日本共産党の田村智子議員は6日の参院復興特別委員会で、東日本大震災の復興事業について「被災地の実情をふまえずにフェードアウト(縮小・消滅)させてはならない」と主張しました。
政府は2011年度から15年度までを「集中復興期間」と設定。岩手、宮城、福島の被災3県は期間の延長を求めています。田村氏は「住宅再建、なりわいの再建は、どちらも緒についたばかりだ」として、復興に必要な予算措置の継続を求めました。竹下亘復興相は、期間延長に背を向けながらも、「復興の基幹的事業はすべて国費でやり続けなければならない」と述べました。
田村氏は、被災者を自治体などが直接雇用する「震災等緊急雇用対応事業」が昨年度161・5億円から今年度予算案では59・1億円に大幅に縮小されたことをあげ、「すでに予算規模では縮小がはじまっている」と指摘。同事業では、ケアセンターや仮設住宅の見守り支援員、公立学校の加配教員、自治体各部署の震災対応職員などを雇用しており、「仕事の必要性は増している」として予算措置を継続するよう求めました。
【 議事録 】
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
青森、岩手、宮城、福島の県知事がそろって、集中復興期間の延長と財政上の措置を政府に要望する意向だと、河北新報などが報道しています。住宅再建、なりわいの再建、どちらも緒に就いたばかりではないのかと、被災自治体の実態、復興の状況をよく見てほしい、そういうメッセージを私も強く感じるところです。
復興大臣、集中期間終了と、こういうことを理由に、来年度以降、被災地の実情を踏まえずに事業や予算がフェードアウトしていく、こういうことがあってはならないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(竹下亘君) 被災地の実情を踏まえずにということはあり得ませんので、そこは、少しかっとしてしまいましたけれども、我々は被災地の丁寧に丁寧にお話を聞くことが復興の原点でありますので、勝手に決め付けないでいただきたいと、こう思います。
○田村智子君 決め付けるんじゃなくて、そうしないですよねという確認です。
○国務大臣(竹下亘君) 集中復興期間、二十七年度、今年度いっぱいありますので、今我々が取り組んでおりますことは、ここをしっかりと、もう徹底的にこの期間にできることはやり抜くということがまず第一。
そして、二つ目は、その上で、何ができて何ができていないか徹底的に総括をすると。今後何が残っているかということをしっかりと総括をいたしまして、今後の、これ総理の指示に基づいてでございますが、今後の五年間の復興の在り方というものをお示しをする、そしてできれば財源も含めてしっかりとお示しをしていきたいと、このように考えております。
そういう中において、先ほども答弁をいたしましたが、復興の基幹的な事業については、私は、全て国費でやり続けなければならない課題であると認識をいたしております。その意味で、復興に対して不安を持たないでください、必ずやりますので。そこの部分は国が責任を持ってやり通しますので、全く不安を持っていただかなくて結構であると、こう考えております。
○田村智子君 それでは、具体的にお聞きします。
震災等緊急雇用対応事業は、被災県に基金を積んで、被災者の雇用につながる様々な事業が行われてきました。既に予算規模では縮小が始まっています。この中のメニューである震災等対応雇用事業、これは被災者の方を自治体などが直接雇用してきましたが、昨年度百六十一・五億円から今年度の予算案では五十九・一億円と、大幅な縮小です。ほかのメニューも昨年度から今年度での終了というのがほとんどとなっています。
これは被災者の雇用に直接関わる事業でもあります。震災等緊急雇用対応事業、これ名前が変わって今後どうなるのかということなのかもしれませんが、来年度以降についてはどのように検討されているんでしょうか。
○政府参考人(広畑義久君) お答えいたします。
今御指摘の震災等緊急雇用対応事業は、地方公共団体の直接雇用や民間事業者等への委託による雇用によりまして、被災されました求職者の一時的、緊急的な雇用の場を確保するものとして創設された事業でございます。いわゆる復興特会に計上してございます。震災から四年を経過し、被災地の様々な行政需要を満たすものとしても活用されていると認識してございます。
平成二十八年度以降の取扱いにつきましては、実際に活用が予定されている事業を精査し、被災地の状況や復興財源の措置状況等を踏まえ、関係省庁とも協議の上、検討してまいります。
○田村智子君 この事業で雇用されてきたのは、ケアセンターや仮設住宅の見守り支援員であるとか、公立学校の加配教員、自治体各部署の震災対応の臨時職員の方々などです。こうした仕事の必要性は決して縮小、フェードアウトをしていません。
例えば宮城県では、仮設住宅にお住まいの約三万世帯の調査、一四%の世帯が今後どこに住むのかという意向を示すことができていない、こういう方々への状況をきめ細やかにつかんで生活再建支援をするというのは、自治体にとってますます重要な仕事になってくると思います。また、なりわいの復興というのは本当に大きく立ち遅れているのは明らかで、この事業が継続されなければ、災害で仕事を失った方が今度は施策の打切りによって仕事を失うことになりかねないとなります。
被災地に必要な雇用に対応した事業として今後も継続的な予算措置をすべきだというふうに思いますが、復興大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(竹下亘君) 厚労省からお話をいただきましたように、この事業は、地方公共団体の直接雇用あるいは民間事業者等への委託による雇用によりまして、被災された求職者の一時的、緊急的な雇用の場を確保するものとして創設された事業でございます。そうした事業が、被災地の復興の進展及びそれに伴う雇用情勢の改善、有効求人倍率が三倍ぐらいになっておりますので、いろんな仕事があるという状況にも変わってきておるといったようなことも勘案をいたしております。
また、二十七年度については、状況が依然として厳しい被災三県に限定をいたしまして、真に必要な事業に限って基金の積み増し及び実施期間の延長を予定をいたしておるところでございます。
先ほど申し上げましたけれども、二十八年度以降の復興支援の枠組みにつきましては、財源も含め六月末をめどに方向性を示すことといたしておりまして、集中復興期間内にどこまでできるか、今後どのような事業を実施する必要があるか、整理する作業に今取りかかっておるところでございます。
今後とも、被災地の復興状況等をしっかりと踏まえまして、被災地の声に耳を傾けつつ、丁寧に対応していかなければならない課題だと考えております。
○田村智子君 これ被災直後は緊急的、一時的雇用だったかもしれないんですけれども、今その仕事の中身を見ますと、継続的に必要な仕事にもなってきていると思うんです。例えば、見守り支援員は今減らせるような状況にはないはずで、仮設住宅というのは、その生活が長引くほどに健康悪化を防ぐこと、これもう明らかですし、復興公営住宅に移転した下での見守りという新しい課題も生じてくると思います。前回の委員会でも、公営復興住宅に居住する方の満足度が他の居住形態と比べても低いという河北新報のアンケート調査が資料として配付をされて、大臣もとても残念だというふうに御答弁をされていましたけれども、やっぱり見守り支援員などによる社会的な支援であるとか心のケア、コミュニケーションをどうつくるのかということが新たな課題として問われてきているというふうに思うんですね。
そうすると、この見守り支援員などが取り組んできた心のケア、国の事業や予算、引き続き継続的にこれはやっぱり必要になってくると思いますが、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(竹下亘君) 見守りですとかあるいは支援、あるいは心のケアあるいは生きがいづくりといったような分野での人の必要性というのは高まっております。現実に今、現在でおよそ千人の方、見守りとか復興支援とかという形で入っていただいておりまして、お手伝いをいただいております。このうちの何人かは、被災者自らがそういう形で支援員になっていただいたり見守りをやっていただいたりいたしておるところであります。これは、縮小はするどころか、例えば福島県の場合は、今年更に、たしか二百人だったと思いますが、上積みをして、更にそういったソフト対策の人を増やそうという方向で動いております。
長い年月が残念ながら発災からたっておりますので、心身のケアというのは大きな課題になってきていると認識しております。
○田村智子君 そうすると、これまでは単年度の緊急的なという位置付けだったんですけれども、やっぱり継続的にどうしていくかというような、むしろ第二段階のような、そういう予算や事業の充実というのを是非求めたいと思うんです。
学校への震災加配、これがどうなるかという不安もお聞きしています。被災地での子供たちへの心のケアというのは本当に長い目で考えなければなりません。津波の直撃を受けた学校の校舎を私も被災の直後に目の当たりにしましたけれども、屋上であの一晩を子供たちは過ごしたというんですね。その下の町はもう本当に壊滅的な状態で、果たして子供たちが屋上で一体何を見たのか、一晩真っ暗な中でどういう音を聞いていたのかと、こういうことを考えても胸が潰れるような思いです。そういう傷というのは、年月を経てから子供たちがやっと表面に表すことができるという、それほどに深い傷だというふうに思います。
また、人口の減少が被災地でますます進んでいて、短期間に学校の統廃合も進むために、仮設校舎も含めて子供たちは転々と学びやを変えなければならなかったという状況もあります。宮城県では、震災後、不登校の子供の割合は残念ながら全国で一番多くなってしまい、PTSDの子供も増えているというふうに聞いています。子供たちへのケアが、これも集中期間の終了というのは余り関係ないと思うんですよ。これは更に充実させていく、教職員、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの震災対応の加配、継続的に行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(赤池誠章君) 委員御指摘のとおり、被災した子供のケアということを図ることというのは大変重要であるというふうに文部科学省としても考えている次第でございます。そのために、緊急スクールカウンセラー等派遣事業により被災地の学校等にスクールカウンセラー等を派遣するとともに、教職員定数の加配措置を実施をしているところでございます。
今後の支援の在り方につきましては、被災地の復興状況や集中復興期間終了後の東日本大震災の復興特別会計予算の在り方等を踏まえつつ、しっかり文部科学省としても検討してまいりたいと存じます。
○田村智子君 被災四県からやっぱり集中期間の延長ということが要望される、ここを是非、本当にお声を聞いて事業を今後も進めていただきたいというふうに思います。
次の質問で、被災者の住居の確保についてお聞きします。
衆議院の予算委員会で、我が党の高橋千鶴子議員が借り上げ復興公営住宅について取り上げました。現在、UR住宅や民間賃貸アパートなど仮設住宅とみなして入居している方がおられる。仮設住宅としての使用は五年までだが、そのまま復興公営住宅として住むことが可能ではないのかという質問に、国交大臣は可能だというふうに認められました。復興公営住宅の建設が遅れている下で、これは住宅確保の大きな施策になり得るわけです。
そこで、借り上げ復興公営住宅が可能であるということを自治体に周知するために、その可能であるとする根拠を分かりやすく簡潔にお示しいただきたいと思います。
○政府参考人(橋本公博君) お答え申し上げます。
公営住宅法第二条第二号において、公営住宅とは「地方公共団体が、建設、買取り又は借上げを行い、低額所得者に賃貸し、又は転貸するための住宅及びその附帯施設で、この法律の規定による国の補助に係るものをいう。」と定義をされておるところでございます。この公営住宅には、災害の場合の借り上げに係る公営住宅、いわゆる借り上げ災害公営住宅も含まれます。
借り上げ災害公営住宅につきましては、地方公共団体が民法に基づき、建物所有者から住宅を借り上げ、それを入居者に対して更に賃借し、当該住宅に対し国が公営住宅法第十条第一項又は第十七条第二項から第四項までに基づく補助を行うことにより、被災者に提供することが可能となるものでございます。
○田村智子君 是非、各自治体に是非周知をしていただきたいというふうに思います。国からの補助もあるということも含めて周知していただいて、被災した方が本当に何度も引っ越しをしなければならないとか、次の住まいがどうなるのかという、今住んでいるところは仮設だからというふうに、みなし仮設だからということで不安に陥ることのないよう、是非自治体を通じてもお住まいの方々にも周知をいただきたいということを要望しておきたいと思います。
最後にですけれども、仮設住宅から復興公営住宅に移るとき、エアコン、照明器具、ガス器具などを置いていくように求められ、なぜ持っていくことができないのかという困惑の声を多く聞きます。四年近く使って、今でも老朽化が問題になっている仮設住宅に新たな住居者が入るということはまず考えられません。
石巻市では、移転先の住まいで使用するということ、あるいはその移設する費用を自己負担することなどを条件に無償譲渡するという制度を行っています。
これは内閣府に確認をいたしますが、このように応急仮設住宅の附帯設備は自治体の判断で無償譲渡をすることが可能だと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(日原洋文君) お答えいたします。
応急仮設住宅に備えられている設備につきましては、大きく二種類のタイプがございます。一つは、自治体そのものが保有している、行政財産として所有しているもの、もう一つは、リース会社からリースとして借り受けているものがございます。
公共団体が行政財産として所有しているものにつきましては、既に財産処分の制限期間である二年を経過しておりますので、その後の処分につきましては自治体の判断によることになります。また、リース物件につきましては、所有権が当該リース会社にございますので、リース会社がどのように判断されるかということによって左右されるものと考えております。
以上でございます。
○田村智子君 これも是非、自治体に譲渡は可能なんだということを周知していただいて、移設するときに、本当に居住するときに困ることのないようにお願いしたいと思います。
終わります。