国会会議録

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参院予算委員会 福島第1原発 国は違法労働一掃を

参予算委員会 2013年05月15日

○委員長(石井一君) 次に、田村智子さんの質疑を行います。田村さん。

○田村智子君 福島第一原発の事故収束作業に延べ五百十人を違法に派遣したとして、長崎県内の三つの事業所に改善命令が出されています。本件の概要を御報告ください。

○国務大臣(田村憲久君) 福島第一原発の復旧作業に、長崎県を所在地とします大和エンジニアリングサービスという会社でありますけれども、一つは労働者派遣法違反ということで、建設業の配管工事、こういうものに対して派遣をした。これは派遣が禁止になっております。それからもう一つは、労働者供給事業ということでございまして、職業安定法に対しまして違反ということでございます。さらには偽装請負ということもございまして、平成二十五年四月の末に長崎労働局長より他の二社、それはアグレスという会社と創和工業、長崎市と佐世保市でありますけれども、これ合わせて三社に対しまして行政処分であります改善命令、これを実施いたしまして、事業の総点検とそれから併せて遵法体制の整備ということを講じるように指導したわけでございます、行政処分ですね、したわけでございます。

○田村智子君 これ、作業を請け負ったと見せかけて、実際は労働者を送り込んだだけの偽装請負、それから、今御報告になかったんですけど、もう一つ、自社に派遣された労働者を別の会社に派遣する多重派遣も、これ改善命令出されています。それから、派遣禁止の建設業への違法派遣と、これらが一度に行われていたということです。これは氷山の一角だと思います。
 東電が昨年十二月に公表した就労実態に関するアンケート、福一の下請労働者を対象にしたものですが、ここにも偽装請負が推測できる回答が見られると思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) これ東京電力が公表したものでありますけれども、就業実態に関するアンケート結果において、四七・九%の方から、給与を支給している会社と作業を指示している会社、これが違うという回答になっております。ということは、これがそのままそうであるということでございますれば、当然のごとく偽装請負等々の可能性があるということでございます。
 なお、アンケートにおいて、違法派遣や偽装請負について知らないという、そういう回答が七五%あったこともございますので、下請事業者でありますとか、また労働者の方々、こういう方々に対して講習会等々で、厚生労働省から職員を派遣をいたしまして、改めて関係法令の説明等々の徹底、これをさせていただいておるところでございます。

○田村智子君 このアンケートというのは東電から元請企業を通じて労働者に配付されたもので、言わば雇主の目がある下で実施されたという側面は否めないんです。それでも、今あったとおり、作業指示している会社と給与支払の会社が違うという回答が約五〇%だと、事故収束の作業の多くは派遣が禁じられている建設関連ですから、これは偽装請負、違法派遣が福一の中で横行していると、こういう認識で特別な対策が求められると思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) 今回の案件に限らず、当然のごとく違法派遣等々は許されるわけではないわけでございまして、こういうものをまず未然に防止することが必要でありますし、行われたならばこれに対して厳正な対処をするということは大変重要なことであるというふうに考えております。
 このため、今後とも、全国、これ、この被災地のみならず、全国の都道府県労働局挙げて、このようなことが起こらないように、事業主それから労働者の方々にやはり関係法令の周知徹底をしてまいると同時に、もし違反があった場合に対しましては、事実をまずしっかりと調査をした上ででありますけれども、行政処分等々も含めて厳正な対処をしてまいりたい、このように思っております。

○田村智子君 これ、例えば富岡労基署は月一回免震重要棟で雇用相談とか行っているんですけれども、これ東電の目がある下で労働相談を行っても、なかなか労働者は実態告発はできないですよね。私は、東電や元請企業が責任を果たすということは、これ当然のことなんですけれども、もっと政府が直接的に実態をつかんで違法行為の根絶策を講ずるべきじゃないかと思うんです。
 例えば、Jヴィレッジで返信封筒付きで労働者へのアンケートを配付して、企業を通じてではなく、厚労省が直接労働実態をつかむとか、入構証の会社名と給与明細や健康保険証の会社名が一致しているかどうかを確認するとか、Jヴィレッジでの放射線管理の講習というのは必ず行われるわけですから、その際に違法労働行為の具体例を示して、こういうことがあれば報告をしてほしいと、こういう周知を図るとか、すぐにできることあると思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(田村憲久君) そういうことも含めて、とにかく法令というものをしっかりと御理解をいただかなければならないわけでございまして、これはもちろん労働者の方々、当然でございます。それから、下請等々の事業主の方々も含めてそういうことがしっかりと周知徹底できるように、説明会等々を行って御理解をいただけるようにということで実施をいたしておる次第であります。

○田村智子君 周知だけじゃ駄目なんですね。具体的にできることを今提案したわけですから、是非検討してください。
 それから、経産大臣にもお聞きしたいんですけれども、現場からは、東電は事故収束に必要な人員確保の予算をちゃんと組んでいるのかと、こういう疑問の声も起こっているわけです。是非、東電任せでない予算の監督、これ必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(茂木敏充君) 一義的には、予算の確保、東電において行うものでありますが、当然、過酷な作業現場で本当に必死の復旧作業を行っている皆さんが適正な労働環境の下で仕事ができるように、法令遵守の下で行っていけるように、適切に東京電力へ指導してまいりたいと考えております。

○田村智子君 これ、一昨年も私、予算委員会で、突然人員削減の計画が発表されたという問題を取り上げて、しっかり見ていきたいということを、当時、民主党政権ですけど、経産大臣に答弁いただいています。是非具体的に進めていただきたいと思うんです。
 最後に、総理にもお聞きをしたいんですね。
 これ、すぐにできる対策とともに、やはり違法行為の温床となっている多重請負、ここの構造にメスを入れるべきじゃないかと私は思っています。東電と元請企業が全ての労働者を直接雇用するというぐらいの大胆な対策が必要ではないかと。そうしなければ、一つには労働者のピンはねがなくならないんです。福一は通常の原発とは別次元の作業なので、東電は危険手当とも言える人件費分の上乗せを行っています。これは危険と背中合わせで働く労働者に全額支払わなければおかしいのに、ところがこれさえ多重請負の中でピンはねがされています。
   〔委員長退席、理事小川敏夫君着席〕
 もっと重大なのは放射線被曝管理の問題で、事故収束・廃炉作業は三十年、四十年掛かるわけで、熟練労働者が福一にいなければ駄目なんです。そのためには、福一で長く働けるように放射線被曝管理が徹底されなければなりません。だけど、多重請負で末端の労働者が装備の不十分さが原因で被曝をする、そして被曝線量の上限を超えて原発ではもう働けなくなると、こういう事態が起きています。これでは事故収束作業に支障が出かねません。また、違法行為やずさんな放射線管理があっても労働者が物を言えない、違法企業を排除すると労働者も仕事を失うと、こういうことになってしまうんです。
 総理、是非、事故収束作業に当たる労働者を全力で応援するために、まず放射線被曝管理の徹底、危険手当のピンはねは許さない、労働者の使い捨てにつながる違法行為は一掃すると、あわせて、多重請負の解消に大胆に踏み出すと、これ是非検討していただきたいんですが、いかがでしょうか。

○理事(小川敏夫君) 安倍内閣総理大臣。なお、答弁は簡略にお願いします。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 福一において、いわゆる偽装請負が行われていたのは遺憾であります。こうした偽装請負など法に違反する働き方が行われないよう、その是正を図る必要があると思います。
 このため、福島労働局等において、事業主に対する集団指導等を実施をし、派遣法の遵守、そして労働条件の書面による明示、線量管理の徹底等を求めるとともに、様々な機会を通じて労働関係法令の周知を徹底しているところであります。また、法令違反が行われた、行われる事実を把握した場合には、迅速に事実関係を調査した上で、違反が認められた場合には是正指導を行うなどにより、違法な働き方の根絶に向けて厳正に対処してまいります。
 なお、多重の請負をやめさせるべきだという御意見でございますが、多重の請負自体は法に違反するものではなく、いわゆる偽装請負などの法に違反する働き方を正していくことが必要であると考えております。

○田村智子君 根っこの改善が絶対必要だと思いますので、引き続き質問を続けていきたいと思います。
 終わります。

○理事(小川敏夫君) 以上で田村智子君の質疑は終了いたしました。(拍手)


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