日本共産党 田村智子
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【11.05.10】厚生労働委員会――原発作業員の被ばく量把握を急ぐべき

事故対応と通常時、あわせた被ばく量把握が必要

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 東京電力福島第一原発では建屋の中に入っての作業も始まりました。放射線量が相当に高い場所もあるとの報道もありますので、作業に当たっている方々の安全と健康管理に万全を尽くさなければならないと思います。
 厚生労働省は三月十五日に、電離放射線障害防止規則の特例措置を発令して、緊急作業時の被曝線量の上限を百ミリシーベルトから二百五十ミリシーベルトに引き上げています。通常の被曝の上限は、五年間で百、一年間では五十ミリシーベルトですから、相当な緩和を行ったことになります。
 この福島第一原発での作業は過酷で、労働者を入れ替えながらの作業も行われているとお聞きします。そうすると、短期間に事故現場とほかの原発とで働くという、そういう労働者の被曝線量をどう管理していくのかということが問われてくると思います。
 例えば、緊急作業で百ミリシーベルトを超えるような被曝をした労働者が同じ年度内に他の原発の放射線管理区域で働くよう事業者が指示をする、これは法令上認められるのかどうか、確認をしたいと思います。

○(労働基準局安全衛生部長 平野良雄君) お答え申し上げます。
 電離放射線障害防止規則の第四条におきましては、管理区域内において放射線業務従事者が受ける線量について、先生御指摘のように、五年間で百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならないというふうになっております。また、その電離則第七条におきましては、緊急作業を行うときは、第四条の規定にかかわらず、これらの規定に定める限度を超えて放射線を受けさせることができるというふうにされております。
 このため、緊急作業に従事して百ミリシーベルトを超えて被曝した労働者につきましては、他の放射線業務に従事させた場合につきましては、電離則には明示的な規定はなく、法違反には当たらないというふうに考えております。
 しかしながら、緊急作業に従事した労働者の健康障害を防止する観点からは、緊急作業を通常作業と別枠として評価することなくやはり一括として評価することが望ましい、そういうことから、今般の緊急作業による被曝線量が百ミリシーベルトを超えた労働者につきましては、今回の緊急作業に従事した期間を含む五年間の残り期間はそれ以上被曝させないことを指導していくこととしております。

○田村智子君 五年間で百ミリシーベルトを超えないように指導していくと。この指導は大切だと思うんですが、例えば事業者がその指導に従わなかった場合には罰則規定というのはどうなるんでしょうか。

○政府参考人(平野良雄君) 先ほど申し上げましたように、そういう場合につきましては、法違反には当たらないというふうに考えております。

○田村智子君 それでは、改めてお聞きしますが、通常、年間五十ミリシーベルト、五年間で百ミリシーベルトを超えて作業に当たらせた場合、この場合には罰則はどうなっていますか。

○政府参考人(平野良雄君) 電離放射線障害防止規則の第四条で、いわゆる通常の作業につきましては、放射線被曝の線量の上限を五年間百ミリシーベルト、一年間五十ミリシーベルトと定めてございます。これに違反した場合には、労働安全衛生法の第二十二条に違反することとなりまして、同法第百十九条に基づきまして、事業者は六か月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するというふうにされております。

○田村智子君 これ、緊急時で二百五十ミリを超える被曝をさせた場合にも、同じように懲役六か月、罰金で五十万円以下の罰金と、これ罰則あるんです。
 ところが、今回、緊急時の被曝と通常時の被曝線量というのが別建てになってしまっていて、これ極端な例を挙げれば、緊急時で二百五十近い被曝をした方が通常作業で同じ年度でもう五十ミリシーベルト被曝しても法令上の違反に当たらないということになってしまうんですね。
 厚生労働省は、さすがに、四月二十八日に労働基準局長の名の通知で、五年間百ミリシーベルトを超えないようにと、既に緊急時で百ミリを超えた方はその後通算で五年間は他の被曝するような作業に当たらせないように指導すると、こういう通知出しています。でも、この通知での指導の根拠となる法律がないということなんですよ。事業者に責任問えなくなっちゃうんですね。
 これ私、大臣、副大臣、どちらでもいいんですけれども、このままでいいのかという問題起きてくると思います。是非これ、罰則を含めて厳しく規制ができるようにすべきではないのかどうか検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○副大臣(大塚耕平君) まず基本的な認識の部分で少し共有をさせていただきたいんですが、今委員の方から、二百五十ミリに今回緊急作業で緩めたものに該当する方が、例えば二百五十近くまで作業をしてその後、平時に戻られて更に五十別枠でいいことになっているというふうにおっしゃいましたけれども、そういうふうにはなっていないというふうに認識をしております。
 二百五十が緊急時、これはやむを得ず、原発事故を収束していただくためにやむを得ずそういう数字になっておりますが、仮に百五十で、その方が百五十で平時に戻られた場合には、もう既に百を超えているわけでありますので、五年間は作業ができないということであります。
 罰則を設けるべきではないかという御質問でございますが、今申し上げましたようなルールに基づいてしっかり対応をさせるべく厳格な指導を行ってまいりたいというふうに思っております。

○田村智子君 ちょっと今、答弁ずれていたと思うんですね。法令上はそういう規定になっていないとお答えがあったと思うんですけど、どうですか。

○副大臣(大塚耕平君) ずれていないと思いますので、もし御確認が必要であればもう一度担当から御説明をさせます。

○政府参考人(平野良雄君) 放射線の緊急作業と通常の作業の評価に関しまして、緊急作業を通常作業と別枠として評価することなく一括して評価することが望ましいことから、今般の緊急作業による被曝線量が百ミリシーベルトを超えた労働者については、今回の緊急作業に従事した期間を含む五年間の残りの期間はそれ以上被曝させないように強く指導していくこととしているものでございます。

○田村智子君 ここは是非、大臣、副大臣、よく聞いてほしいんですけど、望ましいんですよ、指導するなんですよ。法令上はそういう仕組みになっていないんですよ。だから法令上も、だから緊急時に対応する仕組みになっていなかったんですよ、率直に言えば。これ是非検討していただきたいということを重ねて要望したいと思います。

作業員の内部被ばくの把握に重大な遅れ

 これ、架空の話じゃないんです。実際、事故対応に当たっている労働者は、例えば東京電力だけでなく、関電工だけでもなく、三次、四次、五次請けの労働者います。相当数います。非正規労働者の募集も行われています。だから、いろんなところで働いている方がいるわけですね。
 これ、改めて確認しますけれども、現在、原発事故対応の作業をしている作業員、東電社員とその他の労働者、それぞれ何人になりますか。

○(経済産業大臣官房審議官 中西宏典君) 今御質問のございました、これ福島第一原子力発電所で事故対応という作業を行っている職員の数でございます。トータルが、これ五月八日の数字でございます、千五百四十一名、そのうち東京電力の社員の方が三百七十八名、協力企業の方が千百六十三名というふうに認識してございます。

○田村智子君 三分の二を超える方々が東京電力の社員ではないわけですね。そういう方々がいろんなところで仕事をされる、そのときに被曝線量を全体としてどうカウントしていくのか、これは五年間掛けてつかんでいかなきゃいけない問題なんです。五年間掛けて指導していかなきゃいけないんです。だから、法的根拠をやはり持つべきだと、このことをしっかり認識をしていただきたいと思います。
 そして、この方々、今、ホール・ボディー・カウンターで内部被曝まで測定したという方は何人になるのか、また、積算被曝線量が百ミリ超えた方、また五十ミリシーベルト以上百未満の方、それぞれ何人か、確認したいと思います。

○政府参考人(中西宏典君) 御質問でございます、東京電力の方に最新の状況を確認いたしました。
 実は、二か所で現在ホール・ボディー・カウンターでの測定を行ってございます。一つ目の小名浜のコールセンターというところでは、三月二十四日から四月の二十六日まで五百二十一名。これは福島第二原子力発電所、こちらの方でも福島第一原子力発電所での作業をやっている方が測られに来られます。四月十一日から五月四日までで五百二十二名。トータルで千四十三名の方がこのホール・ボディー・カウンターで内部被曝の測定をいたしてございます。

○田村智子君 今、二か所ということだったんですけれども、小名浜に一台仮置きのものがあると。今、福島第一の中では使えなくなっているということで、これは、皆さん本当に内部被曝まで確認していくというので、これで足りているのかどうかというのも今後確認していかなければならないと思います。
 この内部被曝というのは、通常時でも三か月に一回は必ずこれ測定をしなければならないと電離則で定めています。今回、緊急時だということで二百五十まで上限引き上げました。では、それに基づいてやっぱり内部被曝のこの測定のルールということも何らか検討が必要じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) この内部被曝の測定につきましては、今おっしゃったように、法令上は三か月に一回ですが、厚生労働省といたしましては、今回は緊急事態であるということで、内部被曝のおそれの高い方に対する内部被曝の測定を速やかに行うように指導をいたしました。それを受けて、東京電力は内部被曝の測定頻度を一か月に一回に高めるよう管理することとしたというふうに承知をしております。
 引き続き適切に内部被曝の線量の管理が行われるように指導をしていきたいと思っています。

○田村智子君 是非、東電任せにせずに、電離則で上限を引き上げたのは厚生労働省ですから、まずしっかり健康管理ができるようにルール作りをやっていただきたいというふうに思います。
 私、大変危惧しているのは、先ほどお聞きしても、通常の被曝の年間の上限である五十ミリシーベルトを超えた方がこれ百五十人以上いらっしゃるんですよ、二百を超えた方二人含めると、いらっしゃるんです。で、働いている方の圧倒的は東電の社員ではないんです。いろんな全国から来ている方々がいらっしゃるんですね。そういう下請の方の、その方々までの健康管理というのをこれから本当にやっていかなければならないわけですね。この下請の人含めての健康の管理の責任というのは、第一義的にはどこになるんでしょうか。

○副大臣(大塚耕平君) 第一義的にはもちろん東京電力になりますが、しかし今回のこの原子力発電所事故の対応は政府、東京電力一体となって行っておりますので、第一義的というふうにあえて申し上げずに、政府も責任を持って対応していくべきことだと考えております。

○田村智子君 東電にしっかり責任を持たせることと同時に、やっぱり今のこの地震対応での政府のチームというのは、これ事故が収束したら解散になるでしょう。そうしたら、五年間にわたってその健康管理、もっと長く健康管理を行っていくということを考えれば、これは政府の中にしっかりとした部署も持って対応していただきたいというふうに思います。
 特に、私がこの下請の方を取り上げたのは、お配りした資料も見ていただきたいんですけれども、これ通常時であっても電力会社の正社員よりもその他の作業員の方の方が圧倒的に被曝線量が多いんですね。お配りしたのは二〇〇九年度の原子力発電所での被曝線量の調査なんですが、五ミリシーベルトを超える被曝は、電力会社社員は〇・六%、五十五人、その他、つまり関連会社、下請の労働者は六・四%、約五千人に上ります。この関連会社、下請の方の最大被曝量は、通常の作業であっても十九・五ミリシーベルトということになるわけですね。この下請の皆さんの健康管理ということに本当に徹底をしていただきたいと思います。
 私も、この質問準備しながら、この下請の皆さんというのは本当に様々な複雑な問題を含んでいるなと胸が痛むような思いでした。例えば、被曝線量が百ミリシーベルト超えたと、で、厚生労働省が指導して他の原発でその後何年間か働けないというふうにすると。じゃ、仕事がないからといって二百五十ミリシーベルトまで事故対応で働かざるを得ないのか。仕事を選ぶのか健康管理を選ぶのかと、これ、てんびんに掛けるような事態に追い込まれかねないんです。
 細川大臣、以前の委員会の中で他の議員の御質問にお答えになって、そういう皆さんが仕事を失うことないように、また健康管理についても責任持ちたいというふうにおっしゃっていましたけれども、これ決意では済まされないんです。健康と仕事をてんびんに掛けることないと、健康管理も責任持つし仕事の確保も責任持つと、このための具体的な手だて取っていくと、これ是非約束していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(細川律夫君) 田村委員の言われるとおり、この原発で働いておられる方の放射線の管理、それから健康管理というのはこれは大変大事だというふうに思っておりまして、それは、この仕事を離れた後もしっかりそれは管理をしていかなければというふうに思っております。
 したがって、私どもとしては、この原発の作業をされたそういう人たちについては、それぞれ個人個人のデータベースを作りまして、そしてこの作業から離れた後も管理をしていくようなそういう体制をつくりたいというふうに考えております。

○田村智子君 終わります。