日本共産党 田村智子
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【14.03.05】 予算委員会 教育委員会改革について

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 教育改革の一つの柱である教育委員会改革についてお聞きをいたします。
 現在示されている自民党案は、首長の意向の反映を目的の一つに掲げて、首長が教育委員長と教育長を一本化した新教育長を任命する、首長が主宰する総合教育施策会議を設置して教育方針を策定するというものです。こうした案に対しては、教育の不安定を招く懸念、二月二十日の毎日新聞の社説、政治介入に歯止めを、同じく朝日新聞社説などの批判が、懸念が相次いでいます。
 総理、このような懸念にどのように受け止められますか、お答えください。

○国務大臣(下村博文君) 私の方からお答えさせていただきたいと思います。
 教育基本法の精神にのっとり、学校教育においては政治的中立性を確保することが極めて重要であり、一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれないようにすることが、するようなことがあってはならないわけでございます。こうした中、教育再生実行会議第二次提言では、日々の教育活動や教員の人事においては、政治的中立性等を確保するための制度上の措置を講じるとともに、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせるような体制とすることが必要とされたところでございます。
 しかし、中教審答申の改革案については、首長の権限が強くなり過ぎるという懸念もあったため、先般取りまとめられた自民党の案では、政治的中立性を確保するために教育委員会を執行機関としつつ、首長が教育行政に対し積極的に関与できる仕組みとなったと承知をしております。
 自民党の案については、大方の方向性については共有できるものと受け止めておりますが、いずれにせよ、教育委員会制度改革については、現在、与党間において協議中でございます。この与党の協議を見守り、教育委員会制度を抜本的に改革をしていく法案を今国会で出させていただきたいと考えております。

○田村智子君 地域の民意を反映するのが首長だと言われますけど、これ、やっぱり何人もの候補者がいる中で一人の首長が選ばれているということですよね。
 それで、教育委員会の改革についてどういうことがやっぱり懸念なのか。これ、二月十八日報道の朝日の世論調査見ますと、政治的な考え方に左右されない仕組みが必要と答える方が五九%、政治家が学習内容をゆがめることに一定の歯止めが必要という方が七五%と。
 やはり首長も政治家のお一人ですから、首長や政治家の意見が学校教育を左右することのないようにと、これはやはり多くの国民が求めていることだと思うんです。けれど、自民党の案は、首長の意向の反映が必要だというのは、これ改革の目的として明確に掲げています。そして、教育の基本方針を決める会議も首長が主宰をするという。
 これでは国民の不安が強まるというのは当然だと思うんですけれども、これはやはり責任者、これ安倍総理ですから、教育改革がこの国会の柱だとおっしゃるわけですから、総理の見解もお聞きをしたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) この議論については、衆議院におきましてもずっと議論をしてきたところでございますが、この現在の教育委員制度は、教育現場で発生する様々な問題に対して誰が最終的に責任を負っているのか、また、いじめ問題等に機敏に対処するための体制ができているかという点で課題があるわけでありまして、事実、課題としてこれは今も残っているわけでありますし、これは、教育委員会そのものの制度にもこれは大きな問題があるわけでございます。
 言わば教育委員会自体が責任を分け合っている中においては、結果として誰も責任を取らないという事態にもなっているわけでありますし、みんなが責任を持つことによって、結果として機敏に誰かが責任を持って指示をするということができない状況も起こっているわけでありまして、現在、与党においては、教育の、教育再生会議や中央教育審議会の提言を踏まえて、権限と責任の所在が明確となる体制を、政治的中立性や継続性、安定性を確保するという観点も加味をしながら議論をしているところであります。


○田村智子君 いじめの事件などで誰が責任者かと。子供の命に関わるような問題が起きたときに、これ自治体の長も責任を持って行動を起こす、これは当たり前のことで、今の法制度の下でもできるわけです。
 この問題では、例えば大津のいじめ事件では、第三者調査委員会の調査報告書では、なぜ教育委員会が責任果たせなかったのかと。それは、教育長を始め教育委員会事務局が各教育委員に情報を提供しなかった、重要な意思決定にも参加させなかった、教育委員会によるチェック機能が働かず教育長以下事務局の独走を許すことになったと、こういう指摘もあるわけです。
 そうすると、何で自民党の案で教育長と教育委員長を一体にしちゃうのか、ますますチェック機能が弱まっちゃうんじゃないのか、こういう懸念も出てくるわけです。これはまた後日、私、議論をしたいんです。
 今日私がお聞きしたいのは、やはり政治家の意向が反映することは非常に学校現場を混乱させるという懸念。これは、現実にそうした事件が何度も起きてきたことによるからなんです。
 例を挙げます。都立七生養護学校のこころとからだの学習裁判、昨年十一月、最高裁が上告を棄却して東京高裁判決が確定をいたしました。文科省、確定判決の概要の説明をお願いします。

○政府参考人(久保公人君) 本件事案は、東京都議会議員等が、平成十五年七月、当該学校を視察して教材や性教育の内容に関して教員らを批判するなどとしたこと、また、都教委が当該学校の性教育が不適切であるとして、性教育用教材を所管換えし、教員らに対し厳重注意の上、配置換えするなどしたことに関しまして、当時の同校教員及び保護者らが、これらの行為によって教育の自由が阻害されたとして、東京都及び都議並びに都教委に対し損害賠償等の請求の訴えを起こしたものでございます。
 これに対しまして、昨年十一月二十八日の最高裁判決では上告を棄却し、これによって第二審判決が確定したものでございます。本判決では、大きな争点は、都議会議員が学校を視察した行為などが不当な支配に当たるかどうか、それから、学校で行われていた性教育が学習指導要領に違反するものであったと言えるかどうかが争点となったところでございます。
 このうち、不当な支配に関しましては、都議等の各行為は本件視察における教員に対する侮辱行為のみが違法であること、都教委の各行為は、このうち都議らの不当な支配から教員らを保護するよう配慮しなかったこと並びに教員らに対する厳重注意のみが違法であることを根拠といたしまして、その賠償責任が認められた事案でございます。
 一方で、本件判決によれば、議員が教育実践の実情を視察することにつきましては、この教育実践が自己の見解に沿わないものとの考えの下に、そのことを議会において指摘して教育行政機関の見解をただし、必要な措置を求めるための準備行為であったとしても、議会や議員の権限等に照らし、また、これが教育委員会の対応を事実上義務付けるものとは言えないことに照らしても、不当な支配に当たると言うことはできないなどについての指摘もなされているところでございます。
 また、当該養護学校における性教育が学習指導要領に違反するかにつきましては、本件判決によれば、本件性教育は、本件養護学校において平成九年七月に起きた生徒同士の性的交渉を始めとする性に関する問題行動が多発したことから、知的障害を持つ児童生徒にふさわしい性教育として、校内性教育連絡会を設けて全校的な取組を行い、校長を含む教員全体で、七生福祉園や保護者とも意見交換しつつ、試行錯誤しながら創意工夫し実践されてきたものである。このように、個々の教員が個々の考えに基づいて独自に行うのではなく、学校全体として、校長を含む教員全体が共通の理解の下に、生徒の実情を踏まえて保護者等とも連携をしながら指導内容を検討して組織的、計画的に性教育に取り組むことは、学校における性教育の考え方、進め方、性教育の手引等が奨励するところであり、これに適合した望ましい取組方であったと言うことができる。
 その内容においても、本件性教育が、一審被告都教委の心身障害児理解推進研修事業として、東京都知的障害養護学校長会及び同教頭会で主催する専門研修において他校の校長を含む教員らに紹介されたにもかかわらず格段の問題点の指摘もなかったという事実も、これが本件学習指導要領に違反しないと考えている教育関係者が多数いたことを示している。
 知的障害を有する児童生徒に対する性教育として何が優れているのかは、教育に関する専門的知識、経験を踏まえた議論によって決すべきことであり、この裁判においては、学習指導要領に違反する違法なものであるかどうかという限度で判断すべきものであるが、以上によれば、本件性教育が本件学習指導要領に違反すると断ずることはできないものと言うほかはないと指摘されているところでございます。

○田村智子君 次の質問までお答えいただいちゃったので、長くなったんです。
 この裁判は、やはり都議が視察で養護教諭を侮辱したのは不当な支配だと、都教委は教員を保護する配慮義務に違反したと、都教委による教員の厳重注意は裁量権の濫用であるということが認定をされた。そして、手作りの教材を使って行ってきたその性教育は学習指導要領違反でもないということも判決の中で判断がされているわけです。
 ところが、この三人の都議が、教育の実践を実際には見ることもなくて、勝手に不適切と決め付けた。手作りの教材は使えなくなった、抽象的な教育へと変更させられた、都教委は懲罰的に七生所属の教員を多数他校に異動してしまった、その一番の犠牲は子供たちなんです。
 こういう政治介入はやってはならないということだと思いますけど、これ確認したいと思います。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(下村博文君) 御指摘のあった都立七生養護学校の事案に関する判決においては、教育委員会の職員には都議らによる不当な支配から学校の個々の教員を保護する義務があったにもかかわらず、これを行わなかったこと等を根拠として賠償責任が認められた事案であると承知をしております。
 教育基本法においては、教育は、不当な支配に服することなく、法令の定めるところにより行われるべきものとされており、国民全体の意思を代表するものとは言えない一部の社会的勢力が党派的な力として教育に不当に介入してくることがあってはならないという意味でございます。
 本来、議会は、その所属する地方公共団体において、教育を始めとする行政全般にわたり適正な議会運営や議員の調査活動を通じて多様な民意を反映したより良い施策形成を図るための機関であり、教育内容に関わることであっても、法令に基づく調査活動等であればこれは不当な支配には当たらないものと考えます。私も実際にこの七生学園には視察に行きましたが、当然これは不当な支配には当たらないというふうに考えております。これは一議員として、文科大臣になる以前の話です。
 その後、都教委においては、この当該事案が不適切な指導の事例であったとの認識の下、つまり、過激な性教育であったということは都教委も認めて、性教育の手引の改訂をその後行うなど、学校における性教育が適正に行われるよう必要な措置を講じているものと認識をしております。

○田村智子君 それは判決を理解していないですよ。
 七生で取り上げられた教材というのは、例えば男の子がおしっこをするときにズボン下げてお尻見せたりしちゃ駄目だよと。そういうことをやると性犯罪者にさせられちゃうこともあるわけですよ。では、どうするのか。タイツで性器も描いたものを男性教員が履いて、こういうふうにやるんだよ、実践的に、具体的に、視覚的に知的障害者の方々の権利を守るためにやってきた教育ですよ。それを変えさせたことは不当ではないということですか、文部大臣。

○国務大臣(下村博文君) 都議会議員等の視察において教職員等に対する侮辱、暴言があったということは、これは裁判で言われていることでありますし、事実だと思います。それをもって不当ということであれば、そのとおりだと思います。
 ただ、一方、私がこれは議員として視察に行ったとき以前の話でありますが、やはり我々から見ても過剰な、過激な性教育として行われているのではないかという、そういう事例がありましたし、我々が別に指摘したわけではありませんが、東京都の教育委員会がそういう認識の下で性教育の手引の改訂を行ったということは、これは事実でございます。

○田村智子君 判決は、学習指導要領に沿ったものであると。それなのにそういう答弁出てくるから不安になるんですよ。
 もう一つ事例挙げます。埼玉県の事例です。
 これ、昨年十二月、埼玉県議会文教委員会で県立朝霞高校の台湾への修学旅行と平和教育の内容を問いただす質疑が行われました。その中で、生徒の感想文全員分を提出すべきと一部の議員が求め、提出された八人分の感想文の内容がチェックをされた。子供の内心に踏み込むような議論に、余りに教育の現場の中に深く関与し過ぎているのではないかと発言する議員もいました。これ我が党議員では、別の議員です、我が党議員は残念ながら文教委員会に議席ありませんでした。
 また、昨年九月の文教委員会では、自国や郷土に誇りを持てるという埼玉県の教育方針に沿わないとして、実教出版の日本史教科書を採択した県立高校の校長を一人一人呼び出して、採択理由を問いただすということが行われました。
 平和教育の内容が自分の見解と異なるからと生徒の感想文の提出まで求める、特定の教科書に意見があるからと校長を一人一人問いただす、これ異常だと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) まず、御指摘のあった修学旅行の件でございますが、埼玉県立朝霞高校の平成二十四年度の台湾への修学旅行の事前学習に関する感想文の提出を埼玉県県議会文教委員会が求めたことを受け、教育委員会が生徒八人分の感想文を匿名で提出したものと承知をしております。
 また、教科書採択については、埼玉県教育委員会が平成二十六年度に県立高校において使用する日本史教科書について実教出版の教科書を採択したことに関連し、県議会において実教出版の教科書の採択を希望した高校の校長に対してその理由の聴取が行われたものと承知をしております。
 公立高校において使用する教科書の採択権限や修学旅行に関する最終的な決定権限は教育委員会に有しており、基本的に教育委員会がその説明責任を果たすべきものと考えますが、県議会による自律的な運営として調査を行うことは、これは不当な介入とは言えないものと認識いたします。
 いずれにせよ、本来、教育内容に関わることであっても、法令に基づく適正な議会運営や議員の調査活動の対象とすることは、これは不当な支配に当たらないものと考えますが、学校の個別具体の教育活動に直接関わる場合には十分な配慮も一方で必要であるというふうに考えます。

○田村智子君 これ、生徒の感想文まで提出させるのは異常だと思いませんか。検定合格している教科書を採択したのにその理由を問いただされる。異常だと思わないんですか。もう一度お願いします。

○国務大臣(下村博文君) これは余り例がないことではあるというふうに思いますが、しかし、不当な支配ということではなくて、県議会は県議会の文教委員会の立場からそれを聞きたいと、そういうことでの判断だったのではないかと思います。

○田村智子君 これ、そういう答弁が出てくるのは、やっぱり安倍総理の教育改革の方向とも重なっているんじゃないのかと思わざるを得ないわけですよ。
 総裁直属の組織、自民党教育再生実行本部は、昨年六月、教科書についての中間まとめを総理に提出をしています。ここでは、多くの教科書にいまだに自虐史観に立つなど問題となる記述が存在する、教育基本法や学習指導要領の趣旨をしっかり踏まえた教科書で子供たちが学べるようにするため必要な対策を行うべきという提言がされています。
 総理、こういうことが教育再生、教育改革なんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 教育基本法を改正をしたわけでございまして、新しい教育基本法にのっとってしっかりと教育を行っていくようにと、そういう趣旨の提言であったと思います。それはまさに新しい教育基本法の趣旨を理解して教育を行っていくということは当然のことではないかと、このように思います。

○田村智子君 そうすると、その中間まとめにある、多くの教科書はいまだに自虐史観に立っていて、これは教育基本法の趣旨にそぐわないということなんでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) それはまさに党の本部の提出でありまして、私が申し上げましたのは最後の趣旨のところでございまして、その中において党の教育再生実行本部における判断を示したということではないかと思います。

○田村智子君 そうおっしゃるんですけれども、実は安倍総理御自身が特定の教科書の採択促進に大変力を注いでこられた、こういう事実もあります。
 前回、二〇一一年の教科書採択では、育鵬社の歴史・公民教科書出版記念行事に、安倍総理、元総理という立場で御参加をされ、新しい教育基本法の趣旨を最も踏まえた教科書は育鵬社であると私は確信していると挨拶をされています。
 さらに、育鵬社教科書の採択報告と懇親の夕べ、これは採択の結果を報告する集いですね。ここにもメッセージを送っておられまして、扶桑社と比べて採択増加となったことに祝辞を述べて、大半の教育委員会が新しい教育基本法の理念に目を向けることなく旧態依然とした現場重視の採択を行った中で、日本人の美徳と優れた資質を伝える教科書が今後四年間で約二十五万名もの子供たちの手に届くことになったことは、戦後の我が国の教育再生の基盤となるものと確信しておりますとメッセージに書かれているわけです。これが教育改革の目的、方向ではないんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 当時は、総理大臣ではなくて一議員としての見識を述べたものでございます。今まさに、私、総理大臣としては、しっかりとした採択基準の下に、検定基準の下に各教育委員会が適切に判断して採択をしていただきたいと、このように思っております。

○田村智子君 でも、元総理という肩書で、教育基本法を改正したにもかかわらず、このようなことが行われているという立場での御発言なんです。
 私は、やはり時の政治家の思惑でこういうふうに学校は振り回されている、埼玉でも、なのに、そのことに批判もできない、総理の歴史観や道徳観を教科書や学校教育に押し付ける、そういう方向の教育改革、これ本当に懸念がされます。そういう改革は行うべきではないということを申し上げて、質問を終わります。

○委員長(山崎力君) 以上で田村智子君の質疑は終了いたしました。(拍手)