日本共産党 田村智子
コラム

【13.06.27】通常国会ラスト3日間の波乱万丈

生活保護制度の改悪法案が廃案になるまでの記録

 
昨日、通常国会が終わりました。
それまでの数日間は、次に何が起きるかわからない、波乱万丈の連続でした。

20日に第1回目の質問を終えてから、25日火曜日の厚生労働委員会が、生活保護法案の採決になることを半ば覚悟して、私は2回目の質問と反対討論の準備をすすめていました。
(この法案の問題点については、あらためてこのコーナーに書きます。)

ところが24日月曜日、朝、国会の空模様は大きく変わっていきました。
なんと安倍総理はじめ政府側が一人も予算委員会に出席していない。
国会史上例のない、前代未聞の事態が起きていたのです。

この予算委員会は、アベノミクスの3本目の矢について、安倍総理が記者会見では語るが、国会では一度も議論されていないことを問題視して、野党の予算委員会メンバーが開会を求めていたもの。
先週、何度も理事懇談会で日程協議をしたが、与党側は拒否し続けました。
やむなく、野党の委員が開会要求を委員長に提出。
参議院規則第38条は、「委員の3分の1以上から要求があったときは、委員長は、委員会を開かなければならない。」とあります。
予算委員長はこの規則に従って、21日朝、予算委員会を24日月曜日に開会することを決めました。

こういう委員会の開き方は、時として、「開会に合意していない」ことを理由に、与野党のどちらかが出てこないということが、これまでもありました。
しかし、政府までもが委員会に出席しないなど、ありえないことです。

憲法63条「内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するために議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」
――憲法を無視し、蹂躙しての委員会ボイコットだったのです。

ボイコットの理由は、与党が参議院議長の不信任案を提出し、国会が不正常になっているからというもの。
これは恐ろしい論理です。
与党が議長不信任案などを提出して「不正常」の事態をつくりだせば、政府は国会に出てこなくてよいということになる。
都合の悪い問題を質問されるのを避けようと考えれば、与党と結託して、国会を不正常にすればよい、ということになってしまいます。

これまでも「国会不正常」と言われる事態は何度もありました。
野党が出てこないから待つ、という場合も、大臣はじめ政府の役人は委員会室で待機していました。
この国会中も、5月に予算委員会に与党が出てこないため、野党だけで質問したということもありました。(与党欠席のため、TPPや外交についての予算委員会のテレビ中継が、急きょ中止となりました。安倍総理の答弁を中継させたくなかったということでしょうか。)
いずれにしても、政府側の委員会ボイコットは、正真正銘、これが初めてのことなのです。

25日火曜日、ボイコットは予算委員会だけでなく厚生労働委員会にも波及しました。
この日の午前中は法案審議ではなく、丸川珠代政務官が一派遣会社の全面広告に登場した問題などをとりあげる、一般的質疑が予定されていました。
午後からが、生活保護の法案審議となる予定だったのです。

午前中の厚生労働委員会は、野党だけでも定足数に達していたので、まず開会し、委員長があらためて政府に出席を要求。
それでも出てこない。やむなく、質問予定者が意見表明をして、休憩となりました。

昼休みの理事会。
私は、「憲法に違反して委員会ボイコットをする内閣のもとで、法案の質疑はできない。午後は再開すべきではない」と主張。
ところが民主党は「委員会を再開して、法案審議だから出席をとあらためて委員長が要請することにしてほしい」と主張し、委員長が再開することを宣言。

午後1時過ぎ、委員会再開。
私も社民党の委員も議場に入らず、再開されたことに抗議の意思を示しました。
なぜ、ボイコット中の政府にお願いしてまで、法案審議をすすめようとするのか。

実はここに、民主党の立ち位置があらわれていたのです。
生活保護の法案、生活困窮者自立支援法案は、民主党政権下で検討が始まっていたもの。
最初から、民主党は成立に積極的だった。ここで完全な決裂ではなく、法案成立への協力姿勢を与党と政府に示す手法に出たといえるでしょう。

午後の委員会は、私と社民党が入らないため、定足数に足りません。
与党も出てこない、政府も出てこない、結局、手続き上は委員会が成立せず、再開とならないままに流会となりました。

民主党のやり方に怒りを覚えつつも、これで、生活保護の法案は廃案の可能性が急速に高まりました。
準備していた質問原稿がまぼろしになろうが、全く問題ありません。
この国会、何度も何度も「反貧困」を掲げる集会が開かれ、廃案を求める座り込み、議員要請に全国から国会に駆けつける方々がいました。
そういう皆さんに、廃案を報告できるかもしれない!

ところがこの日(25日)夕刻、民主党の理事から電話がかかってきました。
「明日26日、本会議で議長不信任案の採決し、国会は正常化する。本会議後、理事会、委員会を開いて、予定していた法案審議をやることで、自民党と合意した」
怒り爆発です!
民主党は野党の幹事長・書記局長会議でも、「法案の成立は必要」という態度をとったという情報も伝わってきました。

どんな状況になろうと、正々堂々と論戦するしかない。
あらためて質問原稿の作り直しです。今日の事態を受けて、満身の怒りをこめた抗議から始めなければなりません。
午前中の質問時間の一部も法案の質問にあてるつもりだったため、質問項目も圧縮しなければなりません。
腹の中は怒りで煮えたぎり、頭は法案の問題点を暴くことに集中する――
こうして迎えた26日朝。質問原稿や資料をかかえて本会議場へ向かいました。

午前10時開会予定の本会議、議案について議院運営委員会理事会の意見がまとまらないという理由で、開会ベルがなりません。
前日に提出された、安倍総理への問責決議案を議題とするかどうかでもめているというのです。
問責決議は、議運で議題としないと決めれば、たなざらしになって終わります。
しかし議題になれば、可決の可能性は高い。
「え、もしかしたら、廃案の可能性がみえてきた?」
不安と期待のいりまじった1時間の待機。
開会ベルがなる前に伝わった情報は、問責決議を議題とする、ということでした。

最後の最後の土壇場で、民主党が「与党に同調」の道をとれなかった。
それでも、まだ廃案決定ではありません。
過去には、「総理への問責は総理が出席しない委員会には関係ない」と扱われたことがあると聞いていました。
また、問責可決後、もしかしたら自民党が緊急動議を出して、審議中の法案の採決を狙うかもしれない。

問責可決、議長が本会議の休憩を宣言。よし!緊急動議はなかった。
あとは、委員会開会となるかどうか。
安易に「廃案決定」という情報を流すわけにはいかない。

急いで情報収集。
伝わる情報は、このまま委員会も本会議も開かずに終わるという方向。
赤じゅうたんの廊下、あちこちで立ち話をするマスコミの記者や議員を縫うようにして、小走りに議員面会所に駆けつけました。

午後1時過ぎ、雨の中、議員会館前で座り込みの抗議をしていたみなさんが集まっています。
委員会が始まれば、法案審議の傍聴をというつもりでいたはずです。
私の姿を見つけた方から、笑顔と拍手が広がりました。
さっそく、これまでの国会の動きを報告。
「廃案の可能性が相当に高まりました!」――満場の拍手がわき起こりました。

開会予定のままになっている厚生労働委員会が、開かれるのか否か。
待っていたアナウンスが流れたのは、午後2時前でした。
「本日の厚生労働委員会発信源都合により取りやめになりました」
これで、廃案確定! 参議院の議員団控室に拍手が響きました。

3党合意のなかですすめられてきた、生活保護法の改悪。
しかし、最後の最後に民主党が法案成立に協力できなかった。
これは、与党に立ち向かわなくてよいのかという世論の力だという確信。
参議院選挙後、同じ法案を提出させない世論と運動を広げよう。
――集会でみなぎった決意を、参議院選挙につなげよう!