日本共産党 田村智子
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【13.06.20】厚生労働委員会 生活保護法の一部を改正する法律案および生活困窮者自立支援法案について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 安倍総理は、昨日のG8サミット後の記者会見で記者からの質問に答えて、財政健全化に向けては社会保障も聖域とせず予算縮減を行うということを強調いたしまして、無駄の削減としては生活保護制度だけを挙げられました。
 また、先週閣議決定された骨太の方針でも、生活保護の支援の在り方(加算制度や各種扶助の給付水準)を速やかに検討し、見直す。不適正、非効率な給付を是正すると書き込まれました。
 住宅扶助の見直し等が行われると報道する新聞記事もありましたが、現行の住宅扶助でも、とりわけ都市部では基準額以内で住宅を探すということは大変困難で、結果的には生活扶助から持ち出して家賃を払わなければならないという状況も広く見られるわけです。
 このような骨太の方針に書かれているような見直しが実施されれば、生活保護世帯は更に苦境に追い込まれることになります。今年度から三年間で五・七%の生活扶助基準の引下げに続いて、さらに生活保護基準の引下げということを検討されるのかどうか、大臣、お答えください。

○国務大臣(田村憲久君) 先日閣議決定されました経済財政運営と改革の基本方針、これでは、加算制度や各種扶助の水準の検討や見直し、さらには、不適正、非効率な給付の是正、そして被保護者の就労インセンティブの強化、こういうことが盛り込まれておるわけでありますが、特にこの生活保護の加算制度や各種扶助の水準の検討、見直しでありますけれども、これはこの基本方針以前に、本年一月にまとめられました生活保護基準部会の報告書の中においても同じように、生活扶助基準の検証結果のほか、加算制度や他の扶助制度について本部会において検討を行うべきと、このような指摘を受けているわけであります。
 あわせて、本法案に関しましても、施行後五年を目途に検討を加えるというような、そういう事項があるわけでございまして、そのような意味からしますと、決して今回のこの基本方針が、突然この内容が出てきたわけではございませんでして、基準部会の中において検討をいただいて、いただいた報告、この中身をそのまま書いておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、どういうスケジュールでやるかということはまだ何の決まりもないわけでございまして、これから必要に応じて検討していくということになろうというふうに思います。

○田村智子君 私たちも、例えば老齢加算を廃止をしてしまったと。これ検証が必要で、大変な高齢者の皆さんの生活苦が広がっているというふうに思いますから、そういう検討は必要だと思います。しかし、全体として社会保障の予算縮減という方向の中で、見直すとまで書いている、これはやはり生活保護の基準を更に引き下げる方向が強く押し出されているものだと、こういうふうに言わざるを得ないというふうに思うんです。
 では、法案についてお聞きをいたします。
 この法案の二十四条は、生活保護の申請に当たって申請書の提出を義務付けました。このことは衆議院の中でもやはり審議の焦点となりまして、村木社会・援護局長は、現行法が非常に古い法律で、措置という性格が強く、申請の手続が法律になかった、最近の福祉分野に多い、利用契約や権利性があって申請をすれば受けられるという感覚が古い法律だからこの当時には余りなかったんだと、こういう見解が述べられました。そしてその上で、申請の手続を明確に定める、法令上見える形にしたと、古い書き方を新しい書き方に変えただけだというふうな答弁をされているんですね。
 しかし、二〇〇六年に成立したドミニカ移住者に対する特別一時金の支給等に関する法律というのは、現行の生活保護法と同じような書きぶりになっています。古い法律だからという説明とは明らかに矛盾をするわけです。
 改めて調べてみますと、例えば口頭での申請を可能だというふうにしている制度で省令では申請書の提出を義務付けている、こういう制度は確かにあります。しかし、これらの制度では、法律の本則に申請書など書面の提出を義務付けるというものは私も調べた限りでは見当たりませんでした。これは民主党の長妻議員が衆議院でも質問されています。じゃ、逆に、法律の本則で申請書の提出を義務付けているが政省令などで口頭による申請を認める、可能としているというものがあるかと。これも私が調べた範囲ではありませんでした。
 そうなると、法律上、申請書の提出を必要とするのか否かと、これが法律上の書き方の違いだとしか私は判断のしようがないと思うんですね。古い書きぶりを直しただけだという答弁は違うと思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(村木厚子君) 二十四条で新たに申請時の手続を条文に書き込んだことにつきましては、衆議院の法案審査でも申し上げましたが、地方自治体による調査権限の見直しに伴い、申請時の確認事項についても法律上明確に位置付ける必要がある、法律上の首尾一貫性ということでそういうアドバイスをいただいたので、法制的な観点から行ったものということでございます。
 衆議院の恐らく高橋千鶴子先生に関する私の答弁を先生は読み上げられたのだろうと思います。ちょっと私も先生の質問が直接どうだったかということを子細に検討しておりませんが、なぜこういう形の法律にこの生活保護法がなったとあなたは、個人的にでも、なぜそう思っているのですかということを聞かれたので、私は当時の古い書物を読み解いておりませんので、個人的に想像していることを申し上げるというふうに、先生が今読み上げられた議事録の前と後ろで申し上げたと思います。
 私のこういう問題に関する見識が足りなかったところがあればおわびを申し上げたいと思いますが、いずれにしましても、二十四条の見直しについては、地方自治体による調査権限の見直しに伴い、申請時の確認事項について法律上明確にした方が法律上の首尾一貫性があるということで、法制的な観点から行ったものでございます。

○田村智子君 今の御答弁で、古い書きぶりを新しい書きぶりに直したということは事実上撤回されたというふうに私は受け止めたいというふうに思います。これ、非常に重要な条文なので、無責任な答弁してもらったら困るわけですよ。
 それで、先ほど、午前中の答弁の中では、要式行為ではない、非要式行為だというふうに言われました。その見解は変わらないとは思うんですけれども、私、実態としては、要式行為って何かといえば、法規で定めた方式に従って行われなければ不成立となると。二十四条に照らせば、文書を提出ということをもって申請が成立するということを実態としては定めたとこれ言わざるを得ないというふうに思うんです。
 ちょっと幾つか確認します。
 現行の生活保護は口頭申請を認めるという運用をしていますが、保護実施機関は申請に対して応答審査義務が生じるので、いつの時点が申請かということを厳密にしなければいけません。ですから、口頭による保護申請については、申請を口頭で行うことを特に明示して行うなど、申請意思が客観的に明白であるということを求めています。これは、私は口頭で申請をしていますということを客観的に明白に示してもらうということを求めているわけですね。衆議院の議論の中ではこういう現行の運用を変えないという答弁があったんですね。
 それでは、局長にこれも確認をしたいんですけれども、口頭で私は申請をしますということを明確に伝えていれば、改正法でいう二十四条三項、現行法でいうと二十四条一項ですけれども、保護の開始の申請があったと、こうみなされて、保護機関はこれに対して応答義務が発生すると考えますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(村木厚子君) 生活保護の申請でございます。
 現在でも書面を提出していただくことが基本でございますが、先生御指摘のとおり、今でも申請の意思が明確な場合は口頭による申請を認めているところでございます。実務上は、申請行為があったかどうかということが記録に残りませんと後日トラブルになる可能性もございますので、福祉事務所では、必要事項を聞き取り、書面に記載した上で、その内容を本人に説明をし署名捺印を求めるなど、可能な限り申請行為があったことを明らかにするための対応を行うようにしているところでございます。こういった取扱いは、法改正後も取扱いは変えません。
 したがいまして、今後も口頭申請であっても申請があったものとして受理をし、福祉事務所において保護の決定に必要な事項を確認するための調査等を行いまして、受理した時点から三十日以内に保護の要否を判定した上、保護の決定を行うことにいたします。

○田村智子君 そうすると、これは裁判でも争いになっている事例がいっぱいありますのでお聞きをするんですけれども、法案でいうと二十四条七項、現行法ですと四項になるんですけれども、保護の申請をしてから三十日以内に通知がないときは、保護者は保護の実施機関が申請を却下したものとみなすことができるというふうになっているんですね。三十日以内の通知というのが義務付けられているというか、それがなければ受け付けてもらえなかったということになるんですけれども、この三十日のカウントの起算点というのが非常に重要になるわけです。それは、口頭で私は保護を申請しますと、こういうふうに言ったのが起算点になるのか、それともやはり申請書の提出という行為が必要なのか、そこはどうですか。

○政府参考人(村木厚子君) これは申請書の提出ではなく、口頭でも結構でございますので、申請の意思を明確にしていただいた段階ということでございます。

○田村智子君 これ、非常に争いになりますので、しっかり徹底をしてほしいんです。口頭で言ったと、それを書き留めたかもしれませんけれども、ちゃんと確認をして口頭で言ったということが確認されたら保護の申請だと、そこを起点だということを、これ、厳格に徹底をしていただきたいというふうに思います。
 実は、この法案の二十四条一項は、申請書の記載事項についても事細かく明記をしています。
 現行の生活保護法施行規則は、申請書に、これは施行規則なんですね、現行法は法律ではありません。申請書に、申請者の氏名、住所又は居所、要保護者の氏名、性別、生年月日、住所又は居所、職業、申請者との関係、保護の開始又は変更を必要とする事由、こういう記載を求めています。私も幾つかの自治体の申請書というのをインターネットなどで取り寄せたんですけれども、やはりここに書かれた申請書の記載事項が書類の中に書かれているわけですね。
 法案では、これらに加えて、「要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む。)」と。さらに、「その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項」と。つまり、何でもありみたいに、こういうふうに書いちゃっているんですよ、法律の中で。
 これ、申請書の提出を法律で義務付ける、しかも、規制事項を、現行よりも記載事項を増やして法律の条文で定める。これは申請のハードルを高めるということに実態としてなるんじゃないでしょうか。大臣にお答えを求めます。

○国務大臣(田村憲久君) 実際問題、言うなれば、まず申請をいただいた後に書類作成ということはあるんだと思います。
 しかし、今局長言いましたとおり、口頭で申請を申されたときに、そのときに既に申請といいますか手続が始まるわけでございまして、起算点はそこになるわけでありますから、そこで、例えばどうしても申請書を書けない方に関しては、多分窓口で話をお聞きした上でそれを代筆いたしまして、最後署名をいただいて書類自体は出るんでありましょう。それについて添付書類等々が必要になってくるということになれば、それは当然、その後の申請をこれから審査する中において、中身において必要になってくるものでありますから、その中の精査する中において、それをしっかりと見ていくという話になろうというふうに思いますから、まず全体として、その申請の一連の流れの中においてそういうものが決して、申請を受理し、そしてその後審査が入る中においての障害になるというふうにはならないのではないかと私は思います。

○田村智子君 先ほど口頭でもということで御答弁いただいているんですけれども、これ法律の中では修正がされて、特別な事情というふうにやられているわけですから、一般的に口頭での申請を認めるということではないと思うんですね。記載事項をここまで法律に書き込んだと。これでハードル高くならないというのは、私はちょっと、実態としてそんなことがどう担保できるんだろうかというふうに思わざるを得ないんですね。(発言する者あり)あっ、違いますか。じゃ、一般的にもう口頭の申請を認めるということでいいんですか。現行を全く変えないんだったら、こんなこと条文に書く必要ないと思うんですけど。

○国務大臣(田村憲久君) いや、それは、もちろん原則は書面を提出していただくということになると思います、もちろん。
 しかし、その中において、特別な事情があって書面で提出できない方に関しては口頭でもオーケーと。書面で提出される方においては、申請書の、書類の中を明記いただいて出していただくと。それに関していろいろと分からないことがあれば、それは窓口でいろいろと指導をさせていただくという話になると思いますから、決して、記載事項が増えるって、増えたわけではございませんから、以前と同じでございますので……

○田村智子君 増えていますよ。増えてないことないですよ。

○国務大臣(田村憲久君) いや、申請書類は同じでございますので……

○田村智子君 違います、違いますよ。

○国務大臣(田村憲久君) いや、だから、そういう意味からすると同じだと思います。

○田村智子君 私は幾つかその申請書類って手元に持っていますけれども、例えば収入要件書けなんてないわけですよ。保護を申請する理由を書けというのはありますよ。だけど、保護を申請する方のその収入の状況を書けというだの、そういう書類持ってない自治体は幾つもありますよ。

○国務大臣(田村憲久君) 現在使用しているフォーマットと同じフォーマットを使いますので、そこは変わらないというふうに我々は認識いたしております。

○田村智子君 例えば、宮城県保健福祉事務所長殿と、こう書かれているものを私持っていますけれども、括弧して添付を必要とするというふうに書いてありますけれども、でも、申請書そのものにそういうことを記載しなさいということは書かれていないわけですよ、宮城のものは、書かれていないです。これ、秋田県男鹿市、ここは添付しろとも書いていないですよ。これ、今インターネットで取れるものなんですよ。それを法律の中で収入要件まで書けというふうにしているんですよ。明らかに、だって、皆さんが施行規則で書いていることより法文の方が条項多いんですから。それ認めなさいよ、それおかしいですよ。
 いいです、じゃ、次。
 ここ、私聞きたいのは、法律の条文でこれこれこういう記載をしなさいというふうに書きました。では、申請書類の提出が必要だと、この人は、そういうふうに認められた方の場合、その全ての事項が記載をされていなければこれは申請したということにならないのかどうか、お答えください。

○政府参考人(村木厚子君) 申請書類について全ての記載がないと申請をしたということにはならない。先ほど申し上げたように、申請の意思があればそれは生活保護申請をしたということになるわけです。
 それで、ただ、いろいろな情報を求めるのは、保護を決定をするために必要な情報がたくさんあるわけでございますから、それを書類に書いて提出をしていただくということになっています。ただ、御本人がそれを書けないときは、今度は福祉事務所が調査権限がございますので、福祉事務所の方で調査をしてそういう必要な情報を集めていくという流れになろうかと思います。

○田村智子君 申請した後の調査なんていうのは現行法でもちゃんと条項があるわけですよ。問題は、申請をしたものを受け取るのかどうかということがこれまでも物すごく問題になってきた。だから私、聞いているんです。
 生活保護の申請をめぐって、これまでも窓口で申請認めないということが度々問題となっている。それで、教示義務違反、ちゃんと情報を提示しなかった、教えなかったということの義務違反や、申請権侵害を認めるという判決も、幾つもこれ出されてきているわけですよね。
 例えば、三郷市を訴えた裁判というのは、これ五年ぐらい闘ったんでしょうか、今年二月にさいたま地裁が原告の訴えを認めて三郷市に賠償を命ずると。これは夫さんが白血病で倒れて、妻が何回も何回も生活保護の相談、申請をしたいんだという意思を表示しているのに、働きなさいよと、身内から援助を受けなさいよということを繰り返し繰り返し言われて、申請を認めてもらえなかったという事案です。判決では、行政職員の発言によって住民が申請できなかった場合には職務上の義務違反が生じると、こういう判断をして、原告は生活保護が受けられないと誤信をした、誤って信じてしまったと。三郷市の対応に過失があったということを結論付けています。
 また、昨年、京都府の舞鶴市では、所持金がほとんどないという母子家庭の妊婦さんが生活保護を申請したいと三十分以上窓口で主張したにもかかわらず、対応した職員は、お話については先ほどさせてもらったとおりなのでと言って申請を受け付けない。彼女は申請書を出したんだけれども、これは受け取れない、忘れ物ですよと突き返すことまでやろうとしたと。こういうやり方に対して、舞鶴市に対して、舞鶴市同様のやり方がほかにも確認がされていたために、京都府からは指導も受けて、こういう侵害をやってはならないということも言われているわけです。
 これは現行法の運用の中でも起きていることだと。現行法のように、申請書の提出を義務付けもやっていない、記載事項も条文の中に書いていない、その下でもこういう水際作戦が少なくなく起きているということを大臣は認識しておられますか。

○国務大臣(田村憲久君) 組織的にそういうことが行われているというふうには思っておりませんが、個別案件として今言われたような案件というものが散見されるということは認識をいたしております。
 今回、このように法律改正をするわけでありますけれども、これを機に、重ねて各現場、自治体の方には周知徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。

○田村智子君 起きているということを認めると。それでは、なぜそういう水際作戦、教示義務違反、申請権の侵害などが起きているのかと、ここについての認識はいかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) それは、組織的にはそういうことは起こっていないということは前提でありますけれども、それぞれの担当者の方々の認識の違いというのはあるかも分かりませんので、それも含めて徹底をしていくべく努力をしてまいりたいというふうに思います。

○田村智子君 これ、組織的に起きていないと言えるのかどうかというのは大変私は疑問を持っていまして、先ほども議論になっていました生活保護の相談者のうち、申請にまで至ったのは半数程度だということが厚生労働省の監査の結果として数字として示されて、そのことについての調査が必要だということを民主党石橋委員が質問されていましたけれども、私もこれ本当に調査が必要だと思っています。相談に来られたけれども、例えば収入が基準を上回るなど明らかに申請の要件を満たさないという場合がどれだけあったのか。他方、他制度によって支援することになったので生活保護は必要がなくなったという方がどれだけいるのかと、せめてこういうことぐらいは調べるべきですよ。
 それで、自治体に聞けば、自治体レベルではこれケース分類して、これらの方々は申請に至りませんでしたというふうにやっている自治体も少なくないと聞いているんです。だから、何か大変な調査じゃないんです。これ、本来はこういう法案出す前にやるべき調査ですよ。すぐにやっていただきたいと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) 自治体からお話をお聞きをいたしたいと思います。

○田村智子君 これ、お話聞くというところじゃなくて、ちゃんと数字として中身を調べるということを調査という形でやっていただきたいというふうに思います。
 それで、こういう申請権を認めないという行政が裁判でも断罪される、舞鶴市のように不適切な対応を指導される、市民団体や弁護士などから水際作戦の実態が度々指摘される。こうした申請をめぐる問題を是正するための条文というのはこの法案の中にどこにあるんでしょうか。お答えください。

○政府参考人(村木厚子君) 水際作戦という言葉が今日何度も飛び交いましたが、これについてはあってはならないことでございます。生活保護は必要な人がきちんと保護を受けられるようにということで法律を構成しているわけでございますので、その条文については一切今回変更がないということでございます。
 そういった不適切な事案をなくすために監察や地方への指導というのを更に一生懸命やっていきたいと考えております。

○田村智子君 つまり、現場で問題になっている水際作戦を是正する内容というのは法案の中には何もないんですよ。何もないままに、申請書提出しなさいとか、そのための事項はこれこれこうですということを書いたということなんですよね。これで要保護者の申請権を侵害するようなことはありません、安心してくださいと。一体何を担保に申請権の侵害は起きないと言うのでしょうか。答弁じゃ駄目ですよ。何を担保に申請権は侵害されないというふうに言うのか。大臣、どうですか。

○国務大臣(田村憲久君) 今のは面接相談のところなんだというふうに思います。でありますから、その仕方等々を含めてしっかりとこれ監査をするわけでありまして、都道府県等々、しっかりと監査、国も含めて、ヒアリング等々、手順も含めて聞いた上で、やはり不適切なことがあればそれに対して指導していくわけでありますし、やはりその申請者が申請の意思があるということになれば、これは基本的にはその手順に進んでいくわけでございますし、併せてそのときに関係書類の提出等々を求めるということに関して、例えば申請書類に関しては、先ほど来言っておりますとおり、基本はそうでありますけれども、提出ができない特別な事情がある方に関しては、それに対して申請を受け付けるということも含めて徹底指導していくという中において、適切に必要な方々が生活保護を受けられるような、そのような環境をつくるということが厚生労働省の役割でございますから、そのようなことをしっかりと進める中において担保してまいりたいというふうに思っております。

○田村智子君 残念ながら、大臣の決意というぐらいしかないわけですよね。これ、何のための法案だろうと、本当に求められる改正というのはそういうことじゃないでしょうということを私、言いたいと思うんです。
 先ほど、口頭でも認めるようにするから現行と同じだということを言われていますので、これは提案者にお聞きをしたいというふうに思います。
 まず、修正の前提として、やはり修正を行わない状態の法案では、保護開始の申請書提出を義務付けるというふうになれば保護開始のハードルが高くなるというふうに認識をされての修正だと思いますが、そこはいかがですか。

○衆議院議員(山井和則君) 本改正によって保護開始のハードルが高くなったとは認識をしておりません。
 生活保護の申請は書面を提出して行うことが基本とされている一方で、事情がある方については現在の運用でも口頭による申請が認められており、政府においては今後もこうした運用を変えるものではない旨の厚生労働大臣からの見解も示されております。したがって、政府案は保護開始のハードルを高めるものではありません。
 今回の法改正が運用を一切変えるものではないことを明確にするため、衆議院の意思として今回の修正を行いました。

○田村智子君 そういう御説明なんですけど、特別な事情のときには口頭で認めるということなんですね。
 そうすると、その特別な事情が何に当たるのかということが非常に重要になってくると思います。
 衆議院の質疑の中で、先ほどのように、申請の意思が明確に示されたと、舞鶴のような例ですね、だけれども、例えば申請書が交付をされないという場合もあります。インターネットで取れる自治体は余りないんですよ、実は驚いたんですけど。やはり、申請書を渡したくないから、インターネットで打ち出されて書き込まれて持ってこられたら困ると言わんばかりに、そもそも打ち出せないんですよ。だから、窓口行って受け取らなかったら書き込めないという状態なんですね。
 では、こういう、申請書を渡してくれない、渡してくれないから提出ができない、私は申請したいのにと、こういう場合は特別な事情に含まれるのかどうか。これは衆議院の中では、そういうことがあってはならないという答弁なんですよ。あってはならないのは分かっているんですけど、現にあるので、そういうときは特別な事情に含まれるのかどうか、提案者にお聞きいたします。

○衆議院議員(山井和則君) 御指摘につきましては、申請の意思が明確にされたにもかかわらず申請書が交付されないことはあってはならないわけでありまして、そのこと自体が正されるべきであります。
 なお、申請の意思が明確にされたにもかかわらず申請書が交付されないことは申請権の侵害に当たるものであり、その問題は特別な事情に含まれるか否か以前の問題であって、論外だと考えます。

○田村智子君 論外はそのとおりなんですけれども、ここが重要なんです。だって、三十日の起点になるかどうかという非常に重要なところなんですが、恐らくそれ以上答弁できないんですよね。
 どうなんですか、これ。特別な事情と書いたら、渡されない、交付してもらえない、だけど自分は意思があると言ったと。どうですか、大臣、これは三十日の起点になるとみなす、口頭の申請、いいですか。

○国務大臣(田村憲久君) 先ほど来、そんなことはあってはいけない話なんですね。口頭で申請の意思を伝えるわけですよね。ですから、本来、そのときから起点になるわけでありますけれども、ただ問題なのは、そのときに、要するにそこで本当に意思を伝えたのかどうなのかということが何をもって証明できるのかという問題が起こってくるわけでありまして、ですから、本来はそのようなことがあってはいけないのであって、そこに申請書類があって口頭で伝えた上で、その申請書類にしっかり書いていただいて出していただく、若しくは、特別な事情のある方に関しては、その場で口頭でお伝えをいただくことを現場の職場の方々がしっかりと書いていただいて、署名をいただいて提出した形にしていただく、若しくは、何らかの事情でその場で提出書類が作れない場合には、記録簿か何かに書いていただいて、その後、その書類を作成して手続に、手続に入るといいますか、書類を完成をして記録をちゃんと残すようにすると。
 いずれにいたしましても、何らかの記録が残っていないことには、どの時点が申請なのかというようなことに対してこれは水掛け論になってしまうわけでございまして、本来、申請書というものは必ずそこで意思を示したときにはそれをちゃんと手に取れるようにしておかなければならないということでございますので、先ほど来、山井提出者が言われておられるとおりであろうというふうに思っております。

○田村智子君 実態は、だから相談にとどめられちゃうわけですよ、言っても。申請だとどんなに言っても相談書類にしかならないという事例がいっぱいあるから水際作戦と言われちゃうわけですよね。相談じゃなくて申請だと言っているのに。
 それじゃ、今、あってはならないとおっしゃったんですから、局長、申請する意思があるんだと言ったのに申請書類を交付しない、これはあってはならないことなので、そのようなことがあった場合にはもう申請の意思を認めるというふうにこれ通知してくださいよ。だって、交付しないことあっちゃいけないんでしょう。あっちゃいけないようなことが行われたら、もうその時点で申請とみなしますよというところまで言わなきゃ駄目ですよ。そうしたら渡すでしょうに。どうですか。

○政府参考人(村木厚子君) ちょっと、本来あってはならないことなので、それを前提にして手続を組み立てるというのは非常にちょっと難しいような気がしますが、先生のおっしゃる窓口での様々なトラブルというのは非常によく分かりますので、もう一度、再度自治体向けに、申請の意思が明確だということが御本人から聞き取れたときには申請書類を渡さないということがあってはいけないということを再度徹底をしたいと思います。

○田村智子君 この申請提出に関する修正は、特別な事情があるときはというふうに限定的になっています、口頭による申請ですね。これは、じゃ、その特別な事情というのを立証する責任は誰にあるのかと。衆議院の提案者の答弁の趣旨を見れば、立証責任というのは、やっぱり特別な事情が、これは、受け取れないというふうに、口頭申請は認められないよと実施機関の側が言って、それはあなたには特別な事情と言えるものはないでしょうというふうに実施機関、行政の側が実証するということが必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○衆議院議員(山井和則君) お答えいたします。
 申請書の記載事項は保護の要否判定に必要なものであるため、可能な範囲で記入し、提出していただくことが望ましいと考えます。しかし、この申請については、申請者が申請意思を明確に示していれば、保護の実施機関は、申請書の内容が十分でなかったり口頭で申請が行われたりしても申請を受理しなければならないものであります。
 つきましては、今回の法改正は、その今までの運用を一切変えるものではありませんので、立証責任についてもそもそも変更はされておりません。

○田村智子君 ちょっと具体にお聞きしますね。
 例えば、隠匿、わざと書類を隠すとか、そういう意図はなくて、純粋にその収入を示すようなものがないと。紛失をしたとか、あるいは必要書類をそもそも本人が所持していないという場合があるわけですよね。そういうときに、書類が添付できない特別な事情に当たるんだというふうにも答弁もされています。この紛失したとか所持していないということを、申請者は言うことはできても立証することはできないわけですよ。証明するという手段はないわけですよ。
 だから、大切なのは、じゃ、それはあなた書類を紛失したわけじゃないでしょうと、書類あるじゃないかということを行政機関の側が実証できなければ、立証ができなければ、これは特別な事情と認めるべきではないかというふうに思いますが、いかがですか。

○衆議院議員(山井和則君) そもそもこの立証責任というものはどちらか一方にあるというものではないと考えておりますので、今までの答弁と同様でございますけれど、申請者が申請意思を明確に示していれば、保護の実施機関は、申請書の内容が十分でなかったり口頭で申請が行われたりしても申請を受理せねばならないというふうに考えます。

○田村智子君 やっぱりこの特別な事情が何を指すのかということが非常に曖昧で、だけど、それは結局行政の側の判断になっちゃうわけですよ。自分は口頭でやりたい、だけど、あなた、いや、申請書類ちゃんと持ってこなきゃ駄目だと。こういうことにならないということが、現行法というか現行制度もそういう運用になってないだけに、そういう事態が更に広がるんじゃないかということをやはり危惧せざるを得ないというふうに言わなければなりません。
 次に、扶養義務者のことについてお聞きをする途中で恐らく時間がなくなってしまいますので、私の質問は次の火曜日というふうになると思いますが、時間の許す限り、ちょっと扶養義務者への調査のことについてお聞きをしたいと思います。
 法案では、二十八条二項に加える形で、保護申請の内容について扶養義務者に対して報告を求めることができるというふうにしています。これまでの答弁は、扶養は保護の要件ではないということが繰り返されています。それでは、なぜこのような規定を新たに設けることが必要なのでしょうか。この規定というのは、申請した方の収入の状態とか住んでいるところとか、それを報告しなさいというふうに扶養義務者に求めるんですね。だけど、それらのことは行政が調査ができるというふうにちゃんと項目の中にあるわけですよ。そういう行政の調査だけでは不十分だということなんですか。

○政府参考人(村木厚子君) この二十八条の規定でございますが、基本的な考え方は、生活保護受給者を十分扶養することができると思われる人に対して何ら対応を行わずそのまま保護費を支給をするということは国民の生活保護制度に対する信頼を失うことになりかねず適当ではないと考えたところから、扶養可能と思われる扶養義務者については、その責任を一定果たしていただきたいと考えているところでございます。ただ、家族間の問題に行政が立ち入ることについては相当慎重を期すべきということも基本的な考え方としているところでございます。
 今回、扶養義務者に報告を求める規定の適用でございますが、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められる限定的な場合に限ることとしたいと思います。今まで、確かにいきなり調査ということはございましたが、まずは御本人に報告を求めるという規定を入れて、扶養義務者の方にもその責任を認識をしていただくということで、報告をまず求める、その根拠規定を入れさせていただくということにしたものでございます。

○田村智子君 これ、申請に行ったときに、その扶養義務者が明らかに扶養できる能力を持っているなんてどうして判断ができるのかと。調査しない限り、判断なんかできないと思うんですね。こういう申請が来ていますよということを扶養義務者に通告しちゃうわけでしょう。どうやってその扶養義務者が、通告する相手がそういう能力があると判断するんですか。

○政府参考人(村木厚子君) 通常、生活保護の受給の申請があった場合には、御本人から、扶養義務者どういう方がいらっしゃるか、その資産がどうであるかというようなことを今でもお聞きをしております。そういう中で、家族関係もしっかりあって、扶養ができるだけの経済力もあるというような方がいらっしゃるということが把握ができる場合があるわけでございます。
 ただ、そういう場合でも、扶養していただけないというようなことで、いずれは家事審判等の手続を取って費用徴収をさせていただくというようなことが蓋然性が高いと判断された場合には、この報告を求めるとか通知をするといったようなことを発動をするというふうに考えているところでございます。

○田村智子君 これ、まず決定に当たっても報告を求めるということになっているわけで、返還云々、保護が始まった後に仕送りができないんですか、どうですかということはあり得るとは思うんですけれども、その決定を下すかどうかと、保護を開始するかどうかの判断のときにもう、つまり申請があったらもう扶養義務者に通知するということになっちゃうわけですよ、この条項によれば。例えば、あなたの子供さんからこういう申請出ていますけれども、こういう収入要件だと言っているけどどうですかということを照会する、そのことについて報告を求めるという中身なんですよね。非常に私、矛盾感じるんです。
 局長は、DV被害者などの場合には行わないようにするというふうに言われています。だけど、例えば、扶養義務者に生活保護申請のことを知られたくないというふうに思う方もいらっしゃって、それについては、知られたくないということが動機になって保護申請諦めるようなことがあってはならないという答弁もされています。
 例えば、最近の新聞報道でも、結婚して家庭を持っている娘さんのところにまで親御さんが保護申請を提出しましたよということが通知をされて、その娘さんの夫も知るところになったと。その夫の家族も知るところになったと。非常につらい思いを申請された方も娘さんもしているというような事案も報告がされています。そんなふうに報告が行くんだったら申請なんかするんじゃなかったというような声も聞かれるわけですよね。
 そうすると、こういう規定が入ったと。だけど、私は扶養義務者に連絡してほしくないんだというふうに強く申請者が求めた場合は報告を求めるということはやらないんですか。扶養義務者に報告を求めないと、こう言えますか。

○政府参考人(村木厚子君) 今の事例は多分、保護の申請があったときに扶養義務者の方がいらっしゃった場合に、今も調査を掛けておりますが、それのことではないかというふうに思うんですが、個別の判断もかかわってくると思いますが、一般に、例えば親子とか兄弟とか非常に近い近親の方がおられて、かつその関係が円満であって十分に経済力があるというような場合には、やはり一定の責任を果たしていただくということが必要かというふうに思います。
 先ほど言われたケースの方が、何ゆえでどうしても知られたくないという御事情かとか、その辺りがちょっとよく分かりませんので、個別の問題についてはちょっとお答えしにくいですが、一般論としてはそういうことかというふうに思います。

○田村智子君 これで保護申請諦めるって方が出ないって担保ないんですよ。
 これ、続きは火曜日の日に質問をしたいというふうに思いますけれども、やっぱりハードル高くするという改正の中身だということは今日の質疑のやり取りの中でも私は指摘できるんだということを申し上げて、今日の質問は終わりたいと思います。