日本共産党 田村智子
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【11.08.25】厚生労働委員会-子ども手当削減によって子どもの貧困、さらに悪化

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 子育て支援として現に支給されている子ども手当が、この法案によって年度途中で多くの世帯で子供一人当たり月三千円減額されることになります。子供にかかわる政策が公ではない場所で、民主、自民、公明の三党の合意で変更されるというのは私は納得がいきません。しかも、扶養控除は既に廃止をされており、来年からは住民税の扶養控除も廃止となります。これで手当が減額されれば、逆に負担増となる子育て世帯が多数生じてしまいます。この問題は、衆議院の厚生労働委員会でも厳しく指摘をされていました。
 加えて、私がこの委員会で問題にしたいのは低所得世帯への影響です。
 七月に発表された国民生活基礎調査では、初めて子供の貧困率の推移が明らかにされました。一九八五年の一〇・九%から、二〇〇九年には一五・七%へと大幅に上昇しています。しかも、いわゆる貧困ライン、実質値で一九九七年の百三十万円から百十二万円にまで大きく落ち込んでいます。六人に一人の子供がこの貧困ライン以下の生活を強いられているということです。にもかかわらず、この法案で三歳から中学生の子供への手当が減額をされる。これでは子供の貧困の更なる悪化につながるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(細川律夫君) 委員が御指摘のように、先月公表をされました国民生活基礎調査では、子供の貧困率が一五・七%、また子供がいる現役世帯の相対的貧困率は一四・六%、大変高い水準になっております。
 その背景にあるのは、やはり所得の低い非正規労働者として働いている親が増えているということが考えられまして、子供を取り巻く環境は大変厳しいものというふうに認識をいたしております。しかし、親の経済力やあるいは幼少期の育成環境によって、人生のスタートライン、その段階から大きな格差が生じて、世代を超えて格差が固定化するということがあってはならないというふうに考えております。
 今般の措置法案に盛り込まれております子ども手当につきましては、まさにそうした人生のスタートラインの段階から金銭面で確実な支援をしていくと、こういう仕組みであるというふうに考えておりますが、支給額につきましては、震災復旧復興のための財源の捻出とかいうようなこともありまして、ぎりぎりの判断だったというふうに考えております。
 政府といたしましては、子供の手当の支給等の現金給付と併せて保育サービスの拡充とかあるいはワーク・ライフ・バランス、それの実現とか、そういうことで子供支援に係る総合的な施策を推進をしてまいりたいと、このように考えております。

○田村智子君 現にこの法案で収入が減ってしまうわけですよ、低所得者の方も。
 これまで、一人親世帯に支給される児童扶養手当、これは政策的に減らされてきました。今年度は物価スライドでの減額も行われています。生活保護の世帯、こういう児童扶養手当を受け取っているような一人親の世帯、いずれも子ども手当の減額が直接収入減に結び付いて、これは少なくない影響を与えることになると思うんです。
 実は、私たちの日本共産党の機関紙であるしんぶん赤旗では、この間、一年以上を掛けて保育所とか児童養護施設とか学校などを取材して、子供の貧困の実態、これ連載をしてきました。事態は本当に想像以上の深刻さなんです。例えば、保育園でお弁当やバス代が用意できないからと保育園の行事に参加できない子供がいると。学校給食がない夏休みには通りがかりの大人に食べ物をちょうだいと男の子が声を掛ける。中学校で、ガスも電気も止められてお風呂にも入れない女の子の髪を先生が学校の更衣室のシャワーで洗ってあげると。こういう事例が幾つも幾つも全国で見られているんです。
 貧困率一五・七%、この数字の中に一体どのような子供の生活実態があるのかと、これ真剣に考えなければならないと思うんです。子ども手当の減額がこうした子供の貧困の解決から逆行してしまうという、こういう認識をお持ちではないのかどうか、もう一度お答えください。

○国務大臣(細川律夫君) 子ども手当につきましては、九月で今支給している子ども手当が終わるということで、次、十月からどうするかということについて、ここで民主党、自民党、公明党、この三党でぎりぎりの判断をしたと、こういうことでございます。
 今回、いろいろ協議の上の中で、東日本大震災、この復旧復興という大変国家的な大きな課題、これにも支出をしていかなければならないというようなことからこういうぎりぎりの判断にさせていただいたというふうに承知をいたしております。もちろん、委員が言われるように子供に対しての支援というのはしっかりやっていかなければということで、先ほど申し上げましたように、総合的な施策をしっかり推進をしてまいりたいと、このように考えております。

○田村智子君 これは低所得者の世帯にも収入が減ってしまうと、これお認めになりますよね。これをやったら多くの世帯でそういうことが起こるとお認めにならないですか。これ、小宮山副大臣、いかがですか。

○副大臣(小宮山洋子君) 今回、年少扶養控除の廃止ということが先行しているために、一部の御家庭には御迷惑をお掛けすることになるのは大変申し訳ないというふうに思っています。そこのところの赤になる部分をなるべく減らすようにということも考えながら、三党でぎりぎりの交渉をしていただいた結果が今回だと思っています。
 そこについては、また今後しっかりと財源も確保しながら少しでも上積みができるようにというふうに考えますが、大臣からもお答えをしたように、現金給付だけではなくて、保育サービスを含めた全体としてしっかりと全てのお子さんを支援していけるように最大限努めてまいりたいと思っております。

○田村智子君 扶養控除の廃止によって減額になるという世帯も確かにあるんですけど、私、今問題にしているのは、そういう税金の非課税世帯ですよね、本当にもう一人三千円、月、減らされるだけでも影響を受けている家庭が現にあるという、これがどこまで認識されているのか、本当に腹立たしい限りなんです。
 それでは、子ども手当どうしていくのかというのは、これ、もう一年、二年掛けて政府の中では検討されてきたと思います。また、三党の合意でこういうのが出てきた。その検討の過程で子供の貧困についてまともに検討がされたのかどうか、お聞きをいたします。

○大臣政務官(小林正夫君) 委員御指摘のとおり、平成二十一年の子供の相対的貧困率は一五・七%、これはOECD三十か国中の十九位と、大変厳しいということは同じ認識を持っております。
 昨年一月末に閣議決定された子ども・子育てビジョンにおいて、子供の貧困を防ぐことを基本的な考えとして掲げるとともに、具体的な施策として、子供の貧困率について継続的に調査を行いその状況を把握するなど必要な対応を進めていく、このようにしておりますので、今後とも子供の貧困の実態を把握して必要な対策を行っていきたい、このように考えております。

○田村智子君 聞いているのはそういうことじゃないんですよ。もちろん貧困率下げる目標を持っていかなきゃいけないんですけど、現に手当を減らすわけですよ。その減らすという政策決定を行う過程で子供の貧困という問題について検討したのかどうか、これをお聞きしているんです。

○副大臣(小宮山洋子君) これは三党の政策責任者で御検討をされたので、そこの詳細な内容については私は承知をしておりませんが、貧困について具体的に検討されたというふうには聞いておりません。
 厚生労働省といたしましては、しっかりと、先ほど申し上げたように、全体的な、総合的な政策の中でそうした子供たちのことも手当てをしていきたいというふうに考えております。

○田村智子君 これは三党にももちろん大きな責任あります。でも、同時に、政府はやっぱりこの子ども手当については単年度の措置でやってきたわけですよね。ということは、どうしていくのかという検討がやられていなければおかしいんです。この子供の貧困で調査もやっていると、下げていかなきゃいけないと、こういう立場であるならば、やっぱり真面目に子供の貧困とこの手当の在り方ということを検討しなければならないと思います。
 先ほど、子供の貧困の問題について全体として下げていく方向だということをやっていきたいという御答弁でしたけれども、では、この貧困率を具体にいつまでにこのぐらい下げていこうと、こういうような目標というのを政府は検討しているのかどうか、これも確認をしたいと思います。

○大臣政務官(小林正夫君) 貧困率の減少に関する具体的な指標を定めることについては、この指標が景気の動向、特に賃金だとか雇用の状況、こういうことの影響を強く受ける、そういうことから政策の影響の検証が難しいことなどから、これは慎重な検討が必要であると考えております。
 ただし、貧困や格差の実態を総合的、継続的に把握することは必要である、このように考えておりますので、厚生労働省が五月十二日に公表した社会保障制度改革の方向性と具体策等において指標の開発など貧困格差対策として今後取り組むべき事項について示しましたので、更に研究を進めてまいりたい、このように思います。

○田村智子君 私は、子供の貧困については、これは絶対政府は目標も持って政策を進めていくことが必要だということを指摘しておきたいと思います。
 実際にこの貧困問題の対策という点では、私、もう一点指摘したいのは、保育所、保育の制度、これが現に大切な役割を果たしていると思うんですね。貧困世帯の子供たちを社会的に排除しない、そういう役割果たしています。保育士さんが子供の様子から家庭の困窮状態をつかんで行政の支援につないだり、あるいは深夜まで働く親が生活に疲れて育児放棄に陥っているんじゃないか、言わば児童虐待を未然に防ぐなど、こういう保育園が果たしてきている役割、幾つも事例が報告をされています。
 しかし、一方で、この保育所での保育料、住民税非課税世帯であっても無料にはなりません。認可保育所の国庫負担金算定の保育料、非課税世帯でも三歳未満で九千円、三歳児以上で六千円です。滞納も年々増加をしています。
 お聞きをしたいのは、しかし、こういう保育料の滞納があったとしても、現行の保育制度の下では、保育に欠ける状態にある子供を保育所から退所させてはならないと、こういう措置がとられていると思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(高井康行君) お答え申し上げます。
 現行制度におきまして、保育料の額につきましては、家計に与える影響を考慮して、所得に応じて市町村が定め徴収することとされておるところでございます。児童福祉法上は、市町村は、保護者が就労、疾病等により児童を保育することができない場合、児童が保育に欠ける場合でございますけれども、その児童を保育しなければならないとされているところでございます。
 したがいまして、児童が保育に欠ける場合であれば、仮に保護者が本来支払うべき保育料を滞納していたとしても当該児童を強制的に退所させることはできないと考えておりますけれども、市町村は滞納された保育料を強制徴収することは可能であるというふうに考えております。

○田村智子君 保育料の滞納は子供の責任ではないと、保育に欠ける状態であれば保育所から退所させないと、こういう制度にしっかりなっているんですね。
 それでは、今検討されている子ども・子育て新システムでどうなるのかと。現行の児童福祉法では自治体が保育の実施義務を負っていて、認可保育所への入所、こういうこともさせています。新システムでは、保護者と保育所との直接契約に変えられようとしています。そうなれば、保育料の滞納があった場合、保育所が保護者への督促を行うことになりますし、滞納が続けばこれは保育所の運営にかかわりますから契約解除、退所と、こういうこともできるようになるのではないかと考えるんですが、いかがでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) 子ども・子育て新システムの中間取りまとめの中で、利用者負担につきましては、施設と利用者の適切な利用関係の確保に資するよう、低所得者に一定の配慮を行いつつ、利用者に一定の負担を求めることとし、その具体的な在り方については今後検討するとされております。
 御指摘のように、貧困世帯あるいは低所得の世帯で負担の滞納があった場合の取扱いも含めまして、子供たちが困ることのないようにしっかりと配慮をしながら、利用者負担の具体的な在り方につきまして関係者の御意見も伺いながら更に検討をしていきたいと考えています。

○田村智子君 既にこの新システムの中でも位置付けられようとしている認定こども園、ここでは保育料滞納による退所、厚労省はこれを認めますよという通知を出していますよね。それから、児童・障害児入所施設、ここも利用料の滞納を理由とする契約解除や退所、これを認めるようになっています。新システムでは認定こども園で認めているようなことは認めないんだと、こういうふうに言い切れるんでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) またいろいろな面から関係者と御相談をして検討をしなければいけない課題がたくさん新システムにはまだ残されておりまして、今御指摘の点もその中に入ると思いますが、とにかく子供を、全ての子供を支援するということを目的に今政権としてはやっておりますので、困る子供が出てこないようにしっかりと対応したいというふうに思います。

○田村智子君 そう言いながら保育所の入所のシステムを本当に変えてしまうわけですね。自治体が直接実施の義務を負うというのを外してしまって保育所と親との契約にしてしまう、保護者との契約にしてしまう、民間と民間の契約になってしまうんですよ。ですから危惧が生まれてくるわけです。
 この危惧は想像だけのものではないんですね。実際、障害児の入所施設は、保育所と同じ児童福祉法に基づく施設ですけれども、自立支援法によって契約制度が導入されました。これによって子供については措置入所か契約による入所か都道府県が判断をすることになりました。厚生労働省は、利用料の滞納だけをもって措置とはしないと、契約のままでいいんだと、また滞納があった場合に契約解除もできると、こういう指針も示しました。現に何が起きたか。保護者が一度も面会に来ない、育児放棄が疑われる、こういう施設であっても、これが措置にならずに利用料がどんどんどんどん滞納が膨らんでいく、これは結局施設の持ち出しになってしまう。施設の側としては、もうこれは契約解除するしかないんだろうかと、子供を取るか、お金を取るか、究極の選択を迫られると、こうした事態が自立支援法が施行されたときにもう急速に広がりました。今もこうした事態が起きています。
 入所の施設でさえこうなんです。ましてや通所の施設です。毎日、保護者と保育士が顔を合わせて、滞納があれば、お母さん、納めてねって言われ続ける、居心地が悪くて自主退所をしてしまうと、こういう保護者も出てくるかもしれない。それが何を引き起こすかなんです。保育料の滞納というのは、子供に何にも責任ありません。経済的に追い詰められた状態で保育所からも退所を余儀なくされる、精神的にも身体的にも疲れ果てて、これがネグレストを生んでしまったり子供への虐待を生んでしまったりと、こんな事態はあらゆる努力で防がなければならないと、こういうふうに思うんですね。
 もう一度お聞きしますが、新システムは低所得世帯の子供を保育制度から絶対に排除することはないと、これ約束できるんでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) この新システムの中のこども園を始め、お子さんをお預かりをして全ての子供に質の高い学校教育、保育をという理念で今やろうとしておりますので、先ほどおっしゃったような虐待のケースとか、子供が本当に困った状況に置かれている場合には措置をすることができるということも決めておりますので、そうした子供、本当に困った状態に置かれて放置される子供が出ないように最大限努力をしていきたいというふうに思っております。

○田村智子君 虐待が起きてからでは遅いんですね。経済的な理由を抱えている親、虐待なんかしていない方いっぱいいますよ。だけど、追い詰められて保育所からも退所になれば虐待事例が起こり得るでしょうと。だから、絶対排除しない今のようなシステムがこれは堅持されなければならない。ところが、いまだにそこが検討中だといって私たちの下に明らかにされない。私、これは本当に重大な問題だと思います。
 しかも、じゃ措置します、あるいは退所させませんというふうになったときに、では滞納になった保育料、徴収不能になる分も出てくると思います。これは一体どこが負担するのか。保育所が退所をさせずに、そしてその保育料の滞納分も負担するなんということになれば、経済的困難を抱えるそういう家庭を支援しようとする保育所ほどその負担は重くなり追い詰められてしまうと、こういう事態も起こるんじゃないでしょうか。一体誰が最終的に徴収不能分を負担するのか、お答えください。

○副大臣(小宮山洋子君) 現行制度では、滞納されました保育料は市町村が強制徴収することが可能というふうになっています。そこの保育所がかぶることのないように検討を進めていきたいというふうに思います。

○委員長(津田弥太郎君) 時間です。

○田村智子君 終わりますが、本当に子供の貧困の問題がこれだけ重大なときに、こうやって保育所の制度も貧困の問題がまともに検討をされずに変えられようとしている、子ども手当が減額をされようとしている、こういうやり方は本当に認められない。子供にかかわる問題は、十分な審議やって貧困問題の解決をしていくことを強く求めて、質問を終わります。

2011年度子ども手当特別措置法への反対討論

○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法案に反対の討論を行います。
 子育て支援の施策として現に支給されている子ども手当が、本法律案によって年度途中に三歳以上の子供一人当たり月三千円減額されることとなります。子ども手当創設を理由として扶養控除は廃止されており、所得税増税との差引きで手取り額は児童手当のときと比較しても減額となる世帯が生じます。さらに、来年度以降は住民税も増税となり、子育て世帯の多数が収入減となってしまいます。これでは、子育て支援どころか、少子化克服にも冷や水を浴びせるものです。また、政府の調査でも、子供の貧困率は上昇し続けていることが明らかとなりました。低所得者層の収入の改善が切迫して求められているときに、子ども手当を減額し低所得世帯の収入を減らすことは、子供の貧困解決にも逆行するものです。
 我が党は、子育て支援について、保育所、学童保育所の大幅な増設などの現物給付と現金給付のバランスを取りながら総合的に進めるべきと要求し、この間の国会質疑では、政府も現金給付と現物給付は車の両輪だと認めてきました。ところが、本法案は、現物給付拡充の議論も行わないまま現金給付の削減だけを行うもので、子育て支援施策の後退と言わなければなりません。
 現物給付について言えば、子ども・子育て新システムの検討では、保育の市場化、更なる規制緩和が公然と掲げられており、保育の質の低下が危惧されます。本日の質疑では、契約制度の導入により貧困世帯の子供を保育制度から排除しかねないという問題も明らかになりました。このような新システムは進めるべきではありません。
 経済的な理由から保育料滞納は増えており、低所得世帯の保育料軽減策が求められています。ところが、本法案では手当から自治体が直接徴収できることになり、これでは家庭状況を行政が把握し必要な支援策を講じる機会を失わせることになります。また、本法案によって手当の支給には新たな申請が必要となり、地方自治体の負担、多くの混乱も推測されます。被災地、被災者においてはなおさらです。
 最後に、子供にかかわる施策が政党間の取引の材料のように扱われ、結果的に子育て支援策の後退を招くなど許されないことであり、真剣な議論を尽くして子供支援、子育て支援策を前進させることを強く求めて、討論を終わります。