日本共産党 田村智子
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【14.05.19】 決算委員会 防空法  税金差し押さえ問題について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 来年は終戦から七十年を迎えますが、日本の侵略戦争によるアジア太平洋地域の被害、また日本国内の民間人被害など、政府はまともな調査をしないまま年月が過ぎております。
 戦時中の空襲被害については、一九七七年の日本戦災遺族会の調査で、一都一道一府三十八県百四十九市町村で死亡者十八万六千四百十四人、負傷者二十三万三千三百五十三人と記録をしています。この調査につきましては二〇〇九年三月に我が党の高橋千鶴子衆議院議員がただしておりまして、総務省は、回答のなかった自治体もあるので、更に聞き取りなどを行い、空襲被害を記録すると答弁をされています。
 その後、空襲被害者数というのは新たに確認ができたのでしょうか、お答えください。

○政府参考人(田家修君) お答えいたします。
 総務省では、空襲等による一般戦災の死没者に対しまして追悼の意を表す事務を所掌しております。具体的には、全国戦没者追悼式に参列する死没者の御遺族の方に対する旅費の支給等を行っているところでございます。これに関連をいたしまして、追悼に資するための情報の整理といたしまして、各戦災都市における戦災の状況等に関する調査も行ってきたところでございます。
 御指摘にございましたように、平成二十一年、高橋千鶴子先生の方から、昭和五十二年に社団法人日本戦災遺族会が実施をいたしました空襲による死者数等の調査結果を更新できないのかという御質問がありました。
 私どもといたしましては、その後、各自治体の御協力を得ながら、情報の整理を進めつつ、ホームページでの掲載を行っているところでございます。さらに、平成二十二年度からは、御遺族からの御要望を踏まえまして、全国各地の追悼施設や追悼式に関する調査を御遺族や関係自治体の御協力をいただきながら行っているところでございます。

○田村智子君 これは数字出てこないんです。
 総務省は、今御答弁ありましたように、戦没者の追悼の予算と事業というのを所管していますが、この枠組みで空襲被害の調査をするということには本当に限界があります。一方で、広く国民の戦没者を対象にした事業は総務省しか所管をしておりません。
 大臣にお聞きをしたいんです。
 空襲の被害調査と記録を正面に据えた事業、今ないんです。これ、必要だと思います。各地域の戦災記録は保存の体制も十分ではなくて、このままでは被害の実態の詳細な記録が不可能になりかねません。是非内閣としてこの問題を検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(新藤義孝君) 総務省では、空襲等による一般の戦災死没者に対して追悼の意を表す事務を所掌しております。そして、どういった事業をやっているか、また追悼に資する観点から、全国の空襲等に関する情報の整理、提供を行っているか、これはただいま局長の方からお話をさせていただきました。
 御指摘のような観点につきましては、戦後より政府として対応してきているところであります。それぞれの所管があるわけでありまして、今後ともその枠組みの中で適切に実施されていくものというふうに考えておりますし、政府の見解については、今の状態で、私が総務大臣として個別のコメントをするような状況ではないと、こういうことでございます。

○田村智子君 このままでは日本政府としての戦争被害という調査が、あるいは記録がないままになりかねない。これ、是非検討していただきたいんです。政府としての調査というのは、空襲被害者からも繰り返し要望がされています。私は、死傷者の人数、規模ということにとどまらず、空襲被害がなぜこれほど大規模になったのかという検証を行って、そのことを記録するということが今大変求められていると思います。
 現在、最高裁に係属している大阪空襲訴訟では、大阪地裁、高裁とも、空襲から逃げることを困難にした防空法、防空体制についての事実認定をしています。これは資料でもお配りをいたしました。
 二〇一一年十二月七日の第一審判決では、昭和十二年に成立した防空法には、昭和十六年の改正によって、空襲からの退去禁止、空襲を避けるために住居を移転することを禁じたんですね、及び違反者への罰則規定が設けられたとし、退去禁止命令が実際に発せられたかは明らかではないとしつつも、次のように指摘をしています。
 お配りした資料の左のページの三行目ですね、昭和十六年十二月七日に発せられた内務大臣通牒「空襲時ニ於ケル退去及事前避難ニ関スル件」では、以下のとおり、一般的には退去をさせないよう指導すべき方針とされていたと。「退去ハ一般ニ之ヲ行ハシメザルコト」と、(一)として書いてあります。
 また、右側のページです。上から四行目、昭和十七年七月九日に内務省防空局が発した「待避所ノ設置ニ関スル件」という通牒には、「待避ノ必要性ヲ強調スル余リ逃避的観念ヲ生ゼシメザル様厳ニ留意シ、焼夷弾落下等ノ場合ハ直ニ出動シテ自衛防空ニ任ズルノ精神ヲ昂揚セシメ、且之ガ訓練ヲ行フコト」と記載されていたと、こういうふうに書かれています。
 さらに、次のページのところですね、被告が、太平洋戦争を開始し、原告ら空襲被害者を含む国民に対し、防空法を改正して退去を禁止できる場合を定め、原則として退去をさせないようにする趣旨の指示を直接的又は間接的に行い、隣組として防火活動をすることを求めるなどして、事前退去をすることが事実上困難といい得る状況を作出したと。
 さらに、二〇一三年一月十六日の控訴審判決では、これら一審の防空法についての事実認定を維持するだけでなく、これに加えて、次のページのところですね、こう述べています。
 昭和十九年十二月一日付け朝日新聞に、小幡防空総本部指導課長の談話として、焼夷弾は手袋をはめてつかんで投げ出せばよいとの記事が掲載されるなどして、当局が、民間防空として初期消火に積極的に当たらせるなどの目的から、焼夷弾の脅威を過少に宣伝していたことがうかがわれ、これを信じて早期に避難せず初期消火に当たった国民が、その分危険な状況に置かれたものと評価することができると、こうしたわけです。
 また、この控訴審では、国は、事前退去が困難だったという事実認定は誤りだというふうに主張したわけですが、これについても、この下の段の方です、当時の疎開政策は、あくまでも国土防衛の目的から策定されたものであり、生産、防衛能力の維持に必要な人材に対しては、疎開を原則として認めないものとし、これらの者に対しては身を挺して防火に当たるよう求める一方で、上記防空に足手まといになるような老幼妊産婦病弱者は優先的に疎開させるという方針を同時に示しているのであり、無条件に国民の疎開を推し進めるものではなかった。少なくとも開戦当初は、一般に退去を行わせないという方針を掲げ、隣組として防火活動に従事することが国民の責務であるといった思想を植え付けるなどして、事前退去をすることが事実上困難と言い得る状況を作出していた。
 こういう認定は初めてのことなんです、大阪空襲の裁判で初めてのことなんです。国は空襲の火が消せるようなものではないということを知りながら、逃げるな、火を消せと国民に徹底した。その責任は極めて重いものだと思います。
 新藤大臣、政府の一員としてこの判決の事実認定についてどう思われるか。こういう認定がなされているからこそ、政府としても空襲についての調査が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(新藤義孝君) ただいまの事案につきましては、現在、大阪空襲に関する訴訟は最高裁に上告中と承知をしております。裁判中の案件について私どもがコメントすることは控えたいと、このように思いますし、そもそも総務省は、空襲などによって、一般戦災死没者に対しての追悼の意を表す事務を行っております。補償や謝罪を求める訴訟である本件については、私の方からコメントすることは、これは控えたいと、このように思います。

○田村智子君 国家賠償についてお聞きしたわけではないんですね。追悼ということをやるのであるならば、一体なぜ死ななければならなかったのかという調査をなぜ踏み込んで行わないのかということを私、問題提起をしているわけです。
 三月まで放映されたNHKの連続ドラマ「ごちそうさん」でもこの大阪大空襲が描かれました。業火から逃れるために地下鉄に避難しようとするけれども、シャッターが下りていて駅に入れない、開けろと騒ぐ主人公に職員が防空法で決まっているから開けられないと告げる、こういう場面がありました。実際に、空襲時、地下鉄の利用は禁じられていて、防空ごうも簡易なもので大丈夫とされていました。逃げるなと命じ続けた政治によってたくさんの命が奪われたことになります。
 大阪空襲裁判の原告のお一人谷口佳津枝さんは戦災孤児となられました。今日の空襲は大きいらしいので、お母ちゃんは家を守らないといけない、そう言って母親は七歳の佳津枝さんと十二歳のお姉さんだけを逃がしたわけです。一緒に避難していれば助かった。しかし、お母さんと父親代わりだったお兄さんは焼死をされた。戦災孤児となった方々は地をはうように生き、つらく惨めな日々を決して忘れることはないと言われています。また、空襲による負傷で手や足を失った方、顔を焼かれた方の苦しみもまたどれほどのものかと思います。軍人軍属は恩給などの援護があり、これは総務省の所管です。なぜ民間人には国の謝罪も援護もないのかと。
 今、空襲被害者援護法の制定を求める運動も広がっています。これは所管ではないということなんですけれども、これ、高齢になられた皆さんの声に応えるべきではないかと。政治家としての新藤大臣の所見をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(新藤義孝君) さきの大戦において全ての国民が、程度の差はあれこそ、何らかの戦争の犠牲を払っていると、この意味。そして、空襲によって筆舌に尽くし難い御労苦を体験された方がたくさんいらっしゃることも承知をしております。それから、戦中、戦後を通じて遺族となった家族がどれだけ悲しい思いをしているのか、つらい思いをしているのか、私も遺族の一人でありますから、母親からもよく聞いております。委員の方にそういった方がいらっしゃるのかどうか分かりませんが、何らかの関係で必ず日本人がどこかでそういった御関係、あると思います。
 ですから、二度と戦争は起こしてはいけない、平和な国を追求していく、それが戦後の日本の原点でありますし、私たちはそれをこれからもずっと進めていかなくてはいけないと、このように思うわけであります。そして、そういうことを忘れずにしっかりと対処していくということは大切だと思っております。
 しかし、一方で、今委員のお話の部分につきましては、これは東京大空襲における判決は、地裁、高裁で原告が敗訴した上で、最高裁にて上告が棄却をされている状態です。大阪空襲については、大阪地裁、高裁において原告は敗訴とされ、今、上告中ということであります。
 そういう中で、この裁判の様子ということで、裁判中のことでありますから、私は先ほどから申し上げているように、このことについてのコメントは差し控えると申し上げておりますし、政権全体として、それは、政府としてどのように対応するかは政府の中で統一の見解を出していかなくちゃいけないことだと思います。私の方で今それを求められても、現状においてお話しするような状態にはないと、こういうことでございます。

○田村智子君 是非、政府に問題提起をしていただきたいというふうに思うんです。
 これまでも、原爆による被爆者、それから中国残留邦人、シベリア抑留、これは、最初の時点では救うことができないと言われてきたものを特別措置の法律によって救済が、援護が行われてきたという経緯があります。空襲など民間人の戦争被害については、戦争だから仕方ない、お気の毒ということで済まされてきましたが、こうした今紹介したような事実認定、国の責任ということが事実認定をされています。是非、今後政府の中でも速やかに検討が行われるように要望して、次の質問に入りたいと思います。
 地方税、国保税などの滞納処分についてお聞きをいたします。
 昨年十一月二十七日、鳥取県による児童手当差押訴訟の判決が広島高裁松江支部から言い渡されました。これは県の控訴を退けるもので、この判決が確定をしています。概要を簡潔に御説明ください。

○政府参考人(米田耕一郎君) 御指摘の判決について概要を御報告いたします。
 これは、鳥取市に在住する自動車税を滞納しておりました男性が、鳥取県がその県税の滞納処分として執行いたしました預金債権の差押え及び取立て、換価処分、滞納県税への充当処分の無効確認又は取消しを求めた事案でございます。平成二十五年三月二十九日に鳥取地裁が判決を下しておりまして、これに対しまして鳥取県が控訴したものに対する判決でございます。
 中身でございます。これは、自動車税の滞納に対しまして鳥取県がその滞納処分を行ったわけでございますが、その処分の行い先が銀行の口座に対して差押えを行ったわけでございます。一方で、この口座に入りましたお金が言わば児童手当の支払の口座になっておりまして、これを差し押さえた点が問題になっておりました。児童手当法では、第十五条で「児童手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。」と規定がございまして、これに違反をするのではないかということでございます。
 一方で、平成十年の最高裁の判例によりますと、これは国民年金等のことでございますが、児童手当と同様、差押禁止債権の件でございますけれども、その給付は、銀行口座に振り込まれた時点で金融機関に対する預金債権に転化して受給者の一般財産となり、差押禁止債権としての属性は承継しないという判決がございました。これに基づきまして、県は口座を差し押さえたということになっておりました。
 平成二十五年十一月二十七日の広島高裁の判決はこのように申しております。鳥取県が差し押さえた預金債権のうち十三万円、これは児童手当の額でございますが、につきましては、児童手当が口座に振り込まれることを認識した上で、入金の直後に児童手当によって大部分が形成されている預金債権を差し押さえた鳥取県の処分が、実質的には児童手当の受給権自体を差し押さえたのと変わりがないため、児童手当法第十五条の趣旨に反するものとして違法と認定をしたわけでございます。鳥取県に十三万円の返還等を命じたものと承知をしております。
 なお、同時に、この差押えにつきましては、鳥取県の不法行為であるとして慰謝料の請求がございましたけれども、この件につきましては、先ほど申しました最高裁判例にのっとり鳥取県が行ったものであり、鳥取県側に不法行為を構成する故意又は過失はないと認定をされまして、慰謝料等の請求については棄却されたものというふうに承知をしております。
 以上です。

○田村智子君 この確定判決は、どういうときが預金債権であっても差押えが禁止されるのかと、三つの点を述べているんです。一つは、児童手当が振り込まれる口座であると認識できたという認定。そして、二つは、児童手当振り込み時間と処分執行時間との近接性、振り込まれてすぐに差し押さえたと。そして、三つ目、預金残高に占める児童手当の構成比、ほとんどもうこれ児童手当しかないよというぐらいのものだったと。この三点から、差押え禁止される債権だというふうに判断がされたということです。
 この裁判については、昨年四月十五日、我が党佐々木憲昭議員が衆議院予算委員会第二分科会で取り上げて、新藤大臣は、司法の場で判断されるというふうに答弁をされました。司法の判断は確定をいたしましたが、大臣はこれを是認されますか。
   〔委員長退席、理事熊谷大君着席〕

○国務大臣(新藤義孝君) 私どもといたしましても、この判決を踏まえまして、残高のない預金口座への児童手当の振り込みを待って、これを狙い撃ち的に差し押さえて、支給されたものが実際に使用できなくなるような状況にすることは差し控えるべきであると考えております。
 なお、本判決後、本事例の概要等については、地方団体における事務の参考となるよう直ちに情報提供をいたしまして、高裁判決の内容についての周知を図っております。

○田村智子君 今答弁されたように、判決から二日後に総務省は周知する事務連絡を出しておられます。
 広島高裁の概要だけでなく、この事務連絡の中には、四月十五日の先ほど私が言った議事録の抜粋も添付をされています。この議事録では、新藤大臣は、法律上、差押えが禁じられていないとか、滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがある場合は滞納処分の執行を停止できるという答弁が載っているわけですね。これでは、預金債権であっても児童手当と同一視できる場合は差押えが禁止されるということが明確にならない。逆に言うと、ちょっと誤解を招くんじゃないかと、生活状況が窮迫しているかどうかなんだというような誤解も招くんじゃないかというように思うわけです。
 これは地方税法第十五条の七に定められているんですね、生活を著しく窮迫させるおそれがあるときと。これは滞納処分の停止の要件の一つです。しかし、先ほど紹介している高裁判決は、この十五条の七は問題にしていないんです。児童手当であるから差押えが禁止であると。差し押さえた預金が、この差押えは不当であるとして返還請求を命じた。
 そうすると、大臣、このことがよく分かるように、生活が窮迫しているかどうかとかではなくて、もう児童手当と同一視できるというものは差し押さえたら駄目だよということをちゃんと周知することが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。大臣、お願いします。時間の関係で、済みません、大臣にお願いします。

○国務大臣(新藤義孝君) これは今回判決が出たわけでありますから、これは重く受け止めなければならないと、このように思っております。そして、直ちに判決内容を地方団体に情報提供したわけであります。そして、今後とも、地方団体の担当者の参加するような様々な会議の機会を捉えて必要に応じて説明をしてまいりたいと、このように考えます。

○田村智子君 こういう差押えが禁止される手当はほかにもあるんですね。児童扶養手当とか、それから年金も先ほどお話あったようにそうです。それだけに丁寧な周知に努めていただきたいと思います。
 この地方税法十五条の七に関する問題についてもお聞きをいたします。
 今年一月、総務省は初めて、「地方税法では、滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができることとされていることを踏まえ、各地方団体においては、滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握した上で、適正な執行に努めていただきたいこと。」と文書で地方自治体に通知をいたしました。
 この通知の趣旨に照らしますと、本人の財産状況だけでなく、生活状況の調査というのは滞納処分の前に行われるべきものだと思いますが、いかがでしょうか。簡潔にお願いします。

○政府参考人(米田耕一郎君) 国税も地方税も併せまして、税の滞納処分を行うに当たりましては、今委員の御指摘のありましたような条項もございます。滞納者の個別具体の事情を踏まえることが必要でございますので、各地方団体の税務当局において適切な対応が行われるべきものとの趣旨でこの通知を発出したものでございます。

○田村智子君 私たちのところにも、滞納処分を行った後、債権者が抗議をして、そしてやっと本人の生活状況の調査を行うと、実情を聞くというような事例というのは度々に寄せられてくるわけですね。
 預金債権に転化をしてしまえば差押えが可能だということで、振り込まれてしまえばもう差押え可能だということで、給与も全額差し押さえるなんということが起きているわけです。しかし、もし給与を支払う側に差押えをあらかじめやるということにすれば、これは生活費丸ごとの差押えなんてできなくて、上限というのが定められているはずなんですよ。そういうことが徹底されていない。差し押さえたがために生活保護に頼らざるを得ないなんという状況になれば、これは本末転倒の事態だと思います。
 是非、これ自治体、よく見ていただきたいんです。差押えがどういうふうにやられているかというふうに見ますと、実は自治体によって滞納世帯に対する差押えの割合、百倍近い差が生まれていて、滞納世帯の大半に差押えを行っているという自治体もあるわけです。
 大臣、是非、事前に差し押さえたがために困窮に陥ることがないように、調査をする、あるいは納税相談もきちんと行うということを徹底していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(新藤義孝君) まさに法律において、地方税で滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができるとされているわけでありますから、地方税務行政の執行に当たっては、この規定を踏まえて、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めていただきたいと、この旨、文書でも申し上げておりますし、その趣旨については、適正な税務行政の遂行について担当者の会議であるとかいろいろな機会できちんと説明をしていきたいと、このように考えております。

○田村智子君 最後に、生活保護世帯への保険料の請求、滞納処分についてお聞きをいたします。
 生活保護費に対して公租公課は禁止をされています。しかし、実際には滞納分について国保税や地方税が請求をされて、支払うのが義務だなどという説得もされています。そのために滞納分を分割で支払わせているという例が見られます。これは公租公課が禁止されているという趣旨から考えると不当な行為ではないかと思うんですが、総務省、いかがですか。

○政府参考人(米田耕一郎君) 先ほどから何度も問題になっております規定で、滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、滞納処分の執行を停止することができるとされているところでございます。ただ、この判断は、先ほどから何度も申し上げておりますが、個別具体の滞納者の状況を判断をした上で行うというのが原則でございます。
 私ども、生活保護であるから、当然大きな判断要素ではございますけれども、これのみをもって直ちに執行の停止を行うというようなことは適当ではないと考えております。
   〔理事熊谷大君退席、委員長着席〕

○田村智子君 これ、大阪府は、生活保護受給が決定したら速やかに滞納処分の停止を行うべきという内容の通知を出しています。これも資料でお配りをいたしました。厚労省のQアンドAという形で出しています。もちろん財産を隠し持っているなどの不正受給を排した上でのことですが、厚生労働省、この通知を是といたしますか。

○政府参考人(木倉敬之君) お答えをいたします。
 今ありましたように、滞納処分執行停止の要件というのは、生活を著しく窮迫させるおそれがあるかどうかということであります。
 それで、現に生活保護を既に受給されている方の場合には、一般的には更に滞納処分を行うことになりますとこの要件に該当することになりますので、大阪府からこの照会がありましたときには、基本的には速やかに執行停止を行う必要性が高いのではないかということをお答えをしております。
 大阪においては、これを府内の市町村に周知をされていますけれども、今先生お話ありましたように、資産の状況というのは変わり得ることもございますから、これを一律に、機械的にということでなくて、速やかに執行停止した上であっても財産の状況は必要に応じて確認をすることも必要かというふうに考えております。

○田村智子君 一方で、五月十五日の東京新聞で報じられましたけど、生活保護受給者に対して脅しに近いように支払えということをやっていると。
 これ、不適切なやり方を未然に防ぐためにも、総務省として、生活保護になった場合には地方税法十五条の七を適用して速やかに滞納処分の停止を行うよう自治体に求めるべきだと思いますが、最後、一言、大臣にお願いします。

○国務大臣(新藤義孝君) これは、先ほどから総務省においても、また厚労省からも答弁がありましたように、滞納者の個別具体的な実情を十分に調査した結果を踏まえて行うべきであると、これが原則です。
 その上で、そもそも生活保護、また生活困窮者に対してはそれを支援する、こういったものも、これ国の精神でありますから、そういったものの精神を踏まえて適切な対応がなされること、またそれは自治体の皆様にもきちんとその説明をしていかなければいけないと、このように考えております。

○田村智子君 終わります。