日本共産党 田村智子
コラム

【13.08.07】米軍ヘリ墜落事故について政府を追及

1.アメリカからの事故の通報はあったか?

8月5日夕方4時頃、沖縄県内の米軍基地キャンプ・ハンセンに米軍ヘリが墜落し炎上。
重大事故を受けて、急きょ、翌6日、党議員団として、防衛省と外務省からの説明を受けました。

説明のために防衛省が配った資料は「沖縄県における米軍ヘリの墜落事故について(第2報)」というタイトル。「平成25年8月6日 地方協力局沖縄調整官付」となっています。

防衛省・米軍・外務省の対応が時系列で書かれています。書き写します。

2 防衛省の対応
8月5日
◎沖縄防衛局は、内閣官房沖縄危機管理官より連絡受け(16:35)
・石川警察署よりキャンプ・ハンセン内において米軍ヘリが墜落した模様との情報。
◎沖縄防衛局は、在沖米海兵隊に照会
・海兵隊ではない。キャンプ・ハンセン内で炎上している模様。
◎沖縄防衛局は、在沖米空軍に照会。
・現在、事実関係を確認中。
・HH−60ヘリに何かしらのトラブルがあった模様。
◎本省補償課は、在日米軍司令部(日米防衛協力課経由)からの情報受け
・事故機は、在沖米空軍18航空団所属のHH60ヘリ(4人乗り)
・発生場所は、キャンプ・ハンセン内。
・乗員4名のうち、3名は機外に脱出。
◎沖縄防衛局は、在沖四軍調整官事務所から情報受け(17:20)。
・事故機は、在沖米空軍第18航空団所属のHH60ヘリ
・発生場所は、キャンプ・ハンセン内で、事故形態は確認中。
◎沖縄防衛局は、在沖米空軍嘉手納基地渉外部長に対して、周辺住民への不安を与えたことは遺憾。事故原因、再発防止、安全点検等の対策について、情報を得次第、提供願いたい旨申し入れ(17:35)。
(中略 防衛政策局次長、沖縄防衛局長、沖縄防衛局企画部長が、19:00、米軍側に上記と同じ内容を伝えたことが書かれています。)
◎沖縄防衛局は、沖縄県、宜野座村、嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(沖縄市、北谷町、嘉手納町)に、在沖米空軍第18航空団から入手したニュースリリースを提供(19:06)。
◎沖縄防衛局は、在沖米海兵隊G−3/5部から情報受け(19:12)。
・日没のため、消火活動を行っていた航空機(CH−46、2機)は帰投。
・夜間は現場に監視員を配置し、延焼しないよう監視。
・緊急事態が発生した場合、沖縄防衛局に連絡する。
◎沖縄防衛局は、沖縄県、宜野座村、金武町、外務省沖縄事務所に山火事の状況について情報提供(19:45〜20:00)。
(後略 沖縄防衛局長と地方局長が、米軍側に遺憾など伝えたことが書かれています。)

3 米軍の対応
8月5日
◎在沖米空軍嘉手納基地がニュースリリース(18:30頃)。
・嘉手納飛行場所属のHH―60ヘリが4時頃キャンプ・ハンセンで墜落。
・乗員は少なくとも4人で、容態は現時点で不明。
・事故発生時、ヘリは現地訓練任務を実施中。
◎在沖米空軍嘉手納基地がニュースリリース(23:00頃)。
・乗員4名中3名は収容され、容態は安定している。
・1名は現時点においても行方不明。

4 外務省の対応
8月5日
◎外務省北米局長は、駐日米国首席公使に対し、墜落事故ついて(ママ)遺憾の意を表明し、原因究明と再発防止を要請(17:15頃)。
(以上、引用終わり)

説明を聞きながら、「なんだこれは?」という違和感と怒りが抑えられなくなりました。
「米軍からの正式な通報は、何時に誰に対して行われたのですか。日本側から聞いたから答えた、正式な発表はニュースリリースだけ、ということですか?」

回答したのは外務省の担当官。
「そんなことはありません。やり取りの中で、通報も謝罪もうけています」と言いながら、何時に通報があったのかは答えない。
時間切れで、この問題はこれ以上の質問ができなかったので、担当官が退室するときに、くらいつきました。
「通報は何時何分にあったということですか?」
「今、手もとにその資料がありません。」
「では、あとで回答してください。ファックスでもいいですから」と名刺を押し付けました。

事故の説明資料に、正式な通報の事実が記載されていない、「手元にない」とは、そもそもそんな事実はないということ、としか考えられません。
日本側からの問い合わせがあったので、米軍が答えた。正規発表はニュースリリースだけ。
これが実態だと確信しました。

在日米軍の事故・事件について、米軍側に通報の義務はありません。
沖縄の基地は、あまりに広大で住民が事故を目撃できないような場所で墜落事故が起きると、事故が隠されてしまうことが、過去に何度も問題にされたと聞きました。

1995年に起きた米海兵隊員による少女暴行事件で、沖縄の米軍犯罪・事故への怒りは頂点に達します。
そのなかで1997年、日米合同委員会は、在日米軍の事故・事件について、通報体制を確認。
しかし、この通報はあくまで「好意的通報」という位置づけにすぎません。
これが日米安保条約なのです。

2.重大事故という認識が日本政府にあるか

防衛省の事故についての説明は、「キャンプ・ハンセン内への墜落で、乗務員4人中、1人が行方不明」ということのみ。
これには、沖縄県党の責任者でもある赤嶺政賢衆議院議員が厳しい言葉を発しました。

「沖縄県民にとってどういう危険のある事故だったのか、何の説明もないのはどういうことか。基地の中に墜落したというが、住宅地から2キロ、沖縄自動車道までは最短約1キロ、水源地であるダムのすぐそばではないのか」
この指摘にも、防衛省、外務省とも、だんまりを決め込みました。

「一体、どういう訓練をしていたのか」――危険な訓練が墜落の引き金になった可能性があるだけに、これも重要な問題です。
防衛省の回答は、「現地訓練任務にあたっていた」という、米軍のニュースリリースのまま。
「現地訓練任務とは、どういう内容の訓練か」
これも回答不能。米軍の訓練について詳細を聞き取る立場にない、ということです。

「原因の調査、報告、再発防止を申し入れたということだが、事故の原因が明らかとなって報告書が提出されなければ、同種のヘリコプターの飛行を認めないということか」
これに対する回答は、防衛省地方協力局長が在日米軍司令官にあてた文書の文言そのままでした。以下に記します。

「今回の事故の原因を速やかに調査し、その結果を報告し、公表すること、航空機事故の再発防止策を速やかに講じ、航空機の安全管理の徹底を図ること、同機種の飛行再開に当たっては、今回の事故を踏まえ、十分に安全対策を講じた上で行うことを強く申し入れる」

これは、報告書が公表されなければ、同機種の飛行を認めないということなのか――繰り返し質しても、黙り込むか、文書の文言を繰り返すかだけ。
日本側の申し入れが、形式的であることが透けて見えるやりとりです。

上記の在日米軍指令官あての文書の前段には、次のような文章もあります。
「当職は、貴職をはじめとする在日米軍の諸官が、我が国とその周辺地域の安定を尽力されてきたことを誇りにしており、今回、このような事故が発生し、乗員が負傷を負われたことが誠に残念でなりません。」
沖縄県についての言及は、この後に出てきます。

キャンプ・ハンセンは、山の地形をそのままつかって野戦訓練ができるような基地です。
地図を見ると、沖縄本島の北と南をつなぐようにくびれた部分、そのほとんどがキャンプ・ハンセンであることに改めて気が付きます。
当然、基地に隣接して道路があり、この道路には実弾が飛んでくる事件が何度もあったと聞いています。
そういう地域でヘリコプターが墜落炎上したのです。

7日の新聞報道では、飲料水をとりこんでいるダムに有害物質が流れこんだ危険性があるため、沖縄県によるダムの水質調査が行われたとのこと。
このダムは基地内なので、米軍の「好意」で立ち入りが許されたというのです。

事故の現場に、地元の消防署が駆けつけようとしても米軍はこれを拒否。
事故現場に日本人を入れることは絶対にしない。
事故の原因究明も100%アメリカ軍任せ、その内容に日本政府が異議を唱えることもないでしょう。
それどころか、原因究明がなされる前に、同機種の飛行が再開されることも十分考えられるのです。
せめて、事故報告書の提出がなければ飛行は認めない、という態度を示すべきではないのか。

オスプレイ追加配備のさなかに起きた事故。
沖縄県民のみなさんが、米軍機の墜落事故で危険にさらされ続けていることが、また明らかになったのです。
そのうえオスプレイ配備など、断じて認めるわけにいきません。

沖縄からの強い抗議を前に、オスプレイ配備計画は遅らせることに。
最後に、それを伝える在沖縄米海兵隊ニュースリリース(平成25年8月25日)を全文掲載します。

在日米海兵隊基地司令部 キャンプ・バトラー、沖縄、日本
――米空軍HH−60ヘリコプターの、沖縄の中央訓練場における不幸な航空機事故を踏まえ、海兵隊は既に予定されていた次のMV−22Bオスプレイの到着を遅らせるよう要請を受けた。我々の思い及び祈りは事故に巻き込まれた者およびそれらの家族に捧げられている。
MV−22は運用上は沖縄に配備する準備は出来ているものの、日本のパートナー及びホストからの要請を受け、同機の出発を延期す予定である。MV−22は突出した運用上の安全性の記録を有した、高性能の航空機であり、我々は、近い将来、同機の沖縄への配備を再開する予定である。
(以上、引用終わり)

沖縄県民に一言の謝罪もない、このニュースリリース。
しかもオスプレイは「突出した安全性の記録を有した」と開き直る。
これを読んでも、日米同盟が「対等」だといえるでしょうか。
日米安保条約にいつまで縛られるのか。屈辱を屈辱と理解もできない政府に、日本の未来を任せるわけにはいきません。