日本共産党 田村智子
コラム

【14.02.04】定時制・通信制高校で授業料前納か

拙速な法改定がもたらした新たな問題

「高校授業料無償化に所得制限」と説明されてきたのに、単位制の高校では「授業料前納」というケースが起こりうることがわかりました。

発信源は山梨県です。日本共産党の小越智子県議から、1月28日付け「山梨日日新聞」の記事が送られてきました。
定時制(単位制)や通信制の高校では、「一単位いくら」と年間授業料を定めているので、入学時に1年分の授業料を徴収、あとから所得に応じて就学支援金を支給する、という内容。
一般的には年間20単位で3万2400円の負担になります。
小越県議が県に説明を求めると、「多くの県が同じやり方」と説明したというのです。

2月4日、文部科学省の担当者をよんで対策を求めました。
昨年の臨時国会で、「公立高校の授業料不徴収」という条項を法律から削除した、これが問題のおおもとです。
全日制の公立高校では、月額授業料の相当額を就学支援金で毎月支給となるので、授業料徴収は所得制限を超える場合になります。
「定時制・通信制の高校生も同じようにするのは当然ではないのか」
「政府の制度変更が突然行われたことが原因。文部科学省から、授業料前納にならないような対処をすべきではないか」

文科省の説明は、「授業料徴収は都道府県が決めること」「指導する立場にない」というもの。
法律上はその通りです。しかし、この説明で引き下がるわけにはいきません。
法律で「不徴収」とした授業料を、昨年11月終わりに法改定して授業料徴収を復活させた。こんなに急な制度変更は混乱を招くと、私たちも繰り返し問題を指摘した。
そのたびに「迷惑のかからないようにする」と文科省は説明してきたではないか。

「4月時点で授業料が払えないという家庭に対して、徴収を待つように、入学をあきらめさせないように、というのでは不十分でしょうか」
文科省の言葉に、思わず「かみついて」しまいました。
「3万円が払えないと言わせるんですか? 家計が苦しても3万円が払えないとは言えずに、生活費を削ったり、借金したりする人だっているでしょう? 授業料の請求をしたらダメなんですよ」

様々な事情から全日制に入学せずに、単位制や通信制を選択した、困難を抱えている家庭が多いことが予想されます。
そういう家庭に授業料を請求する、授業料無料と言いながら定時制・通信制を「差別」するかのような扱いを高校生や保護者はどう受け止めるのか。

山梨県では、新日本婦人の会の県本部が小越県議とともに、直ちに県に要望書を提出。
県民からの批判を受けて、県は「前納」の方針を変更しました。
(2月4日付け「山梨日日新聞」――「授業料前納方針を撤回」)
「こういう対応をしている県もあることを全国に伝える、全日制との扱いが違うことのないように工夫してほしいと伝えるなど、文科省が行うべきではないのか」
文科省も、こうした指摘に「なんらかの対応を検討する」と約束。

「公立高校の授業料不徴収」――この条文が削除されたことが何を引き起こすか。
「所得制限を設けた」と言いながら、それにとどまらない事態が起こりうるのです。
所得制限によって生じる財源は、低所得世帯の高校生への支援金につかうと説明しながら、来年度予算案では高校就学支援の予算は前年度比73億7300万円減。
「小学校や中学校に授業料という言葉がないように、早く高校からも授業料という言葉がなくなってほしい」――定時制高校生の言葉が突き刺さる事態です。