国会会議録

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東京五輪 大開発への利用懸念 参院文科・内閣連合審 田村智子氏ただす

 日本共産党の田村智子参院議員は21日、文教科学・内閣委員会連合審査会で2020年東京五輪・パラリンピック特措法案について質問しました。法案は専任の五輪担当相を置き、首相を本部長に据えた全閣僚からなる推進本部を設置するとともに大会準備運営の基本方針を策定するもの。

 田村議員は東京五輪が大規模開発に利用される懸念を表明。「競技場のアクセス道路でない外環道を五輪のインフラ整備として国の基本方針に盛り込むのか」とただしました。これに対して下村博文五輪担当相は、「法案成立後に検討する」としか答えませんでした。

 田村議員は、1メートル1億円といわれてきた外環道の費用が、地下水対策でさらに膨れ上がり、他の地域の事業へ悪影響がでると指摘。「五輪と関係ない開発を都と一緒に進めることになる」と国のあいまいな態度を批判しました。

 また、田村議員は都が選手村の建設を民間の開発業者に任せ、大会後に50階の超高層棟を増築してマンションとして販売する計画を紹介。いまでも人口急増にインフラ整備が追いつかない地元では、自民党都議からも「こんなものをレガシー(遺産)というべきじゃない」との批判が上がっています。田村議員はこれらを示して、「五輪関連の事業で東京へ人やものが集中して、被災地復興の足を引っ張るようなことがあってはならない」とただしました。

 菅義偉官房長官は「地方の活性化につながり、被災地が歓迎できるような五輪にしていきたい」と答えました。

 

【 議事録 】

 

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。

 オリンピック・パラリンピックに向けては、既に関係閣僚会議が行われ、各省庁が必要な施策を進め、連絡調整も行われています。スポーツ庁設置で体制は更に強化をされます。にもかかわらず、今から担当大臣を増やし、全閣僚による推進本部の設置がなぜ必要なのか、大変私は疑問に思っています。オリンピックを名目とした都市再開発、大型公共事業、投資などが国家プロジェクトとして推進されるということを危惧いたします。

 まず、官房長官にお聞きいたします。

 被災地の復興あるいは地方創生、これなくして東京オリンピックの成功はないというのが安倍内閣の立場です。では、オリンピックのためとされる事業によって人、物、金が東京に集中する東京一極集中が更に進むようなことがあってはならないと考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(菅義偉君) 東京オリンピック・パラリンピック、まさにこの東京で開催をされるわけですけれども、しかし、これは日本全国の祭典として参画をできるように、そういうことにすることが、これは政府の大きな役割だというふうに思っています。当然、被災地を含めて全国津々浦々まででありますけれども、内閣としては、現在、地方創生を始め地方の活性化につながることを今全力で取り組んでおりますので、この東京オリンピック・パラリンピックもそうした地方活性化につながるように、そして被災地の皆さんにもこのオリンピックが歓迎をされることができるように、全力で取り組んでいきたいと思います。

○田村智子君 それはオリンピックの期間中だけでは駄目だと思うんですね。オリンピックやった結果として東京一極集中が進んでしまうようなことはあってはならないというふうに私は思いますし、安倍内閣もそういう立場だと思います。

 具体的にお聞きしたいんです。

 東京都の選手村のプラン、これ、資料配付いたしました。東京湾に突き出た埋立地である晴海地区に、一万七千人分の宿舎が建設されます。ロンドンの選手村は、オリンピック後、半分を公営住宅とするという計画が当初作られました。財政上の理由でこれは変更されましたが、低所得層の住宅供給を含む賃貸、分譲の住宅街となっています。長野オリンピックの選手村は、市営住宅として活用されています。では、東京オリンピック、どうか。この選手村は、土地整備や道路などの工事は東京が行うが、建物は民間ディベロッパーが建設をする。大会後は分譲などで資金を回収する計画で、しかもオリンピックの後に超高層ビル、タワーを二棟建設し、合わせて約六千戸の巨大マンション開発を行うという計画が示されたわけです。

 都議会で、晴海の地元である中央区選出の自民党都議が質問に立ち、次のように発言しています。単なる高級超高層マンションによって収益を得ようとするならば、それは間違い、そういう声を大きく聞きます、こんなものをレガシーだなんて言うべきじゃない、マンションは十分だ、自民党都議の発言です、と発言をされたわけです。

 開催都市と開催国に良き遺産、レガシーを残す、これがオリンピック憲章に明記されたオリンピックレガシーの考え方です。

 官房長官に確認をいたします。設置される推進本部、当然オリンピック憲章を尊重することになると思いますが、いかがでしょうか。あわせて、自民党都議が問題提起をしているように、オリンピックによって超高層の高級マンションで新たな町をつくる、これが東京オリンピックのレガシーと呼べるのかどうか、官房長官の見解をお聞きいたします。

○国務大臣(菅義偉君) この選手村の大会関連施設の終わった後の利用について、またレガシーの存在の在り方については、東京都で検討されていくものだというふうに承知をしています。

○田村智子君 推進本部は、当然、オリンピック憲章にのっとってこのレガシーを残すということを尊重すると思うんですが、その点確認したいんですが、いかがですか。

○国務大臣(下村博文君) それは私の方の担当になると思いますが、当然そのように進めてまいりたいと思います。

○田村智子君 ところが、現実には、こういう計画も東京がお決めになることという立場をお取りになると。

 中央区は、こういう選手村で造った建物は、賃貸、分譲、あるいは在宅ワークのSOHOなど、多様な住宅あるいは宿泊施設としての活用を要望しています。また、選手村で使用するグラウンドなどを潰してタワーや商業ビルを建てるのではなくて、スポーツ施設としての存続も要望しています。

 これ当然のことで、晴海地区というのは、この一、二年だけでもマンション開発で人口が急増して、ラッシュのときには地下鉄の階段で身動きが取れないほどの事態が既に起こっているんです。一万数千人から二万人もの更なる人口増がこの計画によって引き起こされるでしょう。そうなれば、交通機関は、今手当てをしても更に麻痺していく。学校、保育所、病院、こういうインフラ整備も、やってもやっても追い付かなくなってしまう。

 安倍政権ですね、冒頭確認しました、官房長官に、東京一極集中が拍車掛かるようなこと、こういう立場は取っていないはずなんですよ。政策としては、東京一極集中の是正というのを掲げています。しかし、このままではオリンピックに必要なインフラ整備をはるかに超えて、事業も人もまさに東京に集中してしまう、こういうこと起こると思うんですが、官房長官、いかがですか。

○国務大臣(菅義偉君) まず、この東京ですけれども、東京はまさに国際競争力の中で魅力ある都市を目指しておるわけでありますので、まさにこのオリンピック後にそうした都市を目指していくということは、東京都で当然考えていくことだろうというふうに思います。

 また同時に、政府としては、地方を元気にするための地方創生、このことにも全力で取り組んでおりますので、このオリンピックを契機に、東京と地方、双方が元気になるという、それぞれのまた魅力を生かしながら町づくりが進むことを望んでいるところであります。

○田村智子君 人口減少時代に入っていくというわけですよね。それで、一万から二万の人口をオリンピックに伴う開発によって吸収するんですよ。これ、一極集中進むとしか言いようがない。推進本部つくっても、国がわざわざ法律作っても、このことに何にも言えないで東京都に任せる。本当に私、おかしいと思いますよ。

 国交省にも聞きたいんです。

 国交省は、人工排熱を減らす、風の道を確保するなど、ヒートアイランド対策を進めているはずなんですね。この選手村は、十四階から十七階建てで、御覧のように城壁のように建設をされるんです。これ、立候補ファイルは違うんですよ。もっと建物の間隔が取られてプラン出していたんです。五十階の超高層マンションを建てるために、わざわざ計画変更したようなものなんですね。

 この城壁のような建物は、東京湾から都心に向かう風をまさに遮る方向に建てられます。約六千戸のマンションからの人工排熱も急増します。ヒートアイランドの対策にも逆行するような計画だと思いますが、政務官、いかがでしょうか。

○大臣政務官(青木一彦君) 先ほど委員の方から御質問ありましたガイドラインというものを国交省の方では策定いたしておりまして、これは、地方公共団体等がヒートアイランド対策に資する都市づくりを進める上での基本的な考え方、対策手法を示したものであり、地方自治法に基づく技術的な助言として作成しているものでございます。

 本ガイドラインにおいては、開発が行われる機会を捉え、ヒートアイランド対策に資する建築物の配置や緑化等による地表面の被覆、人工排熱の低減等の検討を行うことの必要性を示しております。

 国土交通省といたしましては、本ガイドラインの考え方も参考にしていただきまして、東京都において、ヒートアイランド対策にも配慮した開発が行われることと期待をいたしております。

○田村智子君 これは是非強く助言をしていただきたいと思いますよね。少しぐらい緑つくっても、これに伴う人工排熱ってすさまじいと思いますよ。それで風の通り道も塞がれていったら、都心の本当にヒートアイランドってひどく進むということは、これはもう誰が考えても分かることだというふうに思うんです。

 もう一点、私、インフラのことで確認をしたいのは、東京都は、オリンピックの輸送手段として三環状道路の整備、これも国に要望して、関係省庁の連絡会議ではこれを含む東京都からの要望について国が真摯に検討していくということを確認しています。三環状道路のうち東京に関わる部分で残っているのは、今もう東京外環道の練馬―世田谷間の十六キロしかないんですね。しかし、この東京外環のこの区間というのは、オリンピックの競技場や選手村のアクセス道路にはならないわけです。地元住民の反対はいまだ強く、不安の声も出されています。自治体からも地下水への影響に不安の意見が示されています。

 下村大臣にお聞きします。

 この法案、国がオリンピック開催に向けた基本方針を策定するというふうにしていますが、ではこの基本方針の中に東京外環道の整備ということも盛り込まれることになるのかどうか、お答えください。

○国務大臣(下村博文君) 御指摘の首都圏三環状道路につきまして、立候補ファイル記載の首都高速中央環状線品川線が今年三月に開通するなど、着実に整備が推進されているものというふうに承知をしております。

 御指摘の基本方針につきましては、国として大会の円滑な準備及び運営に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図る観点から、一つに大会の円滑な準備及び運営の推進の意義に関する事項、二つ目に政府が実施すべき施策に関する基本的な方針、三つ目に政府が講ずべき具体的な措置、このことなどを定めることになりますが、具体の内容については本法案成立後に検討してまいりたいと考えております。

○田村智子君 東京外環の整備が含まれるかどうか、今はお答えできないということになりますか。

○国務大臣(下村博文君) やっぱり法案成立しなければお答えは差し控える立場だと思います。

○田村智子君 これは、三環状道路の整備なんということも含むような方針を作られたら、まさにオリンピックとは直接には関係のないところのインフラ整備を国も一緒になって進めていくよということになると思うんですね。

 これは国交政務官にもお聞きしたいんですね。僅か十六キロメートルのこの道路建設に一兆数千億円、私たち一メートル一億円だと言って反対をしてまいりました。事業認可後、地下水対策のために工法変更でトンネル内の止水領域は高さも幅も四十メートルから五十メートルにもなるということも示されているんです。ということは、私たちが言っていた一兆数千億円どころじゃないんですね。もっともっと巨額に予算は膨れ上がっていく。私は、こういうところに建築資材投入されていったら、被災地復興への悪影響ということも当然危惧されるというふうに思うわけです。

 オリンピック会場のアクセス道路でもない巨額の予算を要するこの国直轄の東京外環道、東京都が言っているように二〇二〇年の早期に、八月までの開通というのを目指して事業を進めることになるのかどうか、政務官、お答えください。

○大臣政務官(青木一彦君) お答えいたします。

 平成三十二年に予定されております東京オリンピック・パラリンピック競技大会の際に、この道路が利用できれば円滑な開催にも大きな効果が期待できることから、東京都からも大会までの開通について御要望を現在いただいているところでございます。

 現在の用地取得率は約五割でございまして、今の段階では開通予定を明確にお示しできない状況ですが、今後、引き続き地域の協力をいただきながら早期整備に努めてまいります。

○田村智子君 今お聞きしてきましたけれども、こういうマンション開発あるいは道路の建設、こういうことも一切国が推進本部つくっても歯止めが掛かるような方向というのは何一つ示されないわけですよね。既に東京都はもうオリンピックを口実にして様々な道路建設にも巨額の予算をつぎ込み始めています。立ち退きなども本当に一方的に迫られるような事態というのが各地で起きています。非常にこんなことに拍車が掛かるようなことは許されない。

 最後に、新国立競技場について、文科大臣にはこの後文科委員会でじっくり聞くので、官房長官に一問だけ。

 東京都への費用負担の要請を下村大臣行って、舛添知事が整備費の正確な見積りも示さずに都に負担を求めるのかと大変厳しい批判をしています。私も当然だと思います。

 昨年十二月、私も質問主意書で詳しくこの新国立競技場の問題、ただしました。

○委員長(水落敏栄君) そろそろおまとめください。

○田村智子君 その中で、実際に掛かる費用を示すべきだと求めましたが、安倍総理の名前で出された答弁書は、事実上答弁拒否された。官房長官、なぜ総事業費示すことができないんですか、お答えください。

○国務大臣(菅義偉君) 総工費の問題については、先ほども文科大臣から答弁をされておりましたけれども、国民への情報開示の必要性がある一方において、調達時期との関係を考慮する必要、こうしたものを踏まえて、国と都庁の間でこれは適切に対処していくんだろうというふうに思います。

○田村智子君 時間が来たので終わります。


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