コラム
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きつねとたんぽぽ
子どもの時読んだ本1
松谷みよ子・作/山中冬児・絵 小峰書店子どもの時に読んだ本、実家で見つけ出して、今度は私の子どもたちに読んでいます。
その中の1冊が、松谷みよ子さんの「きつねとたんぽぽ」。
表題作のほか、独立した4つの短編でつづられています。語りかけるようなやさしい文章で、松谷みよ子さんがわが子に語りかけている声が聞こえてくるようです。
黒猫のクーが、道で出会う猫たちに「どうしてそういう名前なの?」とたずねて歩くお話は、子どもの時のお気に入りでした。
白猫が「シロ」ではつまらないというと、「あおいおめめさん」と名前をつけてあげるところなど、「名前」の意味の面白さを感じたりしたものです。
久しぶりに読みすすめ、最終話にくぎづけとなりました。
「ぞうとりんご」----おやつのりんごをとりあって、とっくみあいのけんかをした子どもたちに、お母さんは象の芸当を見せにでかけます。りんごを半分にわって、人間と半分ずつ食べるかしこい象に驚き、けんかしたことを反省する子どもたち。
話はそこで終わりません。お母さんは、戦時中に餓死させられた動物園の象のことを話します。幼児から小学1年生向けとされている本で、戦争の話を書いていることにまず驚きました。
そして、最後のページの母子の会話に胸が詰まりました。
「せんそう まだ あるの? そうしたら、この ちっちゃい ぞうも、ころされちゃうの?」
「いいえ、せんそうは もうないのよ。 あきらや ひろしや ぞうが、いつまでも おいしい りんごを たべられるように、おかあさんが いうもの、せんそうをしては、いけません! って。」
「おかあさんが いるから、だいじょうぶだね。」
「ええ、ええ、だいじょうぶよ。」
戦争を許さない決然とした母親の姿に、涙がこみあげました。
この本の発行は1970年。戦争の記憶もまだ生々しく、また安保闘争など、平和をもとめる運動が高揚した時代。子どもの本にも、戦争と平和が書かれていたのです。
いま、もう一度、この母親の決意をよみがえらせる時だと思います。