日本共産党 田村智子
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【14.06.03】 文教科学委員会 教育委員会改悪法 地方教育行政法改正法案について 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 国と首長の関与は教育の自主性を侵すのではないかということがやはり法案に対する最も大きな懸念だと思います。そこでまず、この国の関与について私も質問したいと思います。
 法案第一条の三によって、地方公共団体の長は、国が定める教育振興基本計画の基本方針を参酌して大綱を定めることが義務付けられます。これは地方自治体を国の基本方針どおりに従わせようということなのかどうか、局長、確認したいと思います。

○政府参考人(前川喜平君) 教育行政は国と地方との適切な役割分担の下に行われるべきものとされていることに鑑みまして、大綱の策定に当たりましては国の教育振興基本計画に明記された大きな方向性を参考にすることが望ましいことから、国の教育振興基本計画の基本的な方針を参酌するとしたものでございます。
 この参酌とは参考にするという意味でございまして、また教育の課題は地域によって様々であることを踏まえまして、地域の実情に応じこの大綱を策定するということになっているわけでございまして、国の方針どおりに大綱を定めなければならないということではございません。

○田村智子君 あくまで参考であるということを確認いたしました。
 憲法や学校教育法など基本的な法律に基づいてそういう地方自治体が教育の方針を作るというのは、これは当然のことで、私は、わざわざ国の基本方針を参酌するよう義務付ける必要もないんじゃないかというふうに思います。子供の権利擁護と地方自治の本旨に基づいて地方の判断で作成できるというようにするのが本来の在り方ではないかというふうに考えるわけです。
 具体的にちょっとお聞きします。
 茨城県美浦村の教育振興基本計画は、国の計画に挙げられている教育の目標については、これは行うことが当然なので、美浦村の計画には書かないということをわざわざ明記しています。
 最も重視しているのは、ゼロ歳から九十歳までの社会力を育てるということで、人と人とが結び付く力、社会力の不足が現在の子供や青年の抱える問題の中心にあるのではないかと、こういう分析に基づいた計画になっています。学力向上という言葉も出てきません。社会力を育てることが学力につながるんだと、大変創意ある計画になっています。
 また、美浦村の主要産業である農業について、その重要性、米作りの将来の見通しなども含めた教育をやるとか、地元の高校に通学するための交通の確保などを計画に盛り込むなど、国のものとは随分と異なるものになっています。
 こうしたユニークな大綱が作られた場合に、今回の法改定を理由に、国の計画を参酌するようにと国からの関与を新たに強めるということはないのかどうか、これも確認したいと思います。

○政府参考人(前川喜平君) 大綱は、教育の課題が地域によって様々であることを踏まえ、国の教育振興基本計画を参酌しつつ、地域の実情に応じ策定することとされておりまして、国の方針どおりに大綱を定めなければならないというものではございませんので、独自性が高いという理由で大綱について国から指導等を行うことは想定しておりません。

○田村智子君 新たに国の関与を強めるものでもないということも確認しました。
 教育委員会制度の第一の眼目は、やはり教育の地方自治だと私は理解します。美浦村の教育振興基本計画は、子供たちの成長のために、また学校や教職員を支援するために、一人一人の村の皆さんが何か自分ができることからやろうじゃないかと、そういうふうに呼びかけるような内容になっていて、やはりこういう自分たちで作り上げた大綱だと地方自治体が確信できるものこそ必要だと。国のひな形になぞって作るようなものではなく、むしろこういうものこそ必要だということをアピールしてほしいぐらいだというふうに思っています。
 次の質問に進みます。
 先日の参考人質疑でも、日本の地方自治は首長に権限が集中していることが特徴だという指摘がありました。だからこそ、首長による教育への介入の懸念があり、不当な介入を防ぐ教育行政の仕組みが必要だということも議論になりました。この議論の中では、今日も言われていましたが、政治的中立性ということが強調されていて、これは大臣の答弁を私も読んでみますと、一党一派に偏した政治主義的主張が持ち込まれないことという答弁が繰り返し行われています。この偏したとか偏っているというのは、これはなかなか判断の基準というのは私は難しいんじゃないかというふうに思うんです。
 これは局長に確認をしたいんですが、中教審の答申では、教育委員会制度の持つ政治的中立性、継続性、安定性についてはどのように述べているでしょうか。

○政府参考人(前川喜平君) 教育の政治的中立性の確保に関しましては、平成二十五年十二月十三日の今後の地方教育行政の在り方についての中央教育審議会の答申におきまして、次のように記述されております。「公立学校等における教育の方針や内容については、多様な属性を持った複数の委員による合議が関与することにより、様々な意見や立場を集約した中立的な意思決定をし、首長の属する党派の利害に左右されることなく、個々人の判断や恣意の介入を防ぐ仕組みは、新たな地方教育行政制度においても必要であると考える。」。
 以上でございます。

○田村智子君 そうなんですね。教育が知事や市町村長が属する党派の利害に左右されることがなく、個々人の判断や恣意の介入を防ぐ仕組みと、こういう指摘なんですね。
 大臣にお聞きをしたいんですけれども、やはり今回の法案は、この中教審答申を踏まえて合議制の教育委員会を維持したものと考えますが、その点いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 今回の改正では、教育の政治的中立性、安定性、継続性を確保する観点から、引き続き首長から独立した合議制の執行機関として教育委員会を残すことにしたものでありまして、首長の属する党派の利害に左右されることなく、個々人の判断や恣意の介入を防ぐとの答申の趣旨に即したものと考えております。

○田村智子君 もちろん私も、どの政党、党派であろうと政治的主義主張を教育に持ち込むべきではないということは、もちろんそのとおりだと思うんです。
 ただやはり、中教審はそれを前提として、地方自治体において大きな権限を行使し得る首長の属する党派の利害に左右されることなくと、こういうふうに答申をまとめた。ここはよく押さえておくことが必要だというふうに思います。
 先週の質疑で公明党の矢倉委員が、教育が首長による民意だけで判断されるべきではない、この理由についてどのようにお考えかというふうに質問されて、初中局長は、民意を代表する立場の首長の意向の反映がより図られるということと、より一層多様な民意を反映し、地域の状況に応じた教育行政の展開を図るという観点から、合議制の教育委員会が教育行政の管理、執行に当たると、こういう答弁をしています。私は、この質問と答弁、大変重要な内容だなというふうに聞いていて思いました。
 もちろん、首長にも公約への思いはありますから、それを示しつつも、しかし自治体を代表する立場ですから、より広い住民や保護者などの多様な民意を反映する努力というのは、これは首長にも求められていると思います、自分の考えだけでなく。同時に、合議体の教育委員会は、多様な立場の教育委員で構成されるからこそ多様な民意を反映する仕組みとしてやはりふさわしいんだというふうに考えますが、これも大臣、見解をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) 教育委員会は、これまでも地域の多様な立場の人たちの視点を反映する観点から重要な役割を果たしてきたと認識しております。
 一方で、現行の教育委員会制度については、地域の民意が十分に反映されていないとの指摘もあることから、今回の改正では、合議制の執行機関としての教育委員会を残しつつ総合教育会議の設置等を規定することにより、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせるような仕組みを構築するものであります。

○田村智子君 もう一度お聞きしたいんですけれども、やっぱりより多様な民意を反映するという意味において、というのは、民意の反映ということが、首長が関与することが民意の反映ということがずっとやり取りがされていて、もちろん首長さんも民意を受けて当選されている方ですからそれを反映するというのはあるでしょう。しかし、より多様な立場でより多様な民意を反映するという役割を教育委員会が負っているということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 先ほど答弁いたしましたが、教育委員会は、地域の多様な立場の人たちの視点を反映する観点から重要な役割を果たしてきたというふうに認識しておりまして、その教育委員会は執行機関として残すということであります。

○田村智子君 実は、中教審の中では首長の関与について民意の反映ということは一切語られていないんですね、そういう問題意識もあってちょっと質問したんですけれども。今大臣もおっしゃられたように、地域の民意が十分に反映されていない、これが教育委員会改革の眼目だと、私もそれは本当に必要なことだと思うんです。
 では、今言ったように、中教審では民意の反映イコール首長の関与ということにはなっていないんですよ、答申は。であれば、教育委員会が地域の民意をより反映していくというためにどういう改正が必要なのか、また、今回の法案の中でそのことが条文としてどのように盛り込まれているのか、これは局長に確認したいと思います。

○政府参考人(前川喜平君) 従来より、教育委員会は、多様な地域の立場の方々の視点を反映するという観点から重要な役割を果たしてきているわけでございますけれども、そのことにつきましては、これまでの現行法におきましても担保されている規定があるわけでございます。
 具体的に申し上げますと、教育委員会の委員の任命につきまして、現行法においても、多様な民意の反映を目的として、年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないように配慮するとともに、保護者が含まれるようにしなければならないと、このような規定がございまして、これは改正後も同じでございます。
 また、これに加えまして、これは運用上の問題でございますけれども、今まで以上に民意を反映し教育委員会を活性化するためには委員の人選の工夫も重要であるというふうに考えておりまして、委員の選任に当たっては、コミュニティ・スクールや学校支援地域本部など地域の関係者を教育委員として選任したり、あるいは教育に関する高度な知見を有する者も含めることも有効な方策であると考えております。
 今回の改正案の中では、教育委員会の会議の透明性の向上を図り、住民によるチェック機能を強化するという観点から、会議の公開に加えまして、議事録を作成し、公表するよう努めなければならないということを規定しているところでございます。
 加えまして、地域の民意を代表するという立場の首長と教育委員会とが連帯して教育行政に責任を果たせるようにするという観点から、首長による大綱の策定や首長による総合教育会議の設置についての規定が設けられているところでございまして、これらを通じましてより一層民意を反映した教育行政の推進が期待されるところでございます。
 また、この総合教育会議におきましては、必要に応じ、関係者又は学識経験者から意見を聴くことができるとされているところでもございまして、多様な民意を反映するための方法として活用されることが期待されるところでございます。
 また、この総合教育会議につきましても、透明性の向上、住民によるチェック機能という観点から、その公開制、また議事録の作成、公表の努力義務が規定されているところでございます。

○田村智子君 現行法では不十分だということでの改正だと思うんですね。確かに会議録の公表ということは行いますと。これは民意の反映というよりも情報開示ですよね。そこから住民の意見や要求を取るというような仕組みとはまたちょっと違うと思うんです、情報開示である、まあ前提であるかもしれませんけれども。やっぱり出てくるのは首長の関与に関わる条文だけなんですよ。首長が総合教育会議を主宰する、大綱を作る。そうすると、教育委員会そのものが本当に多様な民意を反映し活性化をしていくというような直接的な法の改正、条文の改正というのは、今回の法案の中では私は見付けることができないわけです。議事録の公開ぐらいなのかなと。
 では、本当に現行法で保障しているから大丈夫なのかということで確認をしたいんですが、これは、今日午前中、自民党の議員からも質問があったんですけれども、改めて私も確認をしたいと思います。
 地域の民意を十分に反映するという点で、現在の教育委員会の現状がどうかと。教育委員会で学校や事務局に寄せられた住民や教職員の意見の紹介を全く実施していない、そういう教育委員会の割合、これ一点目。それから二つ目に、公聴会など保護者や地域住民の意見を全く聴取をしていない、そういう教育委員会の割合。そして三点目、これは自民党の議員の質問になかったことですけれども、保護者や住民のアンケートなどを実施していない教育委員会。これ、それぞれどれぐらいあるのか、直近の数字でお答えください。

○政府参考人(前川喜平君) 平成二十四年度間の教育委員会の現状に関する調査におきましては、教育委員会の会議で学校や事務局に寄せられた意見等を紹介していない教育委員会の数、都道府県・指定都市におきましては八三・三%、その他の市町村におきましては六二・三%でございます。
 公聴会等の意見交換を行っていない教育委員会の数、これは都道府県・指定都市では四八・五%、その他の市町村では六九・四%でございます。
 世論調査、アンケート等を実施していない教育委員会の数、都道府県・指定都市では六八・七%、その他の市町村では八九・五%となっているところでございます。

○田村智子君 本当に残念ながら、多数の教育委員会が、アンケート実施せずが市町村で八九・五%ということは、本当に九割近い市町村の教育委員会でアンケートもやっていないと。意見を直接聞いているところがまあ半数ぐらいはあるのかなというのはあるんですけれども。それにしても、保護者や住民あるいは教職員の意見、これやっぱり聞くということもしていない教育委員会が多数ある。これが、教育委員会が形骸化というふうに指摘されてきた私は大きな要因の一つではないかというふうに考えざるを得ないわけです。
 住民の意向とか要求に教育委員会が耳を傾けるんだという、そういう抜本的な教育委員会の改革が必要ではないかというふうに考えますが、これ、大臣の見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) 確かに、この数字において、それぞれ教育委員会はもっと努力を是非してもらいたいというふうに思います。
 地域住民や保護者の要望等について事務局から教育委員会に報告したり、それから教育委員が学校を始めとした所管施設も積極的に訪問するなどの取組も更にしていただきたい。また、教育委員会における審議を活性化するために、地域の多様な民意が反映されるよう、保護者や地域の関係者を教育委員として選任したり、教育に関する高度な知見を有する者も含めることも有効であるというふうに思いますし、そういうことも含めて、文部科学省としても、様々な機会を通じてこうした取組を教育委員会が是非行ってもらうよう、その活性化について図ってまいりたいと思います。

○田村智子君 大臣もこういう改善が必要だというところではお認めいただいたと思うんです。
 それでは、今度は局長にお聞きしたいんですよ。これまで文部科学省は、そういう教育委員会の活性化についての通知、こういうのを出してきたんだろうかと。公聴会やアンケートあるいは学校訪問などを行うことが大切なんだと。多様な民意を反映するよう促すような指導、援助、こういうのは私は必要な指導、援助だというふうに思うんですね、活性化させるために。そういう通知などは、先ほど年間百三十件出されているとお聞きしましたけれども、そういう百三十件の中に、毎年百三十件ぐらい出しているのかと思いますけど、果たしてそういう通知というのは、この間発して、指導、援助、助言、行ってきたんでしょうか。

○政府参考人(前川喜平君) 実のところ、この教育委員会の現状に関する調査におきまして、今申し上げたような調査をしていること自体がこういう取組を促す意味でやっているわけでございまして、まだまだ不十分であるという実情はございますけれども、こういった調査を通じましてこの取組を更に促してまいりたいと考えているところでございます。
 多様な民意の反映という趣旨での指導、助言につきましては、これまでも制度の見直しの機会などに通知などによりまして指導してきたところでございます。
 例えば、平成十三年の地方教育行政法改正におきまして、委員の任命に当たって、委員の年齢、性別、職業等に著しい偏りが生じないように配慮する旨の規定を設けたわけでございますけれども、その際の施行通知におきましては、教育委員会が、教育、文化、スポーツ等に関する要望等の広がりに対応する観点から、地域住民や保護者等の意向等を的確に把握し、地域の状況に応じた主体的かつ積極的な教育行政を展開するため、教育委員の構成を多様なものとすることを留意事項として示しております。
 また、平成十九年の地教行法の改正におきまして、この際には、都道府県又は市の教育委員会にあっては六人以上の委員とすることができるという改正が行われたわけでございますけれども、この際の施行通知におきましては、多様な地域住民の意向を教育行政に一層反映することができるよう、教育委員会の委員を増員する等ができるようにすることを留意事項として示しているところでございます。
 また、同じ改正におきましては、委員のうちに保護者が含まれるようにしなければならないということとしているわけでございますけれども、その際に保護者の意向が教育行政に適切に反映されるようにすることを留意事項として示しているところでございます。
 教育委員会の会議で学校や事務局に寄せられた意見を紹介するなどの取組につきましては、教育委員会の活性化の観点で有益なものであると考えておりますので、文部科学省といたしましては、こうした取組の状況について更に引き続き調査を行いまして、教育委員会の取組を促してまいりたいと考えております。

○田村智子君 これは、大臣にも伺いたいんですね。
 各教育委員会へのアンケート調査で言わば喚起しているというんですけれども、しかし出てきている数字、だから毎年のように調査やっているんですよ、それで改善していればまだ分かります、アンケート調査やって年々改善しているぞと。でも、アンケート実施せずが市町村で約九割ですからね。これは、アンケート調査をやっていても改善しているとはちょっと私は、全く改善してないとは言いませんよ、でも、それでは不十分ではなかろうかと。やはり教育委員会の活性化の鍵ともいえる多様な民意を直接つかむということについて、やっぱり現場に歓迎されるような、実際改善につながるような指導、援助、それはもっと行っていいんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) そういう指導、援助、助言はしろということでありまして、この新しい改正案が成立をさせていただければ、これは先ほどからも議論がありましたが、制度を変えたからといって、あしたからいじめがゼロになるということにはならないわけですし、やはり教育委員会そのものの構成メンバーの意識改革も必要だと思います。その中の一環として、そういう努力をしている自治体の事例等を紹介しながら、もっとそれぞれの教育委員会が地域住民の声をしっかりと教育現場に把握できるような、そういう教育委員会の活性化について、文部科学省の方でも必要に応じて指導、助言等行ってまいりたいと思います。

○田村智子君 私は、そういうことが一番の教育委員会改革として必要なことだろうと思うんですね。
 もちろん、今も民意反映の努力を行っている教育委員会というのはあります。例えば、比較的小さな自治体の中には、教育委員の皆さんが小まめに学校訪問をして子供たちの様子を見ていたり、校長先生や教員の皆さんとも懇談をして、そこで直接につかんだ声を教育委員会の会議の中で発言をして、それに応える施策を求めるということをやっているんですね。例えば、学校訪問したら男子トイレが本当に臭いんだと、あの臭いはどうにかならないのかと。なぜ施設改善もっと進まないんだというふうなことも教育委員会の中で発言されている議事録を私も幾つか読みました。これは本当に歓迎されますよね、学校現場からも子供たちからも。
 あるいは、埼玉の鶴ケ島市教育委員会、ここは条例で教育委員会の下に十五人以内の教育審議会の設置というのを決めているんです。この目的は、地方自治の本旨に基づき市民の参加と協働により、市の実態や特色に応じた鶴ケ島市らしさのある教育改革を進め、教育の真の目的を実現するためだというんですね。この鶴ケ島市教育振興基本計画、これ策定に当たって、この審議会が教育委員会からの諮問を受けて、児童生徒への、これ全児童生徒対象アンケートやったり、それから計画の素案も一か月間パブリックコメントを掛けているんですよ。そういう中身を教育委員会にも報告をしていると。とても大切な取組だと思います。
 私たち日本共産党は、本法案への言わば対案として教育委員会の改革提言というのを発表しています。その改革の第一に、やはり教育委員たちが、保護者、子供、教職員、住民の不満や要求をつかみ、自治体の教育施策をチェックし改善する、これが必要だということを提言をしたんですけれども、大臣、このことには御賛同いただけると思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) それは適切なすばらしい提案だと思います。

○田村智子君 すばらしい提案と、ありがとうございます。そうなるように、だからそういう法案を出していただけたら私たちもそれはいい法案だとなるんですけれども、そういうところの直接の条文がないというのが非常に残念なところなんです。
 私も校長先生を務めておられた方からもお話お聞きしたんですけれども、本当に教職員の声も本当につかんでほしいんだと。校長先生でいいますと、いろんな問題が今学校で起きると。いろんな先生は問題起きたときに、じゃ、副校長に相談しようかなと。副校長は本当に困ったら校長に相談しようかなと。ところが、校長はもう後ろを振り返っても誰もいないんだと。そういう孤独感の中で仕事しているんだとおっしゃる方がいたんです。そういうときに、あっ、あの教育委員の方に相談したら答えてくれるよな、相談乗ってくれるよな、そういう教育委員の顔が思い浮かぶかどうかというのが学校にとっては決定的だというふうにおっしゃっていたんですね。そういう教育委員会になるような努力が求められていると思うんです。
 教育委員の皆さんたちが、そういう多様な民意を反映すべく活動を活性化させる、そのためには、やはりそのための条件整備というのが欠かせないと思います。
 先日の参考人質疑で、横浜市の教育委員長さんだった今田参考人は、まず、委員たちの机と椅子がない、直ちに用意しろというところから仕事を始めたというお話をされました。これ、同じような状況は少なくない自治体にあると思います。机、椅子、パソコン、資料を置く場所、これはもう本格的な活動をする上では欠かせないことだと思います。
 また、ある教育委員の方にお話伺ったら、本格的に活動しようと思ったら毎週会議が必要だと。時には週に二回以上集まることも必要になってくると。では、その活動をどう保障するか、手弁当でいいのかという問題も出てくるわけです。
 私たちは、教育委員会改革の柱の第二として、会議の公開とか教育委員の待遇改善、支援、教育への見識や専門性を持つ人物の確保など、教育委員会の役割が確実に果たせる体制の整備が必要だと、こういうことも提言をいたしました。これについても大臣の所見を伺いたいと思います。

○国務大臣(下村博文君) まず、教育委員会において、教育委員は非常勤ではありますが多様な民意を反映することが期待をされているわけでありまして、保護者や地域住民の不満それから要望等を的確に把握し、教育行政に生かすことは御指摘のように大変重要だというふうに思います。
 この保護者や地域住民の不満や要望等を把握するため、公聴会等を開催し、保護者や地域住民の意見等を聴取し、意見交換を実施すること、また、教育委員が学校を始めとした所管施設を積極的に訪問すること、教育委員会の会議で学校や事務局に寄せられた意見等を情報公開することなどが考えられるというふうに思います。
 限られた予算の中で、また行革に相反しない中で、教育委員の方々にはこういう取組について是非していただければと思います。

○田村智子君 もう一点、そうした体制つくっていくためにはやっぱり予算が必要で、これまでの審議の中では教育委員会事務局の指導主事の配置についてはこれ充実していきたいというお話があったんですけれども、私は教育委員への活動の支援、これはやっぱり必要だというふうに思うんです。特に小さな規模の自治体では負担が重いというふうにも思いまして、この教育委員の活動を下支えするような予算の支援、この点についても、大臣、要望したいんです。是非やってほしいと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 教育委員の下支えをする予算ということですか。教育委員そのものに対する予算ということではなくて。

○田村智子君 そうです。教育委員の活動そのものですね。

○国務大臣(下村博文君) 教育委員そのもの。

○田村智子君 はい。

○国務大臣(下村博文君) 教育委員そのものは、やはりレーマンコントロールの中で、非常勤の扱いということの中で対応していただいているというのが現行制度、それから改正案でもあるわけでありまして、その範囲内の中でではありますが、教育委員の方々がしっかり地域の適切な、不満、要望等を捉えて、それを教育行政の中で反映できるような支援については検討してまいりたいと思います。

○田村智子君 是非お願いしたいと思います。
 最後に、教育長と教育委員会の関係について質問をいたします。
 スーパー教育長という言葉がこの委員会の中でも何度か出てきているんですけれども、教育長は、教育委員会からの委任を受け、教育委員会の意思決定に従って具体的な事務の執行に当たると、この点については現行法と同じだと思うんです、法案も。教育長のみの判断で何でもできるということではないと思いますが、これ局長に確認したいと思います。

○政府参考人(前川喜平君) 改正案における新教育長は、執行機関である教育委員会の代表者となるわけでございますが、合議体としての教育委員会の意思決定に基づき委任を受けたことについて事務を執行するということについては現行と変わりございません。

○田村智子君 これ、スーパー教育長という言葉が独り歩きすると誤解が広がりかねないというふうに私は思っているんです。教育委員会においては教育長は代表、法案でも代表であって、それは、決定権限は合議体である教育委員会にあるんだということはしっかりそれぞれの自治体の中に法案の中身、知らせていかなくちゃいけないというふうに思っています。だけれども、一方で、教育委員長への指揮監督という権限は教育委員会から奪われました。教育長、教育委員会事務局へのチェック機能をどうするかということは、やはり大きな問題だと私も思います。
 先ほどもありましたが、参考人質疑で中教審メンバーでもあった村上参考人から、教育委員会が教育長への勧告を行うなどの運用の仕組みがあってもいいんではないかという提案があったんです。とても大切だと思うんです。これ、法案では、教育長は教育委員会に事務の執行についての報告をするということが義務付けられています。では、報告を受けて、教育委員会がその内容を議論をし、そして教育長への勧告を議決した場合、不十分だとか、それはやり過ぎだとかということを含めて、それは学校教育にちょっと口を出し過ぎじゃないかということとか、あるいはこういう施設整備はもっと早くやるべきなのになぜなかなか進まないんだと。そういう事務の執行について勧告が必要だと委員会が判断し、これを決議した場合、それは教育長はこの勧告に従う義務が生じると思いますが、これは大臣に確認したいと思います。

○国務大臣(下村博文君) 改正案第二十五条第三項におきまして、教育長は、教育委員会から委任された事務の管理及び執行の状況について教育委員会に報告しなければならないこととされております。教育長の事務の管理及び執行について、教育委員会において審議し合議体として意思決定を行った場合には、教育長は当該意思決定に従う必要があると考えます。

○田村智子君 勧告を行った場合にはそれに従う必要があるということを確認をいたしました。
 この村上参考人の運用に対する仕組みの提案というのは非常に大切なものが幾つもありまして、これちょっと通告していなかったので質問にはしないで、これ確認が必要だったら次回確認したいと思うんですけれども、例えば教育委員会の議決は、これもう教育委員会の会議の主宰を教育長にしちゃったものですから、であるならば、教育委員会の議決は教育長を外してまず行うと、そして可否同数だった場合に教育長の判断によるというふうにしてはどうかという提案があったりとか、あるいは教育長の任命、罷免についても教育委員会の承認を必要とする、こういうようなことをやっていかなければ、チェック機能という役割が教育委員会果たせなくなってしまうんじゃないかということを中教審のメンバーで教育委員会の改革についてまさに協議したその方が提案をしているんですよ。
 私は、これ、どうなるかということはまた後日確認はしたいと思っているんですけれども、本来、やはり教育委員会のチェック機能の強化ということを言うのであるならば、それは今、村上参考人から提案されたような内容は、これは法案の中に含んで、だからチェック機能は後退しないんだと、指揮監督権というのは外したけれどもチェック機能は法律がちゃんと保障しているんだということを盛り込むことが必要だというふうに思うんですよ。これ、今からだってそういう修正が行われるのであれば、やっぱりやらなきゃいけないというふうにも思うぐらいなんです。
 本来、責任の不明確ということも言われてきましたけれども、これ、教育委員会の制度の発足時を見てみれば、教育委員会にはそもそも教育長は含まれていなかったわけです。組織的には事務局というのと教育委員会というのは分離をしていて、教育長も教育委員会の外に置かれていたわけですよね。そして、教育委員会には意思決定や指揮監督の責任があり、教育長はその教育委員会の意思決定に基づいて日常的な事務統括を行うという責任があったと。
 もし責任の不明確さということを問題にするのであれば、やっぱり私は原点に立ち戻ってそのぐらいの改革を行うということが求められていたんじゃないのかということも思わざるを得ないんですね。そのことを指摘しまして、今日は時間になりましたので、本日の質問は終わりたいと思います。