日本共産党 田村智子
コラム

【12.07.08】練馬区で保育を考える集い

「子ども・子育て新システム」はどうなった

日曜日の夕方、子育て世代にとってなかなか集まるのが難しい時間。
保育のつどいにどれくらい集まれるかな…と心配半分、期待半分で練馬区に向かいました。

主催は練馬区の共産党の「まんなか後援会」。
若い世代と熟年世代の「まんなか」という意味だそうです。
仕事や子育てで集まることもなかなか難しい、でもいざ行動すれば人とのつながりもたくさんある、そんな世代が悩みも出し合いながら、交流しながら、活動していこうと後援会をたちあげたのです。

子どもを連れて参加してくれた方も。会場の後ろには、プレイマットがしかれて絵本やブロックも用意されていました。
廊下でも子どもたちの楽しげな声や、時には泣き声も花盛り。
これが、この世代の集まりの醍醐味であり、難しさであり、多様性だと思います。

保育の未来を考える、テーマは「子ども・子育て新システム」をめぐる国会情勢がどうなっているか。
40分の話を準備するのは、私の質問準備そのものでした。

昨年から小宮山厚生労働大臣と激しく論争してきた保育問題。
政府提出の法案を、自民・公明・民主の3党で修正して、消費税増税法案と一緒に衆議院で可決、いよいよ参議院での議論が始まろうとしています。

数年にわたる保育関係者の運動を反映して、自民党が「新システム反対」を明確に打ち出したのは昨年12月のこと。
ところが廃案にせずに、短時間の密室協議で修正しての成立を狙う。これをどうみるか。

消費税増税法案を成立させるために、子どもの施策を口実にした。政党間の駆け引きの道具にされた。
廃案にして、待機児童問題や子育て支援について、現場の問題にこたえる施策を丁寧に議論する――これが、道理あるやり方だと思います。

修正案は、保育関係者からとりわけ強い反対の声があがっていた、「市町村の保育実施義務の削除」は撤回させました。運動の成果です。
ところが、保育実施義務を弱めるような別の改定をしています。

現行の児童福祉法24条を、日常用語にいいかえると――
自治体は、保育の申し込みがあった、保育を必要とする子どもを、保育所において保育しなければならない。
ただし、やむを得ない場合には、無認可保育所や保育ママさんなどの事業で保護しなければならない。

民・自・公の提案は――
自治体は、保育を必要とする子どもについて、次のやり方のほか、保育所において保育しなければならない。
次のやり方とは、無認可保育所や保育ママさんなどの事業で、「保育の確保」すること(受入れ枠を用意すること)。

違いが見えてくるでしょか。
看過できないのは、第一次的には認可保育所での保育、それができない場合やむをえず、他の事業、という優先順位がなくなっていること。
認可保育所、その他の施設や事業を並列においてしまいました。
これはとても心配な規定です。

認可保育所以外は、施設と保護者の直接契約で、自治体はあっせん・入所の調整をするだけ。新システムが目指した方向そのものです。
面積や設備、保育士の配置など、最低基準をクリアしている認可保育所は、当然、基準に達していない施設よりも費用がかかります。だから認可は増やさない。
東京23区でもつい最近まで認可保育所の増設をストップしていた自治体が少なくありません。待機児童急増の大きな要因です。

認可保育所以外は、株式会社は保育事業で利益をあげて、株の配当を行うことも自由です。
それが保育の主流となるようなことがあれば、保育士の給料を低く抑え、非正規雇用の職員ばかりという保育をやって、利益をあげようとする企業が必ず参入してきます。
東京の認証保育所で実証済みです。
子どもの安全や命にもかかわる重大な問題です。

児童福祉法24条だけでも、これだけの問題がみえてくる。
幼保連携型認定こども園、教育と保育を一体に行う、幼稚園と保育園を完全に合体させた施設として新しくつくられることになります。
その基準は――教育については35人学級で職員1人以上。
3歳児でも35人に職員1人でよいというのです。保育については3歳児20人に1人の職員。
午前10時から午後1時までは教育の時間だから3歳児35人を1人でみる、その後は保育だから20人に1人の保育士をつける。こんなやり方が許されるのでしょうか。

つどいでも、「3歳児35歳に職員1人」と話したら、驚きの声があがりました。
現役の保育士さん、保育士OBも参加していたので、そんなの無理!というのが実感でしょう。
私も想像しただけで、「無理!」(娘の口癖ですが)と声をあげてしまいます。

中途半端な修正で、多くの新たな問題をつくりだしている。
と指摘をしたら、「中途半端」という言葉が「言い得て妙」だったようで、笑いと頷きがおきました。
やっぱり結論は、消費税増税を押し切るために、子ども施策を利用するな!ということか。

自民党も反対と表明していただけに、「廃案にできる」と期待していた保育関係者も多数います。
これからどういう運動をしたらいいのか、という質問もありました。
参議院では与野党逆転、廃案にできる、という期待があっただけに、これは答えるのが難しい質問です。
内容を知らせる、疑問の声・反対の声を届ける、広げる、消費税増税反対の声と合わさった大きな運動にする――それで阻止できると請け負うわけにはいきません。けれど最後まで道理をつくして行動してこそ、次の道が開けるはず。

今できることに力をつくす、そのことがあらたな可能性を必ず開く。
今日のつどいも、次の力になるはず。
その一歩一歩を積み重ねましょう。