日本共産党の田村智子委員長は14日、日本テレビ「news zero」、TBS「news23」、テレビ朝日「報道ステーション」の各番組で党首討論に臨みました。核兵器禁止条約の批准や裏金事件を巡る「政治とカネ」の問題、物価高から暮らしを守る経済政策や選択的夫婦別姓の導入を巡って、与野党党首らと討論し、自民党政治を変える具体的提案を示しました。
核兵器禁止条約/核兵器の非人道性を迫れ
news23では、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞決定について、石破茂首相が「厳しい安全保障環境」を強調し、「核抑止」「拡大抑止・核の傘」の必要性と核の非人道性の議論をどう両立させるかが問題などとしたのに対し、田村氏は次のように述べました。
「今、『拡大抑止』だと言って、アメリカの核使用に日本政府もかかわっていこうとしている。『核抑止』というのはいざとなったら核兵器を使うということで、ヒロシマ・ナガサキの惨状を再現するぞと言って相手を脅し、自分の国を守ろうとすることだ。しかもアメリカは核の先制使用を認めている」
その上で、「一方で、被団協の受賞は、核兵器を使わせない力は、非人道性を訴えることにあるということで、世界の流れはこちらに向かっている」と強調。司会者が「現実にはロシアが核による脅しをやっている。抑止と脅しは甲乙つけがたい」などとしたのに対し、「そうしたタイミングでノーベル賞を受賞したことの意味がある。世界が核戦争の危機にある。それを止める力がどこにあるかと言えば、使ってはならないという核の非人道性というところに平和賞の意義がある。絶対に使ってはならないと、ロシアと同時にアメリカにも迫っていかないといけない。そのことが唯一の被爆国・日本政府には問われている」と主張しました。
報道ステーションでは、石破首相が「『核抑止論』を認めながら、核廃絶を説得する理屈がないと、(オブザーバー参加しても)参加しただけになる」などと主張。これに対し田村氏は次のように批判しました。
「核兵器で武装しなければ平和が守れないかのような発言は、唯一の戦争被爆国の総理の発言として極めて重大だ」「核の非人道性を総理は言うが、『核抑止』とは、いざとなればヒロシマ・ナガサキの惨状を再現させるということであり、非人道性を伝えていくという日本政府の立場とも矛盾する」
田村氏は「だから『核抑止』の方を乗り越えなければならない」として、重ねて核兵器禁止条約の批准を求めました。
「政治とカネ」/実態解明進めてきた党の躍進こそ
news23で田村氏は、自民党の裏金事件について、「『しんぶん赤旗』が独自の調査で暴くまで意図的に隠してきた。その後も、私たちが指摘したところだけ修正するということを繰り返した」として、日本共産党と「しんぶん赤旗」の役割を強調しました。「自民党による組織的な犯罪であることを認め、誰の指示でいつから始まり、何に使ったのかの実態解明をしなければ、政治改革には進まない」と指摘。その上で、「裏金の温床になっている企業・団体献金の禁止に進むかどうかが問われている」と述べました。
さらに報道ステーションでは、裏金疑惑だけでなく安倍・菅政権における「桜を見る会」や学術会議の任命拒否問題を挙げ、「すべて私たちは真相究明の先頭に立ってきた。もっと大きくしていただいて、政治に信頼を取り戻していきたい」と訴えました。
使い道のわからない自民党の政策活動費について、石破首相は13日のテレビ討論で「今回の選挙に使わない」と表明。一方で、この日は「全ての使い道を明らかにしないのなら、本当に選挙に使わなかったのかはわからない」という疑念が相次いで出されました。石破首相は「選挙に使わないということを申し上げた。不断に組織の強化をし、新しい政策も周知しなければならない」と述べ、政策の周知徹底や組織活動費として政策活動費を選挙期間中も使う意向を示しました。
これに対し、田村氏は、自民党の萩生田光一氏が裏金議員として非公認とされたにもかかわらず、政党機関紙「自由民主」号外(13日付、はぎうだ光一特集号)が同氏の顔写真入りで選挙区内にまかれている事実を指摘し、「このお金はどこから出ているのか」と追及。石破首相は「選挙に使わない」としても、政策活動・組織活動名目で政策活動費が使われる可能性を否定できませんでした。
また、公明党の石井啓一代表は、裏金問題に関連し自民党が非公認とした議員にも公明党として推薦を出す対応を巡り、各番組で相次いで質問攻めにあいました。石井氏は「地元の党員・支持者の判断を最大限に尊重した」と中央の関与をあいまいにする苦しい弁明。司会者から「公明党の倫理基準は自民党より緩いのか」と問われ、「私たちの党員・支持者は『政治とカネ』の問題について非常に厳しい感覚を持っている」と矛盾した答弁をすると、どこでも失笑が漏れました。
暮らし・経済/自由な時間を保障する社会へ
物価高対策について田村氏はnews zeroで、「いま、物価高騰で最も困っているのは、非正規や派遣といった、最低賃金に張り付くように働いている方々だ」と指摘。大企業がアベノミクスで積み増した500兆円にも上る内部留保に対する時限的な課税を財源に、中小企業への直接支援を行うこととセットで最低賃金の1500円への引き上げを行うと提案しました。直接支援に慎重な石破首相をはじめ、各党党首は「賃上げ」を口にするものの、財源まで含めた具体的な賃上げ政策を示したのは田村氏だけでした。
その上で、田村氏は「人間を大切にし、人間らしい暮らしができる経済にしていく」とし、収入の保障と一体の、1日7時間、週35時間労働制を提案。「自由な時間をみんなが手にすることができて、余暇を楽しんだり、教養を高めたり、家族と過ごすことができる、こういう自由な時間を保障できる国をつくっていく」と表明しました。
田村氏はさらにnews23で、各党が教育無償化を主張したことに対して、「軍事費2倍に向かっていけば、暮らしを支える政策とは絶対に両立しない」と強調。教育予算よりも軍事費の方がはるかに大きい矛盾した国家予算の現状を指摘し、大軍拡から暮らしへの政策転換を迫りました。石破首相は「安全保障環境が厳しいもとで『大軍拡』などと言うのは納得できない」と開き直りました。
選択的夫婦別姓/「女性への差別」、一日も早い改善を
news zeroでは、選択的夫婦別姓導入への賛否を問う設問に、石破首相以外の各党首が賛成を表明。国民の世論に背を向け、旧民法に基づく古い家族観にこだわる自民党の姿が浮き彫りとなりました。
田村氏は、すでに数十万規模で事実婚の夫婦がいることを挙げ、「その方々を家族として認めないと国が排除し、差別しているのが現状だ」と指摘。同姓の場合でも97%の割合で女性が姓を変えており、経団連も女性が一方的に不利益を被っていると指摘して改革を求めていると述べ、「別姓を選択できないのは、女性に対する間接差別だ」と告発しました。
さらに、田村氏は「結婚したら男性の家に女性が入るという旧民法に基づいた考え方が自民党の中にまだはびこっている」と批判。「古い家族観を乗り越える時代だ」と強調し、一日も早い現状の改善を迫りました。
石破首相はこれに、「自民党は古い価値観ではなく、最も国民に近い政党だ。国民の気持ちに一番寄り添った選択をしてきた」と強弁。田村氏は「世論の多数も賛成だ」と反論し、ならばなぜ選択的夫婦別姓の導入に反対するのかと、首相の姿勢をただしました。
2024年10月16日(水) しんぶん赤旗