日本共産党の田村智子委員長は9日、国会での党首討論に立ち、日本の社会のあり方の根本を巡り、「人間らしい暮らしを支える収入とともに、自由な時間があってこそ、本当に豊かな社会といえるのではないか」と強調し、賃上げとともに労働時間の短縮を政治の責任で果たすよう提案しました。
田村氏は、物価高騰のもとで政治の責任で賃上げを進める最大のカギは「働く人の7割を占める中小企業への直接支援だ」と問いただしました。
賃上げの必要を認めながら、「生産性の向上」「付加価値を上げる」との答弁を繰り返す石破茂首相に対し、田村氏は「結局、直接支援をやらないことだ」と批判。大企業の内部留保に時限課税し、その財源を中小企業支援に充てる日本共産党の支援策にふれ、「慎重に検討ではなく、どうすればできるのか。検討していただきたい」と求めました。
田村氏は、賃上げと一体に労働時間を短縮することも「人間らしい働き方、人間らしい生活に不可欠だ」と強調。日本の労働時間が欧州と比べ、年間300時間も長く、「過労死」や「メンタル疾患」など社会問題となっていると語りました。
自身の子育て中の実感にもふれ、「がんばりすぎないと仕事と家事・育児は両立できない」と指摘。「ジェンダー平等社会をつくる上でも労働時間を短くすることは急がれている」と主張し、「1日7時間、週35時間労働制」を目標とすべきだと迫りました。石破首相は「労働時間はもっと短くなければならない」と述べました。
田村氏は、共産党が掲げる「自由時間拡大推進法」では、法定労働時間を「1日7時間、週35時間労働制」を国の目標として、中小企支援、残業規制の強化などをパッケージで提案していると強調し、見解を問いました。
しかし、石破首相は「価格転嫁がきちんと行われなければならない」と言うだけ。田村氏は「これまでの古い答弁の使いまわしだ。これでは変わらない。政治を変えなければならない」と厳しく批判しました。
2024年10月10日(木) しんぶん赤旗
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
今日は、私は総理と日本の社会の在り方について議論をしたいんです。本当に豊かな社会というのは、人間らしい暮らしを支える収入とそして自由な時間、これが必要だと、不可欠だというふうに思えるんですね。それこそが本当に豊かな社会と言えるのではないかと思います。
まず収入についてなんですが、これ、これだけの物価高ですから、政治の責任でどうやって賃上げを進めるのか。最大の鍵は、中小企業、働く人の七割を占めています、この中小企業への直接の支援が必要だと。最低賃金時給千五百円、これ手取りで月収二十万円程度ですから、これはもうすぐにでも引き上げなきゃいけない、物価高騰の下ですから。その実現のためには、やはり中小企業への支援不可欠だと。
昨日の代表質問でも、私、このことを強調して、直接支援をというふうに求めました。しかし、総理の答弁は、間接的な支援、価格の転嫁などですね、こういう答弁だけだったんです。
もう一度端的にお聞きします。
やはり最低賃金の大幅な引上げのためには、中小企業への直接の支援、ここが鍵だ、必要だ、不可欠だと、こう思いますが、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 委員と目指すところは一緒だと思っております。問題は、その手法をどうするかということでございます。
私どもは全体主義国家ではございませんので、社会主義国家ではございませんので、政府が主導してそこに直接お金を払うやり方が必ずしも正しいと私は思っておりません。中小企業の皆様方が従業員の方々に、労働者の方々に十分な賃金が支払えるだけの、そういうような生産性を上げ、付加価値を上げ、そしてまた労働分配率、中小企業の方が労働分配率が高いことはよく承知をいたしております。そうしますと、いかにして付加価値を上げ、生産性を上げ、従業員の皆様方にお支払をする、そういうような原資ができるかということに私どもは努力をいたしてまいりたいと思っております。
いずれにいたしましても、どうすれば物価上昇を上回る賃金上昇が実現するかということにおきましては、これから先も御党とよく議論をさせていただきたいと思っております。
○田村智子君 結局、直接支援はやらないということになるんですよ。
これを求めているのは日本共産党だけではありません。今年の地方最賃審議会、もう大多数の都道府県委員会から、何らかの支援、中小企業への支援が必要なんだと。私たちと同じように直接支援を求める声というのは次々と上がっているんですよ。ほかの国だって直接支援やって、最低賃金の大幅引上げやって、これをやらないから日本はいつまでたっても賃金が上がらない国ということになっているんじゃないかというふうに私は言わざるを得ないんですね。
私たちは、中小企業への直接支援を本当に具体的に提案してきました。大体、大企業の内部留保が驚くほど増えていると。せめて、アベノミクス以降で増えた分に時限的な課税をして、そして十兆円の財源つくって中小企業の賃上げの直接支援に充てようじゃないかと。それをやれば、最低賃金千五百円、直ちに、速やかに引き上げることできるんだと。これね、慎重に検討と言い続けているんですよ。慎重じゃなくて、真面目に、どうしたらできるのかと、こういう立場で検討していただきたい。
今日時間ないので次に行きたいんですけど、賃上げと一体の労働時間の短縮、これ、新しい私たちの提案なんです。自由な時間を増やすには労働時間短縮する、それでこそ人間らしい働き方、人間らしい生活送れるようになるじゃないかということなんですね。
実際、日本の労働時間、長過ぎます。欧州の諸国と比べて年三百時間長いというデータもあるわけですね。実際に過労死、メンタル疾患、今も深刻な社会問題となっています。
これ、博報堂の若者調査、最近注目されているんですけれども、一番欲しいものランキングで、第一位がお金、二位が時間、三位が自由と。これ、若い人たちが、自分の時間大切にしたい、自由な時間欲しい、こういう思い強めているということの表れだというふうに私は思います。これね、わがままじゃないと思う。封じ込めていい思いでもないと思う。当然の要求。
そしてもう一つ、私自身の実感もあるんですよ。子育て中、定時で帰っても、やることが多過ぎる。頑張り過ぎないと仕事と家事、育児は両立ができない。そして、この頑張り過ぎることを勲章にするようにしていては後が続かない。そして、社会が発展しない。これ、私の痛感でもあるんです。
だから、ジェンダー平等社会つくる上でも、労働時間をやはり短くするということが急がれていると。ただ働いて食べて寝るだけのそういう毎日は、人間らしい生活と言えるんだろうかと。学びたいこと、やりたいことに向き合える、家族との時間大切にできる、社会とのつながりを築いて様々な社会活動に取り組む、そのためには自由な時間が必要だと。
昨日の質問では、労働時間の短縮をというふうに求めましたら、総理も答弁で、それは必要だというふうにお認めになった。
そこで、ならば提案したいんです。ゆとりが欲しい、自由な時間が欲しい、この切実な声に応えて、一日七時間、週三十五時間労働制を大きな目標として、これを実現するために政治の責任果たしていくと、これやるべきだと思うんです。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 内部留保課税につきましては、私も随分勉強させていただきました。
御党の機関紙も、私、大臣在任中から、大臣、赤旗読んでて大丈夫ですかみたいな御指摘もいただいたのですが、やっぱりどの党が何を言っておられるかはそれぞれ、立憲民主党であれ国民民主党であれ、私は可能な限り目を通すようにいたしております。
そして、内部留保課税につきまして、東大の醍醐先生でしたかしら、会計学の先生でありますが、議論しておられるのも相当に精読はいたしました。だから、それが二重課税になるかならないかという問題、あるいは韓国で実施して本当にうまくいったかどうかという検証、そういうものは必要なんだろうと思っています。どうすれば労働者の賃金が上がっていくかということにつきましては、私も強い問題意識を持っておりますので、今後とも議論をさせていただきたいと思っております。
その上で、今の労働時間のお話がありました。これはもっと短くなければいけないと思っております。長ければ長いほど生産性が上がるかといえば、そんなことは全くございません。
私も都市銀行に四年ぐらい勤めていたことがございますが、終電以外で帰ったことはほとんどございません。大体、十時、十一時になると、物すごい能率が下がるんですね。で、上司が帰らないと帰れないみたいなことがございました。そして、日本の場合に、通勤時間がまた異様に長いということがございます。そうしますと、家に帰ってきたら、もう十二時過ぎるということになります。本当にそんなことがあっていいと私は思っておりません。
と同時に、日本の女性の睡眠時間が恐らく世界で一番短いということは決していいことだと思っておりませんし、男性の家事分担率が低いということはいいことだとも思っておりません。私も最近、掃除、洗濯、炊事を余りしなくなっちゃったのでありますが、やはりそういうことは育児にしてもそうで、お母さんのワンオペであっていいはずがないのであって、私はフランスの育児政策というのを随分勉強したつもりでございますが、いかにして、男親というんでしょうか、それが赤ちゃんの抱き方、ミルクのあげ方、離乳食の作り方、お風呂の入れ方、そういうことをきちんと学んでいかないと、女性の自由な時間は増えません。そういうことのために今後とも取り組んでまいることはお約束を申し上げます。
○田村智子君 お考えは分かったんですけど、私の問いに答えてないんですよ。一日七時間、週三十五時間労働に踏み出していくと、これ必要でしょうというふうに質問したんです。
私たちは自由時間拡大推進法というのを提案しています。法定労働時間、一日七時間、週三十五時間労働制に速やかに移行する、これを国の目標とするんだと。そして、そのためにやっぱり中小企業支援なんですよ。これ、欠かせられないんです。
人手不足が言われている分野もあります。医療、教育、運輸、そして建設など、こういうところでも、労働条件の改善など必要な条件、採っていくための対策を取る、これをやっぱり政府やっていかなきゃいけない。で、一日八時間さえ崩されている現状、これも正すためには、残業規制の強化、サービス残業、これ、不払残業はもう根絶しなければならないと、こういう言わばパッケージの提案なんですよ。
今のお気持ちを本当に政治の責任で実現するためには、私たちのこのパッケージ提案、検討していただきたい、具体化していただきたい。どうでしょうか。
○内閣総理大臣(石破茂君) 手法はいろいろございます。いずれにいたしましても、どうすれば労働時間が減るかということ、そして余暇をつくり、それが人間らしい暮らしをしていく上においてできるか。そして、中小企業がそういうことを可能にしていくためには価格転嫁がきちんと行われていかなければなりません。きちんと価格転嫁が行われるか。そしてまた、生産性を上げるための、今業種の御指摘がございましたが、そういうところにおきまして生産性の向上に対する支援がいまだ十分だとは思っておりません。生産性を向上し、価格転嫁を円滑に行うことによって、労働者の方々に十分な賃金をお支払いし、そして十分それが可能な、時間はもっと短くて可能だと思っております。その実現のために、私ども全力を挙げて取り組んでまいります。
○田村智子君 今、石破総理の考えのところは……
○会長(浅田均君) 申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
○田村智子君 新しい答弁がいろいろあった。だけれども、政治の責任でどうやって賃上げするのか、政治の責任でどうやって労働時間短縮するのか……
○会長(浅田均君) 申合せの時間が過ぎております。簡潔にお願いします。
○田村智子君 ここについては、これまでの答弁、古い答弁の使い回しですよ。これでは変わらない。
政治を変えなきゃ駄目だということを申し上げて、終わります。(拍手)