【10.11.01】都会の里山保全、スーパー堤防の凍結を――行政監視委員会
東京都稲城市南山開発について
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
生物多様性条約に基づく国際会議、COP10は、十月二十九日、議定書を採択して閉幕しました。日本は、次回会議の二〇一二年まで議長国を務めますから、生物多様性の保全へ本腰を入れた努力が求められるところです。
このCOP10に先駆けて、今年三月、生物多様性国家戦略二〇一〇が閣議決定をされ、二〇二〇年までの短期目標が定められました。この中で、絶滅危惧種の保全についてはどのような目標を定めていますか。環境大臣、お願いします。
○国務大臣(松本龍君) COP10も、おとといですかね、三十日の未明に閉幕をいたしまして、これからまた議長国として一二年までということで、大きな使命を逆に私たちは背負っているというふうに今改めて認識をしております。そのためには、国内法の整備、あるいは様々なことがこれから私たちにも求められていくというふうに思います。
今言われました、今年三月に閣議決定された生物多様性国家戦略二〇一〇では、目標年を明示した総合的、段階的な目標として、二〇五〇年を目標とする長期目標、そして二〇二〇年を目標とする短期目標を設定しております。短期目標の一つとして、生物多様性の損失を止めるために、二〇二〇年までに我が国に生息する、生育する種に絶滅のおそれが新たに生じないようにすると同時に、現に絶滅の危機に瀕した種の個体数や生息・生育環境の維持回復を図るということにしております。
今お話にありましたCOP10、生物多様性締約国会議第十回目の会議でありますけれども、ここでも二〇一〇年以降の新たな世界目標となる愛知ターゲットが採択をされました。この中で、絶滅危惧種については、二〇二〇年までに既知の絶滅危惧種の絶滅及び減少が防止され、また、特に減少している種に対する保全状況の維持や改善が達成されるとされました。これを踏まえて、平成二十四年度を目途とした愛知目標に対応した生物多様性国家戦略の改定に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 この十年間で生育環境を維持するだけでなくて回復に向かわせると、これは相当な努力が求められる目標です。
具体的にお聞きします。東京都稲城市の南山、資料で配りました。ここは、新宿から電車で三十分足らずのところに広がる里山です。ここで今、大規模な区画整理事業が進められています。写真にあるとおり、山を崩して谷や沢に二十メートルから三十メートルの巨大な盛土をして埋め立てるという計画です。この埋め立てられる根方谷戸と呼ばれる谷では、オオタカが度々目撃をされてきました。オオタカは絶滅危惧種の中でも危急種とされていますが、直近の調査でこの個体数はどれぐらいと推測されていますか。
○国務大臣(松本龍君) 環境省は、平成十七年にオオタカの全国的な生息状況を取りまとめ公表をいたしました。それによると、全国に広く分布し、繁殖個体数は少なくとも二千羽程度はいると推計をされております。
オオタカは食物連鎖のある意味じゃトップだというふうに思いますし、そういう意味では自然の恵みというのが大切だろうというふうに思います。捕食、食べるもの、食べられるもの、被食の関係でいえば、食べられるものがたくさんあるからオオタカが生息するというふうに思っております。また、種の保存法の国内希少野生生物種に指定してその捕獲、譲渡し等を禁止し保護を図っているほか、オオタカ等猛禽類の保護対策の基本指針となる「猛禽類保護の進め方」を取りまとめて各種開発事業等で活用されているというふうに認識しております。
○田村智子君 ところが、現実には生息域が奪われているとしか言いようがありません。
この南山の開発事業では、東京都による環境影響評価にオオタカについての記述があります。造成工事により、特に草地環境はすべて消失をすると、生態系を構成している食物網が縮小、単純化すると、生息に厳しい環境となることが考えられるというふうに記されているんですが、こうした影響を回避するという検討はされずに、里山のごく一部に緑地を残すからそこに生息できるだろうという判断になってしまったんです。これを受けて、現にもう山を崩す工事が一部で始まって、オオタカがすんでいた根方谷戸周辺は夜遅くまでライトでこうこうと照らされて、以来、オオタカの姿を見る機会が激減しているというそうなんです。
改めて確認しますけれども、こうしたオオタカなど絶滅危惧種の生息が確認された地域での開発について、国は環境影響評価の指針をどのように示していますか。また、その指針に照らして、この南山のような事態をどのように思われますか。
○国務大臣(松本龍君) 南山の宅地開発計画等につきましては、本事業計画は東京都の環境影響評価条例に基づいて環境影響評価がされたものであって、環境大臣としてはここでコメントする立場にはありませんけれども、希少野生動植物の保全に配慮して開発を進めていくことがおっしゃるとおり必要だというふうに思います。この事業についても、条例に基づいて事業者及び東京都において適正に対処されるものと期待をしております。(発言する者あり)
○田村智子君 本当にそのとおりなんですね。このままでいいのかという事態なんです。
環境省が示しているガイドラインでは、少なくとも絶滅危惧種が確認されているような地域では、影響を与えないようにまず回避をすること、影響をできるだけ少なくすること、それがどうしても避けられない場合には代替措置をとることと、こういうふうなガイドラインを定めていると思うんですね。ところが、今紹介したように、東京都の環境影響評価では、回避も減退も恐らく考えられているとは思えないような事態があるわけです。
これ、オオタカだけではありません。実は、ここにはやはり絶滅危惧種のトウキョウサンショウウオの生息も確認をされています。やっぱり環境影響評価では、オオタカと同じように、生息可能な池を残留緑地に設けるから生息地の沢を埋めてよいという判断がされてしまいました。緑地を残すというのは、この資料の一枚目の奥畑谷戸というごく一部ですね、下の方にごく一部緑が残る。ここにオオタカも移ってもらう、トウキョウサンショウウオも移してしまうというんですね。
だけど、トウキョウサンショウウオは自分の力でここまで移ることはできません。で、どうするか。実は、開発をやっている事業者が仮設池を設置をして、そこに卵を移しているということが分かりました。仮設池というのがどれだけ立派なものなのか市民の皆さんが確認をしていますが、実はただのプラスチックのおけだと。百五十センチ掛ける九十センチ、これを二つ並べただけです。身を隠したり地上に上がるための岩もない。水が循環する設備もない。金魚すくいで見るようなただのプラスチックのおけが設置されているだけで、私も写真を見て、今場内どよめきがありましたけれども、驚きで言葉もありませんでした。将来はこの場所に池を造るというそうですけれども、そこまで事業が進むのには十年以上掛かると言われていて、これでいいのかという問題なんですね。
実は、これ南山だけでなく、マスコミでこのような開発の事業というのは幾つも取り上げられています。国としても、せめて問題が指摘される開発事業については調査を行うとか専門家の意見の聴取を行うなど、検討すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(松本龍君) 環境省がやれる範囲は、今のところ、環境影響評価ということでいえば、大きな規模ということになって、例えば海洋であっても公有水面、あるいは飛行場の建設であっても様々、各地域の都道府県等ということに今のスキームはなっております。
ここでも東京都の環境影響評価ということで、繰り返しになりますけれども、今のところ、環境省としては、環境大臣としてはコメントをする立場にはありませんけれども、しっかりやっぱり、今森林を伐採をすれば、例えばCOP10でも議論になりましたけれども、様々、オフセットと言いますけれども、環境化、森を開発したらそこにそれと同様の森を、生態系を保全をしていかなければならないという考え方もありますから、そのことについてもこれから我々の課題にさせていただきたいというふうに思います。
○田村智子君 それでは、国家戦略二〇一〇で、生物多様性の危機の第一は人間による開発だと言っているんですね。これはやっぱり見直すことなしに危機から抜け出すことはできないと思うんです。どんなにすばらしい冊子で戦略を作っても絵にかいたもちになってしまうと。行政の不作為が問われることになります。是非、踏み込んだ検討を強く求めて、続いて農水省にお聞きします。
この埋立計画のある根方谷戸は、道路を挟んで住宅が隣接していて、ここは戦後、土砂災害に見舞われてきた地域でもあります。こうした土砂崩落を防止するため、根方谷戸の斜面に広がる林は現在、保安林に指定をされています。
保安林はそもそも森林以外の用途への転用は抑制すべきものというのが農水省の基本的な見解だと承知をしていますが、それでは、保安林の指定解除というのはどのような場合に行われるんでしょうか。
○大臣政務官(田名部匡代君) 質問にお答えをいたします。
もう委員よく御存じだと思いますけれども、この保安林でありますが、水源の涵養であるとか災害の防止、そういった公共的な視点の中で守られなければならないところを保安林といたしているところでございます。
この解除でありますけれども、保安林の公共性にかんがみ、農林水産大臣による保安林の解除は、森林法第二十六条、指定理由が消滅をしたとき、公益上の理由により必要が生じたときに限定をしているところでございます。
○田村智子君 その指定理由がなくなったときというのはなかなか想定しにくいことで、公益上の理由によるものというのが保安林の指定解除の大きな理由になっていると思います。
ちょっと時間がないので、済みません、これ事前にお聞きをしましたら、公益上の理由というのは、もう用地を公的に必要だと言って公共事業のときに土地収用法で取り上げるというような場合のときが公益上の理由だということで大体確認されていると思うんですけれども、それでよろしいでしょうか。
○大臣政務官(田名部匡代君) 先ほど御説明させていただきましたけれども、災害防止の観点であるとか、また水源の涵養であるとか、こういった公共性にかんがみて、この保安林の解除を行っていくところでございます。
○田村智子君 この南山というのは地域を水害や土砂災害からも守る役割を果たしてきました。この里山がほぼ丸ごと崩すとどうなるのか。周辺住民の皆さんは全体像を示してほしいというふうに求めているんですが、いまだに説明がない。また、隣接する神奈川県川崎市でも、川崎の側に残土が高々と積まれる、そういうことになってきて、今大きな不安が広がっているんですね。是非、これ保安林解除の申請がもし出された場合には、元々もろい性質の稲城砂の巨大な盛土が安全だという保証、これないと思いますので、実情を踏まえた対応をお願いしたいと思います。
江戸川区北小岩地域のスーパー堤防計画について
次に、スーパー堤防についてお聞きをいたします。
先日の事業仕分では、スーパー堤防については事業廃止という評価が出されましたけれども、この理由について、蓮舫大臣、済みません、手短にちょっと御説明をお願いします。
○国務大臣(蓮舫君) 天災害への備えを軽視するものではないという前提で議論は行わせていただきましたが、御指摘のスーパー堤防につきましては、現在までの整備率が五・八%、このままのペースで進めますと完成までに四百年、総事業費で十二兆円掛かる、すべてを完成させるまでの具体的な計画も明らかではないなどといった問題点が幾つか議論をされました。
○田村智子君 私たち日本共産党もこのスーパー堤防の見直しは必要だと繰り返し求めてきました。治水というとダムだスーパー堤防だというのではなくて、森林の保全や遊水地の活用、通常の堤防の整備、また下水など内水はんらんの対策など、総合的に取り組むべきだという提案もしてきました。
スーパー堤防については、やはりこれ、事業仕分のこの評価というのは私はある程度当然だというふうに思いますけれども、国土交通省はどのように受け止めておられますか。
○国務大臣(馬淵澄夫君) 今委員から御指摘のスーパー堤防につきましては、事業仕分でも、今、蓮舫大臣御説明いただいたような結果をいただきましたが、一方で、治水はダムもございますが、このダムで想定される降雨量を超えるもの、このときに超過洪水が発生いたします。超過洪水が発生したときのその破堤をも想定したときに、守らなければならない資産があるとして、こうしたスーパー堤防は造られる経緯があったというふうに私も承知しておりますが、一方で、大変莫大な費用が掛かる、さらには完成までのその年限等々を考えますと、抜本的な見直しは必要だというふうに考えておりまして、私どもとしては、この整備箇所、事業箇所の見直し、さらにはコスト縮減、これについて指示を出したところでございます。
また、この仕分の結果ということもございますので、河川事業の中での優先順位というものを、これを明確にしてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 確認をしたいんですけれども、大本から見直すということですので、新たな地域でのスーパー堤防の事業は着手をしないと。これは、国交大臣、政治判断で御答弁いただけませんか。
○国務大臣(馬淵澄夫君) 河川整備の計画そのものも、先ほど来申し上げているように、優先順位をしっかりと勘案しながら、今後計画を進めてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 これ、やはり何のための事業仕分だったか、さっきゾンビという話もありましたけれども、やっぱり新たなところに着手しないというこういう決断をしなければ、仕分の意味がないというふうに思うんですね。
実は、江戸川区の北小岩地域、篠崎公園地域、スーパー事業の事業決定していません。ここでは、住民から強い反対の意見が出されてきたにもかかわらず、江戸川区はスーパー堤防事業を強引に進めようとしています。このスーパー堤防を前提として、篠崎公園地域では、道路建設、公園整備事業を事業決定をして、用地買収まで既に進めています。北小岩十八班地域では、事業決定をしていないのに、区の職員を常駐させて用地買収を強引に行っています。しかも、区は、十八班の住民だけを対象にした「まちづくりニュース」というのをこうやって配付をして、スーパー堤防事業をまるで既成事実であるかのように住民への説明を繰り返しているんです。今日付けの第七十六号のニュースでは、驚いたことに、引き続き事業を進めると宣言をしているんですね。
大臣、江戸川区長に対して、いったんスーパー堤防は立ち止まるんだと、新たな事業に着手はしないと、このことをしっかり伝える必要があると思うんですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(馬淵澄夫君) 大臣を拝命いたしまして、まさに御指摘のように、真に必要な社会資本整備とは何かということをしっかりと見極めなければならないとして、私は社会資本整備重点計画の見直しを指示したところでございます。この中で、このスーパー堤防のみならず、様々な社会資本整備、道路、河川、こうしたものにつきましてしっかりと見直しを図るということは、まずは計画論、ここからの見直しが必要だと考えております。
一部どこかのものですぐに止めなければならないといったことを議論するのではなく、まず大枠をしっかりと定めていくことが重要だというふうに考えております。
○田村智子君 これは、進んでいる事業を止めるのではなくて、まだ着手されていない事業だと。蓮舫大臣も是非よく聞いていただきたいと思うんですけれども、実はこの江戸川区のやり方が大変に住民の皆さんを苦しめているんです。
篠崎公園地域では、買収というお金が絡む話が毎日のように区によって地域で行われているために、隣近所でも当たり前の会話ができなくなっています。お墓をこの地域に残して、引っ越し先も告げずにいつの間にかいなくなってしまうとか、地域のコミュニティーがずたずたにされたと、本当に悔しい思いだと住民の皆さん話しておられます。
また、北小岩十八班地域では、買収すると即家が壊されて更地にされてしまう、爆弾を落とされたような町になってしまったと悲痛な声が起きています。この地域では、説明会と称してスーパー堤防完成後の住宅建設の説明までされて、反対する住民の皆さんの声は聞こうともしない。こんな強引な一方的なやり方というのは許されるものではないと思います。
事業仕分の、私たちは全面的に全部評価するわけではありませんが、やっぱりあの事業仕分の結論出たときに拍手が起こったというのには、そこまでこの堤防計画で苦しめられている住民の皆さんが現にいるということだと思うんですね。是非、本当に立ち止まって考える、江戸川区に対してもそういう態度で臨んでほしい、このことを強く求めまして、質問を終わります。