用にかかわる補助率の引上げ、補助対象の拡大に要する経費を計上させていただいたものでございます。このほか、これから仮設住宅がどんどんでき上がっていくわけでありますが、併設する仮設診療所の設置費用としては別途十四億円を計上させていただいております。あわせて、補正予算ではございませんが、地域医療再生基金の交付について、被災三県には最大百二十億円ずつを確保して、先生御指摘の医療機関の復旧に努力をさせていただく方針でございます。

○田村智子君 早期に復旧が可能ということは、逆に言えば、被災が大きいというところは一次補正では取り残されてしまうと、私はそういうことだと思うんです。
 実は、厚生労働省の数字だけでなくて、例えば共同通信の報道では、各地の医師会を取材して調べてみたら、診療所を含めると、全壊と思われる医療施設は百十八に上るというふうに報道されています。恐らく七十億円という規模は、今お話があったとおり、早期に復旧が可能、つまり損害が少ない医療施設、せいぜい二十から三十ぐらいを対象とした予算枠ではないかと私は思います。ある被災した診療所では解体費用だけでも一億円を超える、再建には二十億円は掛かるだろう、こういうお話もお聞きをしてきました。こうした被害の大きさから見れば、余りにも予算の規模が小さ過ぎます。
 しかも、規模だけじゃない、その枠組み、中身も問題なんです。例えば公立病院への国庫補助率、かさ上げをしたと言います、三分の二だと。でも、残る三分の一は大きな被害を受けた被災地の自治体がこれ負担しなくちゃいけない、あるいは病院が負担しなくちゃいけない。それから、民間の医療機関でいえば、これ二分の一なんですよ。規模が小さい民間病院でも恐らく数億の単位で借金をしなければ復興はできません。全国自治体病院協議会の会長さんは記者会見で、補助率は四分の三あるいは五分の四、それ以上にしないと病院は復興できない、こういうふうに述べておられます。
 規模だけじゃないんです。枠組みもこれ検討が必要ではないでしょうか、副大臣。

○副大臣(大塚耕平君) まず御理解いただきたいのは、被災三県の病院の数は三百八十一ございますが、全壊が八、一部損壊が百七十九。建物だけを直してもすぐに診療活動を再開できない先については、おっしゃるとおり二次補正等で本格的な対応が必要になると思います。
 そういったことにつきましては、先生御指摘のとおり、しっかりとした枠組みの下で公的病院や民間病院の再建、そしてその支援を考えていかなくてはならないというふうに思っております。

○田村智子君 今、その補助率の問題だけでなく、これだけ不十分な補助率であっても、実はその補助の対象にもならない病院も出てくるわけです。
 一つは、公立病院が全壊をしてその建て直しが必要だという場合、今の制度では財政支援の枠組みがありません。全くの対象外になってしまいます。
 公立の志津川病院、これは津波で大変な被害を受けて、お医者さんたちが本当に屋上に患者さんたちを上げて、一生懸命別の病院に移して、今この病院では診療できません。別の体育館を借りて、お医者さんたち一生懸命、スタッフの皆さん一生懸命そこで通院の患者さんたちを診療しておられます。岩手県内にも三つの県立の病院がやはりその病院での診療はできないと、別のところで診療せざるを得ないというふうになっています。
 そういうところは、もうこの間ずっと公立の病院、東北地方では減らされてきました。この十年間で見ても二十六もの国公立の病院が東北地方で減らされちゃっているんです。だから、その地域で入院できる病院はそこしかないよと、そういう病院なんです。そこが建て直しが必要で支援の枠組みがないと、こういうことになれば、そこの地域の方々は病院がないためにその地域から別のところに移らざるを得なくなる、こういう事態も考えられるんです。
 公立病院への建て替えの場合の支援の枠組みが今のままではない、このことについてはどう思われますか。

○副大臣(大塚耕平君) 先ほど申し上げましたとおり、今先生御指摘のような本格的な病院の再建、このことにつきましては、検討が始まっております復興計画の中で地域の在り方も含めてしっかり対応をしなければならない問題だと厚生労働省としては考えております。
 さりながら、それまでの間、被災した地域の皆さんの医療体制をしっかり整備していく必要もありますので、先ほど来申し上げた対応などを図りまして万全を尽くさせていただきたいと思っております。

○田村智子君 総理にお聞きをしたいんですけれども、結局、私も厚生労働委員会で何度か大塚副大臣とやり取りしてきたんです、今回示された中身というのは阪神・淡路大震災のときの枠を全く出てないんです。阪神・淡路のときと比べても病院の被害の規模はとても大きいし、自治体の負担もとても大きくなります。そして、阪神・淡路のときには民間の診療所は一割にも満たない診療所しか財政的な支援が受けられなかったんですね。この枠を超えるということが本当に求められていると思うんです。規模もそれから制度の枠組みも阪神・淡路を大きく超えるんだと、この決意を総理にしていただきたいんですが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(菅直人君) おっしゃっているように、医療施設が震災で大きく破壊したものを地域住民のために復活させるということは大変重要だと思っております。
 既に副大臣からもお話がありましたように、当面の問題と、また既に措置してあります地域医療再生基金、これが二千百億積んでありますけれども、これなども被災地に重点的に配分する方針を持って対応しております。
 今後の本格的な例えば大きな病院の再建あるいは再生ということについては、先ほど大塚副大臣からも話がありましたように、地域全体の医療の在り方も含めた検討の中で積極的に取り組んでまいりたいと、こう考えております。

○田村智子君 私、やっぱり被災した病院、診療所の再建というのが本当に求められていると思うんです。私も津波で壊滅的になった町に立ちました。そのときに、本当にここに元々暮らしがあったんだ、町があったんだ、それが奪われていったんだと。その奪われたものの大きさや痛みを一番分かっているのは、被災したその医療機関であり、そこのお医者さんや看護師さんたち。その方々が借金が耐えられないから再建できないって諦めるんじゃなくって、その方々が立ち上がるということが私は復興だと思う。
 そのための支援を是非やっていただきたい、このことを強く求めて、質問を終わります。

○委員長(前田武志君) 以上で田村智子君の質疑は終了いたしました。(拍手)