コラム
【13.10.23】株式会社が公立学校を運営?
大阪府・市だけが要求する「特区」
10月18日、国家戦略特区の検討方針が発表されました。
全閣僚がメンバーの日本経済再生本部の決定です。
雇用「特区」は、当初のシナリオ通りではなかったことは明らか。
労働基準法や労働契約法の重要な条項を、特定の地域で適用除外にするーーこれは国民世論にも押されて断念。しかし、総理のもとに置かれた産業競争力会議で議論されていた、このこと自体があまりに異常です。
外資系企業に、解雇に関わる判例などを知らせるために、新しいセンターをつくる。(労働行政機関と別につくる、そのこころは?)
労働者の申し出によって無期雇用に転換しなければならない、この要件である「有期雇用契約5年超」を「10年超」にする。
シナリオは書き換えられても最悪です。
こうした異常さ異様さは、教育の分野も同じです。
以下、日本経済再生本部が確認した、「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」より、「3.教育」の抜粋です。
「公立学校運営の民間への開放(公設民営学校の設置)」
特区において、公立学校運営の民間開放(民間委託方式による学校の公設民営等)を可能とすることとし、関係地方公共団体との協議状況を踏まえつつ、特区関連法案の施行後一年以内を目途として検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
(抜粋終わり)
文部科学省の担当官を呼んで、説明を聞きました。
Q民間とは?
A企業、株式会社のこと。
Q今でも私立学校があるのに、なぜ学校法人ではなく、企業なのか?
Aグローバル人材の育成など、新しい時代に対応した教育を期待する、という主旨。
Qでは学習指導要領にもとづかないということか?
A公立学校であり、学習指導要領にもとづくことになる。
Q新しい時代に対応した、というのならば、学習指導要領を超えた教育を行う、研究指定校で良いのでは?
Aそういう考え方もあるかと。
Q公立学校ということは、予算措置も公立と同じなのか?
A同じになる。
Q民間の労働者に、公務員の給与のための国費をつかうことになる。憲法との関係など検討したのか。
A問題は多々あると認識している。
Q入学者選抜を行うのか?
A他の公立学校と同じ扱いになるので、小中学校であれば学区の子どもが入学することになる。
Q教育特区に手をあげているのは?
A大阪府、大阪市だけ。企業からは、栄光ゼミナールと通信制教育をやっているルネサンス・アカデミー。
企業は大阪でやりたいと言っているわけではなく、別個に出てきた要望。
大阪府・ 市の案もまだよくわからないところがあるので、要望を聞きながらが、具体化が可能かも含めて検討する。
「それは、公立学校から今の先生たちを追い出したいだけじゃないの?」
説明を受けて、こう言わずにはいられませんでした。
橋下大阪市長が、市の職員、公立学校の教員にどんな姿勢で臨んできたかを考えれば、こう考えざるをえません。
株式会社の教育への参入は、構造改革特区ですでに行われています。
学習塾、予備校などが主に参入していますが、通信制が多数あるなど、経費を節約した運営が多々みられます。
経営難から、学生に不利益を与えた事例は社会的な問題となりました。
資格取得の予備校が設立したLEC東京リーガルマインド大学。2004年開設で全国14カ所にキャンパスを展開。しかし、専任教員の大半が名前だけ、授業はビデオ視聴など、問題を何度も指摘される事態に。2010年度学部学生の募集停止、今年3月末日で廃止。現在は、会計士養成の大学院大学のみ。
経営コンサルティング会社が2006年に設立したLCA大学院大学は、2009年度募集停止、2010年度末廃止。
これらの総括もしないで、株式会社に公立学校をまかせるのか。
国費をいれるので経営は安定するとでもいうのでしょうか。
その費用がどのように使われるか、配当金にまわしてよいのか、委託年限を決めるのか、事故などへの対応は誰がするのか、教育内容はどう変わるのか、入学を希望しない学区内の子どもはどうするのか…
少し考えただけでも???と幾つもの疑問がうかびます。
そもそも株式会社にとって、利益をあげるという経済活動が基本です。
株主の利益を損ねないことも、第一条件になるでしょう。
なぜ公立学校を株式会社に委ねるのか、その理由が厳格にしめされなければ、検討にも値しないはずです。
付け焼き刃の要求で、特区法案に「検討する」ということを書き込むというのです。
子どもたちの学校生活は、やり直しがききません。
実験のように公設民営に踏み切ることがないよう、まずは、この動きを急速に知らせなければ。