日本共産党 田村智子
コラム

【13.05.07】子どもの医療費無料化について予算委員会で質問

自治体の足をひっぱる国に怒りの声

テレビ中継の入る予算委員会、質問時間は答弁含めてわずか11分。
「子どもの医療費無料化」についてとりあげました。

医療費の窓口3割自己負担の重さが、多くの国民を苦しめている――
質問で紹介したのは、小学校の養護教諭(保健室の先生)や医療機関から聞き取った事例です。

○小学校2年生の女の子。斜視で、片方の視力が著しく悪いため、学校検診で病院での検査をと連絡。検査の結果、手術をすすめられたが、医療費払えずふみきれない。女の子は、自分の目がほかの子と違うことにも気づき初めて、「手術受けたい。このままはいや」と養護の先生に話していた。

○調理中の鍋に背中があたって、手のひら大の火傷を負った男の子。翌日、体育の着換えでシャツに血や体液が染み出ていた。担任の先生が気づいて保健室へ。家に連絡すると「病院には連れて行かないでほしい」、男の子も病院に行きたいとは言わない。(この火傷の状態は相当に痛みもあるはずです)。保健室で連日ガーゼ交換をして治療。

○新型インフルエンザが流行していたとき、子どもが感染疑われる症状に。お金がなく病院に連れていかれない。不安でいっぱいのまま、学校を休ませて見守るしかなかった。

こうした事例は、私の住む町ではまずありえません。東京23区は中学卒業まで、医療費無料が当たり前です。(市部では通院1回200円など、無料ではないのですが。)
住んでいる場所の違いで、子どもも親もこんなに苦しむのか。
手術で治せる疾患なのに、お金がないために受けさせられない、親としてこんなつらいことないでしょう。
だから、国として子ども医療費無料の制度が必要なのです。

厚生労働大臣の答弁はあまりに冷たいものでした。
今ある制度を並べ立てるだけ(難病の子どもへの支援、高額医療費の支援など)。
そういう答弁が帰ってくることもまた想定していました。冷たい答弁に、どういう言葉を返すか。自分の質問の直前まで考えていました。バシッと批判するだけでは、奥行きがない。
「子どもがお金の心配なく必要な治療が受けられるようにしたい、そういう答弁を大臣から聞きたかった」

自治体はすでに努力をしている――厚生労働省が初めて全自治体名も明らかにして、子ども医療費負担軽減のとりくみを調査し公表しているのです。
実はこの資料、わが党の高橋千鶴子衆院議員の質問に答弁したことで、全面公表することにしたと厚生労働省が事前のレクチャーで教えてくれました。

全国1742自治体すべて3歳以下の子どもの医療費負担軽減を行っている。
少なくとも就学前までの負担軽減をしている自治体は1716、全体の98・5%。
対象年齢区分別にみれば、「中学卒業まで」としている自治体が最も多く752自治体、一番年齢が高いのは22歳未満(北海道南富良野町)。
ここまで、自治体のとりくみは広がっているのです。

今回の質問のメインは、自治体の窓口負担軽減の足をひっぱる国の制度を告発すること。
窓口無料にすると、国民健康保険の国庫負担分を削るという「ペナルティ」。これが、自治体に重くのしかかっているのです。

ペナルティの理由その1「地方の公平性」
――すべての都道府県、自治体が、なんらかの負担軽減をしている。かつ、全国知事会、市長会、町村長会が、ペナルティの廃止を求める意見書を出している。

ペナルティの理由その2「無料にすると医療費がそれだけかさむ」
――自治体からは慢性疾患の患者が継続的に受診できるなど、重症化を防ぐ効果ありとの報告も。3割負担で病院にかかれない実態を放置するのか。

何しろ自治体はどこも国のペナルティに抗議をしているのですから、厚労大臣の答弁はどれも空虚になるのです。
「せめてペナルティの廃止を検討するといえないのか」とさらに追撃すると、なんと「検討することを検討する」という珍答弁。
これには、他党の議員からも「そんな答弁じゃだめだ」という声があがりました。

最後は総理に。
ドイツでは、2004年に外来の医療費負担を導入したが、その際にも医療費負担を理由に親が子どもを病院に連れていくことを躊躇してはならないとして、18歳未満の医療費は無料にしている。
フランスでは、わずか1ユーロの定額負担も16歳未満の子どもについては無料としている。
かたや日本では、ゼロ歳の子どもにも2割負担、小学生以上は大人と同じ3割負担、そのうえ、自治体独自の無料化制度にペナルティまで課す。これでいいのか。子どもに対する国の姿勢が問われているのではないか。

厚労大臣の答弁をなぞるだけの総理の答弁。
こんな政治でいいのかと、国会中継を見ていた方からも電話やメールをいただきました。

この質問、答弁はすべて想定できました。
何しろ、何度となく様々な自治体の方と、この問題で厚生労働省交渉をやってきたのですから。
交渉の場では「ペナルティは廃止できません」と一方的な回答で終わらせることができても、国会質疑の場では国民の審判をうけることになります。
壁は固くて厚いけれど、世論がこれを崩していく。全ての自治体と力合わせる大義が私たちにはあります。