国会会議録

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“文系つぶし”強制やめよ 田村議員  「国立大再編」を批判

 日本共産党の田村智子議員は21日の参院文教科学委員会で、政府が進める「国立大学の再編」は、人文系・教員養成の学部・学科を縮小・廃止するものだと追及しました。

 文科省は、国立大学を世界トップ大学と伍(ご)して卓越した教育研究を行うなど3類型に再編して、運営費交付金などで重点支援を行う方針を打ち出しています。

 田村氏は、下村博文文科相が産業競争力会議で、「国立大学経営戦略」策定を打ち出したことに言及。国立大学法人評価委員会がまとめた「視点」では、教員養成・人文社会科学系について「組織廃止」も打ち出していることをあげ、「国策に沿った産業振興のために、大学や分野を国が選別し、予算を重点化するのと一体に教員養成・人文社会科学系を縮小・廃止するものだ」と批判しました。

 吉田大輔高等教育局長は、「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に取り組むべきとしている」と“文系つぶし”につながることを認めました。

 田村氏は、日本学術会議の提言で「(人文科学の研究は)人間と社会のあり方を相対化し批判的に考察する」と人文系の役割を重視していることを紹介。「豊かな教養や高度な専門知識をどれだけ国民の中につちかうのかということが日本社会の発展にとってきわめて重要だ。学部再編や廃止を政府が大学に突きつけることはあってはならない」と求めました。

 下村文科相は「人文系の今日的意義は重要」としながらも「時代のニーズに対応した自己改革について適切に判断していただきたい」と答え、「大学再編」を進めていく考えを強調しました。

 

【  議事録  】

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 今進められている国立大学に対する評価と、それに基づく改革そのものを質問したいと思います。
 十六日の委員会で、私は、国立大学の論文数が伸び悩んでいる、その要因が国立大学の運営費交付金の削減にあるのではないかと質問いたしました。大臣は、運営費交付金の削減だけが低迷の要因として議論するということは適切ではないとしながら、運営費交付金の役割は重要だと答弁されました。
 改めてお聞きします。運営費交付金の削減が国立大学の論文数の伸び悩みの要因の一つであるということをお認めになりますか。
○国務大臣(下村博文君) 日本が主要国と比べまして被引用度が高い論文数の増加の伸びが小さい理由としましては、大学の研究開発費の伸びが低いことに加えまして、国際共著論文や学際的、分野融合的な研究領域への参画が十分でないことなどが考えられます。縦割り的な部分が大きいのではないかというふうに考えます。
 そういう意味で、国立大学法人運営費交付金の削減だけを低迷要因として議論をすることは適切ではないと考えます。
○田村智子君 もう一度お聞きしますが、私はそれだけとは言っていません。要因の一つ、運営費交付金の削減も影響を与えていると、これはお認めになりますか。
○国務大臣(下村博文君) 各大学が運営費交付金の削減に対してどのように対応するかという、それからもう一つ、研究開発費もこれは増やしておりますので、トータル的な中で今後の大学の在り方をどう考えるかということが問われてくると思いますので、運営費交付金の削減がイコール論文数の伸び悩みというふうに単純に言えない部分があるのではないかと考えます。
○田村智子君 これ、大学関係者でその関係がないなんて言っている方はおられないと思います、私、今まで聞いた中で。
 文部科学省の諮問機関である科学技術・学術審議会学術分科会、ここが一月二十七日に、学術研究の総合的な推進方策についての最終報告、まとめていますけれども、この中でも、我が国の大学の事業規模は、国際的に見れば必ずしも十分ではなく、例えば、国立大学について見ると、規模が縮小しているものも少なくない。この背景には、基盤的経費の逓減があり、研究環境の悪化は、学術研究の推進はもとより人材育成にも大きな影響を及ぼしていると、こういう指摘もされています。
 影響がないとは言えないと思うんですが、いかがですか。運営費交付金の削減が国立大学の論文数の伸びに影響を全く与えていないと、これは言えないと思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) そういう意味でいえば影響との相関関係はあると思いますが、しかし、これは単純に、それでは運営費交付金を増やせば解決するのかということについては、別の議論が必要だと思います。
 例えばアメリカの大学等はそういう国費の投入額は相対的には少ないわけでございまして、これから各国立大学が問われるのは、運営費交付金の充実も必要でありますが、同時に、競争的資金の充実とか、あるいは国立大学が自らいろんな形で民間から資金を供給できるような仕組み、これは国立大学だけで単独でできない部分がありますから、我が国の制度設計全体に関わってくる部分もありますけれども、そのようなものをトータル的に考えながら各国立大学に対する支援を文部科学省として考えていきたいと思います。
○田村智子君 今の答弁の中にもあったんですが、私は、前回、競争的資金を増やしても運営費交付金を減らしたままでは国立大学の学術研究の発展はないということを具体的に指摘しました。
 今回の運営費交付金の確保ということは歴代大臣が述べておられまして、答弁、検索掛けてみると実に二十五回ぐらい答弁しているんですね。それでも、運営費交付金は、現実には一割以上、十年間で一千三百億円も削減になった。
 私、やっぱり文科大臣としては、運営費交付金は増額が必要だということを明言すべきだと思うんですが、そこはいかがですか。
○国務大臣(下村博文君) 文部科学省としましては、運営費交付金と競争的資金の改革を一体的に進めつつ、これまでどおり必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えますが、各国立大学の強み、特色を生かした教育研究を伸ばしていくために、また、喫緊の課題であります国立大学改革を強力に推進していくためにも、マネジメント改革による学長のリーダーシップの確立、各大学の強み、特色の最大化などの自己改革に積極的に取り組む国立大学に対してめり張りある重点配分をしてまいりたいと考えます。
○田村智子君 今のように、運営費交付金の増額ということは明言されないわけですね。
 お話のあった改革についてお聞きします。
 四月十五日の産業競争力会議で、下村大臣は、その改革の一つの方向として国立大学経営戦略の策定というのを打ち出しました。資料でもお配りしました。日本再生戦略に位置付けて、大学改革を国家戦略として進めようというものです。
 具体的には、運営費交付金の中に三つの重点支援の枠組みを新設し、評価に基づくめり張りある配分を実施とあります。この三つの重点支援の枠組みとは、一、地域のニーズに応える人材育成、研究の推進、二、分野ごとの優れた教育研究拠点やネットワークの形成を推進、三、世界トップ大学と伍して卓越した教育研究を推進。この三つから各国立大学に一つを選ばせて、これに沿った取組を行えばその評価を行い、その評価に基づいて運営費交付金の重点配分を行うということ。
 このように大学改革をトップダウンで推進すること自体が大問題ですが、まずお聞きしたいのは、運営費交付金の総額を増やそうとしないままに重点配分を行えば、必然的にどこかを削る、縮小するということになるのではないですか。大臣。
○国務大臣(下村博文君) まず、四月十五日に開催された産業競争力会議課題別会合でこの資料を配付していただいていますが、私の方から、第三期中期目標計画、これは平成二十八年から三十三年度まででありますが、ここにおいては、各大学の機能強化の方向性に応じた取組をきめ細かく支援するため、運営費交付金の中に三つの重点支援の枠組みを新設し、評価に基づく配分を行う考えを表明したものであります。
 これは、運営費交付金の在り方に関する検討会の中間まとめ、四月八日に発表されましたが、これを踏まえてのものでありますが、この検討会におきましては、国立大学協会からもヒアリングを行い、その意見も踏まえて中間まとめが取りまとめられたものであるというふうに承知をしております。また、事務局を務める高等教育局におきまして、この検討会の審議内容について二月から各学長の協議を個別に行ってきておりまして、各大学の意見も参考にしております。
 産業競争力会議課題別会合では、このような議論を踏まえた上で取りまとめられた中間まとめを踏まえて、私から説明を行ったものでございます。
 いずれにしても、現状維持というのは、事実上、各国立大学においても、社会のニーズに的確に対応できないということでじり貧になってしまうというふうな危機感の中で、この三つの重点支援の下に、実質的には各国立大学が何をするかは判断することでありますが、そういう視点でこの運営費交付金の重点支援についての枠組みを新設をするものであります。
○田村智子君 済みません、質問時間が短いので、聞いていることにお答えいただきたいんですね。
 併せてお聞きしますが、この戦略の中では、未来の産業、社会を支えるフロンティアの形成も盛り込むべきだとされたんです。世界水準の研究を行う特定研究大学や、新領域や新産業を創造できる博士人材の育成を行う卓越大学院を創設するというものです。国策に沿って産業振興のため世界で戦える大学や分野を国が選別して、そこに予算を含む重点化を図るということになるんじゃないんですか。端的にお答えください。時間、少ししかもらえないので。
○国務大臣(下村博文君) 未来の産業、社会を支えるフロンティアを形成する観点から、産業競争力会議の議論を踏まえ、特定研究大学、仮称でありますが、あるいは卓越大学院、ここは御指摘のように新領域や新産業等を創造できる博士人材の育成をする、こういうことについて文科省として検討を進めていくことを考えております。現時点で、運営費交付金の重点配分と直接結び付けて考えているものではありません。
○田村智子君 どう考えても、新たな研究機関というのをつくっていくわけですから、そこに予算を持っていかなければつくれるはずがないんですね。そうすると、国立大学の現状の一部機能は縮小、廃止すると。一体で進めなければできないはずです。
 事実、昨年九月九日、文科省高等教育局国立大学法人支援課長名で各国立大学に出された通知、これを見ますと、国立大学法人評価委員会が取りまとめた国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点、これを送付しています。
 その中で、今後、文科省において視点を踏まえ組織及び業務の見直しの内容を作成し、平成二十七年六月を目途に各法人にお示しする予定と付記をされています。この視点というものの中には、教員養成系学部、大学院、人文社会学系学部、大学院について、組織の廃止を含めた検討に取り組むべきという認識が明確に示されています。
 これ、重点支援の一つは、教員養成系、人文社会学系を縮小し、運営費交付金の再配分を行うと、こういうことになってくるんじゃないですか。手短にお願いします。
○政府参考人(吉田大輔君) 御指摘の国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点と申しますのは、これは国立大学法人評価委員会が有する課題意識を各法人に示すことによりまして、第三期中期目標期間に向けた各法人における自主的な見直しの検討に資することを目的としているものでございます。
 この視点の中におきまして、例えば組織の見直しに関する視点として、ミッションの再定義を踏まえた速やかな組織改革が必要ではないかとした上で、教員養成系学部、大学院及び人文社会科学系学部、大学院につきまして、十八歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むべきではないかとしています。
 これは、国立大学改革プランを踏まえまして、各大学がそれぞれのミッションに基づき、強み、特色を最大限に生かし、自ら改善、発展する仕組みを構築することにより持続的な競争力を持ち、高い付加価値を生み出す国立大学となることを目指し、抜本的な組織の見直しを進めていくことが重要であるとの評価委員会の課題意識として受け止めております。
 各法人におきましては、これらの課題意識を真摯に受け止め、第三期中期目標期間に向け自主的に検討をしていただきたいと考えておりまして、各大学における強み、特色を踏まえた機能強化の方向性についてはこれは支援をしてまいりたいと考えております。
○田村智子君 もう自主的なんて言葉だけですよ。今お配りした資料を見ていただいても、評価に基づくめり張りある運営費交付金の配分により国立大学の組織を転換すると、こう打ち出しているわけです。まさに、国家戦略として国立大学を三つの類型に分類して国策に沿った機能強化を進めるということ、その中で教員養成や人文社会科学系は縮小されていくと。縮小しなさいと求めているのとこれは同じことですよね。
 日本学術会議の第五期科学技術基本計画のあり方に関する提言、ここでは、この人文系の学術研究について、その役割への注意を喚起しています。今日、社会が解決を求めている様々な課題に応えるために、自然科学と人文社会科学とが連携し、総合的な知を形成する必要があるとの認識はかつてなく高まっている、その際、現在の人間と社会の在り方を相対化し批判的に考察する人文社会科学の独自の役割にも注意する必要があるという指摘です。もっともだと思います。
○委員長(水落敏栄君) そろそろおまとめください。
○田村智子君 はい。いや、二十五分を回っても大丈夫なはずです。二十五分三十秒ぐらいまで大丈夫です。
 豊かな教養や高度な専門知識を……
○委員長(水落敏栄君) 持ち時間は二十五分です。
○田村智子君 どれだけの国民の中に培うのかということがやはり日本社会の発展にとっては極めて重要だと思うんですね。
 こういう学部再編や廃止が大学内の課題として提起されることはあるでしょう。しかし、政府がそれを大学に突き付ける、まして、運営費交付金を重点支援するんだということをもってこういうことを突き付けるということはあってはならないと思うんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(下村博文君) 御指摘のように、人文・社会科学は、人間の営みや社会の価値観に対する省察、社会事象の分析などに係る学問でありまして、その今日的な意義、文理融合型の学問の必要性も含めて、振興は極めて重要だと考えます。
 しかし、一方で成熟社会の到来、グローバル化や我が国の少子高齢化の急激な進展など、社会状況の中で、大学が不断にその組織や運営の見直しも求められているところでありまして、各組織の在り方については、主体的に検討していただくのは当然でありますが、一方で時代のニーズに対応した自己改革についても適切に判断していただきたいと思います。
○田村智子君 一言だけ。
 非常に重大な問題なので、引き続き質問したいと思います。
 終わります。


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