日本共産党 田村智子
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【11.12.1】厚生労働委員会-受診時定額負担とお口の健康格差について

179-参-厚生労働委員会-3号 平成23年12月01日

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 社会保障と税の一体改革の中で提案をされています受診時定額負担についてお聞きをいたします。
 これは高額療養費の負担軽減の財源だとして一回の受診ごとに百円、住民税非課税の方にも五十円という負担を今の医療費負担に上乗せして徴収しようとするものです。高額療養費については、もちろん負担の軽減は必要で、私たちも、月ごとの負担上限の引下げはもちろん、慢性疾患や難病のように長期にわたる医療費の負担はヨーロッパのように年収に応じて大幅な負担軽減策というのを取ることが必要だと、こういう提案もしてまいりました。しかし、そういう財源は公費で賄うべきだと考えます。
 お聞きしたいのは、そもそも日本の医療保険制度というのは病気やけがをしたとき治療に必要な医療費はみんなで分かち合おうと、これが原理原則になっていると思うんですね。ところが、受診時定額負担は患者同士だけで負担を分かち合えと、こう求めるもので、これは私たちの国の、この医療保険制度の原則に反するものではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○副大臣(辻泰弘君) 言うまでもないわけでありますけれども、医療保険制度におきまして高額療養費の改善に必要な財源は、保険料、公費、患者負担のいずれかで確保しなければならないものでございます。高額療養費の見直しにつきましては、昨年も議論をしたところでございますけれども、厳しい経済状況の中で給付改善のために保険料の引上げを行うことには関係者の理解が得られず、見直しを見送った経緯があるわけでございます。
 御指摘をいただきました受診時定額負担は、こうした保険料負担の引上げが困難な状況の中で、給付の重点化の観点から一体改革成案に盛り込まれたものでございまして、現在、医療保険部会で議論をいただき、御指摘いただきましたような論点についても御議論があったところでございます。
 いずれにいたしましても、医療保険部会などにおきまして関係者の意見を十分聞きながら検討し対処していきたいと、このように考えております。

○田村智子君 保険料の引上げはもう厳しいということだということですけれども、それはもちろんそうなんです。だから私たち公費で賄うべきだというふうに求めているんですけれども。
 厚生労働省からいただいた資料を見ても、二〇一五年度ベースの増額分、その高額療養費見直しの増額分三千六百億円、この中には本来公費で負担すべき一千二百億円、これも定額負担に入れるんだってなっているんですよ。保険料引上げの分だけじゃない、元々今の制度で公費で賄うべきものも定額負担で見てくださいよってやっちゃっている。小宮山大臣、これは私は全く説明が付かないというふうに思うんですよ。
 しかも、医療保険部会に提出された資料を見ますと、受診時定額負担の導入によって受診行動が変化をする、いわゆる長瀬効果を反映した数字が示されている。これは、定額負担を導入すれば新たにまた受診抑制が起こると、このことを想定した数字ではありませんか。

○副大臣(辻泰弘君) 御指摘をいただきましたけれども、医療保険におきましては、給付率が変化すると患者の受診行動が変化し医療費の増減の効果が生じる、いわゆる長瀬効果が生じることが経験的に知られているところでございます。
 受診時定額負担につきましても、給付率、患者負担が変化することになりますので、この影響を見込んだ形で財政影響を試算し、検討をさせていただいているというところでございます。

○田村智子君 更に受診抑制が起こるということを認めているんですよ、これによって。今だって受診抑制が大変な健康格差までもたらしていると、こういう指摘がされています。
 今日、資料をお配りいたしました。これは口腔の状態、歯の状態を示した資料なんですけれども、全日本民主医療機関連合会が今年、無料低額診療事業に受診した患者さんの歯の状態を数値で示しました。DMFT指数というものなんですけれども、これを全国の平均値と比較して調査の発表をしています。
 この無料低額診療事業というのは、医療費の負担がゼロあるいは非常に低額で受けられる。その対象となり得るのは生活保護と同じか同水準の所得の方、いわゆる本当に低所得の困窮されている方ですね。この青い数字がその無料低額診療事業を受診した患者さん。比較したのは、虫歯を治療した歯、虫歯だけど治療していない歯、それからもう喪失してしまった歯、この合計なんです。明らかに全国平均と大きな乖離があるんです。世代によっては十本の差があると、こういう数値が示されてきています。この数値が何を示しているのか。
 今日、もう一つ資料を後ろに付けました。同じく、全日本民医連が二〇〇九年に歯科酷書、酷というのは残酷の酷です、こういう報告をまとめています。その抜粋です。
 劣悪な労働条件で治療の時間もない、お金もない、そのままほぼ全ての歯がなくなってしまったという三十代、四十代の男性、それから十九本も虫歯があっても治療中断を繰り返している十代の女性など、経済的な理由での受診中断が口腔崩壊、もう虫歯とかという段階じゃないんです、口腔崩壊をもたらしていると、こういうふうに告発をしているんです。
 受診時定額負担というのは、これ、低所得者の方にも負担を求めています。そして、低所得の方にほどその負担は重くのしかかります。そうなればこうした健康格差を更に深刻化させることになると思うんですが、大臣、こうした調査はどう思われますか。

○国務大臣(小宮山洋子君) この受診時定額負担につきましては、先ほど辻副大臣から御説明したような財政の事情などから一体改革成案に盛り込まれて検討しているものですが、御指摘のように、やはり必要な受診ができなくなるようなことがないように、そのためにやはり低所得者への配慮ということは言って、定額の低減をするということも御提案をしているのですけれども、多くの方から、やはり病気の人が病気の人を助けるというのはおかしいじゃないかという御指摘もいただいておりますので、各方面の御意見を伺ってしっかりと検討していきたいと思っています。

○田村智子君 低所得の方だけではないんですね。全国保険医団体連合会が昨年行った歯科医療に関する一万人市民アンケート、一万人を超える方から回答を寄せていただいた。治療せず放置している歯があると答えたのは三六%、うち三割が費用が心配という理由を挙げておられます。
 歯の疾患というのは自然治癒はあり得ないんですね。放置をすればどんどん悪くなっていく。それは口の中だけでなくて全身の健康状態にまで影響を与えてしまう。であれば、早期に歯を治療していれば口腔崩壊は避けられるし、内部疾患避けられる。これ、医療費増大を抑えることができるはずなんです。やはり早期の治療を保障するために、子供の医療費を無料化にするとか経済的に困難な世帯への医療費の負担の軽減という、これが社会保障の私は改革だと思うんですよ。まあ、そうじゃないかと求めても、ここで答えることは難しいと思います、定額負担には党内でもいろんな御議論があるということが報道されていますのでね。
 私、受診時定額負担、せめてこれは断念すると、医療費の負担を更に増やすという政策は、これは受診抑制を必ず生むんですから、これは将来にわたって選択すべきではない、そう思うんですが、大臣、もう一度御見解をお聞かせください。

○国務大臣(小宮山洋子君) 今委員が御指摘のような問題点が提起されていることも十分承知をしておりますので、様々な御意見を伺いながらしっかりと検討をしていきたいと思っています。

○田村智子君 本当は断念するとまで明言をいただきたいところですけれども、是非その方向で進めていくことを強く要求したいと思います。
 関連して、歯科の診療報酬についても取り上げたいと思います。
 私、さきの臨時国会で過去二十五年間一度も改定されなかった歯科診療の項目を質問主意書でただしましたところ、答弁書を見て大変驚きました。五十を超えていました。四半世紀一度も改定されていないと。この二十五年間、平均賃金で見ても一・三四倍、ところが歯科医療については人件費はずっと据え置かれているというふうに言えると思うんですね。窓口負担の軽減と診療報酬のまともな改定が行われなければ歯科崩壊だと、こういう声さえ起こっているわけです。
 この場では訪問歯科診療について私も取り上げたいと思います。
 政府は、在宅医療をこれから重視すると、こういう方向を示しています。ところが、歯科の訪問診療については、先ほど質問もありましたけれども、診療報酬の支払に厳しい条件が付けられていて、これが普及を阻む要因になっていると思います。
 例えば、それを受けられる対象、常時寝たきりの患者さんだけと、しかも二十分以上診療行為をしなければ駄目なんだと、こういう条件が付されているんですね。在宅医療を必要とする方が全て二十四時間寝たきりだとは到底考えられませんし、またそういう状態の悪い方が二十分間治療を受け続けるというのも、口を開けていなさいというのも大変困難なことだと思うんですね。
 現場からは実態に即した条件の見直しを求める声が大変強いです。検討が必要ではないでしょうか。

○政府参考人(外口崇君) 歯科訪問診療料の算定要件につきましては、歯科訪問診療の実態等を踏まえて、中医協における議論を経て、これまでの診療報酬の改定において対象者の明確化や評価体系の見直しを行ってまいりました。
 なお、平成二十二年度の診療報酬改定においては、現場から算定要件が複雑であるといった御指摘等を踏まえて、評価体系を、どれほどの時間訪問診療を行ったか、対象患者が同一建物に居住するかどうかを基準として設定いたしました。去る十一月十一日に開催された中医協においても、在宅歯科医療の論点の一つとしてこの評価体系や対象者の要件についての議論を行っております。
 歯科訪問診療料の評価体系や対象者の要件を含めた在宅歯科医療の在り方については、引き続き中医協における議論を踏まえながら検討していきたいと考えております。
 それから、二十分の時間要件についてでございますが、これにつきましては、訪問先の種類に関係なく診療時間が二十分以上の場合に歯科訪問診療料の対象とするような改定をこれは二十二年度に行っております。これは、確かに現場の先生方から、これは短縮できないかとか、そういった御意見もいただいておりますが、基になったのは平成二十一年に実施した調査結果でございまして、この場合、自宅の場合患者の約八割が三十分以上、介護関連施設の場合患者の約八割が二十分以上と、こういう訪問診療に要する時間というデータがございました。
 在宅歯科医療については、更なる推進を図る必要があると考えております。一方で、適正な医療を提供する観点というのもございますので、実態や学会等の御意見も踏まえながら、中医協における御議論を経て検討してまいりたいと思います。

○国務大臣(小宮山洋子君) この点は今日の審議の中でもいろいろ御指摘をいただいています。中医協で今検討しているところですけれども、御指摘も受けて、しっかりと対応できるように検討していきたいと思います。

○田村智子君 最後に、介護報酬の改定についてお聞きをしたいと思います。
 先ほどの質問にもありましたけれども、来年四月の報酬改定に向けて、生活援助の基準時間六十分から四十五分への短縮というとんでもない案が提案をされています。私もホームページから取りまして見てみたんですよ。生活援助の行為ごとの組合せ時間なんという、こういうモデル図があるんですけれども、例えば準備に六分、洗濯十五分、掃除十五分で三十六分、こんなモデル図があるんです。これ、例えば、洗濯機回している間に掃除していたって、それだって三十分で洗濯機が全部回り終わって洗濯物を干せるなんということはないから、洗濯機回っているうちに洗濯物を取り出して干しなさいと求めているのと同じことなんですよ。こんなばかなことはないわけなんです。
 何でこんな変なものが示されるのかなと思ったら、どうやら、基になった調査というのに大変な疑義があるわけです。このモデルを示すような基になった調査、一体いつ、どこに対して、回答締切りいつということで求めたものか、簡潔に御回答ください。

○政府参考人(宮島俊彦君) お尋ねの調査でございますが、これは厚生労働省の老健局老人保健課で、四十四都道府県を通じまして訪問介護事業所、地域包括支援センターなどに対して、本年三月の訪問介護の提供内容やケアプランについて、本年五月に調査票を配付し調査を実施したものでございます。
 具体的には、訪問介護事業者がサービス提供記録を基に記載するということで、一か月間の訪問介護サービスの提供回数、掃除とか洗濯などの生活援助の行為ごとの所要時間、その実績を把握したということでございます。要支援一から要介護五までの訪問介護サービス利用者三千人に対し調査票を配付し、九二%の回答を得ているということでございます。

○田村智子君 ちょっと聞き取りにくかったんですけれども、三月に実施したサービスについて答えなさいということを五月十六日に都道府県に出しているんですよ。当然、そこから介護事業者の手元に届いたのはもっと遅いでしょうから、五月下旬とか六月初めに三月のことを思い出して、あなたは誰々さんに対してこういう作業を何分やりましたかって答えなさいと求めているんです。
 だけど、ホームヘルパーさんたちは例えば洗濯を何分やりましたなんという記録取っていないわけですよ。これこれこれこれのサービスを提供しました、トータル時間はこれだけですという記録しかないんです。それを、記録を思い起こして書きなさいって求めたもの。
 小宮山大臣、三月に、一か月半とか二か月前のことを、あなたはこの仕事を何分間掛けてやったかと答えられて、正確に答えられる、そう思われますか。大臣、いかがでしょう。大臣、どうぞ。

○国務大臣(小宮山洋子君) ただ、その以前にも同じような調査をしておりまして、その調査の結果は似たようなものだったというふうには聞いております。ただ、調査の方法が本当に適切であるかはまた後ほどチェックをしたいというふうに思っています。
 ただ、全国ホームヘルパー協議会からの意見書などでも、もっと短時間のものがあれば更にニーズは顕在化してくるというような御意見もあって今回このようにしたということなんですね。
 先ほどの御質問でもお答えをしたように、アセスメントとかケアマネジメントによって必要とあれば六十分ももちろんできるようにしていますので、選択肢が増えるということでもあるかというふうに思っています。いろいろなところで総合的な観点からこういう形を取ろうとしていますけれども、使い勝手が悪くならないように、そこはしっかりとフォローをしていきたいというふうに考えています。

○田村智子君 大体、時間を計測するタイムスタディーという、そういう調査だってあるんですよ。ところが、今回はそういう調査は全くやっていない。しかも、この調査というのは元々何のためにやった調査かというと、利用者の状態とか同居家族の状態と、どういうサービスを提供しているかということの調査であって、作業時間を計ることを目的とした調査でも何でもないんですよ。それで介護報酬の基になる生活援助の時間を四十五分を標準にするなんということを出されたら、これとんでもないことです。
 しかも、全国社会福祉協議会が二〇〇〇年に出しているその報告書を見ても、大体その生活援助というのは標準時間を出すことは困難だと。部屋の広さも違う、介護の状態も違う、それから買物に行くのだって、お店屋さんがどこにあるかというので全然掛かる時間は異なってくるわけですね。標準時間として示すことは困難だという指摘がされているわけです。
 また、介護事業経営実態調査、直近のものを見てみれば、平均の生活援助の時間はどうか。七十分だと出ているわけですよ。
 これは今、物すごく介護の関係者の皆さん、心配していらっしゃいます。この間ずっと介護報酬の改定でずっと生活援助の時間って切り縮められてきて、ヘルパーの皆さんは利用者さんと話すゆとりもない。コマネズミのようにくるくるくるくる仕事して、はいさようならと行かなくちゃいけない。これは利用者さんにとっても自分たちにとってもいいことは一つもないと切実な声を上げていらっしゃるんですね。
 少なくとも今のような記憶に基づく調査で標準時間を出すなんということは不適切だと、ここははっきりさせたいと思うんですけれども、もう一度だけ、大臣、お願いします。

○国務大臣(小宮山洋子君) 今の委員のような御指摘も踏まえまして、今、介護給付費分科会で検討しているので、その際には、調査の在り方ですとかそれから内容、それから関係者からの御要望、様々な御意見も伺いながらここの中で結論を出していくということだというふうに思っています。

○田村智子君 終わります。