日本共産党の田村智子議員は3月31日の参院文教科学委員会で、教員の長時間勤務にかかわり「命令のない時間外勤務も公務(労働時間)にあたるのではないか」と政府の認識をただしました。
愛知県の中学校教員の鳥居建仁さんが校内で脳内出血を発症し、最高裁で公務災害認定の判決が確定しています。同訴訟の名古屋地裁判決は「所定勤務時間内に職務を終えられず、やむをえず時間外に遂行しなければならなかったときは、時間外勤務を命ずる個別的な指揮命令がなくても、包括的な職務命令に基づいた勤務時間外の職務遂行と認められる」としています。田村氏は、このことが公立学校教員の労働時間の判断基準となっているかを質問しました。
小松親次郎初等中等教育局長は、黙示的な命令であっても職務命令だと認められると述べ、「しっかりと受けとめて周知されるようにしていきたい」と答えました。
【 議事録 】
昨年十一月、大阪堺市で二十六歳の中学教員が突然死亡して、二十六歳の中学教員の突然死が過労死として公務災害と認定をされました。顧問をしていたバレー部の生徒たちが、私たちが無理をさせてしまったのか、戻ってきてほしいと悲痛な言葉をノートにつづっていたことも報道されています。
これは決して特別な事案ではありません。過労死ラインを超える時間外勤務をしている教員が少なくないことは文科省の調査でも明らかで、昨年三月十三日にもこの長時間勤務の問題を私取り上げましたが、時間外勤務が長時間であること、多忙化の解消が必要だということを大臣も認めておられます。
この長時間勤務の問題、解決するには、まず誰がどれだけ時間外勤務をしているか、この把握が必要で、文科省も二〇一二年の通知で、学校は勤務時間を把握する必要があるとしています。
具体的にお聞きします。その勤務時間の把握というのは、公立学校においては直接的には校長が行い、最終的には設置者である教育委員会が責任を負うべきと考えますが、いかがですか。
○政府参考人(小松親次郎君) 御指摘のとおりだというふうに考えます。
○田村智子君 それでは、把握される勤務時間とは何かです。
都立学校では、東京都立の学校ではタイムカードは置かれていますが、打刻をするのは出勤時間だけで、退勤時間の記録をしていません。都議会で我が党の議員がただしたところ、タイムカードなどによる時間管理だけでは勤務実態を全て正確に把握することは困難だというのが理由だとしているんですね。
しかし、持ち帰り残業が膨大にあるのは事実ですが、学校での勤務時間さえ把握しない、これでどうして教員の勤務実態が把握できるのでしょうか。局長、お願いします。
○政府参考人(小松親次郎君) 勤務時間の把握の方法については、それぞれの学校等で様々な方法があろうかと思います。例えば管理職による報告や、あるいは点呼、目視、出勤簿への押印、様々な方法が行われているわけでございます。
先ほど、通知で文部科学省もその把握に努めるようにということを言っているというお話ございましたけれども、平成十八年の各教育委員会に対する通知では、管理職が自ら現認する方法又はICカード等の記録を基礎として確認し記録する方法、そういった様々な方法を使って労働時間の適正な把握に努めるようにということで指導しているところでございます。
実情、現場に応じた取組をしっかりしていただくように教育委員会にも求めていこうというふうに考えております。
○田村智子君 これは、質問の準備の過程で、こういう実態があるんだけどというふうに文科省に説明を求めましたら、給特法に定める四要件以外は時間外勤務の命令はできない、だから時間外命令のないものは自主活動だとみなし得ると、こういう説明もあったんですね。これは看過できないわけですよ。
愛知県豊橋市の中学校教員鳥居建仁さんが校内で脳内出血を発症し公務災害認定を求めた、いわゆる鳥居公務災害訴訟を見てみたいんです。これは、教員の公務とは何かが正面から問われた訴訟で、今年二月、最高裁が上告棄却をして原告勝訴が確定をしています。
名古屋地裁判決から、公務災害とした判断基準の部分を資料として配付をしていますので見てください。
校務分掌等による包括的な職務命令の下、所定勤務時間内に職務を終えられず、やむを得ずその職務を勤務時間外に遂行しなければならなかったときは、勤務時間外に勤務を命ずる旨の個別的な指揮命令がなかったとしても、それが社会通念上必要と認められるものである限り、包括的な職務命令に基づいた勤務時間外の職務遂行と認められ、指揮命令権者の事実上の拘束力下に置かれた公務に当たると。この判断基準は最高裁まで維持されています。
文科省は、これを公務とは何かの判断基準であるというふうに認めますか。
○政府参考人(小松親次郎君) 委員御承知のとおり、裁判の判決につきましては、一般的な、例えば公務の判断基準を設定するという性格にはないことでございますので、御指摘の判決自体は公務災害認定上の公務の判断基準を示したものであると承知をいたしておりますけれども、この中で、職務遂行が黙示的な命令であっても超勤を命じたというものについては、そのように公務災害上認めるというようなことについては、しっかりと受け止めて周知されるようにしていきたいというふうに思います。
○田村智子君 公務災害認定におけるという限定は付いているけれども、黙示のものも公務の範疇に入り得ると。この判決を公務の判断基準であるということを認められたと。
公立学校の管理者や設置者は、労働安全衛生法によって教職員に対して安全配慮義務を負っています。これは、公務災害を起こさないようにする義務があるということです。ということは、過労死あるいは脳血管障害や心臓疾患の発症を招くほど長時間公務に従事させることのないようにする義務を負っていると言えると思いますが、いかがですか。
○政府参考人(久保公人君) 公立学校の校長あるいは設置者は、労働安全衛生法に基づきまして、管内の学校の職員の職場の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進する義務があるというふうに認識しております。
○田村智子君 ならば、公務災害を防ぐため縮減すべき公務は何かと。これは、今回の鳥居裁判の判決に示された判断基準に沿って判断すべきではないですか。
○政府参考人(小松親次郎君) 少し繰り返しになって恐縮でございますが、判決そのものは公務災害の認定上の範囲ということでの判示であろうと考えますけれども、日本の学校の教職員の労働環境の改善が非常に大きな課題であるということはTALISなどの国際調査等を見ても明らかであるというふうに私ども考えております。
こういった中で、管理職による労働時間の適正な把握、それから労働安全衛生管理体制の整備、こういったものについて徹底を図るべく取り組む必要があると考えております。あわせまして、チーム学校の考え方の下に、教職員定数の改善や専門スタッフの配置の充実等々の施策を国と自治体と一体になって取り組んでいく必要があるというふうに考えます。
○田村智子君 今日は時間が来てしまったので、また次で続きをやりたいと思うんですけれども、これ、時間外勤務の命令がなければ自主的な活動なんだという考え方が少なくない教育委員会に見受けられるわけです。この裁判のときも、被告となった……
○委員長(水落敏栄君) まとめてください。
○田村智子君 地方公務員災害補償基金は、教材研究も学校祭の準備も夏休みの部活動指導も、勤務時間に行われていれば公務だけど時間外は自主的活動だなんということを主張しておられるわけですね。これは非常に問題が大きいわけです。これは次回に、やはり縮減すべき公務とは何なのか、それをいかにして教育委員会や学校はつかむのかということを次回の中の議論で深めていきたいと思います。