日本共産党 田村智子
コラム

【12.08.30 】野田総理への問責決議の顛末

「3党増税連合」 VS 「中小数7会派」

参議院での野田総理への問責決議(8月29日)をめぐる動きは、国会の中でリアルタイムにみていると、実に痛快なものでした。
マスコミが報道しなかった、事の顛末をレポートします。

野田首相に、「総理大臣としての資格がない、その責任を問う」と突きつける。
衆議院では「内閣不信任案」として提出され、可決されれば、内閣総辞職か国会解散になります。
消費税増税法案の採決を阻むため、わが党含む中少政党7会派が衆議院で内閣不信任案を提出、しかし翌日には自民党・公明党が退席して否決――これが8月9日のこと。
翌8月10日、参議院の特別委員会・本会議で消費税増税と社会保障切り捨ての法案が可決・成立。そのまま、国会は「お盆休戦」となっていました。

「近いうち」の解散・総選挙を野田首相に「約束させた」はずの自民党。
ところが、今国会での解散などという動きは全くないまま、お盆明けには、各委員会の審議も再開されました。
なんとか「追いつめる」形をつくりたい、参議院で野田首相への問責決議をあげなければと、お盆明けから自民党の画策が始まっていました。
(国会には「一事不再審」のルールがあって、一度否決してしまった内閣不信任案をもう一度衆議院に提出するということは難しいのです。)

8月28日、自民党・公明党が野田首相問責決議を出すと、参議院議員運営委員会で発言。
これに猛然と反発したのが7会派です。
「問責決議案は、7会派によって先に出されている。これを本会議で議案とするのが筋だ」

7会派の国対担当者もお盆休戦の終わりごろから話し合いを続けていました。
結束を乱さず、民・自・公の3党連合に対決していこう――この流れは続いていたのです。

議員運営委員会は、議席10以上の会派しか入れません。
7会派といっても、議運の協議に参加できるのは、「国民の生活が第一」と「みんなの党」だけ。
自民党は、大政党である自分たちが問責決議案を提出したら、中少数の会派はそれに従うだろうと考えていたのでしょう。

ところが、民主党を離党して新しい会派ができたことで、議運の構成は変わっていました。
民主10人、自民10人、公明2人、生活2人、みんな1人――議運の多数決では、自民・公明12人、その他政党13人の力関係ということです。
私達7会派にとっては、問責決議は消費税増税法案の採決前に本会議にかけることが必要だったわけですから、法案採決を優先させた自民党に協力するほどお人よしではありません。

これで行き詰まったのは自民党です。
内閣不信任案を出せなかったばかりか、参議院では与野党逆転の参議院での問責決議も自分たちは主導できない。
7会派提出案に加わるか賛成するかしない限り、問責決議そのものがあげられない。
「伝家の宝刀」をいざ抜こうと思った瞬間に、これが抜けない刀だったことを思い知らされることとなったのです。

自民・公明からは、共同提案とするために7会派案を書き直すことができないかなどの提案がありました。
自民党が示した案文には、民主党のマニフェスト違反への批判はあっても、消費税増税を押し通したことへの批判はありません(協力したわけですから、当然ですが)。
当然、7会派は「のめない」と突き放す。
これで決裂して、問責決議ができなかったとしても7会派にとっては打撃にもなりません。

結局、自民党が折れざるをえませんでした。
7会派案に賛成するというのです。
7会派の問責理由は、消費税増税法案を国民多数の世論を無視して採決したことです。「3党合意」への批判も当然もりこまれています。
この案に、「理由は一致しない」ことを表明しつつも自民党が賛成する――矛盾のきわみです。

本会議では、公明党は退席。
かたや自民党はといえば、民主党からは「3党合意への裏切り」と言われ、わが党からは「民主党にマニフェスト違反をけしかけた」と批判され、いわばサンドバック状態。
こんな状況のもとで、問責決議は可決されたのです。

国会が「2大政党」と言われるようになってから、自民党(プラス公明党)と民主党がどう合意するかで議会運営が行われることが当然になっていました。
3党の議席390余、対する7会派は84議席。ところが議会を動かしたのは少数勢力だったのです。
国民世論をきずなにした結束、道理をつくした1点共同の力。
加えて、その結束をつくるために、日本共産党が相当に尽力をしたという事実。

昨年来、私が各地の演説会でよびかけてきたこと。
「国民世論におされて、個々の議員が党の方針と違うことを言う状況が次々に生まれている。もっと大きな世論と運動で、政党も議員もぐらぐらと動かしていこう。」
「日本共産党とも力を合わせようという政治勢力が新たにでてくるかどうか、それが国民要求実現のカギを握る。選挙でみるべき前進をつくろう」

よびかけてきたことと重なり合う情勢が、こんな急テンポで進むとは、演説していた時には予想していませんでした。
みるべき前進をつくれば、新たな可能性が必ず開ける。こんな面白い時代に、私達は活動しているのですね。