【10.08.06】公的病院の存続を――厚生労働委員会
B型肝炎訴訟の和解協議を
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
八月六日という日に国会での初質問に立つことになり、感慨を深めております。私が政治の道を歩むきっかけは、原爆被害とどう向き合うかという葛藤でした。核兵器廃絶始め平和の実現、そして民主主義発展への志を忘れず議員の任を全うする決意を申し上げて、質問に入ります。
まず、B型肝炎訴訟についてです。
八月三日、B型肝炎訴訟の原告団代表の皆さんが要請に来られ、これまで二度の和解協議への怒りと失望を口々に語っておられました。肝臓がんや肝硬変などの病を押して和解協議に臨んでおられる方もいます。私たちには時間がないという訴えは切実なものです。ところが、国は裁判期日にしか協議に応じない。内容も、感染の原因は予防接種だという証明の方法しか示さない。原告が意見を述べると回答は一月後、一番重要な救済策がいつ示されるのか全く見えてこない。これでは裁判と変わらないという声さえ上がっています。この事態を続ければ、原告の皆さんの心と体に大きな負担を強いることになります。
大臣、救済策を一日も早く示す、裁判期日でしか協議しないというやり方を改める、この原告の要望にこたえるべきではないですか。
○国務大臣(長妻昭君) まず、このB型肝炎の問題につきましては、国としても非常に重大問題であるということで、総理を中心に関係閣僚もこの間何度も会合を持って詰めてきているところでありまして、国からも裁判所の枠組みの中で、今までの、従来の国の主張にこだわらないと、こういうことを申し上げてまいりました。
例えば、母子手帳を持っていなければならないという従来の国の主張は、これは合理的な代替証拠を可能とするということにさせていただきましたし、あるいは、母子感染を証明するためにお母様の血液検査ということも国はこれまで申し上げておりましたけれども、それについても、お母様がお亡くなりになったときは年長の兄弟の血液検査で立証可能とする。ほかにも幾つか国がこれまでこだわっていた主張を変える御提言をして、そして原告から御意見を七月の二十八日にお伺いをして、そして国として九月一日にそれに対する回答を申し上げるということで進めております。
これについては、御承知のとおり、原告の方だけではもちろんございませんで、原告でない数多くの日本中にB型肝炎の方々がおられるということでございますので、この協議を一つ一つ着実に進めて、最終的には多くの方々に対応するようなそういう対策をつくり上げていきたいという思いで我々は取り組んでいるところであります。
○田村智子君 これまでの主張を変えるというのは、これは裁判所の和解勧告受けても当然のことで、原告の皆さんはとにかく時間がないんだ、このままでは命が尽きてしまう仲間がいるんだと、こういうせっぱ詰まった思いなんです。九月一日の次回協議前に話合いの場を持つということは最低限の責任ではないでしょうか。
感染を広げた集団予防接種は、かつて国家事業でした。被害者をすべて一刻も早く救済するという立場で誠実で迅速な話合いを強く求めます。
社会保険病院、厚生年金病院の存続を
○田村智子 次に、社会保険病院、厚生年金病院についてお聞きします。
これら六十二病院を公的な医療機関として存続させるための新しい機構を立ち上げる地域医療機能推進機構法案がさきの通常国会で成立するはずでした。ところが、参議院で審議ができず廃案となりました。このことに不安と怒りが広がっています。
福島県二本松市、山梨県富士川町からは、すぐに新機構法案の速やかな成立を求める意見書が上げられました。社会保険病院の病院長ら五十二名も、こういう要望書届いているんですけれども、地域住民と病院関係者は日々募る病院活動停止への不安と焦燥のうちに、法案の一刻も早い成立を一日千秋の思いで渇望していると各党議員に送付をしています。
社会保険庁解体の方針が出されて以降、病院職員そして地域住民の方々は、この病院がどうなるのかと不安を抱え、そして病院存続への努力を重ねてこられた。やっと公的な病院としてそのまま病院を守れると喜んでいたんです。通常国会の最終盤に審議を止めて廃案にしてしまった、この与党の不正常な国会運営には重大な責任があります。
大臣、この事態を、そして関係者の皆さんの思いをどう受け止めておられますか。
○国務大臣(長妻昭君) まず閣法で法案を提出をさせていただいて、この前の国会でございますけれども、これについて我々も、この閣法、閣議決定をして提出いたしましたので、これはもう是非とも成立を願いたいということで審議もさせていただいておりましたけれども、これは国会の会期の関係で、非常に我々も不本意ではありましたが、これは国会でありますので、国会の状況でこういうことになり、そして九月末の期限を迎えるということで、この国会、今のまさに国会は非常に短い期間の会期ということで、これはなかなか期日、九月末までに間に合わないということで、そして議員各位の御尽力で議員立法ということが提起をされたと、こういうふうに承知をしているところであります。
これからも病院は、それはそこに存続をしている病院については、それはそれで医療の質を上げるべく、地元の住民の期待にこたえるべく日々毎日一生懸命医療関係者が努力されておられるわけでありますので、それについては我々も存続ということで一定の法的枠組み、宙ぶらりんにならないで済むわけでございますので、これは我々としてもきちっと支援が必要な観点については支援をしていくと、こういう姿勢で取り組んでいきたいと思います。
○田村智子君 大臣御自身も、法案の廃案を受けて六月十六日、全国の病院長あてに手紙を出されています。私としては、臨時国会に法案を再度提出し、その速やかな成立を図り、地域住民の皆様に御安心いただけるよう、また医療の現場に不安や混乱が生じないよう、最大限の努力をしてまいりますとお書きになりました。加えて、民主党の「マニフェスト インデックス2009」、この医療政策詳細版の中には、四疾病五事業を中核的に行う公的な病院、国立・公立病院、日赤病院、厚生年金病院等を政策的に削減しませんと明記されています。
これが大臣の政治姿勢であると確認してよろしいですね。
○国務大臣(長妻昭君) 削減しませんというようなインデックスもありますけれども、これも、先ほども御質問が出ましたけれども、基本的には我々としては、医療機能を維持をする、そして地域医療、それを担う体制は維持をしていただく、そして地域住民、そして地元自治体の御了解があると、こういう前提でRFOに関しても譲渡するということでありますので、基本的にその前提が守られれば、地域住民あるいは地域の自治体の皆様方の一定の医療の質は維持された上での移行ということになるわけでございますので、それについて我々も、今後RFOが存続するということになれば、そういう観点から指導をしていくということになります。
○田村智子君 地域住民の合意が必要だという答弁いただきました。
この委員会には、社会保険病院等の現在の持ち主である年金・健康保険福祉施設整理機構、通称RFOの廃止を二年延長する法案が付託されています。これはあくまで暫定的措置としなければなりません。
RFOは保養施設などの整理、売却のための機構ですが、病院については売却を求める意見が自治体や地域住民から厚生労働省に寄せられたことはないと聞いています。実際に売却されたのは特殊な事情が重なり合った社会保険浜松病院だけです。
民間医療法人に売却された浜松病院は新病院として建て替えられようとしていますが、場所も市街地から遠くに移して、バスの便も少なくて使えないと不安が広がっています。診療科も社会保険病院の設立時からは大幅に縮小され、公的な病院がなくなることは本当に深刻だ、浜松のような事態を新たにつくらないでほしいという声も私のところに寄せられています。浜松病院のこの危機を強めたのは、社会保険庁がなくなれば病院もなくなるという風評が広がって、将来不安から医師が次々に離職したことが一因だと聞いています。新機構の発足が遅れれば同じ事態が広がりかねません。
実際、東京大田区の社会保険蒲田総合病院では、将来病院が売却されれば働き続けられるのかと、この不安から離職者が増えて、小児科病床はいったん閉鎖、現在ようやく八ベッド復活、産科は二〇〇八年十月から休止に追い込まれたままになっています。RFOの下にある、これが病院職員の不安を増大させて離職者を広げていることは事実です。
大臣、診療の縮小という事態をこれ以上起こさないための具体的な取組や、診療を縮小せざるを得なかった病院への支援をすべきではありませんか。
○国務大臣(長妻昭君) まず、仮にこのRFOの延長ということになれば、誤解がないように、先ほど、譲渡をするにしてもこういう条件で譲渡をするということを考えているというのを、きちっと我々としてもメッセージとして地域住民や自治体あるいは病院にも出す必要があると。RFOが存続をするけれども、それは、譲渡をするにしても、社会保険病院の場合はこういう前提があるんですよということをきっちりとお伝えするということを速やかにまずやってまいりたいと思いますし、あとは、意向確認ということで、病院が所在する自治体に対して、もう一度、病院の譲渡に対する自治体の考え方や住民の考え方や、どういう条件が満たされればコンセンサスが得られるのか、あるいは地域における病院の担う役割というのは今のままでいいのか、もうちょっと変えるべきなのか、あるいは今のまま強化するべきなのか、そういうことについてきちっと意向確認を再度丁寧にしていくということでこのRFO存続の意味をお伝えをしていくということも我々の責務だと思っております。
○田村智子君 地域住民や自治体からは今の形で存続をという要望が出されているんだと、これは確認しなければならないと思います。
私は、社会保険病院、厚生年金病院のやっぱりネットワークを生かしていく、それで医師不足を集団で補っていく、看護師の養成を集団でやっていく、大規模改修もお互いに支え合いながら財政的措置をやる、こういう可能性があると思っています。
東京北社会保険病院の拡充をもとめ、地域医療をよくする会の皆さんが、おととい、病院の公的な存続を求めて要請に来られました。この病院は国立王子病院廃止の後医療として造られた社会保険病院です。住民の皆さんの国立病院存続の運動が十年にわたって続けられ、やっと設立が約束されたという経緯もあります。設立の約束からは更に十年以上掛けて、幾つもの困難を乗り越えて二〇〇五年やっとフルオープンした、住民の方々にとっては二十年来の運動の結晶とも言える病院です。
この皆さんは北保険病院に大変誇りを持っている、このことがお話を聞いていてよく分かりました。地域の診療所や個人病院との定期的な会議も持ち、地域医療充実の中核的な存在だ、二十四時間の小児救急医療にも積極的だ、小児病床百床の増床も意欲を持っているなど、病院を熟知して、大きな信頼と期待を寄せているのです。
全国各地から寄せられる病院存続の意見書、要望書にも同じ思いが切々と書かれています。こうした病院は国民の財産です。一刻も早く安定的な運営を保障し、増床や大規模改修も行えるようにしなければなりません。
秋の臨時国会に改めて病院存続のための新機構設立の法案を提出することを政府に強く求めまして、質問を終わります。
ありがとうございました。