日本共産党 田村智子
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【13.06.21】厚生労働委員会 生活保護法の一部を改正する法律案、生活困窮者自立支援法案の参考人質疑

参考人  釧路市福祉部生活福祉事務所生活支援主幹 佐藤 茂
      全国民生委員児童委員連合会会長 天野 隆玄
      特定非営利活動 法人ほっとプラス代表理事 藤田 孝典

○田村智子君 参考人の皆さん、ありがとうございます。
 まず、佐藤参考人にお聞きをいたします。
 大変、釧路市の取組が心のこもったというか心のある自立支援だということを今お聞きしていて感じたんですけれども、大変たくさんのプログラムで就労の支援や引きこもりの支援や社会とのつながりをつくるような支援ということをやっていらっしゃって、この方にこういうプログラムでということを見極めて進めていくことって非常に大切になってくるんじゃないかというふうに思います。
 例えば就労支援も本人が強制だというふうに感じてしまうとこれは職員の方との信頼関係も崩れてしまうでしょうし、うまくいかないでしょうから、そういう、この方にはこういう支援という見極めなどをどのように行ってきているのかということと、やはりちょっと危惧しているのは、この法案の中では、生活保護を受給して、稼働年齢の方は最初に集中的に就労支援というような流れがつくられているんですけど、必ずしもそういう一律的にいかないんじゃないだろうかということも危惧をしておりまして、その点についても見解をお聞きしたいと思います。

○参考人(佐藤茂君) 私どもがやっている、これだけ多くのプログラムをつくってどうやってうまくいくのかというところですね、基本的に。
 私たちは、先ほどお話ししました業務検討委員会というのを立ち上げて、どうやったら自分たちが受け入れられるようなケースワーカーになるかという勉強会をやっています。その中で、実際には、職員ですから、ケースワーカーが受給者に対して、さあ仕事ってどうですかとか聞くと、やはり上下関係ができてしまいます。これを解消する策をやはり考えなきゃいけないだろうというのはやっぱり議論しました。
 その中で、就労支援員は国の方で導入を許可されてきましたので、それは私たちの中で嘱託職員という位置付けになります。私たちは、プログラムをつくる中で就労支援員というのも付けています。私たちがアセスメントを掛けた中で、アセスメントがケースワーカーから受給者に対して即行落ちてしまうと、強制みたくなってしまうんです。そこにワンブロック置いて、支援員が仲立ちをするという形を取っています。そうすると、支援員は職員じゃないので、言いたいことを結構言えるというふうな答えも返ってきています。その意見があったものをフィードバックしてケースワーカーにまた戻す、そうすることによって違和感なく作業に、というか意見交換ができる場を持ったという、ワンクッション置いたことがすごくやっぱり良かったなというふうに今思っております。
 これは、直接ケースワーカーと受給者が対で話し合うと、やっぱり強制、お金を握っている人は、受給者はうんと言わざるを得ないという気持ちはやっぱりどこかにあると思います。でも実際はそうではなくて、あなたのためにやっているということが、そのワンクッション置いたことによってはるかにオーバーラップしていろんなことが、で、伝わっているということも知っています。この人に、支援員さんに話したことがケースワーカーにも伝わっている。だから、家庭訪問をやったときにその話がきちっと話されるんですね。それについてどうだこうだというのはないです。
 それは、うちの研修会等々をやりながら、今まで駄目という言葉をよく使っていたと思うんですけれども、駄目はないですと。じゃ、ここができないんだったら何ができますかという答えに振り替わっていく。そういう積み重ねがやはりエンパワーメントを付けたりだとか、ああ、私の言うことをちゃんと理解して聞いてくれる人ができたんだという受給者の気持ちの変化にもなると思います。
 結局最後は、不正受給であったりそういうところだったりというのは、対話がなければどうしてもそういうことになってしまいますよね。逆に言うと、ケースワーカーに私はいじめられたから、今度は私があなたに仕返ししましょうかみたいな話だとする、それが何十年と続いてきたというような実態というのはあると思うんですね。私たちはそれを自立支援の中でそうではない形をつくり上げてこられたというのは、やっぱりそういういいチャンスだったなということがあるので、それをどんどんどんどんやっぱり全国に知らしめて、そして全国がそういう形で福祉業務をやっていけるようになれれば、そういう解決の策もおのずと導かれるんじゃないかなというふうには思っています。

○田村智子君 ありがとうございます。そういうやっぱり人を置くような予算も必要なんだろうなと、こういうところは国もしっかり措置していかなければならないなと思います。
 次に、藤田参考人にお聞きをいたします。
 率直にお聞きします。今回の法案で、申請書の提出を原則として義務付けると、しかも申請書の記載事項についても条文で定めるということが行われました。また、扶養義務者についても非常に厳格ないろんな規定が新たに加わりました。このことが現場に及ぼす影響をどのようにお考えになっているか、お聞きをいたします。

○参考人(藤田孝典君) これは繰り返しになりますが、現場では非常に危機感と懸念を持っております。
 これはもう先ほど申し上げたとおり、水際作戦は現状としてある中で、これが更に追い打ちを掛ける形で進行していかないかということが一点と、さらには、もう一点は、先ほど田村委員がおっしゃったとおり、まずは就労というような一元的な取扱いが行われないかということで、そういったことで自殺や更に生活保護利用者を追い込むようなことにならないのかということを現場では非常に危機感というか、そうなるんじゃないかということをもう想定として考えております。
 なので、なるべくそうならないように法案を見直しをしていただきたいと思いますし、残念ながら現状でもそういった事態は相次いでおりますので、これはもう、先ほどの川田委員のお話では、どれくらいありますかというお話がありましたが、水際作戦はもうたくさんあって、資料にも事欠かないくらいありますので、そういう現状で今の法案が出されることによって、水際作戦は更に進行するだろうということを考えております。
 なので、現場のそういった声であるとか、当事者の声を是非法案に生かせていただけたら有り難いと思っておりますし、できれば、これは私のお願いではあるんですが、もしこの法案がこのまま可決されるということになりましたら、水際作戦対応委員会のような、そういった具体的に厚生労働省内で、今の現状では厚生労働省はもう十分監査、指導はこれ以上できないということは私も痛感しておりますので、それはもう外部機関を是非内部につくって、そういったところがこの法案によって不利益を受けている人がいないかどうかをチェックするような仕組みがもう一段階、二段階あったら有り難いなと思っております。

○田村智子君 昨日の質疑の中で、私、水際作戦のやり方の一つとして、申請書そのものを渡さないというやり方があるんだと。それから、紹介したのが、もう一つは、申請書を置いていったのに受け取らないと。今回、法律で申請書の提出があって初めて申請というふうになるときに、渡さない、受け取らないと、こういうことが起きた場合はもう口頭申請を認めるべきじゃないかというやり取りをしたんですけれども、実は厚労省の側から返ってきたのは、その渡さない、受け取らないということはあり得ないことなので、それを特別な事情とみなして口頭申請というふうにするわけにはいかないと、あり得ないんだという前提なんですね。
 そこで、水際作戦の中で、申請書を渡さない、受け取らない、こういうことは本当に現場でないのかどうか、お答えください。

○参考人(藤田孝典君) はっきりもう申し上げると、起こり得ると思いますし、現実的にはあり得ます。なので、これはもう、私も生活保護申請に何度も同行していますが、申請書を出してもらえないので、こちらで自前で申請書を用意して出して、それでも忘れ物として取り扱われるという事案も何件かはあります。
 なので、もうそういった形で申請書がしっかりとこちら側から申請意思を示して用意したとしても、なかなか、一部の福祉事務所ですけれども、受け取ってもらえない、申請意思を確認してもらえないということがありますので、そういった場合にはやはり口頭申請を認めるべきだろうということは、私の思いではあります。

○田村智子君 もう一点、藤田参考人にお聞きしたいんですけれども、今回、言わばセットのような形で生活保護法の改正法案と生活困窮者自立支援の法案が出てきています。
 自立支援のこの法案の中身を見ると、一つ一つは確かに必要な制度が幾つもあるというふうに思っているんですけれども、非常に危惧することは、例えば先ほどホームレスのお話ありましたけど、家がない状態でネットカフェや二十四時間やっているようなところを転々としている方に、それじゃ緊急のシェルターを用意します、三か月程度というような制度をつくったり、一定の住宅手当を渡すと。
 これ、私は、本来は生活保護を必要とする状態の方はまず生活保護でしっかりと見た上で支援をしていくということが必要だと思うんですけれども、こういう自立支援法を作ることで、他法他制度優先を口実として、生活保護を申請したいんだという方が、いや、そうじゃなくて困窮者自立支援法というような運用にならないかということを危惧していますが、その点での見解をお聞きしたいと思います。

○参考人(藤田孝典君) そうですね、私も、まさにおっしゃるとおり、その懸念は常に感じております。
 現状であってもジョブファースト型の支援が行われているんですね。ジョブファーストって何かといいますと、まずは就労、どんな状態であっても、ネットカフェにいようがビデオボックスにいようがホームレス状態であろうが、まずは頑張ってハローワークに行ってくれ、仕事を探してくれというジョブファースト型が主なんですね。
 なので、これ海外だとどうなっているかといいますと、もう当然ですけれども、ウエルフェアファースト型なんですね。だから、まずは支援に必要な物資、状況、環境を整えて、整えられたのでちゃんと就労に結び付いていけますね、なので頑張って一緒に仕事探していきましょうねというような、いろんな環境を整えた上での支援が当然やられるべき方針なんですけれども、残念ながら日本の福祉支援の現場は、申し訳ないですけれども、遅々としてそういった理論的な支援が進まないという状況にあって、この法案によって、やはりそういった、まだジョブファースト型の就労に特化したような支援にならないかということを非常に危惧しておりますし、他法他施策によって本来生活保護が必要な人に行き着かない、生活保護制度が活用されないということになってしまっては元も子もありませんので、そうならないようにもう一度再考いただけたらということが私の願いですね。

○田村智子君 天野参考人に伺いたいと思います。
 今、残念ながら、生活保護に対する一般の方々の相当悪意も含めた様々な偏見が残念ながら今広がるような事態になってきています。それで、今、民生委員の活動をされている中で、本来、生活保護の申請が必要なほど困窮をされている方と、そういう方々を生活保護につなぐような支援のときに、偏見であるとか、あるいは、家族にあるいは親戚にそういうことが知られたら恥ずかしいというような思いからなかなか必要な支援に結び付かないというような事例というのは、民生委員さんの活動の中でお聞きになっていることがありましたらお話しいただけたらと思います。

○参考人(天野隆玄君) 昔は非常にそういう嫌いも強く出ていました。しかし、最近は、私の私見では、以前から見るとだんだんお互いが分かり合ってきておるというような状態であります。以上ですね。

○田村智子君 そうしたら、最後、佐藤参考人にもう一度お聞きしたいんですけれども、先ほどケースワーカーさんの働きが非常に、ケースワーカーさんや間に入る支援員の方ですか、その専門性が担保されるような人数の体制と、あるいはその人件費、お給料、手当、なっているかどうか。そこの点で、やはりもうちょっと財政的な支援というのが本来国の側から求められているんじゃないかということについても御意見をお聞きしたいと思います。

○参考人(佐藤茂君) 基本的に地方財政は逼迫しています。お金はないです。ですから、自前でどうこうというのはほとんど難しいです。
 ただ、何があって金銭換算というか、お金で解決できるのかという問題もあるんですけれども、私たちがやろうとしているのは金銭だけではないというところも自分たちで考えなければいけないと思うんです。自分たちの給料も減らされていますから、そういうところで、言ってしまえば、自立を一生懸命支援する方が困窮者みたいな、近い人がやっているというのが実態なんですよね。ですから、そういうところで個々の人たちが話合いをできる場をきちっと持てるかどうかというところが、やっぱり人間として一回りも二回りも大きくできる要素というのが結構あるなというふうには思っています。
 制度をきちっとしないとそこはまだ動かないというところがあるので、実際その自立支援法がうまく稼働するためには、各福祉事務所がもう一度福祉という問題と福祉事務所の在り方みたいなのはやっぱり話すべきだとは思います。ただ、そこがうまくいくと、すごく私たちが今までやってきたことがもっともっと評価させていただければなというふうには思うので、その中ではこういう形で法改正というのは私は望ましいと思っているし、それ以上に、考え方と連動させるような仕組みづくりはこれから多分出るんだろうなと思うというところは考えていますね。

○田村智子君 終わります。