国会会議録

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大学研究低迷 打破へ 田村智子氏「交付金増が必要」

 日本共産党の田村智子議員は16日の参院文教科学委員会で、国立大学の学術研究が低迷している要因に運営費交付金の削減があると主張し、増額を求めました。

 学術研究の成果である論文の数および論文引用度の国際比較をみると、引用トップ1%の論文数でみた日本のランクは、2002年の4位から12年は8位に落ちています。この要因について川上伸昭科学技術・学術政策局長は「大学の研究開発費の伸びが主要国と比べて低いことも考えられる」と答えました。

 田村氏は「国立大学に対する運営費交付金が10年間で1割以上も削減された。これが低迷の要因ではないか」とただしました。下村博文文科相は「削減だけが要因ではないが、学術研究環境整備は重要だ」と述べました。

 田村氏は、政府が重視してきた競争的資金について、短期間の研究資金にしかならず、資金獲得のための事務が研究時間を圧迫していることや若手研究者の不安定雇用を急増させていることを示し、「運営費交付金を削ったままでは国立大学は学術研究の低迷から抜け出すことはできない。増額すべきだ」と強調しました。

 下村氏は「競争的研究費の改革も両方進めることにより必要な予算の確保に努める」と答弁しました。

 

(2015年4月21日「しんぶん赤旗」より) 

【 議事録 】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 今日は、我が国の学術研究の現状についてお聞きいたします。
 学術研究の成果を示す指標の一つは、論文がどれだけ発表され、どれだけ引用されたかというものです。文科省科学技術政策研究所発表の「科学技術指標二〇一四」では、論文引用数の国際比較から、質的指標とされるトップ一〇%補正論文数シェア及びトップ一%補正論文数シェアの変化を見ると、日本は一九八〇年代から二〇〇〇年代初めにかけて緩やかなシェアの増加が見られたが、その後急激にシェアを低下させていると指摘しています。
 資料でお配りしました資料一の一ページ目、トップ一〇%補正論文数、これは注目をされて引用度がトップ一〇%の論文数、これを見ますと、一九九〇年から九二年の平均、日本は世界四位。二〇〇〇年から二〇〇二年、同じく四位。ところが、二〇一〇年から一二年の平均は八位に低迷をします。二ページ目、引用数トップ一%で見ますと、六位、五位、十一位というふうになっています。中国の急激な伸びということはあるにしても、上位の国の中でこのように順位が低下した国は日本だけです。
 文部科学省は、この低迷の要因をどのように分析していますか。
○政府参考人(川上伸昭君) 先生御指摘のとおり、世界のトップ一〇%補正論文数及びトップ一%補正論文数につきましては、日本も全体の数は増加している中ではございますが、シェアにつきましては低下をしているという、こういう状況でございます。
 引用度がこのように高い論文につきまして増加の伸びが小さい理由といたしましては、大学の研究開発費の伸びが主要国に比べて低いということに加えまして、国際共著論文や学際的、分野融合的な研究領域への参画が主要国と比べて十分でないというようなことが考えられるというふうに私どもとしては分析をしているところでございます。
○田村智子君 こうした論文数の分析を行っているのはトムソン・ロイター社というところなんですけれども、そこが分析した資料を更に見てみます。
 資料の二、三枚目になりますね。国公私立大学別の論文数の推移が分かります。これは二〇〇〇年を起点として私立大学というのは直線的に増加傾向にあります。ところが、国立大学が、二〇〇〇年半ば以降、明らかに低迷をしています。先ほど御答弁で、研究費、この伸びがなかなかないと、これが一つの低迷の要因だというふうに文科省も分析しているということですけれども、私もそうだと思います。
 国立大学がなぜこんなに低迷しているのか。やはり、国による基盤的投資と言える運営費交付金がこの十年間で一割以上削減された、これが低迷の要因ではないかと思いますが、文科大臣、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、日本が主要国と比べて被引用度が高い論文数の増加の伸びが小さい理由、今御指摘がありました。
   〔委員長退席、理事石井浩郎君着席〕
 これは、大学の研究開発費の伸びが低いことに加えまして、国際共著論文や学際的、分野融合的な研究領域への参画が十分でないことなどが考えられます。
 国立大学法人の運営費交付金の削減だけが低迷要因として議論するということは適切ではないと考えますが、一方で、学術研究、基礎研究の振興のため、大学の研究環境の整備は重要でありまして、長期的な視野に基づく多様な教育研究活動の基盤を支える国立大学運営費交付金の役割は重要であるというふうに考えます。
○田村智子君 重要だと言いながら、伸びどころか一割削減をしてきたと。この影響というのは直視をすべきです。
 第三期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方についての中間まとめが出されています。こういう指摘があります。「有期の競争的経費の獲得による様々な成果が、運営費交付金の活用により、各国立大学の中に組織化されることが困難となっている。」と。科研費などによる研究の成果を長期的な研究に組織化する、これが困難になっているというふうに認めたものなんですね。
 競争的資金を得てこそ国際的な競争力も強化されるんだと、日本ではこういう政策の下で様々な競争的資金は創設されてきました。しかし、その一方で、運営費交付金を削ったままでは、国立大学は学術研究の低迷から抜け出すことはできないというふうに思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) 文科省の国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会が四月八日に取りまとめました中間まとめにおきまして、運営費交付金と競争的研究費を含めた大学内外の資源配分を見直すことが求められております。
 このため、文科省では、運営費交付金の改革の検討と並行して、研究成果を持続的に最大化することを目的とした競争的研究費改革に関する検討会を設けまして、今議論を進めているところであります。
   〔理事石井浩郎君退席、委員長着席〕
 運営費交付金と、そしてこの競争的研究費の改革を両方を一体的に進めることによりまして、必要な予算の確保に努め、大学における教育研究活動のこれまで以上の活性化を図ってまいりたいと考えております。
○田村智子君 これは競争的資金との組合せで、競争的資金が伸びればいいのか、そうじゃないと私は思うんですね。運営費交付金、削っていったら駄目なんだと、これは少し質問で更に聞きたいと思います。
 競争的資金の研究というのは、おおむね三年から五年のスパンです。そうすると、研究者は、次の資金獲得を準備しながら研究や論文の執筆を行わなければならないし、研究の途中段階でも審査機関への報告があり、また非常勤で研究者を雇いますから、その人事評価も行わなければならない。また、出された申請を審査するのも大学に属する研究者です。
 これ、科学技術振興機構研究開発戦略センターは、我が国の研究費制度に関する基礎的・俯瞰的検討に向けての中間報告というのをまとめていますが、その中でも、「近年の我が国では競争的資金に係る業務による研究時間の圧迫が深刻になっている兆しがみられる。」と、こう指摘をしています。
 大臣、この指摘、どう思われますか。
○国務大臣(下村博文君) 競争的資金の充実は、研究費の選択の幅を拡大し、競争的な研究開発環境を形成することにより、研究活動を活性化させるという点で意義あるものであるというふうに考えます。また、国費を原資とした競争的資金により研究を行う以上は、説明責任を果たす観点から、申請や報告などの一定の事務負担を負っていただく必要もやはりあると思います。
 一方で、御指摘がありましたが、競争的資金の増額に伴ってこれらの事務負担が増え、研究時間の減少の要因の一つであるとのそういう指摘も私も聞いております。研究費の獲得に当たりまして、研究者の事務負担を軽減することはやはり重要であるというふうに考えます。このため、これまでも各種手続の簡素化に取り組んできているところでありますが、今後も引き続き研究現場の意見を酌みながら、更なる改善についてはこれはしっかり取り組んでまいりたいと思います。
○田村智子君 今挙げましたその中間報告の中では、こう言っているんですよ。「我が国の大学等で研究時間の確保が重要となっている現状があるにもかかわらず、現実には研究者は近年ますます競争的資金関連の業務に時間を割かざるを得なくなっている。その理由の一つには、基盤的経費が削減され、」、運営費交付金のことです、「基盤的経費が削減され、大学等が競争的資金に依存せざるを得なくなっていることがある。大学等のなかには、所属する研究者に科研費への申請を半ば義務化し、申請を行わない研究者には基盤的な研究費を減額する等の措置をとっている大学もある。」と。これは、そうしなければ、今科研費では間接的経費で一部水光熱費などを見たり、大学にあげていいよというお金を持っていますけど、それを獲得してもらわなかったら、もはや大学が運営できないという事態にまでなっているから、ここまで厳しい指摘がJSTによって行われているわけですね。
 さらにお聞きします。運営費交付金の削減は、国立大学の常勤ポストの削減に直結をいたしました。ポストドクター一万人と旗を振りながら、若手の常勤雇用のポストは増やすどころか大きく減少をしてしまったわけです。これは競争的資金を拡充しても解決ができない問題です。
 お配りしました資料の三、四ページ目になります。東大、京大など国立の九大学と早稲田、慶応の十一大学が今RU11という学術研究懇談会というのを組織しています。この十一大学の雇用形態、見てみますと、四十歳未満の若手の常勤ポストは急減をしています。近年急減です。そして、競争的資金による雇用、つまり資金を受けている期間だけ、三年とか五年とかだけ雇用される、そういう若手研究者が急増しているわけです。
 独立行政法人全体を見ても、二〇〇七年から二〇一〇年度、この僅か三年間で三十七歳以下の若手研究者の任期なしの常勤ポスト、これは五百人近くも減っているわけです。これでは日本の学術研究は先細りになりかねないと思いますが、大臣の見解をお聞きします。
○国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、我が国が成長を続け、新たな価値を生み出していくためには、科学技術イノベーションを担う創造性豊かな若手研究者の育成確保は極めて重要であると思います。一方、学校教員統計調査によりますと、近年、大学の本務教員に占める三十九歳以下の若手の割合は低下していると、御指摘のとおりであります。
 文科省としては、若手研究者支援のため、一つは、自らの研究活動に専念するための経済的支援やテニュアトラック制の導入促進、大学改革の一環として年俸制やクロスアポイントメント制度の導入等によりまして、教員の流動性を高めつつ、若手ポスト確保の支援などに取り組んでいるところであります。今後とも、このような取組を通じて若手研究者の活躍促進を図ってまいりたいと考えます。
○田村智子君 常勤ポストを増やす、確保する、これもう運営費交付金にしかできないことなんです。競争的資金というのは年限が決まっているから、常勤ポストは絶対増えないんです。ここの問題を真剣に取り組まなければ、これはもう若手研究者は日本の国立大学を見限るということさえあり得ると、私はそれぐらいの危機感を持っているんです。
 法人化後の十年間、運営費交付金というのは毎年ほぼ一%削減されて、総額約一千三百億円もの削減となりました。二〇一二年度の国立大学法人の収支状況を見ますと、運営費交付金の収益は三六%弱、一方、支出の方を見ますと、人件費が三八%、ということは、もはや運営費交付金は人件費分にしかならない、研究に充てるお金にもならない、また人件費にも足りない。
 これは個別大学で見ると、交付金が最も多いのは東大なんですけれども、その東大でも人件費は交付金で受け取る額の九〇%になるんです。地方大学の中には一二〇%と足が出ているところもあるわけですよ。運営費交付金では人件費も賄えない。
 第三期中期目標期間に向けて、経営協議会外部委員が連名で、地方国立大学の予算強化を求める声明を発表する動きが次々と起きています。北海道教育大学、東北、山形、福島、静岡、福井、奈良教育、和歌山、高知、山口大学、こういう十大学で次々と声明が上がっているんです。いずれも、大学の経営努力は既に限界である、運営費交付金は国立大学発展の要である、その確保を最優先にすべきと訴えています。その外部委員の中には、歴代の文部大臣である有馬朗人氏、遠山敦子氏、またファミリーマート代表取締役会長、福井県経団連会長など、経済界の方々も名前を連ねているわけです。運営費交付金の削減はもってのほかである、まずその確保をすべきであると、私はこの声を真剣に受け止めるべきだと思うんです。
 ところが、先ほど紹介した運営費交付金の在り方についての中間まとめ、この中には、運営費交付金の削減、してはならないとも書いていない。増額すべきだということも全く書いていない。これでは、国立大学、一体どうなってしまうのか。
 文科大臣、最後に、やはり運営費交付金はもう削るべきじゃない、増やすべきだ、こういう立場を示すべきだと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) 文部科学省の国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会の中間まとめでは、基盤的経費である運営費交付金の確保は不可欠である、厳しい財政状況であるが、文科省としても必要な予算の確保に引き続き努力が望まれるとの提言をいただいているということであります。また、運営費交付金と競争的研究費を含めた、大学内外の資源配分を見直すことが求められております。
 文科省としては、運営費交付金と競争的資金の改革を一体的に進めつつ、必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えておりますが、各国立大学の強み、特色を生かした教育研究を伸ばしていくためには、また喫緊の課題である国立大学改革を強力に推進していくためにも、マネジメント改革による学長のリーダーシップの確立、各大学の強み、特色の最大化などの自己改革に積極的に取り組む国立大学に対してめり張りある重点配分をすることによって支援をしてまいりたいと思います。
○田村智子君 終わります。


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